夜這い?
夜這い?
一誠side
『起きやがれ、クソガキ』
ッ!? 突然頭に響く声に俺は飛び起きた。低く、迫力のある声だ。聞き覚えの無い声……なのに、俺は
『そうだ。俺はお前のそばにいる』
……誰だ? 周囲を見渡してみると、そこは俺の部屋じゃなく辺り一面真っ暗だった。ていうかさっきまで寝てたはずだよな? ここどこだ?
目の前が真っ暗で、何も見えない。耳も聞こえない。……一体何なんだ? さっきの声は誰だ?
『俺だ』
うわッ! 声は出ないが、俺は心中で心底驚いた。当然だ。目の前に巨大な怪物が姿を現せば誰でも驚くさ。
大きな目。血のような赤い瞳。耳まで裂けた口に鋭い牙が何本も生え揃っていた。
頭部にも太い角が並び、全身を覆う鱗はマグマのように真っ赤だ。巨木のような腕、足。鋭角で凶暴そうな爪。
何より、バッと広がっている両翼がこの巨大な怪物を一層デカく見せていた。
俺の眼前に……巨大な怪物……俺の知ってるものの中で一番似ているとしたら。ドラゴン。
『そうだ。その認識で良い。俺お前にずーっと話しかけていた。だが、お前が弱小すぎたせいか、今の今まで俺の言葉が届かなかっただけだ』
ッ! 何わかんないこと言ってんだ。わけが
ずっと話しかけてた? 何なんだよ一体!
『挨拶をしたかっただけさ。これから共に戦う相棒としてな』
相棒? お前は一体……。
『お前はもう分かっているはずだ。そうだろ? 相棒』
途端に左腕が光りだした。視線を移すと、左腕は
う! うわぁぁぁぁッ!!
「うわあああああああ!!! はぁ、はぁ、はぁ……」
目に映ったのは、いつもの俺の部屋の天井。伸ばした左腕は、あの鱗に包まれた異形なものじゃなかった。
目覚まし時計を見れば、まだ起きる一時間前だ。
「はぁ、はぁ、はぁ……な。何なんだ、あれは?」
俺はベッドから起き上がり座り直し、さっきの出来事を思い返す。
『俺はお前にずーっと話しかけていた』
『これから戦う相棒としてな』
俺に話しかけていた? 戦う相棒? ……何なんだ一体? あのドラゴンは?
「ブーステッド・ギア」
俺の左腕にある
「あのドラゴンと何か関係があるのか?」
俺はベッドに倒れ込む。
その時俺は気づかなかった。甲にある宝玉が淡く光っていたのを。
一輝side
「良いお天気ですね、一輝さん。今日は体育で一年生と合同授業でソフトボールをやるんですよ。私、初めてなので今から楽しみなんです」
「……楽しみです」
俺の家で小猫と黒歌が暮らすようになってから数日後。通学路を俺とアーシアに小猫の三人で歩いていた。俺が真ん中で左にアーシア。右に小猫だ。
黒歌は基本的家で寝ているか、猫になって町を散策している。
突然新たに二人増えた事を、両親に話した……話したんだが。
『あらあら良いじゃない! 小猫ちゃんのお姉さんが見つかって!! それにせっかく再会できた姉妹なんですもの。家を我が家のように使っても良いわ。それでいいわよね徹さん?』
『うむ』
ってわけであっさりと黒歌と小猫が我が家で住むことが決まった。こんな簡単に決めて良いものなのか?
……しかも困ったことはそれだけではない。それは
俺が風呂に入って入れば、『一緒に入るにゃ♪』て言ってはバスタオルを巻かず平然と入りに来るわ、夜中に裸でベッドに潜り込んでくる。後は体を押し付けてくる・
正直言ってだ……そのだな、スタイルバツグンの黒歌の身体は正直言って、眼の毒だ。ワザと見せつけてくる。まぁ、俺の
その黒歌の行動に光景にアーシアは涙目、小猫は拗ねた表情で見ては対抗してくる始末だ。このままじゃ二人に悪影響を及ぼしかねない。
「それに加え……」
「どうして、アルジェントさんと小猫ちゃんが一輝と同じ方角から通学しているんだ」
「何でも、親の事情で同棲してるらしいわよ」
「何それ良いな~。羨ましい」
「私も親の事情で一輝君の家に同棲したいな」
「クソゥ。美少女2人に囲まれての登校……羨ましいぞコノヤロウ! 天罰にでも当たっちまえ!」
……登校中、周囲の妬みや羨望の視線が俺に突き刺さるもんだから精神的にも疲労が蓄積する。
俺が異常に疲弊してんのを知らずよくもまぁそんなこと言えるもんだな。俺は間違いが起きないよう耐えてんだぞ?。コレの何が羨ましいんだまったく……モテない
「あの、一輝さん。どこか具合でも悪いのですか?」
「先輩……大丈夫ですか?」
「気にするな。問題ないさ」
二人の頭を撫でて安心させる。二人は嬉しそうに笑みを浮かべると腕を掴んで抱き寄せてきた……胸が当たっているが、偶然だろな。そう偶然だ偶然偶然。故意的じゃない。
それを見た男子から殺氣が飛んでくるが、実力の差を理解してるのか襲っては来なかった。正しい判断だ。今の俺に襲い掛かれば確実に病院行きは決定だからな。
学園に到着し、下駄箱で小猫と分かれ教室まで移動する。
「「うぉい一輝!!」
席に座るなり松田と元浜が駆け寄ってきた……到着早々に面倒な奴らに絡まれたな。
「何だ? こっちは疲れてるんだ。要件は手短に済ませ」
「一輝貴様! アーシアちゃんのみならず小猫ちゃんとも同棲してるとはどういうことだ!? 納得のいく説明を要求する!!」
「一体どんな手口で口説いたんだ!! 教えろ!!」
「小猫にも色々と事情がある。お前たちに話すことは無いから目の前から消えろ。目障りだ」
「うるさい! 俺たちの質問に答えてもらうまで戻らんぞ!!」
……あぁイライラしてきた。いい加減キレそうだ。
「生活はどうやってるんだ!? 朝は毎朝起こしてもらっているのか!?」
「私と小猫さんは、一輝さんとイッセーさんとトレーニングを一緒にやっているので自分で起きてますよ。お休みの日には寝坊しちゃいますけど、その時は一輝さんが私の部屋にきて小猫さんも一緒に起こしてくれます」
「ダニィ!? じゃ、じゃぁ。ご飯をよそって貰ったりとか……」
「基本的義母さん。もしくは俺が食事を作っている。休日にはアーシアや小猫も手伝ってくれる。気が利いて助かっている。最近はアーシアや小猫も徐々にだが料理も上達して簡単な料理なら作れる。今日の夕飯は……たしかアーシアと小猫が作ることになっているから、楽しみだな」
本当はそこに黒歌が加わって三人なんだが……黙っておこう。うっかり口を滑らせれば更に面倒ごとになる。
「そんな……照れますよ」
頬に手を当て顔を赤くする。それを見た二人は崩れ落ちた。本当に相手にするのが面倒だ。別に彼女がいなくても死にはしないだろうし……なにをそこまで必死になって女を作りたいんだか。
「お前ら、そんなに彼女が欲しいんなら一誠に頼めよ。友人なんだろ?」
「「そうか!!」」
急に立ち上がり今度は一誠に向かって突撃していった。やれやれ、やっと静かになったわ。
机にうつ伏せになり一誠達を見ると、一誠が誰かに電話しながら内容をメモした紙を渡すと大いに喜んでいた。お気楽な奴らだ。
HRまでの時間、俺は睡眠に割り当てた。
「うぅ~……
「大丈夫ですか、イッセーさん」
「自業自得です」
放課後。部室では顔面をボッコボコにされた一誠がアーシアの治療を受けていた。俺の膝の上では不機嫌な小猫がお菓子を食べていた。最近は俺の膝がお気にいりらしい。
一誠が
「まったく。あなたはどうしてそう」
「いや~。友人に誘われてつい……ハハ」
訳を聞いたリアスは苦笑いを浮かべていた。つい、で済まされる問題じゃねぇだろ。何で今まで停学や退学にならないのが不思議だ。
「僕の裸ならいつでも見せてあげるのに」
スマイルを浮かべ冗談を言う木場に、一誠は怒りをぶつける。
「黙ってろ木場! 俺は野郎の裸を見たいんじゃなくてスタイルバツグンの女子や発育不足の身体を眺めていてぇんだよ!!」
「……発育不足」
「ご、ゴメンよ小猫ちゃん! 別に小猫ちゃんの事を言ったんじゃないよ!!」
小猫だけじゃなく随分と失礼な発言だな……十分な差別発言だと思う。黒歌が訊いたらキレるぞ。
それから他愛もない話をしてると、時間になったので部室を出て三人で帰宅する。
早めに帰った俺は制服から着替え庭で套路の練習。アーシアと小猫は義母さんと台所でで夕飯の準備をしている。黒歌はまだ帰って来てない。基本的に飯前には必ず帰ってくる。
「…………風呂入るか」
套路を汗をぬぐい、風呂場に向かう。服を脱ぎトビラを開けると……。
「「あ……」」
小猫とアーシアが入っていた。
「す、すまない! すぐに出て行く」
踵を返し出ようとしたが、腕をつかまれた。
振り返ると小猫とアーシアが顔を赤く染め俺の腕を掴んでいた。。な……何故止めたんだ?
「……す、すみません。そ、その。いきなり入ってこられましたから」
「あ。いやその、俺の方こそ悪かった。すっかり夕飯の準備をしてるのかと勘違いして……小猫も悪かった」
「……大丈夫です。私も
小猫は顔を赤く染め耳と尻尾をせわしなく動かしながらも俺を見ている。
「でも、桐生さんから日本でのお風呂のルールは教えてもらっていますから、大丈夫です」
…………は? 風呂の、ルール? 何だそれは?
「に、日本のお風呂では……は、裸のお付き合いがあると桐生さんから訊きました」
あ、あのメガネ女! 何へんなこと吹き込んだんだ!!
「……お風呂で交流をすることで……お、互いをもっと深く知り合う……て」
「あ、アーシアに小猫! あながち間違ってはいないが、それは別の……うわッ!」
「きゃっ! 一輝さん!!」
「!! 危な……にゃ!!」
振り返ろうとした時、足が縺れ体制が崩れる。アーシアと小猫が支えようとしたが、運悪く足を滑らせる。
ヤバい!! 俺は咄嗟に二人を抱き留め転倒するのを防ぐ。ハァ。危なかった。
「大丈夫か? 二人……」
「やったにゃー! 今日はお風呂一番乗りにゃ♪」
そこまで言って、俺は言葉を失う。振り返れば着物を脱いだ黒歌が入ってきた。
黒歌は俺達に気づくとその場で止まり数秒程言葉を失い…………大声を上げた。
「あ――――っ!! 一輝が二人を抱いてる――――――っっ!!」
「誤解を招くから叫ぶな黒歌ッッ!!」
「っ……疲れた」
ボフンと自分のベッドに再び倒れこむ。
ハァ、今日は厄日か何か? まったく……なんで俺があんな目にあわなきゃいけないんだ。
騒ぐ黒歌を何とか宥めさせ、洗浄魔法で身体を綺麗にし風呂場から出て夕食の準備を終わらせ『先に食べてくれ』と伝え部屋に戻ってきた。
……腹減ったし、飯食いに行くか。起き上がり部屋を出ようとした瞬間だった。
カッ!
突然、床が光りだし円状に展開し覚えのある模様を描く。これはイッセーたちが転移に使用している、グレモリー眷属の魔方陣。
誰なんだ? こっちは腹が減ってるんだが。
魔方陣の光が徐々に強くなり、部屋に転移して来た人を見て驚愕した。
「……部長?」
魔方陣から転移してきたのは部長本人だった。何だ? 何で俺の部屋に来たんだ? 疑問に思う俺をよそに近づくなり。
「一輝。私を
そう言い俺をベッドに押し倒す。
「はい?」
部長が言った一言に俺は言葉を失う。何て言った? ……抱く? 誰を? 部長を?
「私の処女を貰ってちょうだい。至急頼むわ」
頬を赤く染め、恥ずかしそうに告げてくる。
……これは幻聴なのか? そうだ幻聴だ。疲労で訊き間違いなのかもしれない。あの冷静な部長がこんな事を言うはずがない。
「ほら。そこに倒れていないで、早く支度をしなさい。私も支度をするから」
俺から離れると部屋の明かりを消し、制服を脱ぎだした…………って本気なのか!?
「ちょ! ちょっと待って下さい部長! これはなにかの冗談ですか? さすがに笑えないですよ!!」
「冗談じゃないわ。私は本気よ。それとも……私では、ダメかしら?」
「ダメとかじゃなくて! 急に人の部屋に転移してくるなり、私を抱いてとか言われましても意味が
「色々と考えたけれど、これしか方法がないの」
俺の言葉を訊いていないのか制服を全て脱いだ部長は、黒い下着だけの姿になり俺に近づいて来る。
近づく度後ろに下がるが、背が壁に触れた。逃げようとする俺の前に座り込んで迫ってくる。
「
「裕斗ではダメ。彼は根っからのナイト。絶対に拒否するわ。イッセーは色々と先走りしそうだし。それに私はあなたになら……」
? 最後のほうは訊き取れなかったが、何が彼女を焦らせているんだ?
クッソ。こうなったら。
「
部長に気づかれないよう打ち込み記憶を読み取る。
…………成程。そういことか。
「部長……お家事情があるとはいえ、既成事実を作り
「!!」
一瞬身体が硬直する。その隙に俺は部長から距離を取り、彼女の制服の上部分を羽織らせる。
「そう軽々と男の前に素肌を皿晒し、抱いてくれなど軽率な行動は取らないでください。部長らしくもない。普段のあなたならそんなことしないでしょう」
「……なら。これだけでもいいかしら?」
「何ですか?」
「隣に座って。肩を抱いてほしいの」
……それくらいなら大丈夫か。
「
言われた通り、部長の隣に座り彼女の肩を優しく抱きしめる。
「ありがとう一輝。私も家の事情を聴いて冷静さを失ってたわ」
「今後二度と無いよう頼みますね」
部長が離れると、落ちた制服を拾い着替え始めたので後ろを向き耳を塞ぐ。着替え終えた瞬間、再び部屋の床が光りだした。
今度は誰だ? いや。それよりもこの部屋を他のメンバーにでも見られたらヤバいな。特に一誠とかに。
内心焦っていると、現れたのはオカルトメンバーではなく、一人の綺麗なメイドだった。俺と部長を見て口を開こうとしたが、先に部長が話し出した。
「大丈夫よグレイフィア。一輝とは何もなかったわ」
「一輝? この方が……」
「ええ。
「そうですか……初めまして。私はグレモリー家に仕えるグレイフィアと申します。以後お見知りおきを」
「こちらこそ初めまして。私は出海一輝と言います」
互いに挨拶をすると、部長が訊き出す。
「話は私の根城で聞くわ。朱乃も同伴で良いわよね?」
「雷の巫女ですか? 構いません。上級悪魔たる者、傍らに
頷くと俺に近づいてきて頬にキスを……おい!
頬を押さえ後ろに下がる俺を面白そうに笑みを漏らす。
「迷惑をかけたわね。一輝、明日部室で会いましょう」
別れを告げ、グレイフィアさんと共に魔方陣で消えた。静かになった部屋で、俺はベッドに身を投げ出す。
はぁ…………なんだか、今日は精神的に疲れた。
翌日。何時も通りアーシアと小猫と一緒に登校中、欠伸をかみ殺す。
寝る直前、黒歌が部屋に来て『あの紅髪女の匂いがするにゃ――――ッッ!!』と騒ぎ出した。匂いに敏感すぎだろう。
あの後、黒歌と小猫にアーシアに何故俺の部屋から部長の匂いがするのか説明(もちろん。下着姿になって迫られた部分は省いてな)。納得してもらうまで数時間かかり、何故だか知らんが罰として添い寝をさせられた……解せぬ。おかげで完全に寝不足だ。
「大丈夫ですか?」
「ああ……少し寝不足なだけだ」
眠気を我慢し学園に向かっていると……。
「イッセェェェェェッ!!」
「貴様って奴はぁぁッ!!」
反対側から来た一誠が、後方から走ってきた松田にラリアットを喰らい倒れこんだ場面に出くわした。後から来た元浜も一緒でキレていた。
「な、何? 朝から過激だねキミ達」
「ふざけるな! ぬわぁにがミルたんだ! どう見ても格闘家の強敵じゃねぇか!」
「しかも何でゴスロリ着てるんだ、最終兵器か!?」
二人はこれまでに無いほどの怒りをぶつけていた。一誠……お前何をしたんだ。
「ほら、魔女っ子に憧れてる可愛い男の子だっただろう?」
「男の子って言えるかッ!!」
「そのうえ漢字の漢と書いて
「怖かったよぉぉぉぉ。死ぬかと思ったんだぞこの野郎ォォ。魔法世界についてな、永遠に語られたんだぞ!? 何だよ魔法世界セラビニアってよぉぉぉッ!! 知らねぇぇよそんなのはよおおおぉぉぉぉっっ!!!!」
「イギャ――――――――ッッ!?」
身体を震わせる二人を一誠は苦笑いで見ていたが、二人に袋叩きにされる。
「あ、あの~。どうしましょう」
「喧嘩するほど仲が良いと言うだろう? あれが良い例だ。ほっといて学校に向かうぞ」
「「……はい」」
三人を放って学園に向かう。