ハイスクールD×D 蒼の継承者の物語   作:Yunnan

10 / 32
アーシア救出後編

一輝side

 「…………」

 木々は数本折れ地面は所々陥没。結界内を血の臭いが充満している。堕天使三人(ドーナシーク・ミッテルト・カラワーナ)はピクリとも動かないが、微弱だが呼吸(いき)はしている。

 一体……何が起こったんだ? 何でアイツ等は満身創痍で倒れている? 

  ……黒騎士に変身した直後、激しい頭痛が俺を襲い見覚えのないノイズ交じりの映像が脳裏を走り、隙を突かれた俺はドーナシークが投擲した光の槍が腹部に直撃し大爆発し意識が暗転……そして意識が戻ってみれば……。

 結界内には俺と堕天使三人以外の気配は無い。……俺が……アイツ等を戦闘不能にしたのか? 意識が落ちている間にか? あり得るのかそんな事……。

 だけど戦ったのを裏付けるように刀身には大量の血痕が付着している。

 結界を解除し水魔法で血痕を流していると、視界の外に見慣れた魔法陣が出現した。魔法陣が強い閃光を発した後、部長と朱乃先輩が転移して来た。

 

 「……一輝。堕天使三人はあなたがやったの?」

 「え、あはい」

 俺の返答に部長は若干眉を顰めたがそれも一瞬だ。

 

 「まずはイッセーたちの助けに行ってちょうだい。事情は後で訊くわ」

 部長は堕天使に視線を向けたまま指示を出してくる。一誠達が来たのか。なら早く行くか。

 バサッ。背から黒い翼を生やし羽ばたかせ、教会に向けて飛んでいく。

 

 

 

 

 

???side

 「ふんふふ~~ん♪ ふんふんふん……ん? あれ? あれれれれれ??」

 私以外誰もいない空間で、目の前に複数浮かぶモニターに、私は眼を疑った。その一つに(一輝)と堕天使との戦闘場面(バトルシーン)が映っている。映っているんだけど……何処かおかしい。今までの繰り返し(ループ)筋書き通り(シナリオ)なら、彼は黒騎士に変身した直後、意識を皇帝(マドラス)に乗っ取られるハズなのに…………

 

 「ふ~~~~ん。ん??」

 違和感に首を傾げ唸りながらも一つ一つのモニターを見直していき……あるモニターに眼が止まる。

 

 「もしかして、これか?」

 私は宙に浮かぶパネルを操作し、そのモニターの映像を見直し…………納得がいった。そのある一点とは黒騎士の眼だ。

 普通なら黒騎士の眼の色は琥珀色……のハズだ。それが澄んだ蒼色(・・・・・)の変化に加え機械的な話し方(・・・・・・・)へと変化していた。

 

 「成程成程。この時点で彼が無意識に……いや。この戦いの間だけとは言え■を行使し■■■■■■■に戻るのはアレ(・・)を発見した時以来だ……これはこれで面白い展開()になりそうだ。ッハハハハハ」

 私は肩を震わせ笑う。今回の事象は流石にタカマガハラシステムも予期していない事象だろうね。そしてこれを不適正事象とみなし事象干渉が起きていない事を考えると。

 

 「彼が無意識にタカマガハラシステムの事象干渉を阻害している。もしくはこの事象を新たな確率事象(コンティニュアム・シフト)とし観測しているか……恐らく後者だろうね」

 それにしても……まさかこんな序盤で■を発動させるなんてね。

 

 「さて。この先の展開(物語)にどう変化が生じるか(わか)らないが、黙って見届けようじゃないか」

 それじゃ……今回はここまで。続きをどうぞ。

 

 

 

 

 

一誠side

 すでに空は暗く、街灯の光が道を照らす時間帯となっている。俺と木場、小猫ちゃんは教会が見える位置で様子を窺っていた。

 不気味なほど静かな教会。近づくほど悪寒が走る。

 

 「ったく。なんて殺氣だよ」

 「神父も相当集まってるようだね」

 マジか。俺一人じゃ本当に危なかったな。部長には感謝しきれないな。ってか一輝の奴いなくね? 俺より先に行ってるはずなんだけど……。

 

 「小猫ちゃん。一輝の奴、教会に来てないか匂いで(わか)らねぇ?」

 小猫ちゃんは鼻を動かし匂いを嗅ぐが、首を横に振るう。

 

 「……ダメです。途中まで匂いの形跡はありましたが……ここには来ていません」

 来てねぇのか。道中何かあったのか? まぁ、アイツの事だから敵と出くわしても一人で何とかするだろう。

 

 「来てくれて助かったぜ、二人とも」

 「だって、仲間じゃないか」

 笑顔で答える木場。だけど、直ぐに笑みを消して真顔になった。

 

 「……それに、個人的に堕天使や神父は好きじゃないからね。憎いといっても言い(・・・・・・・・・)

 そう言う木場の眼からは、何時もとは違う憎悪があった。剣を握る手にもいつも以上に力を込めてる。木場の奴、教会の奴らと何かあったのか?

 

 「あれ、小猫ちゃん?」

 気が付けば一人入り口まで進み。

 

 「向こうも私たちに気づいているはずでしょうから」

 ドカン! と小柄な体型から出せるとは思えない蹴りで開けた。意外に大胆だね、小猫ちゃん。

 内部は酷くボロボロで、ロウソクの明かりは消えている。十字架に磔となっている聖人の彫刻の頭部が破壊されていた。

 

 「ひっでぇもんだな」

 パチパチパチパチ

 !! 突然、聖堂内に鳴り響く拍手。俺達が構えると、奥からあの胸糞悪い神父が出てきた。

 

 「やあやあやあ。再開だねぇ。感動的ですねぇ」

 「フリード!」

 「俺としては二度会う悪魔なんていないと思ってたスんよぉ。ほら俺、メチャクチャ強いんで、一度あったら即コレよ。でしたからねぇ」

 首に手を当てスッと引く仕草を見せ、懐から例の拳銃と柄を取り刃を出現させる。

 

 「だからさ、ムカつくわけ。俺に恥じかかせたテメェらクソ悪魔のクズどもがよぉ」

 クズはお前だろうが!!

 

 「アーシアはどこだ!」

 「あー。悪魔に魅入られたクソシスターなら、この祭壇から通じている地価の祭儀場におりますですぅ」

 俺の問いにフリードは光の刃で祭壇を指し、地下への隠し場所を吐く。

 コイツ、何であっさりと教えるんだ? でも、場所が(わか)ればコイツを倒していけばいいだけだ!

 

 「まぁ、行けたらですけどねぇ」

 「神器(セイクリッド・ギア)!」

 俺の叫びに呼応して、左腕に赤い籠手が装着された。補足だけど、俺の神器(セイクリッド・ギア)は持ち主の力を上げるらしい……レイナーレがそう言っていた。それでも無いよりはマシだ!

 よし! 装備完了。

 木場も剣を抜き放ち、小猫ちゃんは……はぅ! 自分の何倍の大きさもある長椅子を軽々と持ち上げていた。

 

 「潰れて」

 ブゥン!

 神父へ向けて長椅子をブン投げた。なんつー規格外の攻撃方法! さすが怪力少女! でもフリードは長椅子を光の剣で斬り裂く。

 

 「わーお! しゃらくせぇんだよこのチビ(・・)!」

 チビ(・・)って言った瞬間、小猫ちゃんの眉がピクっと動いた。

 

 「……チビ(・・)?」

 あれ? 何か怒ってない?

 するといきなり手当たりしだいイスや物を掴んでは連続で投げつける。いや、もう少し冷静になろう小猫ちゃん!

 

 「おおぅ! 千本ノックですかい!!」

 フリードは笑いながら避けたり剣で斬っていた。

 そこへ高く飛び上がった木場が、上空から斬りかかる。

 

 「邪魔くせぇ! しゃらくせぇ! いい加減、ウゼェ!」

 神父も木場の動きについていき、銃を撃ち斬りかかる。

 ギイィン! 火花を散しながら鍔迫り合いになる。あの神父、相当強い!

 

 「やるね」

 「あんたもサイコー。本気でぶっ殺したくなりますなぁ」 

 至近距離で撃たれた弾を、バック転で躱して残った足で蹴り上げた。スゲー、アイツ顔が良いだけじゃねぇな。

 

 「じゃあ、僕も少しだけ本気を出そうか?」

 木場がそう言うと、刀身が黒く染まっていく。そして斬りかかり鍔迫りになると、木場の剣が神父の光を侵食しだした! 何だ、あの剣!!

 

 「ッ!! 何だよコリャ!?」

 「光喰剣(ホーリー・イレイザー)光を喰らう闇の剣さ」

 「て、テメェも神器(セイクリッド・ギア)もちか!!」

 神器(セイクリッド・ギア)! 木場も持っていたのか!? クソ! イケメンは神器(セイクリッド・ギア)もカッコいいのか!

 刀身が消え去る寸前、神父が離れた。

 

 「兵藤君!」

 木場の掛け声に、俺はクソフリードに向かい駆け出す!!

 

 「動けぇ! 神器(セイクリッド・ギア)!!」

 『Boost!!」』

 宝玉から音声が発生して、俺の体に力が流れ込んでくる。

 よし! コレならあのクソ神父にぶちかませる!!

 

 「だからしゃらくせっつの!!」

 駆け出した俺に気づき、銃を俺に向け音もなく光の玉が撃ちだされた。

 ここだ!

 

 「昇格(プロモーション)! 戦車(ルーク)ッ!」

 昇格(プロモーション)戦車(ルーク)に昇格。奴の光の玉を弾き飛ばす。

 戦車(ルーク)! その特性はありえない防御力と。

 

 「……マジですか?」

 「バカげた攻撃力だ!」

 ゴッ!!

 

 「イターイ! ウゴッアァァァァァァァァァブベラ!?」

 俺の左拳がクソ神父の顔面に食い込み、一回バウンドして祭壇近くまで吹っ飛ぶ。

 ハァ、ハァ、ハァ。やっと入れられた。

 

 「アーシアにひでぇことしやがって。少しスッキリしたぜ」

 「ッざけんな。ざけんなよクソガァァッ!」

 ペッと血を吐き出しながらゆっくりと立ち上がり、懐から二本の柄を握り締め光の刃を形成し飛び掛ってくる。まだ持ってるのかよ!?

 

 「えい!」

 ドゴンッ!

 

 「イターイ!」

 間に入ってきた小猫ちゃんが、イスをバットのように振るいぶち当て、再び吹っ飛んでいく。ナイス小猫ちゃん!!

 起き上がりを木場が斬りかかるが、素早く躱し祭壇に上がる。

 

 「俺的に、悪魔に殺されんのは勘弁なのよね! んなわけで、はいチャラバ!」

 懐から出した何かを地面に叩きつけると、激しい光が俺達の眼を奪う!

 クソ! 目くらましか!

 収まったときには、すでにいなくなっていた。

 

 「逃げやがった」

 「とにかく、先を急ごう」

 「えい」

 小猫ちゃんがあっさりと、祭壇を殴り壊し地下への階段を見つける。だから豪快だね!!

 階段を駆け下りる俺たち三人は、奥に扉が見えた。あそこか!

 長い廊下を駆け抜け、扉を力任せに開ける。

 

 「いらっしゃい、悪魔の皆さん。遅かったわね」

 入ると中には大勢の神父と堕天使レイナーレ。そして……。

 

 「アーシア」

 十字架に磔にされているアーシアがいた。

 俺の言葉に気づき、アーシアが顔を上げてこちらを見る。

 

 「……イッセーさん?」

 「アーシア! 今行く!」

 駆け出そうとする俺を木場が引っ張る。

 直後、光の槍が俺のいた場所に突き刺さり爆発する。

 

 「感動の対面だけど残念ね、もう儀式が終わるところなの(・・・・・・・・・・・)

 儀式が終わる? どういうことだ?

 

 「あぁあ、あああああああああああ!!」

 突然、アーシアが苦しそうに絶叫をあげる。

 

 「アーシアに何をするつもりだ!」 

 「! そうか。堕天使の目的はシスターの神器(セイクリッド・ギア)を奪うつもりなんだ」

 「神器(セイクリッド・ギア)を奪う!? アーシアはどうなるんだよ!!」

 俺が聞くと木場は苦い表情を浮かべ……重い言葉を発した。

 

 「それは、命を奪うと同じことなんだ(・・・・・・・・・・・・)

 !? じゃあ、アーシアは?

 

 「この子は死ぬわ」

 「させるか!」

 俺が駆け出すと、神父たちが立ち塞がってきた。

 

 「悪魔め!」

 「滅してくれるわ!」

 どけ! お前たちを相手にしてる時間はねぇ!

 どちらともぶつかろうとした時。

 ゴウゥッ! 俺達が入ってきた入り口から暴風が吹きこむと同時に何か物凄い速さで飛んで行った。

 

 「アーシアを放せ!!」

 

 

 

 

 

一輝side

 教会に近づいた俺は、ステンドグラスをぶち破り、教会内に侵入し眼下に地下へ続く階段を見つけた。

 地下室か。翼を仕舞い、垂直落下していき一番下に降り立つ。

 そこは少し大きめに作られていて、最奥から複数の声が聞こえてきた。

 あそこか! 再び翼を生やし飛んでいく。

 入り口付近で俺は一誠と神父共がぶつかる直前で、十字架に磔にされているアーシアが苦しそうに呻き声を上げている。

 マズい! 

 俺はスピードを上げ、一誠たちを通り越してアーシアへ近づく。

 

 「アーシアを放せ!」

 「何!? キャアァッ!!」

 俺は近くにいた女堕天使……レイナーレに蹴りを喰らわし吹き飛ばす。倒れこむ姿を見てから、剣で素早く鎖を斬り、抱きかかえる。

 

 

 

 

 

一誠side

 暴風が収まると、壁に当たる音が聞えた。

 見るとレイナーレが崩れ落ちていて、黒い鎧に黒い翼が生えたやつがアーシアを抱きかかえていた。

 黒い翼! まさか堕天使か!

 

 「おい、アーシアから手を放せ!」

 目の前にいた神父を殴り飛ばし、ぶん殴ろうと駆け寄ろうとしたが聞き覚えのある声に動きを止めた。

 

 「大丈夫か、アーシア!」

 え! 今の声……まさか。

 

 「「「一輝(君)(先輩)!!」

 俺と木場、小猫ちゃんが声をあげる。え! 何!? 何がどうなってんの!? ってかあの鎧姿……。

 俺達が困惑してると、レイナーレが腹を押さえながら起き上がり一輝を睨みつける。

 

 「そ、そのシスターを返せ! 私が至高の堕天使となるためにシスターが持ってる神器(セイクリッド・ギア)が必要なのよ!」

 「黙れ。お前のくだらない計画に、アーシアを犠牲にはさせない。クエイク」

 直後、レイナーレの地盤が石柱のように盛り上がり、天井にぶつける。

 

 「グハッ!」

 石柱が崩れ、落ちてきたところに。

 ドゴォッ!! 腹に蹴りを刺すような一撃を食らわす! すっげぇ音!! だって壁にぶつかった衝撃で罅が入るんだぜ!

 それを尻目にアーシアをお姫様抱っこで抱え、俺らの近くに飛んで来た。

 

 「一誠、木場、小猫、俺の近くに集まれ! ここから脱出する!」

 だ、脱出って。どうやってこの神父の集団から逃げんだよ。

 

 「逃がすな! 撃て撃て!!」

 神父たちが一斉に拳銃を向けて撃ってきた。うお! 危ね! 今かすったわ!!

 雨のように襲い掛かってくる銃弾を、一輝は翼の一振りで違う方向に軌道を変えた。すげぇ!!

 続けざまに左腕を掲げると、周囲の地面から様々なサイズの岩石が浮揚し始めた。うおぉ!! 何だこりゃ!? 

 神父たちに腕を向けた瞬間、石が一斉に飛んでいく。

 

 「千の礫(ラッシュ・ロック)!」

 「「「「「ギャ――――――ッ!!」」」」」

 岩石は次々と神父にぶち当たり、うめき声を上げながら倒れこんでいく。あんなにいた神父を一撃で。

 全員、倒れた神父を確認した一輝は俺達が集まったのを確認し。

 パチン! と指を鳴らした。すると、一瞬景色が歪んだと思ったときには地下室から聖堂に戻ってきていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。