ハイスクールD×D 蒼の継承者の物語   作:Yunnan

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スプライトドラゴンの名前がラッセーのままなのは、ほかに名前が思いつかなかったからです。


使い魔ゲットします!

一誠side

 「使い魔……ですか?」

 放課後、俺は部長に言われたことに訝しげな物言いで返す。隣にいるアーシアも困惑している。ちなみに一輝だけど、今日は急遽バイトが入ったらしく来てはいない。

 

 「そう、あなたとアーシアはまだ持ってはいなかったわよね?」

 使い魔。悪魔にとって手足となる使役すべき存在。俺達が必死こいてやってるチラシ配りとかは、普段使い魔たちの仕事なんだ。新人の仕事でもあるらしいけど……。

 ポンッ!

 部長が手品のように手を振るうと、軽い音がして小さな蝙蝠が現れた。

 

 「コレが私の使い魔。イッセーは会ったことがあったわね」

 「え?」

 俺が首をかしげると、再び音がして、悪魔っぽい格好をした美少女がいた。

 この女の子どっかで……! 思い出した。確か駅でチラシ配りをしてた子だ!

 何だ、部長の使い魔だったのか。

 

 「私のはこの子ですわ」

 次に朱乃さんが指を床に向ける。すると小さな魔方陣が出現し、そこから手乗りサイズの小鬼が現れた。

 

 「子鬼?」

 「……シロです」

 小猫ちゃんの腕には、首輪に鈴をつけた真っ白な子猫が抱かれていた。可愛いなぁ。

 

 「僕のは……」

 「ああ~。お前のはいいや」

 「アハハハ、つれないな」

 即否定の俺に苦笑いを浮かべるも、肩に小鳥を出現させていた。中々似合うじゃねぇか。

 

 「悪魔にとって基本的な事よ。主の手伝いから情報伝達、追跡にも使えるわ。臨機応変に扱えるから、イッセーやアーシアも手に入れないといけないわね」

 それは便利そうなんですけど……。

 

 「あの~。その使い魔さんたちはどうやって手に入れれば……」

 「部長、準備整いましたわ」

 アーシアの問いに答えようとした時、朱乃さんが報告する。準備が整った? 怪訝に思う俺とアーシアに部長は笑顔で告げてくる。

 

 「それじゃ、さっそくあなたたちの使い魔をゲットしに行きましょうか」

 有限実行。それが俺の主さまだった。

 

 

 

 

 

 転移の光が止むと、そこは見知らぬ森の中だった。

 

 「ここは……?」

 「悪魔が使役する使い魔の住みついている森ですわ」

 「ここで僕達も使い魔を手に入れたんだ」

 「……うん」

 使い魔の森。やたら背の高い巨木が周囲に生えていて、光もあまり届いていない森だ。

 

 「何が出てきてもおかしくない雰囲気だな」

 「ゲットだぜぃ!」

 「なっ!」

 「きゃっ!」

 突然響いた声に俺とアーシアは驚き、体が飛び上がってしまった。

 

 「だ、誰だ!?」

 声をした方を見ると、野球帽子を逆に被りラフの格好をした老け顔の青年? が木の上に立っていた。

 

 「俺は使い魔マスターのザトゥージだぜぃ!」

 「使い魔……」

 「マスター……?」

 こんなおっさんが使い魔マスター?

 

 「ん~、今宵も良い満月。使い魔ゲットに最高だぜぃ! 俺にかかればどんな使い魔でも即日その場でゲットだぜぃ!」

 ……何かいやにゲットって所を強く言うな~、このマスターさんは。大丈夫なのかな?

 

 「彼は使い魔に関してプロフェッショナルですのよ」

 「はぁ」

 「さぁて、どんな使い魔がご所望なんだぜぃ? 強いの? 早いの? それとも毒持ちとか?」

 「そうっすねぇ、可愛い使い魔とかいますかね? 女の子系とか」

 俺の要求に、ザトゥージさんは途端に不機嫌な表情で舌打ちをする。

 

 「チッチッチ! これだからあ素人はダメなんだぜぃ。使い魔ってのは有能で強いのをゲットしてナンボだぜぃ。すなわち個体を把握して、尚且つ自分の特性を補うような……」

 「あのぅ、私も可愛い使い魔が欲しいです」

 「おおぅ! (わか)ったよぉ!」

 わけの(わか)らねぇ理論を語りだしたと思ったら、アーシアのお願いでやめて即返事をする。……なんなんだこいつ。

 

 

 

 

 

 「この湖にはウンディーネと言う水の精霊が住み着いているんだぜぇ」

 ザトゥージの案内で着いた場所は透明度の高い湖。キラキラと輝き、神聖な様相を見せている。

 ウンディーネ……乙女! 清い! 美しいの三拍子揃い! 未来のハーレム王としては近くに置きたい。

 耳かきとして膝枕させて、そしてそっと手を伸ばし、神秘溢れて止まないその、お、お、お、おっぱいをッ! たまらん! たまらなく興奮してきた!!

 

 「あ、湖が!」

 木場が指摘した場所が輝きだした。

 

 「お! ウンディーネが姿を現すぞ」

 「おお!」

 俺は嬉々としてその場所へ視線を送った。さあ! 俺を幻想的な世界へ連れて行ってくれッ!

 そこに現れたのは、キラキラと輝く金髪を揺らし羽衣を身に纏った……巨躯の存在。

 

 「フンガァァ―――――――ッッ!!」

 「な、なんじゃありゃ―――!?」

 「あれがウンディーネだぜぃ」

 ザトゥージさんの残酷な言葉が俺の耳に届く。

 

 「いやいやいや! どう見てもあれは水浴びに来た格闘家ですから!! ほらあのぶっとい上腕二等筋、どう考えても人間の肉体を破壊するために鍛えこんだものじゃないか!」

 「ウンディーネは縄張り争いが耐えないからねぇ。腕っ節が強くないと湖をゲットできない。精霊の世界も実力主義なんだぜぃ。にしても運が良いぜ少年、アレはレア度が高い! 打撃に秀でた水の精霊も悪くないぜぃ」」

 「悪い! 癒し系っつうか殺し系じゃねぇか! あんな筋肉(マッスル)ウンディーネなんてはいらないんだよ、俺は!」

 俺は無念の涙を流しながら慟哭した。何だよ打撃系って!? 普通、精霊って精霊魔法とかそういうので戦うんじゃないのかよ!!

 

 「でも、アレは女性型(・・・)だぜぇ」

 「!! 最も、知りたくない事実でした」

 その一言を聞いた瞬間、俺は崩れ落ち号泣した。

 何故だ! あれが娘っこですかぁぁぁ!? こんな残酷な話があってもいいのか!?

 

 「イッセー、世界は常に動いているわ」

 俺の肩に手を置き、部長が言う。そんな変動はいらないっス!

 

 「あ、もう一体現れました」

 朱乃さんの声を聞き、次こそはと期待の眼差しを向けて……。

 

 「ヌンガァァ―――――ッッ!」

 同質の肉体した水色の(精霊)がマッスルポーズで現れた。

 …………。

 

 「うぅ、うおおおおおおおん」

 「イ、イッセー君、そんな嗚咽を漏らすほどのことじゃないの?」

 「木場ぁぁぁぁ。俺はファンタジーに夢を見ていたんだ。幻想的な美を求めていたんだ。部長は超綺麗だから、夢を持ってしまうじゃないか。なのにあれぇ。どうして俺は総合格闘技の登場シーンみたいなものを見なければいけないんだッ! ファンタジーなんて大嫌いだ!」

 「大丈夫。イッセー君の夢が叶うファンタジーもあるよ、きっと」

 大号泣する俺の背を木場がさすって慰めてくれた。イケメンは嫌いだけど、ホントに良い奴だと思う。

 

 「お! 見ろ」

 ザトゥージが指差す。見れば、厳ついウンディーネが互いに睨みあってた。激しい敵意が辺りを支配し、両者が闘気で歪んでいた。すると……。

 

 「「フンガァァーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」」

 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 突然ラッシュが始まり、物凄い勢いで拳と拳がぶつかり合っている。轟音が周囲に響き渡り、水面が振動で揺れだし、空気が振動を伝えてくる。神聖な雰囲気を出す湖から一転して、闘技場と化していた。

 ……何してんの、この子達は?

 

 「縄張り争いだ。しかも、どちらも歴戦の猛者みたいだな」

 顎に手をやり、一人冷静に分析しながらザトゥージさんが頷いている。

 

 「縄張り争いって……。もっと、ファンタジーな戦いをするんじゃないですか? 精霊魔法とかそう言うのないんですか?」

 「所詮、腕力が物を言う。悪魔と同じね」

 「……部長、帰っていいスか? そろそろ泣きますよ?」

 もう泣いているけど……帰りたい! マジで帰りたいよ! ゲットしたって魔法とか使ってくれそうにない。癒しでもないもん!!

 

 「ハハハ! 見ろ、少年! 勝った方がキミの使い魔だ! ウンディーネの頂上決戦! 素敵なアドベンチャーだぜぃ!」

 「ハハハじゃねぇぇぇぇ! アドベンチャーうるっせぇよぉぉ! こんなアドベンチャー願い下げだ!」

 「な、名前はウンディーネのディーネちゃんで良いでしょうか?」

 目の前の試合をハラハラしながら見てるアーシアが呟く。

 え!? ゲットするきまんまんなの、あんな子!?

 

 「アーシア、あのディーネちゃんはどう考えても俺たちの手に余る。あの子は諦めて別の使い魔にしよう! うん、それが良い!!」

 「で、でも、ディーネちゃんはきっと孤独に生きていたに決まってます……。私には(わか)るんです」

 「そうだとしても、あの子は一人で生きていける。ほら、どう見ても強敵を破壊できる肉体してるし、ディーネちゃんは諦めよう」

 「おい! 今ディーネちゃんが筋肉バスター喰らったぞ! どうする?」

 「テメェは黙ってろザトゥージィィィィィ!」

 「はぁ……。ったわ。とりあえず、他の場所に行きましょう。これでは埒があかないもの」

 嘆息しながら部長が言う。

 こうして俺たちはディーネちゃんを諦め、違う場所へ移動するのだった。

 

 「でもあの子、清い目をしていました。きっと心の清らかな女の子に違いありません」

 ……うん。アーシア、頼むからアレを女の子と呼ばないで。さっきから涙が止まらないんだ。ってか、あの筋肉ダルマの目が清い目ってのが(わか)るのね。

 暫く歩いていると、ザトゥージさんが歩みを止めた。

 

 「待て……見ろ」

 指指す方を見ると、巨木の枝でオオワシくらいの大きさの蒼いドラゴンが羽を休めていた。

 

 「ドラゴン?」

 「可愛いです!」

 「蒼雷龍(スプライトドラゴン)。蒼い雷撃を使うドラゴンの子供だぜぃ」

 「これはかなりの上位クラスですね」

 「私も見るのは初めてだわ」

 部長と木場が羨望の眼差しでドラゴンを見る。

 

 「ゲットするなら今だぜぃ。成熟したらゲットは無理だからな」

 「一誠君は赤龍帝の力を持ってますし、相性は良いんじゃないかしら?」

 成る程……可愛い使い魔も良いけど、レアなドラゴンで十分! 蒼雷龍(スプライトドラゴン)、君に決めた!

 

 「キャッ!」

 ……と、決意を胸に秘めたときだった。

 アーシアの悲鳴が上がる。何事かと振り返ってみると……ネバネバしたゲル状のものがアーシアを襲っていた!

 

 「こ、これは!」

 部長の驚愕した声! おおっ、部長にも朱乃さん。子猫ちゃんにまで降りかかっていた。

 見れば女子全員が襲われていた。

 

 「スライムか! ……うあ!」

 剣を抜いた木場にも襲い掛かった。スライム! ゲームでもお馴染みじゃないか!

 まさか毒とか持っていないよな!? そんな危機的な予感が脳裏をかすめるが、次の瞬間、その考えは吹っ飛んだ。

 

 「ふ、服が」

 アーシアの言うとおり、スライムが制服を溶かしていた! 制服が溶けはじめ下着が露になる。

 ブッ! 吹き出る鼻血を手で押さえ、見続ける!!

 

 「な、何て素敵な展開!」

 ドゴッ!

 

 「ぬごぉっ!」

 小猫ちゃんが大事な部分を隠しながら俺を殴る。

 

 「……見ないでください」

 「そんなこと言ったって、皆のピンチ黙ってられなくて……」

 その間もスライムは下着をどんどん溶かしていく。

 

 「うぅ……これじゃ魔力も使えないわ」

 「あらあら、これは困りましたわ」

 部長! 朱乃さん! その前に、脳内保存脳内保存!

 俺の後ろで木場が顔についたスライムを剥がそうと奮闘中だが、俺の知ったことじゃない! 

 

 「こいつは布地を主食とするスライムだぜぃ。女性の衣類を溶かす以外害は無いんだが」

 服を溶かすスライムだと!? 素晴らしいじゃないか!!

 

 「部長! 俺このスライムを使い魔とします!!」

 「あらあら! そこはいけませんわ」

 うぉ――! コイツこそ、まさに俺が探していた逸材!!

 

 「あのねイッセー。使い魔は悪魔にとって重要なものなのよ? ちゃんと考えなさい」

 部長の言葉に俺は暫く考え込むが……。

 

 「考えました。やはり使い魔にします!」

 しかし俺の決意を部長は聞かず、部長が魔力でスライムを焼いていく!! ウォアァァァァ! 俺の使い魔がぁぁぁぁ!

 

 「あらあら。ゴメンなさいね」

 あああああああっ! 朱乃さんが雷でスライムを消し炭に! 俺の! 俺の使い魔ちゃんが昇天していくぅぅぅぅぅ! 小猫ちゃんもスライムを引きちぎったり、木場も剣で斬っていた。やめて! 俺のスライムちゃんをいじめないで!

 俺はアーシアに残っているスライムを守ろうと抱きしめる。

 

 「どきなさいイッセー。こんな生き物は焼いてしまうに限るわ」

 今にもスライムを焼こうとする部長が無情にも言う。酷いぜ!

 

 「嫌です! このスライムは、正しく俺と出会うためこの世に生を受けたに違いありません。これぞ正しく運命! もう他人じゃないんです!!」

 この残ったスライムだけでも死守する! このスライムは大事な友達! 仲間なんです!

 

 「あぁ、スラ太郎。我が相棒よ!」

 「もう名前まで……」

 「森の厄介者をここまで欲しがる悪魔なんて初めてだぜぃ。全く世界って広いぜぃ」

 木場には若干呆れられ、ザトゥージさんは心底驚いた様子で言う。

 

 「普段は良い子なのよ……でもあまりにも欲望に正直すぎる体質で」

 悲哀に満ちた表情の部長が、かわいそうな子を見るような眼で俺を見てくる。そんな眼で見ないでください! コイツを使って、俺は雄々しく羽ばたきます!

 バリバリバリバリッ!

 

 「ぬがぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 突然俺の体を雷が走りぬけた。……な、何が? 上を向くと、蒼雷(スプライトドラゴン)が俺達の近くを飛んでた。

 ってああぁ!! 見ればスラ太郎が見事に焼かれ死んでいた!

 

 「蒼雷龍(スプライトドラゴン)の雷撃?」

 「スラ太郎! テンメェ……」

 「ガ――ッ!」

 バリバリバリバリッ!

 

 「アガガガガガガッ!?」

 俺はまた雷を食らって、今度こそ地面に突っ伏した。

 

 「一誠さん!」

 アーシアが近づこうとしたが、先に蒼雷龍(スプライトドラゴン)がアーシアの肩に下りた。

 

 「……これは」

 「そいつは敵と認識した相手しか攻撃しないんだぜぃ。つまり少年とスライムが金髪の美少女を襲ったと思ったんだぜぃ」

 「と言う事は、つまり」

 ス……蒼雷龍(スプライトドラゴン)はアーシアに懐いたって事か?

 

 「可愛い」

 「決まりだな。美少女、使い魔ゲットだぜぃッ!」

 

 

 

 

 

 「……ア、アーシア・アルジェントの名において命ず! 汝、我が使い魔として、契約に応じよ!」

 森の入り口に戻ってきた俺達。目の前でアーシアが緑色の光を放つ魔方陣を展開していた。魔方陣の中央には蒼雷龍(スプライトドラゴン)……子ドラゴンがいて、アーシアと使い魔の契約儀式を執り行っている。

 初心者のアーシアなので朱乃さんがサポートしている。でも、順調に契約儀式は進んでいるし、朱乃のさんも安心のご様子だ。俺と違ってアーシアは優秀だよね。

 そうこうしている内に魔方陣の光が消えていく。契約が完了したのか、がアーシアのもとへ羽ばたきじゃれつく。

 

 「うふふ。くすぐったいです。ラッセーくん(・・・・・・)

 「ラッセー?」

 俺が子ドラゴンの名前らしきものに疑問を持つと、アーシアが答える。

 

 「はい。雷撃を放つ子ですし、イッセーさんからも名前をいただきました。雷撃を放ちながらもイッセーさんみたいに元気な子でいてほしいと思ったので。……迷惑でしたか?」

 「いや、それは良いけどさ……まあ、良いや。よろしくな、ラッセー」

 俺が子ドラゴンに近づいた瞬間、体が蒼く発光して……え?

 ビリビリビリビリビリ!

 

 「ウガァァァァ!」

 ……な、何故ラッセーくんが俺に無慈悲な電撃を?

 

 「あ、言うの忘れたがドラゴンのオスは他の生物のオスが大嫌いなんだぜぃ」

 それを先に言えぇぇぇぇぇ!

 

 「やんちゃね、ラッセーは」

 「うぅぅ。どうして死んだ!? 我が友スラ太郎! あの素晴らしい力をぜひともこの手に!!」

 「……スケベ死すべし」

 小猫ちゃんのキツイ一言が俺の心をえぐる。

 こうして俺は、使い魔を見つけることが出来ず、ただ心身ともにボロボロの一日になった。

 

 

 

 

 

???side

 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 真っ暗な道。私は体中から訴える痛みを我慢して、奴ら(・・)から逃げている。

 

 「見つけたぞ黒歌(・・)!」

 ! 背後から飛んできた魔力を避け損ねて足をかすめる。イッツ!!

 倒れこむ私を睨みつけ近づいてくる数人の悪魔。

 

 「散々逃げ回りやがって……年貢の納め時だな黒歌」

 「ウゥッ!」

 男が近づいて私の髪を掴み上げ顔を合わせる。荒く掴んだおかげで髪が何本か抜けた……この、クソ野郎が。

 

 「我らの主の好意を踏みにじり、あまつさえ主と仲間を殺害し逃げ出す。その行いは万死に値する」

 ……好意? アイツのあれが? 笑わせないでよ。

 

 「あいつは私の妹の命を危険にさらしたのよ? あんな奴を殺したことに後悔してないわ」

 「口に気をつけろ大罪人が!」

 空いている片方の腕で私の顔を殴りつけてくる。女の顔を殴るとか、最低。

 

 「にしても、このまま殺すってのも何か勿体無くねぇか。コイツ」

 「そうだな……腹いせに殺す前に犯してから殺すってのもいいな」

 !! 冗談じゃない! こんな奴らに犯されるなんて……!

 下卑た笑みを浮かべ近づいてくる悪魔に気づかれないように、残った力を振り絞って近くにあった木を仙術で氣を乱し、枝を鞭のようにしならせ四肢に巻きつかせ拘束する。

 

 「っこの阿婆擦れ!!」

 男は激昂し魔力を放ってくるが、間一髪で躱し逃げ出す。悪魔は獲物を手にした剣で枝を切り払い、再び私を追いかけてくる。

 私は、死ぬわけにはいかない……(白音)に会うまで、絶対にッ!! 

 痛みを訴える体を無視してがむしゃらに走り角を曲がった瞬間、誰かにぶつかり倒れこむ。

 まさか、先回りされた!?

 顔を上げた先には追跡してた悪魔じゃなくて……綺麗な白髪に白い肌。宝石のルビーに似た紅い眼が印象の普通の人間の男だった。

 これが、私と一輝の出会いだった。

 

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