ハイスクールD×D 蒼の継承者の物語   作:Yunnan

11 / 33
レイナーレの最後

レイナーレの最後

 一誠side

 一輝のおかげで、無事アーシアを救出できた俺達は、地下室から聖堂に転移で戻ってきた。訊けば一輝の転移……じゃなくて瞬間移動(テレポート)は、一度行った場所さえ覚えていればどこでも瞬間移動(テレポート)出来るらしい……羨ましいぜ。

 アーシアをイスに寝かせて離れた瞬間、赤い閃光が聖堂を照らす。閃光は一瞬で消え、そこには鞘に収まった黒い剣を持った一輝がいた。

 

 「それも神器(セイクリッド・ギア)なのか?」

 「あぁ」

 剣を手放すと虚空に消えた。薄着のアーシアに自分の制服の上を被せると、僅かに眉が動きゆっくりと眼を開ける。

 

 「……あれ? 一輝さん? それにイッセーさんも」

 「大丈夫か、アーシア!?」

 「はい。少し体が重いですけど、何ともないです」

 「そうか……良かったぁ」

 安心した俺は涙が溢れ出て来るのを止めることができなかった。

 俺は腕で涙をふき取り、一輝に頭を下げ礼を言う。

 

 「ありがとう一輝! マジ助かった!」

 「気にするな。同じオカ研の仲間だろう? 仲間を助けるのは当然だ」

 そう言う一輝は、普段の無表情とはかけ離れた、木場に負けない位の優しい笑みを浮かべて言った。

 それを見たアーシアと小猫ちゃんの頬が紅潮した。これってまさか……フラグか!?

 

 「ってか思ったんだけどさ。何で部室じゃなくて聖堂何だ?」

 今思えば、あのまま部室に瞬間移動(テレポート)すりゃ良かったんじゃないかと思う。

 一輝は、俺の問い答えず顔を地下室に向ける。その時だ。

 ズガアァンッ!!

 突然、床が壊れたかと思うと、光の槍が高速で飛んできた! 槍は真っ直ぐ一輝に飛んでいく!!

 ギイィィィィンッッ!!

 一輝は掌を前にかざすと、魔法陣が現れ槍を防ぐ。

 

 「……まだ。後始末(・・・)が残ってるからな」

 槍が消え去り魔法陣が消えると突然、一輝の前に氷の塊が現れた。そこから出ている柄を手に取ると氷の塊は霧散。腰を落とし構えを取り祭壇の方を鋭く睨む。

 祭壇には、傷ついたレイナーレと神父が武器を構えていた。後始末って……こいつ等の事か!

 

 「よくも私の計画を邪魔してくれたわね、下僕悪魔に下等な人間が……絶対許さない。あなたたちにはここで死んでもらうわ」

 レイナーレが手を掲げると神父たちが一斉に光りの剣を構え出す。それに伴って、一輝が柄に手をかけ、木場も剣を構え小猫ちゃんも腕を回しながら対立する。

 人数じゃ圧倒的に俺たちの方が不利。でも、やるしかねぇ!!

 

 「神器(セイクリッド・ギア)!!」

 『Boost!!』

 神器を出現させ、加わろうとした時だ。

 

 「!!」

 突然、一輝が割れたステンドグラスを見上げた。瞬間。

 

 「ヒャッハ―ッ! 俺様再び参上―!!」

 そこから奇声を上げながら、剣で斬りかかってくるフリードの野郎が戻ってきやがった!!

 

 「フリード!!」

 ギイィン!! 素早く抜刀し剣を刀で受け止め鍔迫りになる。

 

 「おいおい……テメェはこの前のクソ人間じゃねぇか。テメェもあのシスター助けに来たのか?」

 「そうだ。お前ら下劣なクズ共に利用されるなんざ御免でね」

 「おーおー。ムカつく事口にしますね~……だったら、テメェとクソ悪魔を殺した後あのシスターをレ○プでもしますかね!!」

 鍔迫り状態から互いに離れると、フリードはジャンプして、ステンドグラスから外に飛び出す。

 

 「……奴は俺が抑える。ここは頼んだ」

 そう言い、一輝も軽々とジャンプしてステンドグラスから外に飛び出し、フリードを追いかけ始めた。

 

 「さてと。それじゃ僕達も……」

 「手早く片付けましょう」

 木場と小猫ちゃんが神父に突っ込むと、同時に神父も二人に突っ込んでいった。

 残るは、レイナーレと対立する俺。後ろにはアーシアがいる。

 

 「そこをどきなさい下級悪魔。私の目的は、彼女の持ってる神器(セイクリッド・ギア)なの」

 「どかねぇ。お前みたいな奴に、アーシアを奪わせない」

 俺がそう言うと、レイナーレが冷たい殺氣を飛ばしてくる。

 …………怖い。冷や汗が流れ、膝が笑い呼吸(いき)が上手くできないように感じる。少しでも気を抜けば、立っていることすらままならない。

 途端。レイナーレが笑みを浮かべ、俺とアーシアに話しかけてくる。

 

 「なら取引しないかしら(・・・・・・・・・・)?」

 ッ。取引?

 

 「アーシアが大人しく私に神器(セイクリッド・ギア)を献上してくれるなら、貴方達を見逃してあげても良いわ。大丈夫よ。もし死んでも神の元に召されるだけだから。もし断るなら、ここにいる全員殺して……アーシア。あなたも殺して神器(セイクリッド・ギア)を無理やりにでも奪うわ」

 この女! 俺たちの命とアーシアの神器(セイクリッド・ギア)天秤に掛けようってのか!!

 

 「ふざけんなレイナーレ!! 俺達の命と引き換えに、アーシアの神器(セイクリッド・ギア)を奪う気か!? アーシアを殺してまでも、そこまで神器(セイクリッド・ギア)が欲しいのかよ!!」

 「そうよ。あの子の持ってる神器(セイクリッド・ギア)さえあれば、私は偉大なる堕天使、アザゼル様とシェムハザ様から愛を頂けるのよ……あなたみたいな下級悪魔には、一生(わか)らないのでしょうけど」

 ……狂ってる。こいつもフリード同様に、命を何とも思ってねぇ。

 俺が殴ろうとした時。

 

 「嫌です!!」

 アーシアが聖堂内に響くほどの声で、答えた。

 それを聞いたレイナーレは、笑みを消し冷たい眼で俺達を見てくる。

 

 「……何ですって?」

 「私の大切な人を傷つけるあなたに、神器(セイクリッド・ギア)は渡しません!!」

 「そう……じゃあ、あなたに用はないわ。ここでその下級悪魔と共に死になさい!」

 光の槍を形成し、投げてくる!

 

 「うおおぉぉぉ!!」

 ガシィッ!! 

 俺は槍を素手で受け止め、違う方向へ投げる。

 イッテエエェェ!! それに熱い! 見れば掌が少し焼け爛れていた。

 

 「下級悪魔。何も力がないくせに何故守ろうとするの? 神器(セイクリッド・ギア)は人間にとって異質な力。強力な力ゆえ、どこへ行っても爪弾きされるわ。ほら、人間ってそういうの毛嫌いするでしょ? あんな素敵な能力(ちから)なのにね」

 「確かにお前の言う通りだ、レイナーレ。こんな異質の力を見れば、誰だって不気味に思われる」

 それでも! 少なくとも神器(セイクリッド・ギア)でも助けることが出来る。アーシアみたいにケガを治してあげることが出来る!! 公園で助けた子供だって、何が起こったのか(わか)らないって感じだったけど、それでも『ありがとう』って言ってくれた。それを……。

 

 「何も知らねぇお前が、愛とかほざいてんじゃねぇぇよ!!」

 『想いなさい。神器(セイクリッド・ギア)は想いの力で動き出すの。その力が強ければ強いほど神器(セイクリッド・ギア)は応えてくれるわ』

 部長の言葉が、脳裏を過る。

 

 「動け、俺の神器(セイクリッド・ギア)! あの堕天使をぶん殴る力を俺に力を貸しやがれ!!」

 『Dragon booster!!』

 俺の叫びに応えるように、神器(セイクリッド・ギア)が動き出し、手の甲の宝玉が眩い輝きを放ち、籠手に何らかの文様が浮かび上がった。同時に俺の体を力が駆け巡る。神器(セイクリッド・ギア)をつけている左腕から全身へ。

 

 「うおおおおおお!!」

 俺は一気に駆け出し、嘲笑を浮かべるレイナーレに殴りかかる。だけど舞うように避けられた。

 

 「あなた本当のバカね。一の力が二にたったところで私には敵わないって」

 『Boost!!』

 宝玉から再び音声が発生し、宝玉に浮かぶ文字がⅠからⅡへ変わる。

 ドクンッ! 俺の中で二度目の変化が訪れ、目の前の敵を倒す何かが増していく。

 溢れ出す力を拳に乗せて一気に詰め寄る。

 

 「へぇ! 少しは力が増した?」

 俺の攻撃は再び避けられ、両手に形成した光の槍を投げつけてくる。

 スドンッ!

 俺の両足のももへ光の槍が貫き、血が吹き出る。

 

 「ぐあああああぁぁあぁッ!!」

 俺は絶叫を上げた。全身に激痛が走り、足が震えてきたが、こんなところで膝をつくわけに……はいかねぇ!!

 すぐ光の槍に手をかけた。

 ジュゥゥゥッ!

 槍を掴む俺の手を容赦なく焦がしていく。熱い痛い! 

 

 「光は悪魔にとって猛毒。触れるだけでたちまち身を焦がす。その激痛は悪魔にとって最も耐えがたいのよ。あなたのような下級悪魔では……」

 「それが……どうした!」

 俺は一気に槍を引き抜き、投げ捨てると宙に消え、空いた穴から鮮血が溢れ出る。

 

 「こんな攻撃で倒れてちゃ、俺を助けてくれたみんなに申し訳がたたねぇんだよ!!」

 『Boost!!』

 痛みが走る今でも、左腕の籠手は音声を発する。

 

 「大したものねぇ。下級悪魔の分際でそこまで頑張ったのは褒めてあげる」

 何時までも笑ってるあいつに近づこうとしたが、急に力が抜けその場でしりもちをついた。

 クソ……力が入らねぇ。足が、笑っていやがる

 

 「でもそれが限界ね。下級悪魔程度ならもう死んでもおかしくないのに、以外に頑丈ね」

 あーそうですか。俺みたいな悪魔はこの傷はヤバいってことですか。そうだろうな、体中に凄まじい痛みが走るし、中から熱で焦がされてるって感じだな。

 少しでも気を抜くと頭がおかしくなりそうだ。

 ……でもよ、やっぱこんなところで座ってちゃいけないよな。

 不意に俺は周囲を見渡す。木場と小猫ちゃんはまだ戦ってるし……ここにはいねぇ一輝は、フリードの奴と戦ってる。

 それに、アーシアが俺の事を見てる。女の子が見てる前で、倒れるわけにはいかねぇよな。

 

 「神様……じゃダメか。悪魔だから、魔王か? いるよなきっと。魔王、俺も一様悪魔なんで、頼み聞いてもらえますかね?」

 「な~にブツブツ言ってるの? あまりの痛さに壊れちゃった?」

 ホントうるせぇな。黙るって事しらねぇのか? 足を手を置き、ゆっくりと立ち上がる。傷口から血が止まる事無く出血してる。

 痛い。マジで気絶しそうだけど、動く。動ける。

 ……一発(・・)だ。一発殴れりゃそれでいい……それまでの辛抱だ。

 

 「! う、嘘よ! 立ち上がれる身体じゃないのよ!?」

 「今良い場面なんですよ。頼みます、後は何もいらないですから、コイツ(女堕天使)を一発殴らせてください!!」

 「体中を光が内側から焦がしてるのよ!? 光を緩和する能力をもたない下級悪魔が耐えられるはずッ!」

 「あーそうだな。チョー痛てぇよ。意識もどっかに飛びそうだけどよ、そんなのどうでもいいほど、てめぇがムカつくんだよ!!」

 『Explosion!!』

 その機械的な音声は、とても力強かった。

 宝玉が一層激しく光だす。すげぇ光だ。 それに、力が溢れてくる。

 これならいける。あのクソ堕天使を殴れる。絶対に撃ち損じはねぇ。

 

 「この魔力の波動は上級……いえ、それ以上(・・・・)!? あ、ありえないわ! その神器(セイクリッド・ギア)は、ただの龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)がどうして!!」

 怯えた様子で俺を見るレイナーレ。俺の力が上級? 原因は神器(セイクリッド・ギア)か? でもそんなのは関係ねぇ!! 

 一歩近づくと、光の槍を形成して投げてきた。

 俺は横殴りに拳を薙ぎ払った。光の槍はなんなく消し飛んだ。

 

 「い、いや!」

 それを見たレイナーレの表情が青ざめ、翼を羽ばたかせ逃げ出そうとした。おいおい、さっきまで嘲笑ってたじゃないか。勝てないと思ったら撤退ですか? 良いご身分だな……だが逃がさない! 逃がすわけないだろう!!

 俺は瞬間に駆け出し、腕を掴み引き寄せる。自分でも信じられない速度が出た。

 掴んだ腕は何とも頼りなく、弱々しく感じるほど細かった。

 

 「逃がすかバカ!」

 「わ、私は!」

 「吹っ飛べクソ堕天使ッ!」

 左腕に全身の力を込め、堕天使の顔面に打ち込んだ!!

 ゴッ!

 

 「うわああああああああああああああッ!!」

 声を上げ、一気に後方へ吹っ飛び割れたステンドグラスから外に落ちていった。

 一矢報いてやった。

 

 「ざまーみろ」

 堕天使を殴り飛ばし、力を使い果たした俺はその場に倒れこむように……。

 とん。

 俺の肩を抱く何か。見れば木場だった。

 

 「一人で堕天使を倒しちゃうなんてね」

 笑顔で肩を持ち、支えてくれている。なんだよ、木場もボロボロじゃねぇか。

 

 「遅ぇよイケメン王子」

 「君の邪魔をするなって、部長に言われてさ」

 「部長に?」

 「その通りよ。あなたなら倒せると信じていたもの」

 声のする方へ振り向けば、リアス部長が紅の髪を揺らしながら歩いてくる。

 

 「どこから?」

 「用事が済んだから、地下へジャンプしたのだけれど、ほとんどの神父が岩の礫に押しつぶされてメチャクチャだったわ」

 あ~確か、アレは一輝がやったんだよな。

 

 「ところで、一輝はどこにいるの?」

 ! そうだ。確か一輝はフリードを追いかけて教会の外に……。

 

 「ようやく全員そろったか」

 「一輝!」 

 教会の入口から一輝が戻ってきた。木場同様に制服が少しボロボロだ。

 

 「一輝。あなたどこに行ってたの?」

 「外でフリードと一戦やってました」

 「大丈夫でしたか?」

 あ。朱乃さんもいた。

 

 「無事ですが、逃げられました。クソ野郎のくせして逃げ足が速い」

 ……そっか。結局逃げられたか。でも全員無事なら良いのかな?

 

 「我は癒す斜陽の傷痕」

 気が付けば近くまで来ていた一輝が俺の傷口を魔法陣から発する光で癒してくれた。ってか回復もできるんですか一輝さん。

 光は約二十秒近く輝き、光が収まると魔法陣が消えるとすっかり傷穴が塞がっていた。掌の焼け爛れた皮膚も隣の木場もボロボロだったのに怪我が治っていた。

 

 「一応(・・)傷口は塞いでおいた。ただ失った血液まではどうも出来ない。大人しくしておけ」

 「言われなくてもそのつもりだよ」

 何せ疲労で体が重くてガタガタだ。これ以上は動きたくない。

 ふと気が付くと、小猫ちゃんが外からレイナーレを引きずって来た。

 

 「部長、持ってきました」

 持ってきたって、小さな身体に似合わず発言が豪快な子だ……。

 部長が目の前に立ち、気がついたレイナーレを見下ろす。

 

 「初めまして、堕天使レイナーレ。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の時期当主よ」

 「……グレモリー一族の娘か」

 「どうぞお見知りおきを。短い間でしょうけど」

 笑顔で言い渡す部長を、レイナーレが睨みつける……と、途端に嘲笑う。

 

 「……してやったりと思っているんでしょうけど、残念。今回の計画は上に内緒であるけれど、私に同調し協力をしてくれている堕天使もいるわ。私が危くなった時、彼らは私をっ」

 「彼らは助けに来ないわ」

 レイナーレの会話を遮り、部長はハッキリ告げ、懐から三枚の色違いの羽を取り出す。

 それを見たレイナーレの表情が曇る。

 

 「堕天使カラワーナ、堕天使ドーナシーク、堕天使ミッテルト。彼らは私が消し飛ばしたわ」

 「消し飛ばした?」

 「これは彼らの羽。同族のあなたなら見ただけで(わか)るわよね?」

 「部長は紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)と言う異名があるからね」

 滅殺……おっかない異名だな。そんな人の眷属になったのか、俺。

 部長が俺の左腕、神器(セイクリッッド・ギア)に視線を向ける。

 

 「イッセー、その神器(セイクリッド・ギア)……」

 「あ、はい。いつの間にか形が変わってって」

 「赤い龍(・・・)。そう、そういうことなのね」

 少しだけ部長の目元が驚いてるのは気のせいだろうか。

 

 「堕天使レイナーレ。この子、兵藤一誠の神器(セイクリッド・ギア)は単なる龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)じゃないわ。持ち主の力を十秒ごとに倍化させ、魔王や神すらも一時的に超えることが出来る力があると言われている、十三種の神滅具(ロンギヌス)の一つ。赤龍帝の籠手(ブースッテッド・ギア)

 マジですか、部長!? 俺神様倒せるの!?

 それが俺の神器(セイクリッド・ギア)の力。

 

 「神をも滅ぼすと伝えられている忌まわしき神器(セイクリッド・ギア)が、こんな子供に!!」

 「まあ、どんなに強力でもパワーアップに時間を要するから万能ではないわ。相手が油断してくれたから勝てたものよ」

 うっ。部長に釘を刺された。

 確かに、普通に考えてパワーアップする時間を普通は与えてくれる敵なんていないよな。

 

 「消えてもらうわ、堕天使さん」

 冷たい口調で告げ手を向けた瞬間、俺は眼を疑った。

 

 「一誠君」

 レイナーレの姿から、天野夕麻ちゃんの姿に戻っていた(・・・・・・・・・・・・・・・)

 夕麻ちゃん……。

 

 「助けて。あんな事言ったけど、堕天使として役目を果たすため仕方がなかったの。ほら、その証拠にコレ、捨てずに持っていたの。忘れてないわよね? あなたに買ってもらった。どうしても捨てられなかったの!」

 ……何で。何でまだそんな物持ってんだよ。俺は全身に痛みが走る中、近づこうとした。

 ドゴッ!

 

 「ガハッ!!」

 しかし、背後から突然イスが飛んできてレイナーレに直撃したのを見て足が止まる。

 

 「悪いが、その薄汚い口で喋らないでくれるか? 堕天使(ゴミクズ)が」

 ゾワッ。

 俺の背筋を冷たい悪寒が走る…………耳に入ったのは異常な程冷たい声と殺氣に当てられ身体が動かなかった。まるで氷漬けにされたかのように。

 殺氣の主は分かっている。一輝だ。 

 う……動かない。

 視線を動かせば部長や朱乃さん。木場も小猫ちゃん。アーシアも驚いた表情を浮かべている。だけど動く素振りは見えない。

 皆が動けない中、一人……一輝が堕天使に近づいていく。

 僅かに視界に移った一輝は、まるで能面のように感情が抜け眼が居座っていた(・・・・・・・・・・・・・)。後、俺の眼が可笑しいのか何時もの紅い眼じゃなく、不気味な程透き通るような蒼い眼(・・・)をしていた。

 

 「お前……何様のつもりだ? 一誠の恋心を利用し、次は自分の欲のためアーシアの神器(セイクリッド・ギア)神器を奪う始末……そして今度は命乞いか? 正真正銘のクズという事がよぉく(わか)った」

 ……怖い。俺は初めて一輝を怖いと思った。レイナーレを見てるはずなのに俺達まで睨まれてる感だ。

 レイナーレは完全に怯え、声も出さず恐怖に身体を震えさせていた。

 

 「これ以上お前が汚い声で喚かないよう、お前を氷像にする」

 一輝は、手を不規則に動かした直後。

 

 「凍結棺(フリーズ・コフィン)

 レイナーレが一瞬にして氷漬けになった。一輝の言う通り氷像だ。

 

 「…………死ね。腐れ売春女」

 ガシャアアァァァァァァァンッッ!!

 言葉を吐き捨て氷像のレイナーレを蹴り壊す。

 割れたステンドグラスから差し込む月光が細かく割れた氷に反射しキラキラと光る。 

 後に残ったのは、何とも言えない感情だけが残った。

 

 「グッバイ……俺の初恋」

 俺は静かに告げる。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。