ウマドルが油断してたら大好きな幼馴染を同室の閃光に奪われかける話 作:shch
結構間が空いてしまいました。すいません。
いつも沢山の感想や評価ありがとうございます。
時間は遡り一ヶ月前…
「ああ…今日からファル子と一ヶ月も会えないのか…俺生きていけるかな…」
いつもの河川敷、優がポツリと呟いた。
そんな優の背後から、別の声が聞こえる。
「
そう言ったのは優の背中にしがみつき顔をうずめているファル子だった。顔をうずめているからか声がくぐもっている。
「…なんて言った?…ていうかいつまで背中にしがみついているんだよファル子?もう10分は経ってるんだけど…」
優がそう言うとファル子が優の背中からから顔を上げて答える。
「ぷはぁ…だって一ヶ月も会えないんだよ?一ヶ月分の優くん成分を摂取しないと!」
「だからって…その摂取方法はもう少し何とかならなかった?普通に人の目もあるし、恥ずかしいんだけど」
優がそう言うとファル子は少し怒ったように言う。
「コレが一番効率が良いの!ほんとは正面から抱き着きたいのに優くんもっと嫌がるでしょ?ファル子は我慢してるんだよ?」
「まぁほどほどにな、こんなとこ見られたらまたフラッシュに怒られるぞ」
やれやれと言った様子で優が言った。
しかしファル子は背中から離れる様子は無い。
「そんなこと言って優くんもファル子と離れるの寂しいでしょ?ファル子成分を摂っておかないでいいの?ファル子のこと正面からぎゅーってしてもいいんだよ?」
「確かに寂しいけど、俺はファル子みたいに引っ付かなくてもこうやってファル子と話しているだけでファル子成分は充電できるからいいの」
「むう…」
ファル子は優の背中にしがみついたまま頬を膨らます。
そんなファル子に構わず、優は再び口を開く。
「というか合宿所へ出発するのは今日の夕方だったよな?」
「うん、そうだよ」
「準備、ちゃんとしてる?一ヶ月間合宿所で過ごす準備」
「……」
(これやってないな…)
優の質問にファル子は何も言わず、少しの静寂が辺りに広がった。
しかし、その静寂を破って、ある声が聞こえてくる
「できてないですよねファルコンさん、部屋にまだ着替えや何やらが散乱してましたよ?」
そう言ったのはファル子の寮の相部屋の相手、フラッシュことエイシンフラッシュだった。
「うっ…フラッシュさん…」
突然のフラッシュの登場にファル子はうろたえる。
そんなファル子に優が言う。
「ほらやっぱり準備できてない、もう時間ないだろ?今から戻って準備して来い」
そんな優の言葉に同調するようにフラッシュも言う。
「そうですよファルコンさん、早くやらないと間に合わなくなりますよ?」
「うう…」
2人の言葉を聞いたファル子は呻きながら名残惜しそうにようやく優の背中から離れる。
「もうちょっと優くんと…」
ここでファル子が準備しに帰ってしまうと、次に優と会えるのは一ヶ月後、そう思うとファル子は中々準備しに行く気が起こらなかった。
しかしそんないつになく寂しそうな顔のファル子に優は向き直り、声を掛けた。
「ファル子、お互い寂しいけど、ファル子の夢のためだろ?ファン一号としてずっと応援してるから頑張って来い、あとそんな寂しそうな顔するな、ファル子が笑ってないと俺も笑えないだろ?」
優はそう言ってポンとファル子の頭に手を乗せて丁寧に動かした。
優に撫でられるとファル子の表情が和らぎ、自然とファル子の口角が上がる。
「へへへ…うん、ファル子頑張るね」
そんなファル子を見て優は言う
「そうそうやっぱりファル子の笑顔が一番可愛いな」
優はそう言って満足したようにファル子を撫でるのをやめた。
「あ…」
ファル子は一瞬名残惜しそうな表情をするも、すぐに元の表情にもどる。
そして言った。
「優くん…ファル子行ってくるね!」
「よし!行ってこい!」
その言葉に優はしっかりと答えた。
・
・
・
急いで寮へ戻るファル子の背中を優とフラッシュの2人で見つめる。
そんな中、優が声を漏らした。
「…や、やっぱり…さみしい…ファル子~」
まあ無理もない、2人はずっと一緒にいたのだ。
一ヶ月も離れることなんてこれまでなかった。
そんな優にフラッシュが声を掛ける
「優さん」
そんな声に優は振り返り答える。
「…グスッ…どうしたフラッシュ?…ん?なんか怒ってる?耳がぎゅってなってるよ?ぎゅって」
優の言う通り、フラッシュは耳を絞り、頬っぺたを膨らませてまるで「私不機嫌です」と顔に書いているようだった。
そんなフラッシュがムスッとしながら口を開く
「優さんは私とは会えなくなっても寂しくないんですね!あれだけ一緒にいたのに…」
「いやいやフラッシュ?そんなことは…」
優の否定の言葉に被せるようにフラッシュはまた口を開く
「だってファルコンさんにはあんなに寂しい寂しい言うのに私には全然言ってくれないじゃないですか、それに私が来る前だってあんなにベタベタして…もういいですっ」
そう言ってプイとそっぽを向いてしまったフラッシュ。
そんなフラッシュに優は申し訳なさそうに声をかける。
「…なぁ、フラッシュ」
「…なんですか」
「俺、フラッシュと会えなくなるのほんとに寂しいんだ、ファル子にはこういうの簡単に言えるんだけど、なんかフラッシュに言うのは恥ずかしくて言えてなかった」
「ほんとですか?」
「ああ、ほんとだ。多分フラッシュが思ってる3倍くらい俺は寂しい…下手したらファル子と会えないのよりも寂しいかも…最近はドイツ行ったりとかほんとにずっと一緒にいたしな」
優がそう言うとむくれていたフラッシュが少し笑みをこぼしながら口を開いた。
「ふふ…ファルコンさん以上ですか?でもちょっと信じられないですよ…私の機嫌を取るためにいってるだけなんじゃないですか?」
そう言うフラッシュに優はニヤリと笑って言う。
「でも実際、機嫌は取れたみたいでよかったよ、ほらフラッシュの尻尾、めっちゃ揺れてるの隠せてないぞ?」
「もう優さん!ちょっとそこを見るのはズルです!」
フラッシュはそう言って顔を赤らめながら尻尾を抑える。
「恥ずかしがってるフラッシュかわいすぎる(心中声出)」
「もうっ!優さん!?」
優の言葉にフラッシュはさらに顔を赤らめ、怒ったように声を上げる。ちなみに尻尾は荒ぶったままだ。
「優さんはまたそうやって私をからかって!もう許しません!………あっ」
怒ったフラッシュが優に詰め寄ろうとしたそのとき、足元に段差にフラッシュの脚が引っ掛かりフラッシュの体が傾く。
倒れそうになってしまうフラッシュだったが、そんなフラッシュの正面に優が回り込む。
「おっ…とっと」
ポスッっとフラッシュは優の胸元に顔をうずめるような形で受け止められた。
「ふぅ…危なかったなフラッシュ……フラッシュ?」
優は自身の胸元にいるフラッシュに声を掛けるも反応がない。
そんなフラッシュに優は再び声を掛けた。
「どうしたフラッシュ?大丈夫か?」
すると、突然胸元のフラッシュの両腕がバッと広がった。
さらにガシッと優の体を締め付ける
「うぇ?」
急にフラッシュに自分の体を抱きしめられた…というよりは巻き付かれた優は戸惑いの声を上げる。
その時だった。
「…フ、フラッシュ?……どうしtイダダダ!!痛い!痛いよ!?」
フラッシュが優の体を力を込めてギュウウウと抱き締め始めたのだ。
「……」
無言で抱きしめる力を強めるフラッシュ
「フラッシュ!?痛いって!締め付けんな!自分の力を自覚しろ!!」
普段叫ばない優の悲痛な叫び声が河川敷に響いた。
顔を赤らめたままのフラッシュは痛みに悶えている優を抱きしめながら、小さく呟いた。
「優さんのバカ…ほんとは私だって、すごくすごく寂しいんですからね…」
・・・・・・・・・・・・・・
ファル子とフラッシュが夏合宿に出発してから3日後…
優は自室でゆったりとした時間を過ごしていた。
(うーん、やっぱり物足りないな…河川敷に行ってもファル子はライブしてないし、図書館に行ってもフラッシュとドイツ語の勉強ができるわけじゃないし)
今、優は夏休み、いつもなら授業の予習や復習、課題などに追われている優だったが今はそんなものは無い。
(夏休みの宿題もすることが無さ過ぎてもうほとんど終わらせたし…夏休みって何したらいいんだ?)
例年なら鬱陶しいくらいにファル子が構ってくるので退屈では無かった。しかしファル子がいない今年の夏、優は時間を持て余していた。
そんな優はおもむろにスマホを取り出し、誰かに電話をかけ始めた。
prrr,prrr
優がスマホを耳に当て、数回の呼び出し音が鳴る。
しばらくすると誰かが電話に出たようだ。
「…あっ、もしもし父さん?今大丈夫?」
電話の相手はどうやら優の父親のようだった。
「大丈夫だけど忙しいから手短にって?…分かった、今俺夏休みなんだけどなんか時間余っちゃって、なんか将来に向けて勉強しておくこととかあったりする?今のうちにやっておきたいんだけど…」
「…うん…『高校一年生の夏休みなんか遊んでなんぼだろ!勉強なんてしなくていい』だって??でも父さん俺は…忙しいから切る!?いやちょっと待って…………切れた」
どうやらスマホの向こうの優の父は相当多忙なようですぐに電話を切られてしまったようだ。
(「遊んでなんぼ」…か…)
そう言われても肝心の遊び相手がいない。
しかしその時、優にある案が思いつく。
(あ、そう言えばこの前見た映画の続編…今劇場でやってるんだっけか?暇だし見に行くか…)
優は一人暮らしを始めてからたまにネットで映画鑑賞をするようになった。
ちょうどこの前に見たなかなか面白い設定の映画の続編が劇場で見れるということで、初の1人映画に向けて優はクローゼットから服を取り出して袖を通すのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
目の前を流れる映画のエンドロールを眺めながら、優は映画の余韻に浸る。
(前作も良かったが、今作も良かったな…まさか今作でずっと敵対していた組織のエージェントが前作の主人公だったとは…今作は前作の逆視点だったってことだな…気が付いた時は鳥肌が立ったわ)
そんなことを考えながら、エンドロールを見つめる。ちらほらと帰り始める人たちも周りにいるが、優はエンドロールを最後までちゃんと見るタイプの人間だった。
(エンドロールを最後まで見ない人って結構損してるよな…エンドロールの後に何か映像がある映画もあるのに)
しかし、今回の映画は優の思いとは異なり、エンドロール後は特に何もなくスクリーンが暗転した。
上映が終わったことで暗かった映画館の中の照明がつき始め、周囲がざわつきだす。
今、席を立ってしまうと出口が混むため、優はまだ座席に座ったまま先程まで見ていた映画を振り返っていた。
(この映画の斬新なところは映像が全て主人公の視界そのものの映像なんだよな…だから没入感がすごいし、主人公の顔とかはずっと見えないんだけど、主人公の目線の動きとかで主人公の感情が読み取れる…それに前作で顔が見えなかったからこそ前作の主人公が今作では敵だったって最後の方までわからなかった……うーん…この映画、あと2時間は語れる…)
心の中で映画を振り返るのに夢中な優。
その時、優の隣の座席からある女性の声が聞こえた。
「いやあ良かったね~お隣さんはどうだった?」
隣からそんな声を掛けられた優。
映画についての感想でいっぱいいっぱいの優は声をかけてきた人の顔すらロクに確認できずに思わず口が開いてしまう。
「いや凄い良かったですよ、前作とは視点が逆だったので…やっぱりどっちの組織にもそれぞれの正義があって悪人がいないってのがすごい悲しいというか…………あれ?」
どうだった?と聞かれて反射的に答えてしまった優は語っている途中でただ映画館で座席が隣になっただけの人に自分の感想を語ってしまっていたということに気が付く。
優は咄嗟に頭を下げて謝る
「す、すいません、俺なんか咄嗟に語っちゃって…」
優はそう言って顔を上げると、自分が語りかけていたお隣の座席の人の顔が目に入る。
おかっぱのような鹿毛のショートカットに赤いメガネ、ウマ娘を象徴する耳も頭部に着いている。
その顔に優は見覚えがあった。
「って…え?…たしか…トランセンド…さん?」
優が恐る恐るそう言うとそのウマ娘は答える。
「やっと気が付いた?奇遇だね~ファル子ちゃんの幼馴染くん」
トランセンドはそう言って軽く優にウインクした。
優は以前、ファル子のレースの応援に行った際、情報収集に来ていたトランセンドと一回会っている。
とはいっても、2人が通っている喫茶店が同じで、それが共通の話題となり少しだけ会話をした程度。
つまりファル子やフラッシュとは違い、優はまだトランセンドというウマ娘に慣れていない。
「…久しぶりすね、トランセンドさん」
さっきの流暢な語り口調はどこへやら、堅苦しい口調で優は話す。
「…俺帰りますね」
出口の混雑もなくなり、ここで待つ理由もなくなった優はそのまま席を立ち、そそくさと帰ろうとしていた。
「まーまー、ちょい待ちなって優ちゃん」
そんな優をトランが軽い口調で止める
「(優ちゃん?)…何か用がありましたか?」
優は初めて聞く自身の呼び方に疑問を感じながらも自分を呼び止めたトランに対し答えた。
するとトランが言う。
「いや~用って言うか…さっきの様子だと語り足りてないみたいじゃん?だからこの後一緒にどこかカフェでも入って語り合いませんかって話なんだけど」
「…………」
優はそんなトランの提案に少し悩む素振りを見せる。
女性が苦手と言っても、さっきの映画について語り合えるのはかなり魅力的な提案だ。
悩んでいる優にトランは続ける。
「ウチもさっきの映画については思うところいっぱいあるんだよね~今のトランちゃん相手なら3時間は語り合えるよん」
(3時間も!?ファル子とかと一緒に映画見てもそんな語り合えることは未だかつてなかったぞ?)
「…行きます」
その今の優にってはあまりにも魅力的な提案に優は了承の返事をした。
「そうこなっくちゃ、ウチこの辺でいいカフェ知ってるんだよね~じゃあ早速しゅっぱーつ」
トランはそう言いながら席を立った。
そして優と共に歩き出す。
・・・・・・・・・・・・・・
「…んで、最後のシーンでずっと敵だった奴が前作の主人公だったって確定するんだけど、そこまでに何個かそれを示唆するような伏線が何個かあったんだよね~優ちゃんは見つけられた?」
「んー…もしかしてあれか?最初の方の敵の手元が映るシーン、あの時にチラッと映った腕時計、あれは確か前作の主人公と同じものだった気がする、俺が薄々そうじゃないかなって感じ始めたのはその辺なんだけど…合ってる?」
「おお~やるね~多分それが最初の伏線だった。良い視点もってんじゃん、私は一周目はそこに気づけなかったんだよね」
「え?もしかしてこの映画2周目だった?道理で…一周目にしては考察がポンポン出てくると思ってたんだ」
「逆に優ちゃんこそ一回しか見てないのによくそこまで語れるね~」
「前作が好きすぎて何回も見てたからなー途中まで前作とのつながりが見つからなくてちょっと難しかったけど」
2人はトランおすすめのカフェにてカフェラテとコーヒーを嗜みながら、先ほどの映画について語り合っていた。
優の口調もすっかり砕け、かれこれ2時間は2人で話し込んでいる。
しかしそこで映画についての話題がいったん落ち着いた。
その時トランが優に言う。
「いや~話始めると止まんないね~まさかここまで語れるとは…」
そんなトランの言葉に優が返す。
「俺も…最近映画見始めたんだけど、詳しい人と話すのは初めてだから嬉しいなあ」
優はそう言って目の前に置かれているカップを持ち上げ中身を啜る
美味しそうにカフェラテを飲む優を見ながらトランは言う。
「おいしいっしょ?ここのカフェラテ」
「うん、俺好みの甘いカフェラテですごく美味しい、コレはリピありだな」
「そりゃよかった」
優はカップをテーブルに置き、口を開く
「すっかり話し込んじゃったな…もう夕方だ」
そう言った優にトランが答える
「だね……にしても良いの?夏合宿で頑張る
「ん…彼女?」
トランの突然の発言に優は思わず疑問の声を上げた。
そんな優に対してトランはキョトンとした表情で言う。
「え、うん。エイシンフラッシュさん、優ちゃんの彼女なんでしょ?」
そんなトランの爆弾発言に優はすぐさま答えた。
「え、いや違うよ?俺とフラッシュが付き合ってるわけないでしょ?どこの情報だ?」
「ほぉ…トレセン学園のウチら情報通の中じゃそこそこ有名な情報なんだけど…ほんとに付き合ってない感じ?」
「うん、ほんとに付き合ってない」
「じゃあこの情報はガセネタだったてわけか…まあ元々噂話程度だったからウチも半分くらいしか信じてなかったんだけどね~」
「てかその話ってもしかして結構広まってる感じなのか?」
優は不安そうな表情でトランにそう聞く。
普通にそんなデマが学園に広まってフラッシュに迷惑をかけてしまうのもあまり良くないし、何よりファル子の耳にその情報が入るのは、なんとなく面倒なことになりそうだと考えたからだ。
「多分一般の生徒たちにはそこまで広まってないんじゃないかな、あくまでウチみたいに情報集めが好きな娘たちの中の話、まあいつ一般生に広まるかはわかんないんだけどね…」
「そんな界隈が…」
(なんだよその情報集めが好きな娘たちって…)
優は心の中で悪態をつく。
トランは続ける。
「もし優ちゃんが望むならウチが正しい情報を広め直せるんだけどねー」
そんなトランの魅力的な言葉に優はすぐに答える。
「ほんとか?是非お願いしたいんだけど」
デマ情報がこれ以上広まることがなさそうだと感じ、安堵する優。
しかしそんな優にトランがニヤリと笑いながら言う。
「やっても良いんだけど…ふふふ…このトランちゃんに頼み事するなら何か対価が無いとねぇ」
「なんだそれ…いったい俺に何を要求する気だ?」
優が少し身構えてそう聞くとトランは堂々と宣言する。
「ズバリ!優ちゃんには今後も今日みたいに一緒に映画見て語り合う機会を作ること!」
「これしてくれるなら正しい情報を広めてあげてもいいよん」
「うん全然okです」(むしろ嬉しい)
こうして優は新たに映画友達を一人得ることになった。
・・・・・・・・・・・・・・
映画を見に行った日から一回だけ劇場に2人で足を運んだ。
しかし優は学生の身である。
そこまで多く映画館に通う金は無いのだ。
ということでネットでトランにおすすめの映画を聞いて電話で感想を語り合う。
そんな日々を過ごしていた。
そしておよそ一週間が過ぎた。
その日優が見た映画の電話での感想会の最後にトランが優にある提案をした
「優ちゃん、明日TSUT〇YAにおもしろそうなB級映画発掘しに行かないかい?」
「なんか楽しそう」
「決まりだね、じゃあ明日のお昼にトレセン学園前に集合でどう?」
「いいよん」
「…それウチの真似?」
「…そうだよん」
「ちょっと恥ずいからやめてほしいんだが」
「いいじゃんかわいくて、俺は好きなんだけどなあ」
「かわっ……優ちゃんってたまにぶっこんでくるよね」
「そうか?俺はただ思ってることを言ってるだけなんだけどな」
「そういうとこだよ優ちゃん…まあとりあえず明日の12時にトレセン学園前でよろ」
「おけです」
そうして通話は終わった。
「まあ優ちゃんのそういうとこが刺激的で嫌いじゃないんだけどね~」
・
・
・
「いや~豊作だったね~」
「B級映画ってあんなにいっぱいあるんだな…これまであのコーナー見たこと無かったから知らなかった」
トランと優が二人で並んで歩く。
優の右手にはT〇TAYAのレンタルバック、どうやら映画を借りた後の帰り道のようだ。
優はレンタルバックを見ながら言う。
「まあでも借りたのは2作だけか」
「どっちもカロリー高そうだけどね~」
「だな…だってタイトルが『爆裂カンフー宇宙人~地球侵略の拳~』と『エイリアンVS焼きそばパン~地球最後の昼休み~』だぞ?ヤバい匂いしかしないぞ、まずカンフー宇宙人ってなんだよ、カンフーは中国の武術なのになんで宇宙人が習得してんだよ」
「地球最後の昼休みも意味わかんないしね~いい感じにB級の匂いがプンプンしてんじゃん、でも2つとも海外の評判は謎にいいのが気になるところ…一体中身はどうなってるのやら…」
2人はそのような会話を繰り広げながら歩く。
しばらく歩くとトレセン学園の寮が見えてきた。
そこで優が口を開く。
「じゃあ2本映画あるから今日は一本ずつ持って帰って見るか、それから明日辺りに交換して、2人とも両方見た後に感想会やろうぜ」
「んー…それでも別にいいんだけど、ちょっと面倒じゃん?」
「面倒って言ったってどうするんだよ?これDVDだから二人同時には見れないぞ?」
「あるよん、2人同時に見る方法が」
「DVDだぞ?スマホとかでは見れないんだぞ?一体どうやるんだ?」
優がそう聞くとトランは不適に笑いながら言う。
「ふっふっふ…優ちゃん、君の部屋にはDVDプレイヤーはあるかい?」
「一応あるけど…トラン…お前まさか…!」
「…そのまさかだよ優ちゃん!」
「行こう!優ちゃんの家へ!」
・・・・・・・・・・・・・・
「優ちゃんの家、おじゃま~!」
トランはそういいながら優の家の玄関に足を踏み入れた。
「はい、いらっしゃい」
(てかなんか勢いで家上げちゃったけど、女の子が俺の部屋入るの何気に初めてだな…)
優の部屋に入ったトランはぐるりと部屋全体を眺める。
「おぉ…結構キレイにしるねぇ…ってPCあるじゃん!しかも贅沢にモニターも2枚!」
ガジェットやPCの周辺機器に明るいトランの目に真っ先に止まったのは、部屋の端のデスク上にある2枚のモニターとそれにつながれたデスクトップPCだった。
「優ちゃんってゲームとかやってたっけ?」
「いや、あんまりやらないな…たまにS〇ichとかでRPGのゲームするくらい、ドラ〇エとか」
トランは吸い込まれるようにPCに近づき、目を細める
「これ結構いいスペックのPCじゃん!ゲームしないなら何に使ってんの?」
「ん-…課題したりとか、動画見たりとか…あとネットサーフィンとか?」
優がそう言うとトランは優にグイッと近づき、言う
「もったいない!もったいなさ過ぎるよ優ちゃん…!それ別に普通のノートPCでもできんじゃん!このスペックなら大抵のFPSゲームとか動画編集とかやり放題だよ!?」
「え、ああ、そうなんだ…それ父さんが一人暮らし始める時に買ってくれたやつだから、あんま詳しくないんだ」
「仕方ない…また今度、ウチが色々教えて、優ちゃんをこのPCにふさわしいPCオタクにしてあげるよ……うまくいけば、良い動画編集のアシがゲットできるかもだしね」
「なんか言ったか?」
「なんでもないよ~ささっそんなことより映画でも見ようぜ、優ちゃん」
「…だな!」
トランの小さなつぶやきが少し気になりながらも、それ以上に借りてきた映画の内容が気になる優は元気よく返事をした。
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「…………グスッ…」
「あれもしかして、優ちゃん泣いてる?」
2人が借りてきた映画を2本とも見終えた時、優は涙を抑えるので必死だった。
「いや泣くだろこんなの!カンフー宇宙人ってなんだよとか最初言ってたけど、まさかの地球侵略の先行調査で来た宇宙人とカンフー少年の友情モノだったんだぞ?カンフーを通じて人の心を理解していく宇宙人の描写もめっちゃよかったし、カンフーを習得した宇宙人が侵略から地球を守るって展開もめっちゃアツかったし」
「確かに良い映画ではあったね~海外の評判が良かったのも納得かな」
そんな感じで2人はお互いの映画の感想を語り合ったのであった。
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ひとしきり映画の話をしたその後、優が口を開いた。
「にしてもあれだな、初めてプロジェクターで映画見たけど、やっぱ壁一面で映画見れるのはダイナミックでいいな」
「でしょでしょ、優ちゃんがそう言ってくれるならわざわざ持って来た甲斐がありましたな」
トランの言う通り、トランは優の家に映画を見に行くと決まった時、わざわざ寮まで一回戻って自分の持っているプロジェクターを優の家に持って来てくれていたのだ。
「これで映画見ちゃうともう普通の画面では映画見れないよ~?」
トランがニヤニヤしながら優に言う。
「確かに…」
2人がそうやって会話していると、ふと優の視界に自身の部屋の壁に立てかけてある時計が目に入った。
映画を2本も見たことでかなり時間が経っていることに気が付く
「トラン、そろそろ寮に戻らないと門限すぎるんじゃないか?」
「ありゃ、もうそんな時間か~、じゃあ今日はもうお暇しようかな」
「じゃあ寮まで送る」
「おっ、気が利くじゃん?」
そう言ってトランと優は玄関から外に出た。
しかし、その時トランが持ってきたプロジェクターが部屋に置いてあるままだということに気が付いた。
「ん?トラン、プロジェクター忘れてるぞ?」
優がそう言うと、トランは口を開く。
「別に忘れてるわけじゃないだが、どーせまた来るんだからわざわざ重いプロジェクターを持って帰るの怠いっしょ?まー優ちゃん使いたいなら勝手に使っててもいいよん」
「お、おお、そりゃありがたいな(…ん?また来るの?)」
そう話しながら、優はトランを寮まで送り届けるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・
翌日
ピンポーン…
優が自室でまったりしていると玄関から呼び出し音が響いた。
(なんか配達頼んでたっけ?)
優はそう考えながら、玄関まで向かう。
そしてガチャリと扉を開いた。
「よーっす優ちゃん」
そこには昨日一緒に映画を見たトランセンドの姿があった
「トラン?」
「どーもトランちゃんでーす。優ちゃんどーせ暇っしょ?今日は君に動画編集の楽しさを教えるの巻~」
トランはそう言ってニシシと笑いながら忍者のようなポーズを取った。
(なんか昨日また来るとは言ってたけどまさか今日とは…)
「まあどうせ暇だからいいか…どぞ」
優はそう言ってトランを部屋に招き入れた。
・
・
・
その日から、トランはそこそこの頻度で優の部屋に訪れるようになった。
彼女いわく
「同室の子も合宿行ってるからトレセンにいても暇なんだよね~」
らしい。
優は彼女としばらく過ごしていくつかわかったことがあった。
まず彼女の両親は映画作家だったこと、だから映画についてあんなに詳しかったのだ。
さらに重度のガジェットオタクでもある。そして毎回優の部屋になにかしらおいて帰るものだからいつの間にか優の部屋にはトランの私物がどんどん増えて言っていた。
そして最後に、トランは最初の印象とは違い、結構アクティブだ。優とは違い人脈は広いし、唐突に「○○に行こう!」と優を外出に誘うことがよくあった。
彼女にはお気に入りのスポットがたくさんあり何回か優も連れて行ってもらっていた。
そんなこんなで優の新しい日常はどんどん過ぎていく…
・
・
・
そんなある日..
「おいおい…またさ〇ま社長絶好調だよ?確率どうなってんだ?しかもやたら長いんだよなこれ…」
「やっぱつよいね~流石さく〇鉄人、ていうかこれ次の貧乏神また優ちゃんに憑くんじゃない?」
「また俺かよ~」
この前、商店街の福引で当てた2人用の赤色のソファ。
そこに2人は仲良く並んで座ってゲームに勤しんでいた。
某桃太郎の電鉄的なゲームをしているのだが、借金がもはやどうにもならないほど増えて負けが濃厚となってきた優がふと関係ない話を切り出す。
「…あ、そう言えば。昨日久しぶりにフラッシュと電話したんだけどさ」
「ほうほう」
「なんかファル子が海を割ってたらしいよ…蹴りで」
「ええ…そりゃまるで鬼みたいな怪力だね」
「いやあ、俺は今後絶対にファル子を怒らせないことを神に誓ったね」
「命にかかわりそうだもんね~」
そんな風に適当に会話しながらも、2人の目線はゲーム画面に向けられたまま。
そんな中、独り言のように優が口を開く。
「でも久しぶりにあの2人の話聞いてたら、なんか2人が恋しくなったなあ…早く帰って来ないかな~」
その優の声にトランの耳がピクリと反応し、ゲームの手が止まる。
「…ふーん、優ちゃんはこのトランちゃんが隣にいてあげてるのにそんなこと言っちゃうんだ。他の女の話しちゃうんだ」
「わーうれしいなーこんなかわいいトランちゃんとゲームできて俺はしあわせもんだートランがいてくれるだけで俺はしあわせだーわーい」
「あ、また優ちゃん棒読みでウチのメンヘラムーブ躱した。まあ躱し方としては52点ってとこかな~」
「よし、赤点は回避だな」
「大学なら落単だよ優ちゃん…」
2人はそんなしょうもない会話を繰り広げる。
しかし、そこでトランの表情が少し真面目な表情に変わった。
そんなトランが口を開く。
「…とまあ冗談はここまでにして…ちょっとガチな質問なんだけど、優ちゃんはフラッシュさんとファル子さん、正直どっちが好きなの?」
「え?…んー、まあ普通にどっちも好きだけど」
少し困惑しながらも優はそう答える。
しかし、そんな優にトランは言う。
「違う違う…友人としてじゃなくて一人の女の子としての話だよん」
「うーん、女の子として…か、正直あんまりそういう目では見てないからわかんないな」
優がそう答える。
(でも、優ちゃんはあの2人の話するときの表情が明らかに普段とは違うんだよね~なんか特別な感情を持ってるのは確かだと思うんだけど…)
優の答えにトランは思考しながら再び優に尋ねる。
「へえ、そうなんだ…じゃあさ、優ちゃんにとって恋愛的に好きってどんな感じなの?」
「おい、なんで俺がそんな恥ずかしいことを答えなきゃいけないんだ?」
「まあまあ~ウチと優ちゃんの仲じゃん、この機会に教えてよ」
トランがそうやって言うと、優は渋々と言った様子で口を開く
「…その人と話したり、その人の事を考えるだけでめちゃめちゃに動悸が激しくなってしまったり…とか?」
「………」
「おいなんで何も言わないんだ?」
「いや…思ったより回答がなんかガチで…」
「貴方が教えろって言ったんですよね?」
優が怒ったようにそう言う。
さらに優は続けて言う
「さっきから俺ばっかりだけど、そう言うトランはどんな感じなんだよ?どんな相手が恋愛的に好きなんだ?」
「ウチ?まあウチは…趣味が合って、一緒にいて退屈しない人が良いな~」
「………丁度、優ちゃんみたいに」
「なっ!?」
トランの突然の発言に優は驚きの声を上げる。
「はい優ちゃん隙あり~」
するとトランはそう言って驚く優の胸元にバッと耳を当てた。
「お~結構ドキドキ鳴ってるね〜もしかして大本命はあの2人じゃなくて大穴のトランちゃんだったりする?」
そう言って優の胸元から離れ、ニヤニヤするトランセンド。
そんなトランを見て、優は思う。
(女の子に急にあんなこと言われたら誰でもちょっとくらい動悸が速くなるだろ!?)
(大体トランは最近俺のことを舐めている節がある気がする!…よく考えたら女の子が一人暮らしの男子高校生の部屋に入り浸ることがあるか?いや無い!俺のことを男として舐めてるからそういうことができるんだ!)
(…同じ年の女の子に舐められっぱなしでいいのか?ダメに決まってるだろ?ここで俺がちょっと反撃してやる)
優の思考時間約0.5秒
からかってくるトランに反撃を決意した優。
トランと優は狭い2人用のソファに対面するように座っている。
そんなトランの肩を優は両手でガシッと掴む。
「え、ゆ、優ちゃん?」
急な優の反撃にトランは驚きの表情を浮かべると共にギュンと顔が赤らめ、そんなトランを優は真剣な表情を作って見つめる。
そして「大本命はトランちゃんだったりする?」というトランの言葉に対してのアンサーを口にした。
「…トラン…もしそうだって言ったら…どうする?」
優のその言葉にトランの目が一瞬だけ見開き、互いの間に沈黙が流れる。
(言ってやった!…あとは速くネタバラシを…)
優が「…なんてな!冗談冗談」と言おうとする…
その直前…
フラッとトランが急に後方に体を倒し、ドサリとソファに背中を預けた
「え」
トランの両肩をがっしり掴んでいた優も急な出来事に驚きながら、優がトランに多いかぶさるような体制でソファに倒れてしまう。
傍からみると優がトランの肩を掴んでそのまま押し倒したように見えなくもない状態だ。
さらにその拍子に2人の顔同士がお互いの呼吸が感じれるほどに接近してしまう。
(なんだこの状況は…ていうかこうして近くでトランの顔を見ると…………)
至近距離で目がバッチリと合っている。この状況で優は思わずトランの顔に見入る。
(トランから目が離せない…てかなんか顔近すぎないか?少女漫画ならキスとかしちゃってる距離だぞ?)
トランも優から目を離さないので2人は見つめ合うような形になっている。
そんな中『キス』という単語がふと頭に浮かんでしまった優は思わずトランの唇に目線が奪われてしまう。
そして、それを見逃すトランでは無かった。
トランは少しニヤリと口角を上げる。
(…ん?今ちょっと笑った?)
優がそんなことを思ったその時…
トランがおもむろに掛けていた赤いメガネを外した。
そして、優の頬に両手を伸ばし
優の頬を両手でやさしく包む
その潤んだ瞳で優を見つめる
「と、とらん?」
少し困惑する優の顔をグイと更に自分の方へと近づける。
少しでも優が顔を下げれば、唇同士が重なるような至近距離。
そして…
トランはゆっくりと目を瞑って
口を窄め、言う
「いいよん…優ちゃんなら…」
優ちゃん「もちろん合鍵は渡してますよ?」
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