インフィニット・ストラトス Homunculus《完結》   作:ひわたり

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人外なる機械

白は一歩遅いと判断した瞬間、双剣を展開し、全力で放つ。

一筋の光のように真っ直ぐな軌跡を描きISへと到達する。

無防備なISの頭部に、白剣が外部を切り裂き、ほぼ同時に切れ目をIS殺しが突き刺す。エネルギーが残っていても絶対防御も無視して貫通する黒剣。本来ならこれで既にトドメだ。しかし、白の中にはある予感があった。

追い討ちをかけるように踏み潰そうとすると、予想通りと言うべきか、ISは回避行動を取った。

「やはり人間ではないか」

自動機械。AI。無人機。

追い掛けてからの一定の動きと、アリーナを破った行動、そして感じた気配から、これは人間ではないと当たりをつけていた。人間なら情報収集の為に頭部は狙っていない。

……どちらにしろ、頭部を潰しても動くのは面倒だな。

「邪魔するぞ、IS学園」

挨拶のつもりで言う。

無論、返事など期待しない。

白は瓦礫を蹴り飛ばす。ISは迎撃せずに回避した。

……機械の癖に様子見するつもりか。

白は軽く距離を開け、一夏と鈴の横に立った。

「あ、貴方は……」

「無事ならサッサと退避しろ、邪魔だ」

一夏が何か言いたそうにしたが、白はそれを無視して言い被せる。

「じ、邪魔って、あんた、生身でアレを相手するつもりじゃ」

鈴の反論は、アリーナのアナウンスによって遮られた。

『非常事態発生。生徒は速やかに避難しろ。今、観客席の防御を強化した』

この声の主は織斑千冬。

見ると、フィールドからは先程まで見えていた観客席が視認できなくなっている。恐らく観客席側からもフィールドが見えていない筈だ。

つまり、気にせずサッサと片付けろ、ということか。

「流石、手回しが早い」

白は一夏のISの唯一の武器である、刀の雪片弐型を彼の手から奪う。一応、ISの握力で握っていたのだが、彼には関係ないことだった。

「借りるぞ」

無手でやれないこともないが、武器があるなら使わせてもらう。

「え、それはエネルギーを使う武器で」

「ISに対して壊れ難いなら何でも良い」

白が消える。

そう思えるほどの瞬発力。

ISの目の前で雪片弐型を振り下ろす。

咄嗟の反応を見せて腕でガードされるが、バギリと鈍い音を立て、その腕が半分千切れた。その隙間から見えたのは火花とコードの類。全身装甲の為、顔も確認できないが、その中全て機械であろう。雪片弐型の本来の使い方はエネルギーを要しての一撃必殺。白が振るったところで物理的ダメージしか与えられないが、白の物理はISを超える。

二撃三撃と打ち込みながら思案した。

……この世界の技術力は高いが、AIを造る技術まではなかった筈。一体どうなってる?

ISは腕を無視して白から距離を取ろうとブーストし、地面を舐めるように移動していく。白はその速度にピッタリと付いて行き、距離を離さない。白を引き離せないと判断したのか、ISが剣を展開。移動しながら横薙ぎに切り裂く。白はそれを軽く受け流す。ISが飛ぼうとすれば、白が剣を交えた。踏み込みで衝撃が込まれた攻撃は空への自由を許さない。広いとは言え、地面があり、壁に囲まれた環境ならば

「此処は俺の領域だ」

お前はもう二度と空に帰れない。

一度でも白と地上で接近戦を交えたのなら、もう逃れる術はない。ほぼゼロ距離の剣撃。目に留まらず息を吐かせぬ速さで互いの剣が幾度も混じり合う。

白がその場で足を踏む。地面を通じた衝撃が、ISの立つ地面を壊した。

バランスを崩した所を一閃。

ISのもげ掛かっていた腕が飛ぶ。

……出来損ないのAIだ。此方を観察している風ではあるが、処理が追いついていない。あまりにも弱い。

返す太刀筋で更に一閃。

ISの頭部が飛ぶ。

苦し紛れか、展開した銃を、白ではなく一夏と鈴に向けた。

瞬間、白は雪片弐型を空に高く投げ捨てた。AIのカメラが素直に雪片弐型を追った。動く物や話す者を追うのはこの戦いの中で観察済み。

人間でも機械でも、それは致命的な隙だ。

白は手をそのままに、宙にあった頭部の双剣を柄を握り、振り下ろす。

銃身は斬り落とされ、首から腹部まで綺麗に二つに斬り裂かれた。

完全に機能を停止させたそれは、地面に横たわる。

ものの数分で決着はつけられた。

「……面倒だな」

今回の事で色々と頭を悩ます事が増えたと思いつつ、双剣をしまい降ってきた雪片弐型を受け止めた。

呆気に取られていた一夏達の元へ戻り、彼の前に雪片弐型を差し出す。

「返すぞ、織斑一夏」

「あ、ああ……」

「な、何者よあんた!何なのいったい!」

脳のキャパシティーがオーバーしたのか、鈴が喚き立てる。謎のISの乱入に加え、そのISを生身で圧倒的に潰した男が降ってきた。

混乱しない方が無理だろう。

「さあ、どこから一般人に話して良いものか。取り敢えず、織斑と相談してからだな」

「え、俺?」

「ああ、お前も織斑だったな。千冬の方だ」

「お前に名前呼びを許可した覚えもないんだがな」

非常ゲートから千冬が姿を現した。千冬の他にもISを身に纏った教師達が続けて乗り込んでくる。

「織斑先生!生身で入っては……」

「あ、あれ?本当に終わってる?」

教師陣は事態が既に収拾さてれいることに戸惑いを隠せない様子だ。千冬は当然とばかりに言う。

「だから言ったでしょう、準備して乗り込む時には終わってると。さて、白。聴きたいことが山程ある」

「ああ、その前に頼みが二点あってな。海岸に放置した戦闘機の回収と軍に連絡を入れさせてくれ」

「……何やってんだお前」

呆れる千冬に、白は単純明快に答えた。

「仕事だ」

「そうか、熱心で感心するよ」

「お前に感心されるとは思わなかったな」

白は双剣をしまった指輪を外して千冬に投げる。千冬もそれを普通に受け取った。他人から見たら謎なやり取りだが、本人達はこれが武器だと知っている。

白は壊れた無人のISを指差して訊いた。

「アレはどうする?一応言っとくが、軍とは無関係の代物だぞ」

「まあそうだろうよ。そっちの物ならここに来る前にお前に壊されている。取り敢えず、ウチで調査と解体だな。無人機など聞いたことがない」

「可能なら情報を分けて欲しい。国境越えとか無茶をやり過ぎた。言い訳材料をくれ」

「お前らしくないな。何か動揺する出来事があったか?」

成程、動揺か。

「ああ、自分でもらしくないとは思ったが、理解した。動揺か。まあ、その原因の所に突っ立ってる訳だが」

「ボーデヴィッヒの事か」

「そういうことだ」

そこに小柄な女性教師が恐縮しながら入ってきた。

「あ、あのー。随分と仲が宜しいみたいですが、お知り合いですか?」

「友人だよ」

「え、千冬姉に友達がいたのがぼぉ⁉︎」

友人発言に驚いた一夏。その頭を殴る千冬。

弟愛があるのは結構だが、容赦ない。

「織斑先生だ馬鹿者」

「いてて……。あ、貴方は白さんでしょ?あの時助けてくれた!一言礼を言いたくて!本当にありがとうございました!」

一夏は今度は白の方へ向かって言う

「仕事だったからな。礼はいらん」

対して、白の反応は素っ気ないものだった。

「白、話は後にしよう。取り敢えず私についてこい。部隊と連絡を取るのも誰もいない場所が良いだろ」

「そうだな。お茶くらい出してくれるだろうな?」

「ああ、山田先生の茶は美味いぞ」

「私がやるんですか⁉︎」

他人の事は気にせず、二人は並んでアリーナから出て行った。

似た者同士かと、一夏はその背中を見送りつつ、そう思った。

 

謎を多くしたまま、一つの、出来事が幕を閉じた。

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