ゲート 超大型護衛艦やまと キヴォトスの海にて、斯く戦えり 作:大艦巨砲主義者
今回の作品は佐藤大輔先生の架空戦記、征途から数十年たった世界線の自衛隊がメインで活躍します。
あ、敵はやっぱりカイザーです。
カイザー死すべし慈悲はない。
2025年 太平洋 小笠原諸島沖 客船なみかぜ
船員「船長、航海異常ありません」
船長「おう、さっき急接近してきた漁船は?」
船員「先ほど転舵して遠ざかっていきました」
船長「了解、全く……何で漁船はああも荒い操船をするのか……」
この日のなみかぜの周りには数多くの漁船が行きかっていた。その中にはなみかぜに急接近してくる船もいた。船長はそれを警戒していたのだ。
実際、海上自衛隊でも、護衛艦あたごに漁船が衝突して漁船が沈没する事故が発生している。その際、漁船はが危険な操船をしていたことで、あたごの乗員は無罪になったが、危険な航行を行う漁船がまだ多いのも事実であった。
船長「まったく……奴らには船乗りとしての誇りはないのか……」
この日は、特に自分達以外の貨物船や客船も多く行きかっていたのだ。それで船長はより神経をとがらせていた。
船員「そうですね……ん?」
船長「どうした?」
船員「船長……あれ……」
船員が指さす方向を見ると、数㎞先の海に巨大な魔法陣の様なものが浮かびあがっていた。
突如、魔法陣は明るく光り輝き、巨大な四角形の形を生成し始める。そして、光は収まり、その光の中にあるものが現れた。
船長「門……?」
現れたのは、門だった。それも、大型の原子力航空母艦すら楽に収まってしまいそうなほどの巨大な物だ。
船員「な、なんだあれ……」
船橋の乗員が驚愕しているその瞬間、門が開き始める。
ゴゴゴゴゴ……
門は波しぶきを立てながら開く。乗員はそれを固唾をのんで見守る。それは、周りの船も同じだろう。
門が完全に開き、門の中の漆黒の空間が露わになる。
船長「……?」
何も現れない。そう、少し拍子抜けした瞬間。
ピカッ
船長・船員「!」
ズガアアアン!!
門の中に一瞬、光が現れたかと思うと、近くにいた漁船が吹き飛んだのだ。
船員「あ、ああ……」
粉々になった漁船の破片は、油と元々は人だと思われる何かをまき散らしながらバシャバシャと海面に落下してくる。
先ほどの光は砲撃?ならなぜ民間船の我々が攻撃を?
そんな考えが頭を巡る中、自分たちを攻撃したものの正体が分かった。
船長「軍艦……?」
中から出てきたのは、十数隻の軍艦だった。
その瞬間、なみかぜの近くから水柱が上がる。
バシャァァァン!!
船長「い、いかん!」
ハッと現実に戻った船長は、乗員に指示を出す。
船長「早く!早く救難信号を!」
船員「り、了解!」
船員に指示を出した時、外をふと、見てしまう。
船長「なっ……」
その目に映った光景は、水中に線を引きながら、高速でなみかぜに接近してくる二つの魚雷だった。
カイザーPMC 第一艦隊旗艦アダマス 艦橋
カイザーの誇る巡洋艦アダマス*1の艦橋の艦橋では、数多くのロボット、もといオートマタが行きかっていた。その中で、座席にふんぞり返るようにして座るオートマタがいた。
オートマタ乗員「艦長、捕虜を門の先への移送が終わりました」
オートマタ艦長「ふむ、分かった」
外を見ると、周りは、戦闘によって沈没した船の残骸がぷかぷかと浮かび、碧い海は漏れ出た油によって真っ黒に染まっている。
そして、真っ黒に染まる海のところどころでは人の体の一部だと思われるものが浮いており、海面に動くものは誰一人いなかった。これを一般人が見たのならば、誰もが地獄絵図と言うだろう。
オートマタ艦長「まったく……何なんだ、上のやつらは……捕虜を取ってこいだの、この世界の情報を集めてこいだの、あわよくば適当な港でも占領してこいだの……」
オートマタ艦長はぐちぐちと上に対する愚痴を連ねる。
オートマタ乗員「ここを占領すれば連邦生徒会に感づかれずに兵器を製造できますからね。連邦生徒会掌握には、この世界の占領が重要です」
オートマタ艦長「にしてもなあ……」
その時、一体のオートマタが艦橋に入ってきた。
オートマタ乗員2「艦長!我々に向けた音声通信です!」
オートマタ艦長「ふむ、艦内放送で流せ」
オートマタ艦長は、パチンと指を鳴らすと、ザザッという雑音の後に、スピーカーの通信が入る。
『This is the Japanese Navy, destroyer Inazuma!Your vessels are violating Japanese territorial waters!Disarm and follow me!』*2
『And if they do not comply, they will attack!』
オートマタ艦長「とうとう来たか……レーダーに映る艦影はいくつだ?」
オートマタ乗員3「一隻です」
オートマタ艦長「なに?一隻だと」
オートマタ乗員3「はい、一隻です。ソナーにも反応ありません」
オートマタ船員「たった一隻でこのカイザーPMC第一艦隊24隻に挑むというのか……?」
オートマタ乗員4「ふん、異世界の海軍も大したことないな……」
オートマタ乗員5「異世界の海軍もカイザーの敵じゃ無し!だな!」
ざわざわ……
オートマタ乗員「どうしますか?艦長」
オートマタ艦長「ふっ……返事は砲撃で返してやれ!」
オートマタ乗員「了解!」
◇ ◇ ◇
DD-105 護衛艦いなずまCIC
そのころ、護衛艦いなずま艦長、藤堂律は、CICでレーダーモニターを見つめていた。
敵艦隊は総勢24隻の大艦隊。空母、潜水艦は無し、見た感じでは、1960年代の旧式艦ばかりで構成されている。一隻当たりのスペックならばいなずまが勝っているだろう。が、いかんせん数が多い。
一対二十四とは洒落にならない。
そもそも、自衛隊が体験する海戦は日本南北統一戦争以来初であり、律からしたら、初の実戦だった。*3
藤堂「さて……どう来るかな……」
警告はした。だが、相手が正直に従うとは思わない。そもそも、律儀に警告に従うような奴らなら、非武装の民間船なんざ襲わないだろう。
レーダー員「艦長!敵艦発砲!数は3!敵弾は全弾本艦後方、約150mに着弾します!」
藤堂「来たか……両弦最大戦速!」
キュィィィィン……
ガスタービンエンジンは独特のエンジン音を奏でながらいなずまを急加速させる。
バババシャァァァン!!
敵弾は予測どおり、敵弾はいなずまの後方に着弾する。
藤堂「対水上戦闘!CIC指示の目標!EA攻撃はじめ!」
いなずまの電波妨害装置、NOLQ-3は強力な妨害電波を敵艦に掃射する。これで、相手はレーダーの目を潰され、通信、ミサイルも使えなくなる。あの時代の艦艇ならば、まともな電波妨害対策も施していないだろう。
藤堂「これより、武器等防護のための武器使用に乗っ取り、攻撃を行う!」
藤堂「SSM2B発射用意!」*4
砲雷長「SSM2B発射用意!目標、敵艦隊!発射弾数4!各艦一発ずつ直撃させる!」
砲雷長「SSM2B!発射!サルヴォー!」
ドシャアァァァン!!
いなずまから放たれた4発のSSM2Bは一旦上空まで上がったあと、レーダーで捉えづらい超低空へ降下。そのまま、カイザーの艦艇に喰らいつくべく、低空を這いながら飛翔していった。
◇ ◇ ◇
巡洋艦アダマス 艦橋
オートマタ乗員「レーダー使用不能!」
オートマタ艦長「なにぃ!電波妨害か!周波数の変更と電波強度を増加させろ!」
オートマタ乗員「無理です!両方ともやっていますが、効果がありません!レーダー、通信、ミサイル使用不能!」
オートマタ艦長「クソッ!相手は高度な電波妨害装置を積んでいるのか!」
オートマタ乗員2「見張り員から連絡!敵艦、ミサイル発射!数は4!」
オートマタ艦長「手動の砲と機関砲で対処しろ!」
カイザーの艦艇から、砲撃と機関砲が放たれる。
ドオン! ドオン! ドダダダダダッ!
大量の弾丸がカイザーの艦艇から放たれ、ミサイルへと向かう。
その弾幕はすさまじく、ミサイルの付近には、大量の水柱が立ち上がる。
オートマタ艦長「どうだ!やったか!」
オートマタ乗員2「敵ミサイル……撃破ならず!上昇しました!」
しかし、音速に近いスピードで飛翔するSSM2Bには一発も当たらず。SSM2Bは急上昇する。
オートマタ艦長「なにぃ!一発もか!」
オートマタ乗員2「はい!一発もです!」
オートマタ乗員「敵ミサイル接近!」
オートマタ艦長「ち、チャフ、フレア散開!取り舵いっぱい!急げ!」
アダムスからチャフとフレアが放たれる。しかし、終端誘導に赤外線画像ホーミングを採用しているSSM2Bには効かず、一定の高度で、急降下。同時に突入用ロケットブースターに点火、急加速し、着弾する。
ドカアァァァァァン!!!
SSM2Bの弾頭に入った260㎏のHE爆薬が炸裂。アダムスをすさまじい衝撃が襲う。
オートマタ乗員「「「うわぁぁぁぁ!!」」」
オートマタ艦長「グァァァァァ!!」
艦橋の窓ガラスはすべて粉々に吹き飛び、乗員は吹っ飛ばされる。
しかし、そんな中でも、オートマタ艦長はどうにか立ち上がる。
オートマタ艦長「グッ……味方艦と本艦の損害報告!」
オートマタ乗員「先ほどの攻撃によって……本艦除いて、駆逐艦2轟沈!巡洋艦1大破!本艦もダメージコントロール不能です!」
オートマタ艦長「な、なんだと!」
先ほどの対艦ミサイル、どうやらチャフやフレアが効いていなかった。我々の艦隊空ミサイルが使えない。砲や機銃で迎撃する選択肢も、あの高速で飛行してくるミサイルには無力だった。と、なると必然的にミサイルの回避手段は、チャフとフレアになるのだが、それも全く効いていなかった。
回避不能のミサイル。それがどれだけ恐ろしいか、ゾッと背筋が凍る感覚が走る。
オートマタ乗員「傾斜角20度!沈没します!」
オートマタ艦長「な……なんてことだ……」
その後、カイザーPMCの誇る巡洋艦アダムスは護衛艦いなずまから放たれた対艦ミサイルによって大破。その後、急速に拡大した傾斜によって沈没した。
◇ ◇ ◇
護衛艦いなずま CIC
レーダー員「敵駆逐2、巡洋艦2、ともに轟沈!」
藤堂「第二次攻撃だ!SSM2B!発射しろ!」
砲雷長「SSM2B!発射弾数4!発射!サルヴォー!」
ドシャアァァァン!!
4発のSSM2Bが発射される。これで先ほどの攻撃と合わせて計8発。これでもう、手持ちの対艦ミサイルは打ち尽くした。
砲雷長「対艦ミサイル、残弾無し!」
レーダー員「敵艦発砲!敵弾多数接近!」
藤堂「回避するぞ!面舵!」
いなずまの艦首が右に旋回する。その瞬間、敵弾がいなずまの付近に多数着弾した。
バババシャァァァァン!!
藤堂「うっ……」
いなずまの船体がグラグラと揺れる。
レーダー員「敵艦発砲!本艦直撃コース!」
藤堂「シースパローで迎撃しろ!」
砲雷長「シースパロー!目標!敵砲弾!数は3!発射!サルヴォー!」
シャァァァン!
いなずまのMK.48VLSから放たれたシースパローは敵弾を追尾する。
レーダー員「インターセプト5秒前!スタンバイ……」
レーダー員「マークインターセプト!」
いなずまのシースパロー3発は正確に敵砲弾を破壊する。
レーダー員「ターゲットスプラッシュ!」
レーダー員「先ほどの対艦ミサイルも全弾命中!巡洋艦3!駆逐1を撃破!」
藤堂「これでやっと三分の一か……!」
ミサイルはもう全弾打ち尽くした。しかし、敵艦はまだ16隻も残っている。短魚雷もあるが、あれは射程がせいぜい10㎞程度しかないのでできるなら使うのは避けたい。10㎞に近寄る頃には、本艦がハチの巣にされて轟沈しているだろう。ならばもう残るは主砲しかない。
藤堂「砲戦用意!」
砲雷長「砲戦用意!」
砲戦用意を命令すると。いなずまの艦首に装備されたオート・メラーラ76㎜単装速射砲が敵艦隊に指向する。
藤堂「主砲、うち~かた~はじめ!」
砲雷長「主砲!目標敵艦隊!距離15㎞!うち~かた~はじめ!」
ドンドンドンドン!!
毎分80発の連射力を誇るオート・メラーラ76㎜コンパクト砲は時々、冷却のために間隔をあけながら、敵艦隊に砲弾をぶつける。
この砲の有効射程は、約16㎞。15㎞では射程ギリギリだが、そこは高度な射撃管制装置と連射力によってカバーする。
レーダー員「敵駆逐艦に数隻に多数命中!敵駆逐艦を数隻を撃破!」
藤堂「駆逐艦はいい!巡洋艦を攻撃しろ!」
砲雷長「主砲!突出している敵巡洋艦に向けろ!」
今度は、突出している敵巡洋艦に主砲が指向し、射撃を開始する。
ドンドンドンドン!!
レーダー員「敵巡洋艦に多数命中!しかし……目標撃破ならず!」
藤堂「硬い……!」
さすがに巨大な巡洋艦相手に小口径の76㎜砲ではダメージが通らず。敵艦に攻撃を許す。
レーダー員「目標発砲!数は3!」
砲雷長「シースパロー!発射!サルヴォー!」
シャァァァン!
シースパローは、敵弾を正確に追尾する。が……
レーダー員「ターゲットサーバイブ!一発取り逃した!」
シースパローをすり抜けた敵弾が一発、接近する。
藤堂「CIWSで迎撃しろ!」
いなずまの上部構造物の前後に配置された20㎜高性能機関砲、もとい、ファランクスが敵弾に指向する。独立したシステムで作動するこの機関砲は、毎分4500発の20㎜タングステン弾を吐き出す。
ブルアァァァァァ!!!
何かを引き裂くような爆音とともに、ファランクスは20㎜弾を吐き出す。
ズガァァァン!!
ファランクスの20㎜弾は敵弾を粉砕する。
レーダー員「目標破壊!」
藤堂「やった……!が、まだ巡洋艦が!」
敵弾を破壊したとはいえ、敵巡洋艦はまだ健在である。
レーダー員「敵巡洋艦発砲!」
藤堂「シースパロー!発射はじめ!」
砲雷長「距離が近すぎる!間に合わない!」
藤堂「っ……CIWS!総員!衝撃に備え!」
対ショック姿勢を総員に取るように命令する。
ブルアァァァァァ!!!
ドドォォォン!!
CIWSの迎撃によって、2発は迎撃に成功する。が、取り逃した一発が、いなずまの近くに着弾する。
ドパアァァァァン!!!
強い衝撃がいなずまを襲う。
「「「うわぁぁぁぁ!!」」」
藤堂「っ……」
藤堂「各部!被害報告!」
『右舷にて小規模な浸水!および、食堂にて電気火災発生!』
藤堂「戦闘システムは!」
砲雷長「戦闘システム……異常なし!しかし、CIWS……残弾無し!」
レーダー員「敵艦急接近!距離10㎞!」
距離10㎞、次弾は確実にいなずまに直撃するだろう。シースパローもこの距離だと近すぎて当たらない。最後の砦ともいえるCIWSも残弾が尽きた。再装填にも10分以上かかる。
藤堂「くそ……ここまでか……」
死を覚悟する。
藤堂(いなずま……すまん……)
そんなことを考えていた時……
砲雷長「ソーナーに感あり!魚雷です!左弦から2発接近!」
藤堂「なに!」
敵艦隊とは真反対の方向。まさか……
砲雷長「魚雷、本艦前方を通過!」
シャァァァァァ……
魚雷は高速でいなずまの目の前を通過する。そして……
ズガァァァァァン!!!
魚雷は、敵巡洋艦の真下で炸裂する。魚雷の爆風は、バブルパルスとなり、巡洋艦の竜骨を一撃で叩き割る。
砲雷長「ああ……」
藤堂「……」
船の背骨ともいえる竜骨を叩き割られ、真っ二つにされた敵巡洋艦は一瞬にして、海底へと沈んだ。
その時、一本の通信が入る。
『こちら、第一護衛隊群旗艦!航空護衛艦ひりゅうである!貴艦を支援する!』
敵艦隊とは、反対の方向から、数隻の艦船の姿が確認される。それと同時に、十数発のミサイルがレーダーモニターに映る。
そのミサイルは、次々と敵艦に命中し、吹き飛ばす。その後、第一護衛隊群から放たれた対艦ミサイルによって敵艦隊は一隻残らず壊滅した。
その後、この海戦は『小笠原沖海戦』として、後世に語り継がれるのであった。
広島県 呉 とある居酒屋
呉の軍港から少し離れたところに位置する居酒屋。その部屋の隅に設置されたテレビ。そのテレビは、古臭いブラウン管テレビであり、中では、荒い画質と音声で首相が会見を行っていた。どうやら、例の小笠原沖に出現した門についての会見のようだ。
そして、護衛艦いなずま艦長、藤堂律も、空になったグラスを片手にぶら下げながら、その会見を見つめていた。
どうやら、政府は門の先の世界を特地、門をゲート、と命名し、自衛隊を派遣するつもりのようだ。
そして、その派遣部隊に自分が派遣されるのではないか、と、いううわさが基地内で流れていたのだ。どうやら、あの小笠原沖海戦にて、敵艦隊に単艦で大損害を与え、敵について多少知識があるのが理由だそうだ。
藤堂「はー……でも、俺はいなずまで門の先に行くつもりはありませんからね」
そう、愚痴を、一緒に呑みに行こうと誘った目の前の基地司令に吐く。
基地司令「まあまあ……いいじゃないか……」
別に、政府の意向に反対だったり、命令で自分が向かうのはかまわない。行方不明者が誘拐された可能性を考慮して、調査に向かうことも分かる。いなずまで向かうことが不満なのだ。
藤堂「あんな逃げ道もない門なんてたまったもんじゃないです」
あんな狭い門から出て、待ち伏せしていた敵艦隊と遭遇したらたまったもんじゃない。装甲のほとんどないいなずまなら、一瞬で海の藻屑だろう。
基地司令は、まあそうだよな、と言って俺のグラスにビールを並々注いだ。
藤堂「あんなペラペラな艦艇で突入なんて無理だっ!」ドンッ
俺はビールを飲みほしたグラスをテーブルに叩きつける。基地司令は、少し苦笑しながら、店員に水を頼んだ。
水が届くと、基地司令は、君、酔いすぎだよ、と水を差しだした。
自分は、すみませんと謝りながら水を飲みほした。
そのうち、基地司令は口をひらいた。
基地司令「で……なかなか沈まない艦が欲しいといったかね?」
藤堂「え?はい」
俺がポカンとしていると、基地司令はまた口を開く。
基地司令「ならば、とてつもなく重装甲な艦を」
藤堂「は?そんな艦が一体どこに」
基地司令「呉にモスボールしてあるじゃないか、一隻」
そういうと、基地司令は、近くの窓を開ける。それと同時に、涼しい夜風が店内に入りこんでくる。
基地司令「ほら、あれだよ、あれ」
基地司令が指さす先を見つめるそこには、一隻の巨大な軍艦がいた。
藤堂「まさか……」
その艦は、『護衛艦やまと』旧海軍の大和型戦艦の一番艦で、統一戦争ではイージスシステムが搭載され、北日本の弾道ミサイル基地を砲撃。統一戦争に終止符を打った。
終戦後は、戦艦の必要性が薄れたため、呉にてモスボールされていた。
基地司令「あの艦ならば、自身の46㎝砲に耐えうる防御を持つ、魚雷でもびくともしなかろう。それに、60口径46cm三連装砲の破壊力はすさまじい。そのうえ、今回の改装で、最新鋭のイージスシステム、イージスシステムベースライン10が搭載されることが決定されている」
藤堂「……」
基地司令「まだ、民間には非公開だがな」
基地司令「それに、あの艦は君にも相応しい艦だろう」
確かに、自分の祖父に当たる、藤堂進は、あの艦に乗り、統一戦争にとどめを刺した。そのうえ、曾祖父の藤堂明も、あの艦で砲術長をしていたと聞いている。
基地司令「あの艦なら……頼めるかね?」
藤堂「……了解」
数か月後 護衛艦やまと 艦橋
月日が過ぎるのは早いもので、いつの間にか自分は、やまとの航海艦橋に上っていた。
「~のため、これより、特地に自衛隊を派遣する。」
晴天の空の下、首相の演説が終わり、航海艦橋からを見下ろす。
とてつもなく巨大な艦だと改めて思う。まるで、いなずまが子供のようだ。
突入まではまだ時間があるので、あらためてやまとの仕様書を見ておく。
すさまじいスペックだ。これを護衛艦と名乗るのはいかがな物かと思う。
そして、突入艦隊編成は。
と、なっている。イージス艦二隻にヘリ空母一隻、汎用護衛艦二隻にフリゲート一隻だ。特に、イージス艦二隻とあきづきの防空性能は頼もしい。
そうこうしているうちに突入の時間となった。
藤堂「さて……やるか……」
藤堂「出航用意!」
号令と共に出航ラッパがなり響く。
藤堂「両弦微速前進!」
航海長「両弦微速前進!」
キュィィィィン……
やまとのガスタービンエンジンが唸りをあげ、加速を開始する。
藤堂「航海長操艦」
航海長「航海長、操艦いただきます」
藤堂「単縦陣となせ!」
艦隊は最も防御力の高いやまとを先頭に、ゲートへと突入する。
やまとはゆっくりと、ゲートの中へと入っていく。そして、そのうち、やまとをゲートの闇が包み込こむ。
各部のライトを消し、敵艦に見つからないようにする。いま、やまとの艦橋を照らすのは、電子機器のモニターだけだ。
通信士「全艦、ゲートに突入しました」
藤堂「了解」
そして、十何分ほど航行したのだろうか、真っ暗なゲートの内部を航行していると、数㎞先に目の前に光が現れる。外だ。
藤堂「対水上戦闘用意!」
カーン…… カーン…… カーン……
対水上戦闘用意を命令する。いつ敵の奇襲があるかわからないのからだ。
『こちらCIC、各部対水上戦闘用意よし』
藤堂「了解」
航海長「ゲートから脱出します」
やまとがとうとう、ゲートから脱出する。
そして、外を見まわすと、そこは、つい見とれてしまいそうなほど美しい、一面の星空に覆われた世界だった。
しかし、今は見とれている場合ではない。
藤堂「主砲射撃用意!弾種!零式通常弾!」
『主砲射撃用意!弾種!零式通常弾!』
号令と共にやまとの砲身が持ち上がる。それと同時に、朝日が昇り始める。
パァァァァァ…
特地の海に太陽が昇る。海面は日光を反射し、キラキラと美しく輝く。
こうして、やまと達のの特地作戦は始まった。
いつの間にか9500文字も書いてしまった……