ウマドルが油断してたら大好きな幼馴染を同室の閃光に奪われかける話 作:shch
沢山の感想、評価、お気に入り登録などありがとうございます。
今回から他のウマ娘が出ます。一応ご注意ください
「皆ー!!ファル子は今日をもってウマドルを…卒業します!!!ファル子を嫌いになってもウマドルは嫌いにならないでね!!」
「「「「「うおおおおお!!ファル子ォォ!!!」」」」」
大量の観客の歓声で揺れる大井競バ場のライブステージ。
そのステージの中央に立つのは『砂のハヤブサ』スマートファルコン。
圧倒的な強さで伝説的な戦績を残してきた彼女が本日、引退をする。
そんなファル子の引退レース、場内には芝のG1レースと比べても遜色ない…いやそれ以上の人々が訪れていた。
ファル子は優と決めた目標である「芝とダートの注目度をひっくり返す」というものを引退レースをもって達成したのである。
「ファンの皆さん!今まで本当にありがとうございました!!」
ファル子はステージ上でそう言い、深々と頭を下げて、ステージを後にする。
ファル子がそうして舞台の裏に行くと、そこには優の姿があった。
「ファル子…本当にお疲れ様、やっぱりファル子は最後まで最強のアイドルだったよ」
優はそう言ってライブ後のファル子を労った。
(やっと…やっとこの時が来た…ファル子はもうウマドルじゃなくなった、夢を叶えたんだ…これでやっと優くんと…)
「優くん!ありがとう!そしてお待たせ!これでやっとファル子…」
「そうだな!ファル子!それで早速、結婚式の話なんだが…」
(え!…いきなり結婚!?優くんったら大胆!でもそれも素敵かも!)
「うんうん!何の話??場所?和婚か洋婚か?ファル子はやっぱり王道の洋婚の方が…」
「ん?いや…そういうのはもう全部決めてるんだけど…」
「そうなんだ!じゃあなに??ウエディングドレスのサイズ合わせとか??」
「いや、それも測ってるんだけど…というか話がズレてないか?これは
「うん、だからファル子と優くんのでしょ?」
「いや…俺とフラッシュの結婚式だけど…」
「え」
その時優の背後からどこからともなく、あるウマ娘が現れる
「そうですよファルコンさん、
そのウマ娘はファル子のよく知る、トレセン時代に寮の相部屋の相手でもあったエイシンフラッシュだった。
「言ってなかったっけ??俺たちは、2人の共通の大切な友人であるファル子の活動が落ち着いてから結婚するって」
「そうですよファルコンさん、ですから引退レースを終えた今日お話しを…と思って…ね、優さん」
「そうだぞファル子、ファル子はもう忙しくないだろうから色々頼みたいんだよ、俺たちの式の友人代表のスピーチとか結婚式前の余興とか当日の受付とか…」
(…そ、そんなの…そんなの…)
・・・・・・・・・・・・・・
「絶対ダメーーーー!!!」
ファル子の叫び声が辺りに響く。
しかしそこはステージの舞台裏などではなく、見慣れた寮の自室のベッドの上だった。
(ゆ、夢かぁ…)
ファル子はベッドから上体を起こしながら安堵のため息を漏らした。
するとファル子の隣から声が聞こえる。
「…んん…ファルコンさん…?どうかされたんですか…?こんな夜中に急に大声を出して…」
そう言ったのは眠そうな顔で目元をこすりながらファル子と同じようにベッドから上体を起こしたフラッシュだった。
ファル子は慌てて口を開く
「わわ…ごめんなさいフラッシュさん…起こしちゃったみたいで…ちょっと悪夢を見ちゃって…」
そんなファル子に対してフラッシュは優しい表情で答える。
「大丈夫ですよファルコンさん、それにしても悪夢ですか…怖い夢だったんですかね?…もしまだ怖いのであれば一緒のベッドで寝ましょうか??」
「ほら…ファルコンさん」
そう言って自身の掛け布団を少し上げ、「おいで」と言わんばかりに自分のベッドの空いているスペースをポンポンと叩くフラッシュ
「いやいや!…そんなに怖い夢ではなかったから大丈夫…!ありがとうねフラッシュさん!…今フラッシュさんと一緒に寝たらもっと怖い夢見ちゃいそうだよ…」
「そうですか…というか最後何か言いましたかファルコンさん?」
「ううん!なんでもないの!…本当に起こしてごめんなさい!じゃあおやすみなさいッ!!」
そう言ってバッ!と勢いよく掛け布団を被るファル子
「そ、そうですか…ではおやすみなさい」
フラッシュもそいう言って再び眠りに入る。
掛け布団を頭まで被ったファル子だが
(うう…あの日から…なんだか調子がおかしい…)
そんなことを考えながらもファル子は練習で疲れた体を休めるべくゆっくりと目を閉じる。
・
・
・
あの日…それはファル子のデビュー戦の日。
始めてファル子がフラッシュと優に交流があったと知った日だった。
2人の仲の良さはファル子の想像以上で長年一緒に過ごしてきたハズの自分とあまり変わらないくらい仲が良いのではないかと思ってしまうほどだ。
今でも、あの日、目の前で優に頭を撫でられているフラッシュの様子が鮮明にふと頭に浮かぶ。
(あの場所はファル子だけのものだったハズなのに…)
勝手に優は自分以外の女の子とは仲良くならないと決めつけていた。
でも違った。
優が自分と仲良くなったのと同じように、何かきっかけさえあれば仲良くなれてしまう…もしかしたら今後フラッシュ以外とも…
(で、でも大丈夫だよね…二人ともただの友達って言ってたし…好きなのはファル子だけだよね…)
そう自分に言い聞かせる。
あの時、ファル子は混乱する頭をなんとか整理し、2人に問いかけた。
『2人はどんな関係なの?』
と
優が答える
『フラッシュとはちょっと前から仲良くさせてもらってて…良い友人だよ』
フラッシュは答える
『そうですね…私も優さんとは仲良くさせていただいてまして…趣味もよく合いますし、今はまだ良き友人同士という関係ですかね…』
そんな2人の言葉にファル子は安堵する。
(なんだ…ただの友達同士なんだ!なら安心!)
自分の親しい友人であるフラッシュと幼馴染である優が友達同士になる。
これは喜ばしい事だ。
そう自分に言い聞かせて日々を送る。
別にあの日から優やフラッシュとの関係が特段変わったわけではない。
2人とも以前と同じようにファル子と接する。
強いて言うならフラッシュとの会話に優の話題が出てきやすくなった程度だ。
『2人はただの友人同士だった』
その2人から直接聞いた言葉を信じてファル子はいつも通りの日常を過ごしている。
…にもかかわらず先ほどのような悪夢を見てしまうのは、ファル子が本当のことに心のどこかで気が付いているからだろう。
優のことを話すフラッシュの表情、「まだ友人同士」という発言、自分も恋する乙女だからこそわかる。
『フラッシュも自分と同じなのではないか』
しかし、ファル子はその事実を認めるのが怖い。
だから無意識にたどり着くその『答え』とは向き合わない、色々な情報から目を逸らし、『2人は友達同士』という自分にとって都合のいいことしか信じない。
・
・
・
日差しがカーテンの隙間から差し込む
「ファルコンさん、おはようございます。朝ですよ」
「うーん…フラッシュさん。おはよー」
そうやって彼女は今日もいつも通りの1日を始める。
・・・・・・・・・・・・・・
「ファル子、くっつきすぎだ。熱いだろ流石に」
優の声がいつもの河川敷に響く
そのすぐ隣、優にピッタリと密着するように座っているファル子が口を開く。
「別に良いでしょ?ファル子と優くんの仲なんだから」
「いや、仲とかの問題じゃなくてもう夏なんだから…」
優の言う通り、世間はもうじき夏、強い日差しが2人に降り注いでいた。
気持ちいい風の吹く河川敷といっても暑いものは暑いのだろう。
「むうぅ…じゃあ優くんのファル子に対する愛はそんなものだったんだ…夏の暑さに負けるくらいのものだったんだ…ファル子悲しい!」
そう言って目元を手でこすり泣きまねをするファル子
その発言がなぜか優のファン魂に火を付ける。
そんな優は大きな声で答えた。
「そんなわけないだろ!俺のファル子に対する愛は無限大だ!夏なんかに負けるわけがない!ほらどっからでも引っ付いて来いファル子!」
そう言って優は両腕をファル子に向けて大きく広げた。
「流石優くん!ファル子優くんのそういう所大好き!わーい!」
そう言ってファル子も両腕を大きく広げ優の懐に飛び込もうとする。
しかし、その時だった。
「ぐぇ…!!」
優の元にダイブしようとしたファル子の首根っこを突如現れた何者かが掴む。
「もう…二人ともなにバカなことしてるんですか…見ていて暑苦しいですよ?」
まるで猫を持つようにファル子の首根っこを持ち、そう発言したのはフラッシュだった。
フラッシュは続けてファル子に言う。
「ファルコンさんはもう少しウマドルとしての自覚を持ってください。もうデビューしたんですから」
それに対してファル子は言い訳するように優を指差して言う
「うう~だって優くんが良いって…」
その発言でフラッシュの矛先は優へと向く
「優さんも…あんまりファルコンさんを甘やかさないでください」
そう言われた優も言い訳がましく言う
「俺だってファンとしてのプライドが…」
「二人とも言い訳は結構です。とにかく人前でこのようなことをするのは今後やめてくださいね??友人として恥ずかしいので」
「「は、はい…」」
フラッシュの説教にぐうの音も出ない2人は揃ってそう返事した。
「…というかフラッシュさん、なんでここに??」
ファル子は思い出したように突然フラッシュが現れた理由を聞く。
するとフラッシュは呆れたような表情で言った。
「はぁ…ファルコンさんたしか明日までの古典の宿題が大量にあるって言ってましたよね?ちゃんとやってますか?」
「あ!…てへ☆」
「てへ☆じゃありません、さあこんなところで遊んでる場合じゃないですよ、早く帰ってやりましょう。私も手伝うので」
(フラッシュの「てへ☆」かわいいなオイ)
「…バカなこと考えてないで、優さんからもファルコンさんに言ってください」
「(なんでバレた?)……そうだぞファル子、宿題はちゃんとやらないと」
「うう…夜頑張るから、今は優くんと…」
「ダメです。また夜更かし気味になってトレーナーさんに怒られますよ」
「…はあい…」
そう言って渋々立ち上がるファル子
「じゃあ俺は最近気に入ってる喫茶店に読書でもしに行こうかな…」
優もそう言って立ち上がる。
「じゃあまたな、ファル子、フラッシュ」
そう言って手を振りながらその場を去ろうとする優
「うう…またね優くん…」
悲しそうな顔で名残惜しそうにそう言うファル子
「優さん、それではまた……あ、そうでした。ちょっと待ってください優さん」
フラッシュも優に別れを言おうとしたが何かを思い出したかのように優を引き留める。
「どうしたフラッシュ?」
優がそう言って足を止めた。
「来週のドイツのことですが、飛行機の良さげなペアシートが取れたのでご報告をと思って」
(え?ドイツ?飛行機?ペアシート?)
フラッシュの発言にファル子が反応する。
しかし、優は当たり前のようにフラッシュの言葉に答える。
「うん、まずチケット取ってくれてありがとう。でも取ってもらった身で言いにくいけどペアシートじゃなくて良いって言ったよね?」
「ですが…もう取ってしまったので…」
「…じゃあしょうがないか…ちなみにどんな感じなの?」
「こんな感じです」
そう言ってフラッシュが優にスマホの画面を見せた。
「あ、2個座席あるんじゃなくてデカい1個の席に2人で座るタイプの席なのね…しかもなんか高そうな席だけど大丈夫そう?」
「両親に優さんを紹介して、このことを言ったらこの席を取ってくれました。そして費用も両親が出させてほしいと」
「いや俺のことをなんて紹介したらそうなるんだよ?流石にお金は…」
「いえいえ両親が言っている事なので…」
そう言って1人を完全に放置してスマホの画面を覗きながら話を続けるフラッシュと優。
その放置された一人、即ちファル子はポツンと2人と離れたところで立っている。
ファル子は2人にゆっくりと近づく。
そしてスッと両手で二人の肩に手を置いたファル子。
その顔は笑顔ではあったがどこか青ざめていた。
「どうしたファル子?」
「どうされましたかファルコンさん?」
するとファル子が恐る恐る口を開いた。
「あ、あのドイツって聞こえたけどなんの話なのかなぁ…って…思って…」
目を泳がせながら必死に正気を保ちファル子はそう2人に聞いた。
すると優が答える。
「ああ、言ってなかったっけ?来週から夏休みだろ?だから父さんがドイツに仕事見に来いって言ってくれてさ、それをフラッシュに話したら丁度フラッシュもドイツに帰省しようとしてたらしくてさ」
さらにフラッシュも口を開いた。
「ええ、ですからせっかくなのでご一緒にと思って。それに優さんは1人でドイツに行くのは初めてとのことでしたので私が一緒に行った方が心強いと思いまして」
そう説明する2人、ファル子は口を開く
「え、えーと…つまり…」
優が言う
「そう、フラッシュとドイツへ行くんだ。安心しろ、5日で帰ってくるからファル子の次戦にも間に合うし、途中で電話もするから」
それを聞いたファル子はほとんど放心状態といった雰囲気でブツブツと呟く
「ふ、ふたりで…ど、ドイツ?…ほとんど海外旅行…ファル子も行ったこと無いのに…しかも五日間…」
「ファルコンさん、私が居なくても、しっかり朝起きてくださいね?夏休みだからと言ってダラダラしてはいけませんよ?夏休みの宿題だって…」
そうファル子に語りかけるフラッシュだったが、放心状態のファル子にはその言葉は届いていなかった。
(…二人…ドイツ…旅行…五日間…はは…ははは…ファル子は一人…お留守番)
その日の夜、ファル子は全く宿題に手が付かないのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
一週間後…
飛行機内
「…なんか狭くないか?」
「…気のせいです」
「フラッシュの方、もうちょっと余裕ある気がするんだけど…」
「…気のせいです」
「じゃあ良いか…」
そんな会話を繰り広げるのは、飛行機に搭乗中のフラッシュと優だ。
フラッシュが優にもたれかかるように座っているため、優には席が狭く感じるが実際は2人で座ってもかなり余裕がある席だ。
「すいません。昨日あまり眠れなくて…少し寝てもいいですか?」
フラッシュが眠そうに目をこすりながらそう言う。
「まあまだ到着までかなり時間があるからな、いくらでも寝ていいぞ」
優がそう言うとよほど眠かったのか、フラッシュはすぐに目を瞑り、しばらくすると「すぅすぅ」と寝息を立て始めた。
暇になった優は座席に付属しているタブレットでなにか映画でも見ようかと端末を操作し始める
(最近、面白い映画を探すのにはまってるんだよなー、なにか無いかな…おっ…この監督、前面白いの作ってた人だ、これにしよう)
そして優は映画を再生し始める。
その時、隣で寝ていたフラッシュの頭がコテンと優の肩に倒れこんできた。
映画を見ていた優は手が空いていたので、いつものファル子にしている手癖か、映画を見る片手間で自身の肩にもたれかかっているフラッシュの頭を優しく撫で始めた。
しばらく撫でながら映画鑑賞をしていると、フラッシュの耳がピコピコと気持ちよさげに揺れているのに気が付いた。
そこで優は魔が差したのか、フラッシュの耳を爪先で軽く掻く。
すると
「耳はやめてください」
隣からそんな声が聞こえた。
寝起きとは思えないはっきりした声に優は言う。
「フラッシュもしかしてずっと起きてた??」
フラッシュは優の肩に頭を預けたままの状態で答える。
「はい、優さんが私の頭を撫で始める前までは寝そうだったんですが、優さんが撫で始めてからはずっと起きていました。」
そう言うフラッシュに優は申し訳なさそうな表情で言った。
「え、ごめん、なんか手が手持ち無沙汰だったからつい…いつもの癖というかなんというか…」
「…そうですか、まあいいです。…じゃあおやすみなさい」
そう言ってフラッシュは再び目を瞑った。
(もう撫でないようにしなければ…!)
そう思った優は目の前の映画に集中することにした。
モニターに目をやったその時。
またしても隣から声が聞こえた。
「…優さん何してるんですか?早く撫でるのを再開してください」
「え、でもさっき…」
「別に私は嫌とは言ってませんよ、むしろ心地いいくらいです。ほら早くしてください。」
そう言って頭をぐりぐりと動かすフラッシュ
(わかんねえ…)
優はそう思いながらも再びフラッシュの頭を撫で始めた。
しばらく撫で続けると、フラッシュからは寝息が聞こえ始めた。どうやら本当に寝たようだ。
優はモニターに目を移し、映画鑑賞へとふけるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
パチリと目が覚める。
頭の上には何かが乗っている感触、しかし動いてはいないようだ。
チラリと隣に目をやる
「すぅすぅ」
眠っている優がいた。目の前にあるモニターにはよく分からない映画が垂れ流されている。
(寝落ちしちゃったんですかね…)
自分はどれくらい眠ってしまっていたのだろうと時計を確認する。
(出発から5時間、4時間ほど眠っていたようですね)
そして再び、眠いっている優に目を向ける。
気持ちよさそうに眠る優を見て。フラッシュは思い返す。
・
・
・
たしか最初は、ファルコンさんの話題でよく出てくるから少し気になっていた程度でした。
初めて会った日もただ私の前で固まっているだけでしたし、シャイな方なんだなといった印象しかありませんでした。
でも次の日、あなたに図書館で再会して、ドイツにゆかりがあったり、スイーツが好きだったり、勉強が出来たり、意外と優しかったり。色んなことを知って、私と話がよく合う優しい人という印象に変わりました。
思い立って誘ってみたケーキ屋巡りですが、貴方は普通に了承してくれましたね。
貴方はファルコンさんで慣れているかもしれませんが、私は男の子と2人でお出かけなんて初めてで緊張していたんですよ?
そして当日、私は予定表を作ったのですが、今思えばあの予定表はひどいものでした。
案の定、途中で予定が狂ってせっかくのお出かけが台無しになるところでした。
でも予定通りに行かず焦る私を貴方は行きつけの喫茶店に連れて行ってくれました。そして言ってくれましたね。
「フラッシュさんにも不器用なところがあって安心した」
と、不器用なんて言われたのは初めてでしたし、心外だった私は反論しました。でもそんな私に貴方は優しく言ってくれました。
「全部が完璧な人間なんていない、だからこそ俺たちは補い合って生きているんだ。少なくとも俺はそんな完璧人間よりはちょっとくらい隙のある人の方が好きだ。」
「ですが…今日は私のせいで予定が…」
「フラッシュさんが今日のために頑張って予定を立ててくれた。予定通りに行かなくてもその事実だけで俺は嬉しいんだ。それにここの紅茶、美味しいだろ?」
「は、はい、美味しいですけど…」
「だったらいいんじゃないか?俺もフラッシュさんと一緒にいれて楽しいし、予定通り行かなくてもそれはそれで良いことがきっとある。それでいいと俺は思うんだ。」
「…じゃあ不器用な私でもいいということでしょうか?」
「さっき言ったろ?俺は不器用なフラッシュさんの方が好きだって」
貴方が優しく笑いながら言ったその言葉を私は忘れられない。
あの日から2ヶ月ほど過ぎましたが、貴方はあれ以降私に「好き」とは言いませんでしたね、ファルコンさんには「好きだ」とか「愛してる」とか毎日のように言ってるのに…
ふと思います。こうやって頭を撫でるのが上手なのも、隣を歩く時自然と歩調を合わせてくれるのも、勉強を教えるのが得意なのも…全部ファルコンさんの影響なのですよね?
ファルコンさんはこの5日間をズルいとごねていましたが、私から言わせてもらうとファルコンさんが優さんと過ごした十数年間の方がずっとズルいと思います。
だから私はその十数年で開けられた大きいリードを少しでも早く縮めるために必死で頑張らなければ、期間はファルコンさんがウマドルである間。
その間に私は…
・
・
・
フラッシュは気持ちよさそうに眠っている優の顔を再び見つめる。
そしてゆっくりとその頬に自身の顔を近づけて…唇を落とした。
優は気づかず眠ったまま。
フラッシュは唇を拭い、頬を紅潮させ、言葉を漏らす。
「Du gefällst mir.」
ドイツに到着するまでもう少しだ
・・・・・・・・・・・・・・
INドイツ(一部抜粋)
・・・・・・・・・・・・・・
ドイツに滞在して3日目
一通り父の仕事を見学した優は自由にドイツ観光を楽しむように父に言われた。
それをフラッシュに伝えると、フラッシュは自身の実家であるケーキ屋に優を連れていくことになった。
「優さんいらっしゃいませ、ここが私の実家のケーキ屋です。」
「おお、ここが…すごいおしゃれ」
「待っていてください、今両親を呼んできますので」
「え?ご両親?」
『お父さん、お母さん、この人がいつも話してる優さんです。私の大切な人なんですよ?』
『こんにちは、君が優くんだね、娘から話はよく聞いてるよ』
『あら男前じゃないの…我が娘ながらやるわねぇ…優くん、娘をよろしくね』
(おい、ドイツ語が流暢過ぎてほとんど聞き取れないぞ…本で読むのとはわけが違うな…そういえばさっきフラッシュがこう言ったとけば大体何とかなるって言ってたな…)
『俺に任してください!』
『これは頼もしいなぁ』『そうねぇ若い頃を思い出すわぁ』『優さんったら大胆ですね…』
(おお、なんか盛り上がってる…よかったよかった)
・・・・・・・・・・・・・・
『こんな感じですかね?』
『いい感じだよ!流石は我が娘が選んだ男!』
(お父さん…背中バンバン叩かないで…ていうかなんでフラッシュの店でケーキ作らされてんだ俺は?フラッシュの影響で最近お菓子作りに目覚めてたからなんとかついていけてるけども…しかも相変わらず聞き取れないし…)
『いい手際ねぇ…これでこの店も将来安泰ね、あなた』
『そうだな妻よ…この店とフラッシュを頼むぞ優くん』
『…任せてください』
(なんか今とんでもないこと頼まれていた気がするんだけど。大丈夫かな?)
「ごめん、フラッシュ…お父さん達が言ってることほとんど聞き取れてないんだけど、俺ちゃんと話せてる?変な事言ってない??」
「はい、問題なく会話出来てると思いますよ?2人とも優さんを気に入ってくれたようです。」
「それなら良かった。」
・・・・・・・・・・・・・・
「それでは優さん、明日は私がドイツを案内しますので」
「お願いするよ、また明日なフラッシュ」
『お父さん、お母さんも今日はありがとうございました。またどこかで会いましょう』
『水臭いことを言うな優くん、君はもう私たちの家族だ。いつでも来なさい』
『そうよ優くん、いつでも待ってるからね。』
『ありがとうございます。じゃあまた…』
ちゃんと両親に優を紹介出来て満足顔のフラッシュ「…」手フリフリ
着々と外堀を埋められていることに気付いていない優くん(よし!なんかすごく仲良くなれた気がする!)手フリフリ
・・・・・・・・・・・・・・
そうして色々あったが、優とフラッシュは無事に日本に帰国することができた。
帰国後からさらに一週間後
その日はファル子のデビュー戦から2戦目の日。
優は当然正装で身を包み、応援に駆け付けていた。
今日はフラッシュは用事があるらしく、優一人で競バ場に来ていた。
そんな優は自分と同じ格好をしているファル子のトレーナーの隣に立ち、パドックを眺めていた。
「優君がいない間、ファル子ちゃん大変だったんだから…夜更かし気味になるわやる気が下がるわ…」
「なんかごめんなさいトレーナーさん」
そう言うトレーナーに謝る優。
「まあレース前に帰ってきてくれてよかったわ、ファル子ちゃん、優くんに会うだけで無条件でバッドコンディションが治って2段階やる気が上がるんだもの」
「バッドコンディション…?2段階…?なんの話ですか?トレーナー用語?」
「あ、ううん、こっちの話だから気にしないで…」
そんな感じで優とトレーナーが話していた。その時
「…どもども、お隣いいです?」
突然、そう言って優の隣にメガネをかけたウマ娘が立った。
「……」
突然の出来事に優はまたしても固まる。
「…ありゃ?あなた大丈夫ですか?おーい」
そう言ってそのウマ娘は優の顔の前で手を振る
「この子はちょっとシャイな子でね、女の子と話すのに慣れてないの、この子に何か用?」
それを見かねたトレーナーが優の代わりにそのウマ娘に声をかける。
「御二方のその気合い入った衣装…まだデビュー2戦目のスマートファルコンにそんなに熱狂的なファンが2人もいるなんて気になってしまって…お話良いですか?」
そうそのウマ娘が言った。
「そう…私はファル子ちゃんのトレーナーよ。あの子が不利になるような情報は一切出せないわ。」
トレーナーが堂々とそう言う。
「ありゃ、じゃああんまり情報は引き出せなさそうですねぇ…そっちの彼は?お姉さんのカレシ?」
からからうようにそう言ったウマ娘
「ち、違うわよ!大体彼と私じゃ歳の差があるのわかるでしょ!」
なぜか必死に否定するトレーナー
「あ、じょ、冗談のつもりだったんだけど…」
そんなトレーナーに気まずそうにそう言うウマ娘。
「そ、それならそうと言いなさい!彼はファル子ちゃんの幼馴染よ!」
トレーナーは優を指差してそう言った。
「お!それはいい情報が仕入れられそうですね〜お兄さん?お話聞いても?」
再びそのウマ娘の矛先が優へと向く。
「…」フルフル
優の正面に回りそう言うウマ娘に対して優は何も言わずに顔を横に振るだけだった。
「うーんだめかぁ……およ?お兄さんよくみたらトレセン学園の近くの喫茶店でよく読書してる人では?」
ウマ娘が優の顔を見てそう言った。
その言葉に優の表情は一瞬ピクリと反応する。
「ウチもよく行くんだよね〜、あそこ雰囲気が隠れた名店っぽくていいよね、紅茶もおいしいし、茶菓子もいっぱいあるし〜」
その話を聞いた優はそのウマ娘の顔をじっと見つめ始めた。
「…な、何?そんなに見られると恥ずいんだが…」
ウマ娘が顔を赤らめ照れたようにそう言った時だった。
「…!(確かにこの子あの店で見たことあるな…)」
と優もそのウマ娘の顔に見覚えがあることに気がつく
そして、やっと優の口が開く。
「………美味いよな、あの店の紅茶」
ここからだ、ここから物語を作る3人、いや4人の関係はより複雑になっていく…
・・・・・・・・・・・・・・
時間は一気に約一か月後へと飛ぶ
ある夏の日
ファル子とフラッシュが2人で並んで歩いている。
目的地は優の住んでいる寮だ
「やっと夏合宿終わって優くんに会えるよー!!」
歩きながら大きな声でそう言うファル子
「ですね…トレーニングとしては有意義な時間を過ごせましたが、夏合宿が一ヶ月間というのは少々長く感じます…」
フラッシュもそう言いながら歩く
そう、2人はファル子が2戦目を終えてから約1ヶ月の間、夏合宿に行っていたのである。
夏合宿は専属のトレーナーやチームに所属しているウマ娘しか行けない、一ヶ月間トレーニングのみに集中できる合宿。
この合宿で力をつけて大化けするウマ娘も少なくは無い、競走バとしては重要なイベントの一つだ。
「にしてもファルコンさんよく耐えましたね、一ヶ月間優さんと会わないなんて、日頃見ているファルコンさんなら到底できそうにないですが…」
「確かにつらかった…でも優くんとの約束を守るために必要なことだもん!それならファル子頑張れるの!」
「そうですか…というか私は優さんの様子も心配なのですが…」
「…だね、ファル子たちが出発する日、ちょっと泣いてたもんね「俺を一人にしないでくれー!」って」
「フフ…あれはちょっと面白かったですけどね、ですがこの一ヶ月、連絡も返ってくるのが遅いですし、電話をかけてもたまにしか出ませんから心配です」
そんなことを話しながら2人の脚はゆっくりと優の寮へと近づいていく。
「そうかな?…電話は出てくれてたと思うけど…でもまぁ、あの様子だと優くん今頃一人で部屋で泣いてるかもしれないし…今日はサプライズで急に家に行って驚かそうって話だよね!きっと優くん嬉しすぎてもっと泣いちゃうんじゃない??」
「フフッ…そうですね、ケーキやお菓子も買いましたし、今日は優さんのお部屋を借りてパーティーですね」
「楽しみ~!!早く行こッ!フラッシュさん!」
「待ってください、ファルコンさん!」
そう言って楽しみを隠せない2人は走り出した。
この時2人の頭には「早く優に会いたい」という考えしかなかった。
優がこの一ヶ月で新しい交友関係を築いていること、ましてやその相手が自分たちと同じウマ娘であることなんて全く考えてもいなかった…
・・・・・・・・・・・・・・
2人は優の部屋の前で立っていた。
(うー…勢いでここまで来たけど…ちょっと緊張する~!!よく考えたらファル子優くんの一人暮らしの部屋来るの初めてだし…)
(…少し緊張しますね、優さんと会うのは久しぶりですし…こうして部屋の前に立つのは2度目ですが、よく考えたら部屋に入ったことありませんし…急にきて部屋にあげてくれるでしょうか?)
各々そう考えながら優の部屋の扉の前で立ち尽くす
「ファルコンさん、インターホン押さないのですが??」
「ふ、フラッシュさんこそ!フラッシュさんが押していいよ?」
「いえここは幼馴染のファルコンさんが…」
「なんでこういうときだけそんなこと言うの!?」
そんなやり取りをしばらく繰り返し、埒が明かないとじゃんけんをした結果。
インターホンを押すのはファル子となった
「うぅ~まず優くん出てくれるかな…」
「ファルコンさんなら大丈夫です!自信をもってください!」
「なんでフラッシュさん一歩下がってるの!?ファル子と並んでよ!」
「…バレましたか」
そう言って渋々ファル子の隣に並ぶフラッシュ
そしてファル子が意を決したような表情で言う
「…押すよ」
「…はい」
そしてファル子がインターホンに手を伸ばし、呼び出しボタンを押した…
ピンポーン!
と呼び出し音が静かな廊下に響く。
そしてドアの向こうからくぐもった声が聞こえてきた。
「はいよー」
ガチャリ
と扉が開く。
「ありゃ?配達じゃない?…んー
そう言って出てきたのは2人にとっては見覚えの無い、ダル着でメガネをかけているウマ娘だった
「「は?」」
2人は状況を把握できずに固まる。
そんなとき部屋の奥の方から声が聞こえた
「おーい、どうした
その声は紛れもなく2人にとって聞き馴染みのある優の声だった。
それを聞いた瞬間、2人の周囲の気温が一気に氷点下まで下がる。
そして、ファル子とフラッシュの凍り付いた表情を見た『トラン』と呼ばれたウマ娘が冷や汗を垂らしながら言う。
「…優ちゃん、ちょっとヤバいかも…」
「え、なにが??」
能天気な優の声が辺りに響いた…
前回書いたことをもう一度書いておこう…
このレースは超長距離戦、まだまだ誰が1着を取るのかは分からない。ファル子が逃げるかもしれないし、フラッシュが差すかもしれない。…あるいは
ただ言えるのは一ヶ月間寂しかった優の心に取り入るのは難しい事ではないということ、トレーナーのいないウマ娘は夏合宿に参加できないということ。
…例によってこの先…どうなるのかはまだ誰にもわからない…
お気づきかもしれませんが、史実やアプリ、アニメなどとは出走するレースの内容や時期が異なります。ご了承ください。
誤字脱字ありましたらご報告ください。
勝敗予想(4話時点希望可)
-
ファルコンさん
-
フラッシュさん
-
その他