ウマドルが油断してたら大好きな幼馴染を同室の閃光に奪われかける話   作:shch

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3.競走

 

 

 

「~~♪~~♪♪」

 

「ファル子ー!今日も輝いてるぞー!」

 

夕暮れの河川敷で歌い踊るウマ娘とそれに向けてサイリウムを振る男。

 

ファル子と優だ。二人にとってはいつも通りの日常の一コマ。

 

しかし、その日は少し違った。

 

「~~♪」

 

ファル子が踊っているその時。

 

河川敷の堤防の上にある道で踊っているファル子に目を向ける人物がいた。

 

スーツ姿で如何にも疲れてます…と言った雰囲気を醸し出す女性だった。 

 

その女性はファル子をじっと見つめたまま動かない。

 

次第にファル子がその女性の目線に気が付いた。

 

「~~♪…えへっ☆」

 

歌いながらその女性に向けてハートマークを手で作ってファンサをするファル子。

 

ファンサをもらったその女性はまさか自分が…と一瞬たじろぐ。

 

しかし、その後もファル子のライブからは目を離さなかった。

 

やがてファル子がその一曲を歌い終わる。

 

その時

 

パチパチパチパチ

 

とその女性から拍手が送られた。

 

そのまま女性は次の曲が始める前に何かを決心したような仕草を見せ、なにも言わずその場を立ち去った。

 

最後までライブは見てくれなかったものの、その拍手はファル子にとって優以外での初めてのライブに対するレスポンスだった。嬉しくないわけがない。

 

無論『ファル子の幸せは俺の幸せ』理論を提唱する優にとってもそれはとても喜ばしい事だった。

 

「やったなファル子!あの人絶対もうファル子のファンになったぞ!」(強火)

 

「ほんと!?やったやった!!よーしこの調子で頑張っちゃうぞ~!!」

 

そう言ってファル子のライブは続いた。

 

その日のライブはファル子のテンションが上がって若干声が高くなっていたものの、最高に盛り上がる過去イチバンと言ってもよいぼど良いライブだった…らしい(『ファル子の幸せは俺の幸せ』理論提唱者談)

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

その週の土曜日

 

この日は優が待ちに待った駅前の新しいケーキ屋の開店日。

 

すなわち優とフラッシュが2人で出かける日だ。

 

そんな日の朝、優はクローゼットの前で頭を悩ませていた。

 

「…何着て行けばいいんだ?」

 

それもそのはず、優はファル子以外の女性と2人で出かけるのは初めてだった。

 

それにクローゼットに並ぶ服の数々にも問題が見受けられた。

 

よくわからないアニメキャラの顔がデカデカと刺繍されたパーカー、クソピンク色の派手なロンT、全部ファル子が選んだものだ。

 

このファル子が選んでくれた服の数々、別に優は嫌いというわけでは無い。

 

しかし、ファル子と出かけるときは気兼ねなくこれらを着て行けるのだが、果たして他の人と出かけるときもこれらを着て行っても大丈夫なんだろうか?

 

そんな思いが優の頭を悩ませていた。

 

しかし悩んでいても埒が開かない、優はこのユニークなデザインの服たちの中から比較的マシな雰囲気を醸し出す襟付きのシャツを1枚引っ張り出した。これもそこそこ奇抜ではあるが…

 

シャツに腕を通しながら優は考える。

 

(昨日フラッシュさんから送られてきた今日の予定表…せっかく作ってくれたのに申し訳ないけど、予定がぎっしり分単位で詰まりすぎててちょっと戦慄しちゃったわ、俺あのスケジュールについていけるかな…)

 

普段休日遊びに行くのに予定表など作ったことがない優はそんな不安を覚えていた。

 

更にこの予定表を見てみるとちゃっかり新しいケーキ屋だけではなく、他のフラッシュのおすすめのケーキ屋も行先に入っており、どうやら今日はケーキ屋巡りを行うようだ。なんなら電車にも乗って行く店もある。

 

(まぁ他に予定ないから良いんだけど…てかこの予定表、集合時間は書いてるけど、集合場所は書いてないんだけど……ってもしかして昨日部屋番号聞かれたのって…)

 

ピンポーン!

 

優がそんなことを考えていると突然部屋のインターホンが鳴った。

 

(まさか…)

 

優はいそいで玄関まで走り、のぞき穴から外を確認する。

 

(やっぱりフラッシュさん!?)

 

優が住んでいる寮はトレセン学園の寮とは違い、ほとんどアパートのようなものなので誰でも簡単に部屋の前までは来れるのである。

 

しかし、だからといって自分の部屋まで迎えに来られるのは優にとって予想外だ。

 

「お、おはようフラッシュさん…」

 

ゆっくりと玄関の扉を開けて、優がそう言った。

 

「おはようございます。優さん」

 

そんな優に対してしっかりと挨拶を返すフラッシュ。

 

「わざわざ部屋まで迎えに来てくれなくても、別にフラッシュさんの寮の前に集合とかでも良かったんだけど…」

 

「いえいえ、誘ったのは私の方なので…それでは行きましょうか」

 

「……行きますか(部屋割れちゃったよ…)」

 

 

 

優がそう答えて2人は寮から出て、駅に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

「優さんの私服って意外と派手なんですね、少しイメージとは違いましたがよくお似合いですよ」

 

「…ありがとう。実はこれファル子が選んだ服なんだ…っていうか家にファル子が選んだ服以外無いんだけどね」

 

「…なるほど…では今度私にも服選ばせてください…」

 

そんなこんなで2人は足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は無事駅前のケーキ屋に到着。

 

フラッシュの計画通りオープンの前に到着した2人は特に待ち時間もなく入店することができた。

 

そして優はチョコレートケーキとカフェオレのセット、フラッシュはスタンダードなショートケーキとコーヒーのセットを注文した。

 

すこし雑談をしているとすぐに注文したケーキとドリンクが届けられる。

 

「うわっ…うまっ…チョコ濃厚すぎるぞコレ…スポンジも舌に触れた瞬間溶けるみたいに崩れたし…」

 

ケーキを口に含んだ優があまりのおいしさに感嘆の声を漏らす。

 

「こちらもクリームがフワフワで口溶けが抜群です…イチゴも大きくて美味しそうです…」

 

フラッシュもケーキを褒めながら、そのテッペンに乗っている大きなイチゴを目を輝かせて見ている。

 

「…その大きいイチゴ、俺にくれたりしない?」

 

「冗談ですよね?冗談じゃなければ今からあなたの大事なそのチョコレートケーキを一口で全て食べます」

 

「冗談です…」

 

そんな不毛なやり取りを繰り広げながらも2人は食事を続ける。

 

そんな時だった。

 

「お客様」

 

2人が女性の店員に話しかけられた。

 

「どうかされましたか?」

 

フラッシュがそう言って店員に対応する。

 

「お二人はカップルですか??美男美女でお似合いですね!!」

 

女性の店員は2人に向かってそう言う

 

「フフ…そうですか?」

 

フラッシュはその店員の言葉に嬉しそうにそう返す。

 

「……(俺とこんな綺麗な人がお似合いなわけないだろ…あとフラッシュさんもカップル否定して??なんでちょっと満足そうなの?)」

 

女性が苦手な優くんは黙ってそのやり取りを見つめているだけだ。

 

「そんなお二人様!よかったら開店の宣伝用にお二人の写真を撮らせていただいて、ウマスタのストーリーに投稿させていただくことはできないでしょうか!!協力していただければお代は結構ですし、ストーリーなので1日で投稿は消えるので!」

 

そんな提案を2人にする女性店員、どうやら宣伝用のウマスタの写真を撮りたいらしい。

 

「……(なんか嫌な予感がするからヤダ)」

 

優はそのように目でフラッシュに訴えるもフラッシュは優の方を見向きもせずに答える。

 

「是非撮りましょう」

 

乗り気ではない優と乗り気なフラッシュ。優は再び抵抗の視線をフラッシュへと送る

 

「……(ファル子が見たらかわいそうだろ?)」

 

「大丈夫です。優さん、ファル子さんはダイエット中はそういった情報をすべて遮断するようなので」

 

「……(…それならまぁ…フラッシュさんが良いなら良いか…ケーキ無料になるし…)」

 

観念した優はゆっくりとフラッシュに向けて頷く。

 

「写真撮っても大丈夫です」

 

優の同意を得られたのをフラッシュが確認すると店員にその意を伝えた。

 

「ご協力ありがとうございます!それでは写真撮るのでポーズお願いします!…そうですね、彼氏さんが彼女さんに『あーん』するところ撮りましょうか!」

 

「………(おいなんでそんな難易度高いんだ。それ絵になるの相当な美男美女だけだぞ??俺でちゃんと宣伝になるのか?…ってフラッシュさんもう口開けてスタンバってるし、なんでそんなノリ気なのこの人?)」

 

「はーい彼氏さーん撮りますよー!」

 

「………(彼氏じゃないから!……でもこれ以上店員さんに迷惑を掛けられない…やるしかないか…)」

 

意を決した優は左手で頬杖をつきながら、右手でもったフォークをフラッシュの口元に運ぶ。

 

そしてフラッシュがそのフォークに刺さっているチョコレートケーキを頬張った。

 

その瞬間。

 

パシャパシャパシャパシャパシャパシャ

 

とカメラの音が鳴る。

 

(いや連写しすぎ)

 

「はいオッケーでーす!いい写真撮れましたよ!」

 

店員さんがそう言うとフラッシュはフォークから口を離す。

 

そして2人に撮った写真を見せてくる店員。

 

(……あら意外と良い写真、なんか良い思い出になりそう)

 

それを見て手のひら返しの思考を行う優。

 

「どれも良い写真ですが、一番お二人が良い表情をしているコレを投稿しても良いでしょうか?」

 

何枚か連写で撮影された写真の中から店員が1枚の写真を選んで2人に確認を撮る。

 

確かにその写真は2人とも自然に微笑んでおり写真から幸せがにじみ出ている。どこかの雑誌に載っていてもおかしくような1枚だった。

 

「はい、それで大丈夫です。」

 

フラッシュが店員さんにそう言った。

 

「ありがとうございます!それではこちらの写真を投稿させていただきます!他のお写真は彼女さんにAir〇ropで差し上げますので!」

 

そう言ってスマホを操作してフラッシュのスマホに写真を移した店員さんはまた口を開く。

 

「それではお会計の際にレジでこのことを言っていただいたらお代は大丈夫ですので!改めてご協力ありがとうございました!」

 

そう言って一礼する店員。

 

「いえ、こちらも素敵な写真を撮っていただいてありがとうございます……ほら優さんも」

 

「………ありがとうございました」

 

「はい!それではごゆっくり!」

 

2人がお礼を言うと店員はそう言って去って言った。

 

店員が去った直後にフラッシュが口を開く。

 

「フフッ…優くん、店員さんにお礼言えてえらいですね」

 

からかうような口調でそう言って優の頭をポンポンと撫でるフラッシュ

 

「子供扱いすんなよ」

 

そう言って頭を振る優

 

(普段は大人っぽい優さんのこのギャップ…ちょっと癖になりそうですね…)

 

優の様子を見てそんな考えをするフラッシュ

 

「にしてもこの写真…優さんの表情が意外と自然ですね、『あーん』ともなるともっと動揺すると思いましたが…」

 

「動揺はしてるけど…まあ『あーん』はファル子にやり慣れてるからな、写真もファル子がいつも撮ってくるからカメラが向いたら自然と表情ができるんだ………ってそんなことよりもなんでカップルを否定しない!?あともっと言いたいことが………」

 

「まぁまぁ優さん落ち着いてください………」

 

 

 

 

そんなこんなで時間は過ぎて行った………

 

 

 

(間接キスにも特に反応しませんでしたね……ファルコンさんとそういうのは一通りやり慣れているのでしょうか??)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

次の次の日、優の学校

 

放課後

 

キーンコーンカーンコーン♪

 

「はいじゃあ今日はこれで終わり。お前ら気をつけて帰れよー」

 

帰りのHRの終わりを告げる担任の声

 

その声と共に一斉に騒がしくなる教室

 

「今日はどこ遊び行くー?」「授業だるかったなー」などの学生らしい声があちこちから聞こえる。

 

(終わった…今日はファル子と会う日だし…早く行こ…んで癒されよう)

 

そんな優もファル子の元へ向かうべく教科書などをカバンにしまう所だった

 

その時目の前の席に座っている男友達が、ぐるりと体を回転させ優の方を向き、口を開いた。

 

「黒木ー今日暇ー??」

 

「暇じゃない…一応聞くけどなんの用?」

 

そんな友人の言葉にそう返す優

 

「いやー今日も隣のトレセン学園の娘たちが美し過ぎて…今からナンパ行かね?」

 

「また言ってら…行くわけないだろ…ってかお前それ成功したためしないだろ。また失敗したお前の愚痴聞くの嫌だぞ俺…」

 

この優の男友達は平気でこういう事を大声で言う。

 

だからクラスの女子から嫌われており、女子と話せない優と必然的仲良くなったのである。

 

根は良い奴なので男からは好かれているのだが…

 

「なんでお前はあの可憐さがわかんねえかなー」

 

「だから根本的に苦手なんだって」

 

いつもの男同士の会話。だが今日は違った。

 

「あ、あの…黒木…くん」

 

隣からそんな声が聞こえた。

 

自身の名前を呼ばれた優は反射的に隣に目をやる。

 

隣の席の女の子がコチラを向いて何やら伝えたそうな表情でもごもごしていた。

 

「おー黒木になんか用か?」

 

優の代わりに男友達がそう答えた。

 

「あ…あの…」

 

そう言ってその子はゴソゴソとポケットからスマホを取り出す。

 

「黒木くん…って彼女…いたんだね」

 

そう言ってスマホを優と男友達に向けて見せるその女の子。

 

2人でスマホを覗き見る。

 

そこには先日ケーキ屋で撮ったフラッシュと優のツーショット写真のスクショが映っていた。

 

(あ、これヤバいヤツ…)

 

と優が思ったのも束の間。

 

隣で同じ画像を見ていた男友達が口を開く

 

「く、黒木に彼女だとー!!??」

 

そうこの男何といっても声がデカいのだ。このクラスの「スピーカー」とも呼ばれており、こいつに秘密を話そうもんなら一瞬で学年全体とまではいかずともクラス全体に広まる。

 

「何!?あの黒木に!?」「やるじゃねぇか黒木ィ!!」「マジ黒木に??ウケるんですけど!」「私たちの黒木くんが…」「キャー!」

 

思春期の高校生たちが男友達の声を聞きつけて一斉に優の元に集まってくる

 

一瞬でこのざまだ。

 

「いやッ!違う!彼女ってわけじゃ…」

 

「照れんな照れんな!!てかお前!女苦手なのにどこでこんな綺麗な子見つけたんだよ!!」「ナンパか?ナンパなんだな!」「キャー!」

 

「だから彼女じゃねぇって!」

 

優の否定の声も空しく、他の声量にかき消された…

 

(だから「嫌な予感がする」って言ったんだ!(言ってはない))

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…疲れた」

 

「どうしたの優くん?いつもにましてお疲れだね」

 

やっとこさ、あの集団から逃れることができた優は既に満身創痍だった。

 

ヘナヘナと心配するファル子の隣に腰掛ける。

 

「やっぱりファル子だ〜ファル子の隣が一番落ち着く〜」

 

「もう優くんったら…何かあったの?」

 

「いやまあ色々あった。うん」

 

説明するのも労力がかかると考えた優は曖昧な返事をファル子に返した。

 

ファル子はその返事に構わず、違う話題を優に振った。

 

「へぇー色々かぁ…あ!そういえば今学園で噂が流れてるの!フラッシュさんに彼氏ができたって噂!!」

 

「…!」ビクッ!

 

「あ、でもでも!相手の顔とか何でそんな噂流れているかはまだわかんないんだけどね!」

 

「…ほっ」

 

「その噂聞いてからファル子気になりすぎて居ても立っても居られなくなって、直接フラッシュさんに聞きに行ったの!「本当に彼氏できたの??」ってそしたらなんて言ったと思う??」

 

ファル子が楽しそうに喋る

 

「…なんて言ったんだ?」

 

「「彼は()()彼氏じゃありません」って言ったの!もうファル子キャーって感じでね!まだってことはいつかなるってことだよね!その時のフラッシュさんの顔もいつもとは違う乙女の顔でね!!もう可愛くて!ファル子までキュンキュンしちゃったの!!」

 

「それなんか言葉の綾的ななんかだろ。俺は本当に彼氏じゃないと思うけどな」

 

「もう!優くんは夢がない!恋する乙女は無敵なんだから!」

 

そんなことを言うファル子であったが、今日はライブの練習はしておらず、いつもの河川敷で二人で座って話しているだけだ。

 

それに今日はファル子は優を「大事な話がある」と言って呼び出している。

 

そんなことをファル子に言われたのは初めてだった優はその「大事な話」がなんなのかずっとに気なっていた。

 

「なあファル子、結局大事な話ってなんなんだ??」

 

優が待ちきれずにファル子にそう聞いた。

 

「あ、そうだった…あのね優くん、ファル子、トレーナーさんが決まりそうなの!!」

 

そんな急な報告に優は驚く

 

「おお!!マジか!!良かったなファル子!!…ん?でも決まりそうってことはまだ決まったわけじゃないのか?」

 

するとファル子が説明を始めた。

 

「うん、そうなの…そのトレーナーさん候補って言うのはね、優くん覚えてる?先週ファル子のライブで拍手してくれたスーツの女の人」

 

「ああもちろん」

 

「あの人がトレセン学園でトレーナーをやってるみたいで、担当バもまだ決まってないらしいの!ファン第2号がトレーナーってなんだかウマドル的で素敵だなって思ってダメ元でその人にトレーナーを頼んでみたんだけど……なんとオッケーが出たの!!」

 

「おお!!すごい!!…けどそれならもうその人にトレーナー決まってるんじゃないか」

 

さっきファル子はまだトレーナーになると決まったわけじゃないと言った。

 

しかし、今の話を聞いた感じ優はその人にトレーナー決定したのではないかと思ってしまう。

 

「優くんにはあんまりレースのことは言ってなかったけど、ファル子、実は芝よりもダートの方が得意なの…それでその人はファル子にダートに転向した方がいいって言うの」

 

優は黙ってファル子の言葉に耳を傾ける

 

「でも、ダートじゃどうしてもダメなの!」

 

そう言うファル子の表情からは僅かながら悔しさが感じ取れた。

 

そんな様子を見て、優は優しく尋ねる。

 

「なんで、ダートじゃダメなんだ??」

 

ファル子は話す。

 

「ダートは芝のレースよりも圧倒的に注目度が低いの…だから、ファル子がトップウマドルになるにはどうしても芝じゃないと…ダートじゃトップにはなれない…」

 

それを聞いた優が話す。

 

「でもファル子自身が輝けるのはダートの方なんだろ?」

 

「…でも芝にはスターウマ娘が多くてファンの人がどうしても芝に注目する。そこで競い合わないとトップとは言われない…確かにダートで戦った方がいい成績が残せるかもしれないけど…ファル子はウマドルとしてトップを目指したいの!…だから芝を諦めたくないの」

 

ファル子がそう言った。

 

しかし、そんなファル子の言葉に違和感を感じた優がファル子に優しく問いかける。

 

「…俺はファル子よりレースは詳しくないけど…ウマドルについてはファル子と同じくらいわかっているつもりだ。なあファル子、ウマドルって言うのはレースを走ってウイニングライブで踊って、キラキラに輝くことで皆に希望を与える存在…だったよな?」

 

「…うん」

 

優の言葉にファル子が頷く

 

優は言葉を続ける

 

「そして誰よりもキラキラに輝くトップウマドルになるのがファル子の目的だろ?」

 

「…だから誰よりも輝ける芝の方が…」

 

ファル子がそう言おうとするがそれを遮るように優が言葉を重ねる

 

「誰よりも、じゃないだろ??誰かと比べる前にファル子自身が一番輝けなくちゃ意味ない。さっき言ったよな?ファル子自身が一番輝けるのはダートだって。トップウマドルを目指す奴が自分が一番輝ける舞台で勝負しなくてどうするんだ?」

 

「でもっダートは…」

 

「注目度が無いって?」

 

「…うん」

 

悲しげに頷くファル子に優が言った。

 

「ファル子は何年か前…この照明も音響もないステージでも何でもないただの河川敷で、その時どん底だった俺に希望を与えてくれた。ファル子…場所は関係ないんだ。ダートだろうと芝だろうと河川敷だろうと…大事なのはどれだけ本気でやるのか…本気でやればやるほど人の心は動く。あの時の俺みたいに」

 

「だからファル子が本気を出せんのは芝じゃなくダート。それならダートにする他ないと俺は思う。それに…俺の知ってるファル子なら全力でやればダートと芝の注目度をひっくり返すことくらいできると俺は思う…!そうなりゃ名実ともにファル子はトップウマドル…だろ??」

 

そう言って優の長い演説が終わる。

 

すると優の目の前のファル子がワナワナと震え出す

 

「…そうだ…そうだった…なんで忘れてたんだろ…初めて見たウイニングライブ、ファル子が心を動かされたのはあの人達が本気だったから…ファル子が本気を出せるのは…ダート…」

 

ブツブツと下を向いて何かを呟いているファル子。

 

「ふ、ファル子?」

 

心配した優がファル子に声をかける…その時

 

「そうだよ!!」

 

と大きな声で叫んで優の両肩をガシッと掴んだ。

 

「決めた!!ファル子!ダートでトップウマドルになる!!」

 

「…それでこそいつものファル子だ!」

 

急に肩を掴まれた優は一瞬驚くが、ファル子の決意にファンとしてしっかりと同意する。

 

「…でもあれ?…ダートと芝の注目度をひっくり返すって…もしかしてかなり大変…?」

 

確かに現状はダートと芝の注目度には大きな差がある。

 

「ファル子ならきっとやれる!!」

 

「うーん…じゃあ優くん。もしファル子がダートと芝の注目度をひっくり返して、トップウマドルなった暁には何かすご〜いご褒美をちょうだい!!」

 

そう言って両手を優に差し出したファル子。

 

謎にテンションが上がっていた優はそのおねだりに、頭を使わずその場のノリだけで答えた。

 

「もちろん!俺にできることだったら()()()()やってあげるよ」

 

優がそう言った瞬間。

 

ファル子の瞳が妖しく光った。

 

「……()()()()?今優くん、()()()()って言った?」

 

周囲の空気が一気に冷たく変わる

 

「……え?あ、言った。」

 

(え?なんか流れ変わった?さっきまでスポ根みたいな雰囲気じゃなかった?)

 

「…優くん、その言葉絶対に忘れちゃだめだよ?」

 

やっぱさっきの無しで!とは絶対言えないような雰囲気を醸し出しているファル子。

 

優の答えは一つしか無かった。

 

「…はい、絶対忘れません」

 

優がそう言うとファル子はにっこりと笑顔になる。

 

「よーし!!そうと決まればこうしちゃいられない!!優くん!ファル子ちょっとトレーナーさんのとこ行ってくる!!」

 

そう言ってファル子は走ってどこかに行ってしまった…

 

1人河川敷に残された優

 

(俺…命奪われたりしないよね…)

 

 

 

その翌日、ファル子からトレーナー決定の連絡と、さらにデビュー戦が1ヶ月後に決まったという連絡が同時に優の元へと届いた。

 

(急すぎない?)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ファル子のデビュー戦が決まってからは色々速かった。

 

ファル子はデビュー戦の一ヶ月前ということでもともと忙しかったスケジュールはさらに苛烈を極め。優と2人で会える時間が極端に減ってしまった。それでもたまには会ってはいたが、最後の2週間なんてメッセージこそあったものの2人が直接会う時間は全くなかった。

 

ファル子の様子が気になった優がフラッシュにファル子の様子を聞くとそれはもう鬼気迫る表情でレースに向けての最後の追い込みを行っているようだった。

 

しかし、そんな中、優はファル子と会う回数は減ってしまったが、逆にフラッシュと会う頻度は増えた。

 

いつもの勉強会だけではなく、服を選んでもらいに行ったり、ケーキを一緒に食べに行ったりと…

 

ちなみに追い込みに必死なファル子はこの2人が密会?している事は知らない。

 

色々な出来事があったが、各々がそれぞれの一ヶ月を過ごしていった。

 

あと優とファル子のトレーナーは盟友になった。

 

 

 

 

 

そして遂に…ファル子のデビュー戦当日

 

優は当然ファル子のデビュー戦を見届けるべく、フラッシュと共に東京レース場まで来ていた。

 

そしてパドックにてファル子が紹介される。

 

『本レースぶっちぎりの1番人気!3番スマートファルコン。素晴らしい仕上がりです!』

 

そう紹介されると色々な方向に笑顔で手を振りまくるファル子。

 

「…仕上がってるな」

 

「…仕上がってますね」

 

その様子を見ていた優とフラッシュが呟いた。

 

2人が言う通り、ファル子の仕上がりは素人目から見ても明らかに素晴らしいものだった。

 

他に出走するウマ娘と比べるとその差は一目瞭然。

 

「おい、あの3番…」「とんでもねぇ仕上がりだ…」「すげえのがデビューするかもな…」

 

場内の競バおじさん達もファル子の仕上がりに感嘆の声を漏らしていた。

 

「…ファル子ってあんなに…なんというか…ゴツかったっけ?なんか肩幅とか…」

 

「…ええ、優さんは普段ファル子さんと会うときは制服か私服で分かりにくかったと思いますが…元々多少ゴツかったですよ…ですがここ一ヶ月の追い込みでさらに一回り大きくなってはいますが…」 

 

今日は重賞のレースではないため、出走バは皆体操服を着ている。 

 

だからこそわかるファル子の仕上がり。 

 

「しゃい☆しゃい☆しゃい☆しゃい☆」

 

なんとも言えない掛け声で気合を入れているファル子を2人は黙って見守る

 

しかしそこでフラッシュが口を開く

 

「………それより優さんこそなんですかその仕上がりは??」 

 

そう言って優の全身を見るフラッシュ。

 

「………これは正装だ。一ヶ月寝る間を惜しんで制作した。」

 

そう言う優は派手な法被を羽織り、ハチマキを締め、巨大な団扇を両手に持って仁王立ちしていた。

 

その全てのアイテムには『ファル子命』という刺繡が施されている。

 

「…一体何があなたをそこまで駆り立てるのですか…?」

 

そう言ってこめかみを抑えるフラッシュ。

 

「愛だ」

 

堂々とそう発言する優。

 

「それに俺だけじゃないぞ…見ろ」

 

そう言って自分たちがいる方とは反対方向を指差した優

 

フラッシュは言われるがままに優が指差した方向に目をやる

 

そこには

 

「ファル子ちゃん!!かわいいわ!!もっとこっちにファンサ頂戴!!」

 

そう叫んでいる優と全く同じ格好をしている女性がいた。

 

「…あの方は…」

 

「あの人はファル子のトレーナー兼ファン第2号だ。なんか忙しそうだったから一緒にこの正装をつくってあげた」

 

「………そうですか」

 

「フラッシュもいるか?欲しいなら次作ってくるけど…」

 

「え、遠慮しておきます…」

 

そんな会話をしているとパドックの時間は終わりウマ娘たちが次々にゲートへ向かって歩いていく。

 

そして全員がゲートに収まる。

 

もうスタートはすぐだ。

 

『各バ、ゲートに収まりました。そして今…』

 

「ファル子ー!!頑張れー!!」

 

優の声援が競バ場に響く

 

そして…

 

『スタートしました!!』

 

ファル子のデビュー戦が始まった…

 

  

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「…勝ちましたね。すごい順当に…」

 

レースを見たフラッシュがそう呟く。

 

その言葉の通り、今回のレース、ファル子の圧勝だった。

 

これはフラッシュ達競走バやレースを長年見てきたものなら、そのバ体の仕上がりからファル子が勝つことはある程度予想で来ていただろう。

 

しかし、この男は違う

 

「ファル子ー!!すげえぞ!!ファル子!」

 

落ち着いているフラッシュとは対照的に興奮したようにそう叫ぶ優。

 

スタート直後にハナを奪ったファル子はそのまま先頭を譲るどころか、最終曲線でさらに加速し、他を突き放すと言った圧倒的な勝ち方を見せた。

 

コレには周りの競バおじさん達もザワザワと騒いでいる。

 

「うぅ…ファル子…あんなに立派になって…」

 

「ゆ、優さん?泣いてるんですか!?」

 

「泣くだろ普通…ずっと応援してきたんだぞ…」

 

鼻をすすりながら優がそう答える。

 

「…ですが優さん、速く移動しないとウイニングライブが始まってしまいますよ」

 

「グスッ…そうか…じゃあ…行こう」

 

そう言って優とフラッシュはウイニングライブが行われる会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー・~~♪~♪~♪」

 

かわいらしいライブ衣装に身を包んだ女の子の歌声が煌びやかに彩られた会場に響く。

 

そしてその目の前では…

 

「ファル子ー!!!今日もかわいいぞー!!」

 

そう叫びながらサイリウムを振る男が一人…普段ならだ。

 

今回は一人だけじゃなかった

 

「「「うぉぉぉ!!」」」

 

先頭でサイリウムを振る優に続いて、先ほどのレースで彼女に心を打たれたおじさん達が雄たけびを上げる

 

「ファル子ちゃん!!!すごいわー!!」

 

彼女のトレーナーもそれに続いて声援を送る。

 

ファル子はそんな風景をステージ上から踊りながら見渡す。

 

(初めてのステージ…お客さんも優くんだけじゃない…ここから始まるんだ…ファル子のトップウマドルへの道が…!!)

 

ファル子はそんなことを考えながら、全力で歌って踊る。その姿はまさにキラキラに輝いていて、見るものを魅了し、希望を与えるウマドルの姿だった。

 

そして、曲が終了する。

 

ファル子は一番最前列にいる優に目線を合わせる

 

(見ててね、優くん…ファル子がトップウマドルになるとこ…!そのまま最前列で!)

 

「皆さーん!!今日初めてデビューとなりました!トキメキ☆ウマドル!スマートファルコンでーすっ!ファル子って呼んでね!!」

 

「最後にこのコールだけ覚えてもらえると嬉しいです!!」

 

「じゃあいきますよー!…ファル子が逃げたら~??」

 

そう言ってファル子は観客の方へとマイクを向ける。

 

「「追うしかなーい!!!」」

 

コールを完璧に返せたのは2人、正装に身を包んだ優とトレーナーだけ、しかしその独特なコールは他の観客の記憶にしっかりと残った。

 

「ハイ!トキメキ☆ウマドル!スマートファルコンでした!!またね!!」

 

そう言ってファル子がステージから退場する。

 

後にこのライブはデビュー初めてのライブにしては完成度の高すぎるライブとしてファン達の間で語り継がれるのであった。

 

ついでにまだデビューしたばかりなのに超熱烈なファンが2人もいたことも語り継がれるのであった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

(やったやったやった!!)

 

ライブを終えたファル子は興奮冷めやらぬ様子で控室でライブ衣装から制服へと着替える。

 

(レースも勝てたし!ライブも大成功!!)

 

その時。

 

ガチャ

 

と控室の扉が開く。

 

そこにいたのはファル子のトレーナーだった。

 

「ファル子ちゃん!やったわね!!」

 

そう祝福の言葉を言いながらファル子に駆け寄るトレーナー

 

「うん!トレーナーさんのおかげだよ!!ありがとう!!」

 

「そんな…ファル子ちゃんが頑張ったからよ!!この1ヶ月間本当によく頑張ったわね!」

 

そう言ってファル子を抱きしめるトレーナー

 

「うん!ファル子頑張った!!」

 

「ほんとにえらいわ…そういえばファル子ちゃん、一番早く報告したい人がいるんじゃないの??」

 

トレーナーがそう言いながら抱きしめていた腕を離す。

 

「優くん!トレーナーさん優くんはどこにいるの??」

 

ファル子はトレーナーの言葉に間髪入れずにそう答える

 

「彼ならまだライブ会場の近くにいるはずよ、はやく行ってらっしゃい」

 

トレーナーはファル子にそう教えた。

 

それを聞いたファル子は一目散に控室から飛び出す。

 

(優くん優くん…早く報告して沢山褒めてもらって頭も撫でてもらうんだ…最近全然会えてなかったし…もう待ちきれない!)

 

そう言ってファル子は先ほどのライブ会場へと足を進める。

 

その時だった。

 

「ファル子ー!!」

 

前方から聞き馴染みのある声がした。

 

聞き間違えるはずもない優の声だ。

 

「優くん!!」

 

そう言って声の方向を見てみるとコチラに向かって手を振りながら走ってくる優の姿が見えた。

 

どうやら優もファル子を探して走り回っていたようだ。

 

ファル子も優の方目掛けて走り出す…そして優の懐に思いっ切りダイブした。

 

「ぐふっ!」

 

そこまで力があるわけでは無い優にファル子を受け止める力は無い。

 

優は懐にファル子を抱えたまま。地面に倒れこむ。

 

ファル子はその状態で目一杯息を吸い込む。

 

(久しぶりの優くんの匂いだ…)

 

「いてて…ってファル子!よくやったな!!ライブもレースも凄かったぞ!!」

 

腹に顔をうずめるファル子を見て、優はそう言った。

 

「でしょでしょ!もっと褒めて!…ってあれ?優くん…もしかして泣いたの??」

 

ファル子の言う通り、優の目は少し腫れており、泣いた後だというのは一目瞭然だった。

 

「…バカ、こんなところで泣いてねぇよ!泣くのはファル子がトップになってから!そうだろ??」

 

よく分からないタイミングでウソを着いた優。

 

しかし今のファル子にとってはそれすら愛おしい。

 

(優くん照れちゃってかわいい…それに走って来たからか髪も乱れてるし…今日くらいファル子のほうから優くんの髪を整えるついでに頭を撫でてあげようかな…)

 

ファル子はそう思って、優の頭に手を伸ばす。

 

「優くんったら、髪が乱れて…」

 

その時だった。

 

「優さん!こんなところにいましたか…探しましたよ…ってファルコンさん、初勝利おめでとうございます」

 

ファル子の寮の同室であるエイシンフラッシュが2人の元にやってくる。

 

ファル子は優の頭に伸ばしていた手を止めて答える。

 

「フラッシュさん!来てくれてたんだ!ありがとう!」

 

(…あれ?もしかして今フラッシュさんも優くんのこと探してた?ファル子の聞き間違い??)

 

ファル子がそんなことを考える。

 

無理もないのだ、ファル子は実はこの2人に友人関係があることを知らない。

 

この2人の交流はファル子の中では最初のリボンを拾ってもらった時から更新されていないのだから。

 

ファル子は自分のレースを2人で一緒に見に来るなんて夢にも思っていない。

 

(…聞き間違い…だよね)

 

そんなファル子の思いを打ち破るようにフラッシュが口を開く。

 

「もう…優さん、一人でどこかに行かないでって言いましたよね!心配したんですから」

 

「ハハッ…ごめんごめん…()()()()()

 

(は?)

 

そんな2人の会話…もう気のせいでは自分をごまかせない。

 

それに先ほどの優の発言。

 

自分以外の女を呼び捨てで親しげに呼ぶ優の言葉に強烈な違和感を感じたファル子は、一瞬思考が停止する。

 

「…もう、優さん…ほら急に走ったから髪が乱れてますよ。直すのでこっちに来てください」

 

「え、そうなの?じゃあお願いします」

 

フラッシュにそう言われた優は素直にそう言って立ち上がり、ファル子の元を離れる。

 

「あっ…」

 

自らの元を離れる優に思わず声が漏れるファル子

 

そんなファル子に気が付かず優はフラッシュに近づいて行く。

 

「…んっ…よいしょ…」

 

そう言って背伸びをして優の髪を整えようとするフラッシュ。

 

それを見た優はなにも言わずに直しやすいように少ししゃがんでフラッシュの高さに合わせる。

 

「最初からそうしてください…全く優さんは…」

 

「ごめんって」

 

そんな話をしながらフラッシュが優の頭を撫でるように髪を整えていく。

 

「直りましたよ…全く…急に走るからこうなるんですよ。次からは気をつけてください」

 

優の髪を直し終わったフラッシュは優を窘めるようにそう言った。

 

しかしその時優もあることに気が付く。

 

「ありがとうフラッシュ…ってそう言うフラッシュこそ、髪乱れてるぞ、俺のこと走って探してただろ」

 

そんなことを言う優にフラッシュは返す

 

「わかってますよ!あなたのせいなんですからあなたが直してください」

 

そう言って頭をずいと優に向けるフラッシュ

 

「わかったわかった…動くなよー」

 

そう言ってフラッシュの頭を撫でるように髪を直していく優

 

「………んっ…優さん…耳はくすぐったいので触らないでくださいって()()()言ってますよね…!」

 

「ごめんごめん…フラッシュの反応が面白くてつい…」

 

「もう…こんなの()()()()やめてください…!恥ずかしいので!」

 

顔を真っ赤にしてそう優に怒るフラッシュ。しかし、はたから見れば2人でじゃれているようにしか見えない。

 

それはファル子から見ても例外ではなかった。

 

突然目の前で繰り広げられる2人のじゃれ合いにファル子は目を点にして口をあんぐりと開けて驚くことしかできなかった。

 

そんなファル子を見て、優が口を開く。

 

「どうしたファル子、そんな無量空処喰らった漏〇みたいな顔して」

 

続いてフラッシュも口を開く。

 

「そうですよファルコンさん…そんなに口を開くとはしたないですよ?」

 

しかし2人の声はファル子には届かない。

 

ファル子は目の前の情報を処理するので精一杯だったからだ。

 

しかしファル子の中で最近感じてきた違和感が目の前の情報からつながっていく。

 

フラッシュに彼氏ができたと噂が流れたこと…

 

その話をするとビクッと驚く優のこと…

 

優が図書館に行く日は必ずフラッシュも図書館に行って閉館時間まで帰ってこないこと…

 

フラッシュが最近常に上機嫌だったこと…

 

優の返信が明らかに遅い日があったこと…

 

その日は必ずフラッシュが用事があると言って出かけていたこと…

 

今、優が着ている法被の下の服が自分が選んだ服ではなく落ち着いたデザインの見覚えの無い服であること…

 

これらの情報をファル子は脳をフル回転させながら処理していく。

 

 

 

そして、ファル子はやっと気が付くのだ。

 

 

 

自分だけしか出走していないとずっと思っていたこの競走(レース)、出走バが他にもいたということに…

 

 

 

 

気が付くのだ。

 

 

 

 

その他の出走バが、トップを独走していると思っていた自分のすぐ真後ろまで迫っていることに…

 

 

 

 

 

だがこの競走(レース)は超長距離戦、まだまだ誰が1着を取るのかは分からない。ファル子が逃げるかもしれないし、フラッシュが差すかもしれない。…あるいは他の誰かがかっさらう可能性だって0じゃない。

 

 

 

この先この競走(レース)がどうなるのか、それはまだ誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






今回も読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字ありましたら報告お願いします。

勝敗予想(希望可)

  • ファルコンさん
  • フラッシュさん
  • その他
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