ハイスクールD×D 蒼の継承者の物語   作:Yunnan

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強化合宿後編

一誠side

 合宿二日目。

 朝起きたら全身を筋肉痛が襲った。だって夜中も修行があったんだもん。

 

 「夜には夜の練習があるわ。元々夜の住人だものね、私達」

 と部長。毎日行っている部長との朝の練習のよりも結構ハードでした。昼の数倍の練習量だもん。いくら夜に悪魔が活動的になるからって、昼夜問わず練習したら死ぬ。ちなみにだが、一輝は途中で練習を切り上げ一人早く寝やがった。解せぬ。

 木場や一輝と一緒の部屋ってだけでテンションが下がったのに、二階から女子の楽しげな会話が聞こえてきた時、生まれて初めて男に生まれてきて後悔した。

 で、二日目の午前中は勉強会だ。

 リビングに集まり、俺とアーシアに悪魔の知識を教えることになった。

 何やら朝から難しい名前や事柄を教えられた。わけの(わか)らないことばかりで頭がパンクしそうです。

 ある程度教えてもらったところで、木場と一輝が問題を出してくる。

 

 「僕ら悪魔の仇敵、神が率いる天使。その天使の最高位の名前は? さらにそのメンバーは?」

 「えっと、熾天使(セラフ)だろ。メンバーは……ミカエル、ラファエル、ガブリエル……うーん、ウリエルか」

 「正解」

 ふぅ。合ってたか。全員が最後に()がつくのだけは確実に覚えてたから、何とかなんとかなったな。

 

 「次に僕らの王、魔王様。四大魔王様を答えてもらおうかな」

 「おう! 任せておけ! いずれ出世してお会いする予定だ! ルシファー様、ベルゼブブ様、アスモデウス様! そして憧れの女性魔王様であらせられるレヴィアタン様だ!」

 「正解」

 「絶対にレヴィアタン様にあって見せるぜ!」

 部長に聞いた。女性悪魔の頂点に立っているのが魔王レヴィアタン様。

 とっても綺麗な魔王様だと訊いた! 縁があれば出会えるかもしれないとも言われた! くーっ! 楽しみでならない!

 どれだけの美人だろうな? チョー会いたい!

 

 「次は一誠が一番苦手の堕天使の幹部を答えてもらおう」

 ……出た。俺が苦手の堕天使どもの名前。なんか幹部が他の勢力よりも多いんだよな。名前も複雑だし。

 

 「えっと、一番上の二人は覚えてるぞ。堕天使の中枢組織を神の子を見張る者(グリゴリ)と言って、総督がアザゼル、副総督がシェムハザ。ここまでは完璧だ。で、問題の幹部連中は……アルマロス、バラキエル、タミエル……。あー、えーと……あれ? ベネ‥‥‥何だっけ? コカイン?」

 

 「麻薬じゃないぞ。ベネムエ、コカビエルにサハリエルだ。しっかり覚えておけ」

 (わか)るか! 幹部多すぎるだろう! 二人で十分だ! 他の奴らの役職はなんだよ!

 ったく、これだから堕天使はダメだ。俺、堕天使だけは好きになれない。どうせろくでもない連中だろうしさ。それに奴らは神の子(・・・)……つまり神器(セイクリッド・ギア)所有者を四六時中見張ってるらしい。俺が奴らに殺されたのも、アーシアが狙われたのもそのせいだ。

 堕天使は組織を作って神器(セイクリッド・ギア)を研究しているって話だ。有益な神器(セイクリッド・ギア)所有者は招きいれて仲間にするか、奪うか。有害になるなら処刑(殺す)。本当にろくでもない。

 神器(セイクリッド・ギア)を知らない所持者さえ手にかける。俺がそうだったし。

 悪魔の一番の敵みたいだから、俺も容赦しない。アーシアをあんな目にあわせた奴らに手加減なんてしないさ!

 とまぁこんな感じで天使、堕天使について簡単に教えてもらった。結構、タメになるな。とりあえず、悪魔と他陣営との関係性は重要なので、頭に叩き込んでおく。

 そして二人(一輝と木場)が席に戻ると、今度はアーシアがバックを持って前に出てきた。

 

 「えっと、僭越ながら私、アーシア・アルジェントが悪魔祓い(エクソシスト)の基本をお教えます」

 おー! みんなの前に出て話を始めるアーシアに拍手を送ると赤面になってしまった。可愛い反応ありがとうございます。

 

 「えっとですね。以前私が属していたところでは、二種類の悪魔祓いがありました」

 「二種類?」

 俺の問いにアーシアは頷く。

 

 「一つはテレビや映画でも出ている悪魔祓いです。神父様が聖書の一説を読み、聖水を使い、人々の体に入り込んだ悪魔を追い払う『表』のエクソシストです。そして『裏』が皆さんにとって脅威となっています」

 アーシアの言葉に部長が続く。

 

 「イッセーも出会っているけれど、私太刀にとって最悪の敵は神、あるいわ堕天使に祝福された悪魔祓い(エクソシスト)よ。彼らとは歴史の裏舞台で長年にわたって争ってきたわ。天使の持つ光の力を借り、常人離れした身体能力を駆使して全力で私達を滅ぼしに来るわ」

 俺の脳裏にイカレた少年神父、フリードが思い浮かんだ。悪魔だけじゃなく、関わりを持った人間さえも無残に斬り捨てる。正直言って二度と会いたくない人種だ。

 そんなことを思っていると、アーシアはバックから小瓶と本を取り出した。

 

 「それで、エクソシスト達が持つ必携のアイテムは二つあります。一つはこの聖水です。悪魔の皆さんは、絶対に触れないでください」

 「触れるとどうなるの?」

 「大変なことになります」

 「大変って……曖昧な答えが怖いんですが」

 「アーシア、あなたもそうなのよ。悪魔なんだから」

 「うぅ、そうでした」

 部長の言葉にアーシアはショックを受けている。まぁ、悪魔だからな。

 

 「役に立つかは(わか)りませんけど、製法も後でお教えします。それともう一つは聖書です」

 小瓶を置くと今度は本を持つ。

 

 「小さい頃からずっと読んできました。でも今は、一節でも読むと凄まじい頭痛がするので困っています」

 「悪魔だもの」

 「悪魔だからね」

 「悪魔だからな」

 「悪魔にゃ」

 「……悪魔」

 「うふふ、悪魔は大ダメージ」

 「でもでも、ここの一節は素敵なんですよ!」

 全員から突っ込まれ、涙目のアーシア。

 

 「次に一輝。あなたにお願いするわ」

 部長のお願いに一輝が僅かに眉を顰める。

 

 「……何を話せば良いんですか?」

 「何でもいいわ」

 頭を捻り少し考えると、椅子から立ち上がり俺達の前に出る。

 

 「それじゃ……まず俺の神器(セイクリッド・ギア)について説明しよう」

 そう言い徐に手を翳すと、一輝の足元が凍り付くと氷がせりあがり、十字を形どった氷が現れた! 中にはあの刀が埋まっていて柄だけが出ていた。

 柄を握ると、氷が霧散した。

 

 「これが俺の神器(セイクリッド・ギア)。魔剣、氷剣ユキアネサ。これは思うがままに大気中の水分を冷却させ凍結することが出来る。たとえば……凍てつけ」

 バキィン!!

 うお!! 一輝が手を伸ばした先の床から長方形の氷の塊が現れた。 腕を薙ぐとそれは音もなく消失した。

 

 「ある程度の離れた距離ならああやって氷塊を生み出すことが出来る。他にも大気中の水分から氷剣を創りだし、吹雪を生み出すことも可能だ」

 ……マジか。本当に思うがままだな。ここで俺はふと思いついた。

 

 「なぁ。もしかしてライザーの炎も、消すことが出来るのか?」

 俺の質問に、一輝は少し考えてから答えた。

 

 「……難しい質問だな。実際、伝説の聖獣フェニックスの炎は如何なる物を焼き尽くすと言われている程だ。奴の炎を凍結できるかはやりあってみないと(わか)らん」

 へぇ。フェニックスってそんなにスゲェんだ。まぁでも実際、アイツ(ライザー)が作り出した炎の翼だけでも危険だってのは(わか)る。

 

 「あ、あの! ずっと気になっていたんですけど……一輝さんが耳に付けているそのイヤリングは何ですか?」

 アーシアが一輝の耳についているイヤリングについて訊く。そういや一輝の奴、あのイヤリング何時から付けてたんだ? 初めて会ったときはつけて無かったよな。

 

 「これか?」

 一輝はイヤリングを耳から外し、テーブルに置いた。形は何ていうか……卍に近いような形で、中心部分に眼みたいな模様がある。

 

 「……何だよコレ?」

 正直な感想。ちょっと気味が悪い。

 

 「見た目は仕方ないだろう。これはバロールの魔眼。相手の闘級(・・)を見ることが出来る」

 「「「「「「「闘級?」」」」」」」

 何だそりゃ?

 

 「魔力・氣力・武力の三つの合計を闘級と言う……(わか)りやすく言えば相手の強さを見れるんだ」

 相手の強さが(わか)るのか!? スゲェ便利じゃねぇか!!

 

 「部長。魔力7964・武力7503・気力7019……闘級22486」

 「朱乃先輩。魔力7065・武力6098・気力6650……闘級19813」

 「黒歌。魔力14326・武力12010・気力13021……闘級39357」

 「木場。魔力1325・武力1534・気力1473……闘級4332」

 「子猫。魔力1012・武力2831・気力1121……闘級4962」

 「アーシア。魔力2016・武力102・気力890……闘級3008」

 イヤリングをつけた一輝は部長達を見渡し、全員の闘級を言っていく。そして俺を見た後……顔を背けた!

 

 「おい! 俺の闘級はいくつ何だよ!?」

 「あー……知りたいか?」

 「知りたいに決まってんだろう!?」

 俺だけ除け者とかふざけんな!!

 一輝は珍しく、表情を曇らせた後……申し訳なさそうに口を開いて、俺の闘級を伝えた。

 

 「魔力55・武力47・気力88……闘級190」

 ……え? 190? 俺だけ三桁?

 

 「わ、悪い一輝。もう一回言ってくれない?」

 「闘級190だ」

 ………………。

 

 

 

 

 

 「以上がみんなの闘kyっ」

 「ちょっと待て―――――ッッ!! 何で俺だけ一番低いんだよ!?」

 俺の質問に一輝は面倒臭そうに語り出した。

 

 「理由としては、お前は悪魔になる前普通の学生だったろう? 転生前は特に何の変哲もないただの人間……言い方は悪いが、ただの凡人」

 ぼ、凡人。そりゃ俺は小中高ずっと帰宅部だったけどよ。

 

 「そう悲観になるな。この世界の一般人の闘級は10前後。世界的に活躍してる人間だって50手前位だ……それに悪魔になりたてのお前の闘級は100だったんだ。神器(セイクリッド・ギア)が覚醒し、毎日部長とのトレーニングをこなしたおかげで、闘級が上がったんだ……ま。手っ取り早く強くなりたいんなら地道に努力することだな。それと注意しておきますが、闘級はあくまでその人の戦闘力の目安(・・)です。修行もしくは戦闘中に闘級が変化しますからこの数字はあてにしないでくださいね?」

 と。それだけ言って一輝は自分の椅子に戻っていった。

 俺の最初の闘級って100だったんだ。あの部長とのトレーニングは無駄じゃなかったのか…………死にかけたけど。

 

 「さて。それじゃ、修行を始めましょう」

 部長の言葉で勉強会が終わり、午後の修行へ移っていく。

 

 

 

 

 

 何日もの間、山にこもって皆と修行して……(わか)ったことがあった。

 俺には、剣の才能、格闘技の才能、魔力の才能がない。

 ライザーに言われたことだけど、俺がこの中で一番弱い。神器(セイクリッド・ギア)でさえ使いこなせない俺。

 俺には、アーシアのように回復すらできない。順調と言えば、野菜の処理だろう。まぁ、これも修業の一環だ。

 でも……皆と修行すれば、自分がどれだけ矮小な存在か突きつけられた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 俺は本当に弱くて……役立たずだったんだ。

 

 

 

 

 

一輝side

 深夜。不意に眼を覚ました俺はベッドから起き上がる。横では一誠と木場がベッドで眠っていた。時間は深夜十二時前だ。もう一度眠ろうとしたが意識がはっきりと覚醒してしまい眠れない。

 部屋を出て別荘を出ると雲一つもない星空が見えた。街中と違って、空気が澄んでいる風は心地がいい。

 少し歩き別荘の横にあるガゼボに向かい、柱に背中を預け空を見上げる。ゲームまで残り一週間。どこまで伸びるのか……。

 眼を瞑り夜風を浴びていると、こちらに近づいてくる氣配を感じ取る。振り返ると、視線の先にパジャマ姿にメガネをかけ分厚い本を持った部長だった。

 

 「起きていたの?」

 「眼がさえてしまいまして……部長はどうしたんですか?」

 「ゲームに向けての作戦よ」

 柱に背中を預け部長は本を読み出す。

 

 「……それは戦術マニュアルみたいなものですか」

 「えぇ。でも、こんなマニュアル通りでは、正直気休め(・・・・・)にしかならないけど」

 「対戦相手がライザー……フェニックスだからですか」

 「そうね…………聖獣フェニックス。流す涙はいかなる傷をも治し、その身に流れる血を飲めば不老不死を手に入れられると人間界の国々に伝説を残すほどだわ……でも、聖獣であるフェニックスにはもう一つの一族がいた。悪魔でありながら七十二柱にも数えられた公爵家。そしてその能力も同じ(・・・・・)

 「不死身(・・・)ですか。ある意味最強無敵ッすね」

 「そうね。ほとんど無敵ね……攻撃してもすぐに再生してしまうから。ライザーの戦績は八勝二敗。ただし、この二敗は懇意にしている家系への配慮よ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。わざと負けただけ。フェニックス家は、レーティングゲームが行われるようになって急激に台頭してきたなり上がりみたいなものよ。不死身なら、絶対に負けないもの」

 下僕は倒せたとしても、フェニックスであるライザーは倒せない。

 

 「ライザーが婚約相手に選ばれたとき、嫌な予感がしたの……今思えばこうなることを見越して、お父様達は最初から仕組んでいたんだわ。私が否応無しに結婚するように、ライザーを当てた。こうして身内同士のゲームになってもライザーが、フェニックスが相手なら勝てるはずがないと踏んでいたんだわ。チェスで言うところのハメ手。スウィンドルね」

 …………使い魔の召喚儀式で貴族ぼっちゃん(マヌケ)が図に乗って異界から召喚したフェニックスを手懐けられず暴走した時、鎮めるために戦ったけど消し飛ばそうが斬り裂こうが何度も再生する光景は中々にキツかった苦い思い出があるな。

 

 「でも……ライザーを倒す方法(・・・・・・・・・)はあるんですよね?」

 「ええ。方法は二つ。圧倒的な力で押し通すか、起き上がるたびに何度も何度も倒して相手の精神を潰すか。前者は神クラスの力が必要。後者はライザーの精神が尽きるまでこちらのスタミナを保つこと。体が再生して不死身でも心、精神までは不死身じゃないわ。倒すたび確実に相手の精神は疲弊する。フェニックスの精神を押しつぶせば私たちの勝ちよ。再生も止まり、相手は倒れるわ。まあ、神みたいに一撃で相手の精神も肉体も奪い去る力があれば一番楽なんでしょうけど」

 苦笑しながら肩を竦める。初陣の相手がフェニックスとは本当に非情だ。今の皆の実力じゃ勝機はゼロだろう。光魔法・魔術に白騎士の聖剣(ファルシオン)なら楽に倒せるんだろうけど……殺したら面倒くさそうだしな。

 

 「部長、今更ですがなぜ今回の縁談を断っているんですか? ライザーの奴はいけ好かない奴ですが、家の事情を鑑みると無下にするわけにはいかないんじゃないですか」

 俺が訊くと部長は嘆息し、メガネを外し話し出す。

 

 「私はグレモリー家の娘よ(・・・・・・・・・)。どこまでいっても個人のリアス(・・・)でもなく、悪魔でもリアス・グレモリー(・・・・・・・・・)。常にグレモリーの名が付きまとってしまうの」

 ……なるほど。グレモリーのリアスではなく、あくまでリアス個人として見てもらいたいわけか。

 

 「嫌なんですか?」

 「誇りに感じてるわ。けれど、私個人を殺してしまっているものでもある。誰しも私をグレモリーのリアスと見るわ。リアス個人として認識してもらえない。だから、人間界での生活は充実していたの。誰も悪魔グレモリーのことを知らないものね。皆、私を私として見てくれている。それがたまらなく好きだった。私が私として充実できるのはこの人間界にいるだけ」

 名前か……。

 俺は出海一輝。前世では魁撞玲。俺は出海家の義父さんと義母さんに引き取られた養子でしかない。どこに行こうと出海一輝として認識される。

 グレモリー家の看板を背負ったリアス。一生グレモリーのリアスとして見られる。

 

 「私はグレモリーを抜きにして、私を……リアスを愛してくれる人と一緒になりたいの。それが私の小さな夢。ライザーは私をグレモリーのリアスとして見ているわ。そして、グレモリーのリアスとして愛してくれる。それが嫌なの。それでもグレモリーとしての誇りも大切なものよ。矛盾した思いだけど、それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」

 遠い眼をして空を見上げる。そこには、何時も毅然としている部長(上級悪魔)ではなく、夢を見る年相応の普通の女子だ。

 

 「俺は今の部長が一番だと思いますよ」

 星空を見ながら何気なく口から出た言葉。部長は眼を見開いて驚く。

 

 「悪魔社会の情勢や純血悪魔の存続……そういうのは人間の俺には理解できませんが、俺はグレモリーとしての部長じゃなく、駒王学園のオカルト研究部部長の、毅然としている部長が一番ですよ。部長はさっき自分の夢を小さいと言いましたけど、夢に大きい小さいとか関係ないですよ。良い夢じゃないですか。その想いを持っていれば、部長の夢も叶いますよ」

 何気なく頭に浮かんだ言葉を部長に伝える。

 …………今この場に一誠がいなくて良かった。聞かれていたら自殺もんだな。

 部長のほうを向けば……何故か頬を赤く染めていた。

 

 「俺、何か変な事言いました?」

 青臭すぎるセリフだったか?

 

 「な、なんでもないわ!」

 頭を振り慌てていた。何だろう? まぁいいか。

 

 「そろそろ俺は寝ます。明日に響きますから」

 「ええ。お休みなさい」

 「お休みなさい、部長」

 

 

 

 

 

 「ブーステッド・ギアを使いなさい、イッセー」

 翌日。練習が始まる前に部長が一誠に言う。

 修行期間中、一切禁止にされてた神器(セイクリッド・ギア)の使用……どうするきだ。

 

 「え? でも、この合宿中は使っちゃダメだって部長がッ」

 「私の許可無しにはね(・・・・・・・・・)。相手は祐斗で良いかしら」

 「はい。部長」

 木場が指名され、一誠の前に立ち木刀を構える。

 

 「イッセー、模擬戦を開始する前に神器(セイクリッド・ギア)を発動させなさい。そうね……発動から二分後、戦闘開始よ」

 「は、はい! ブーステッド・ギア!」

 『Boost!!』

 左腕に神器(セイクリッド・ギア)を出現させると同時に、籠手から音声が発生した。

 

 「もう一度!」

 部長の言う通り力を倍加させ続ける。倍加に乗じ、一誠から感じる魔力の波動も闘級も変化する。

 

 『Boost!!』

 「これで十二回目パワーアップしましたわ」

 「ストップ! (わか)るイッセー。今までのあなただったら、ここまでの強化に耐えられなかったはずよ」

 部長に言われて、一誠は自分の体の変化に気づいたようだ。修行前に一度使用したが、発動から数分後力尽きたように倒れた。

 理由は簡単だ。一誠自身が増していく力に耐え切れなかったからだ。

 

 「あなただってちゃんと修行の成果が現れているのよ……始め!」

 「いくぞ、ブーステッド・ギア!」

 『Explosion!!』

 再び音声が発すると、一誠の力の倍加が止まる。これは、倍加させた力を一定時間、倍加状態で戦うことが出来る。ただし、攻撃や動きなどで時間は縮小するデメリットも抱えている。

 

 「あれは?」

 「あの音声によって一誠は一定時間、強化された力を保ったまま戦うことが出来るのよ。祐斗」

 木場が神速の速さでその場か飛び上がり頭部へ攻撃を仕掛けるが、瞬時に腕で防ぎ蹴りを放つ。木場が躱した所で部長が一誠に指示を出す。

 

 「イッセー! 魔力の塊を撃つのよ!」

 籠手に魔力を集中させると、米粒程度の魔力が手のひらに現れた。迫り来る木場に向かい撃ちだすと……米粒程度だった魔力が巨大な波動に変貌した。大きいな……これが籠手の倍加によってパワーアップしたのか。

 放たれた魔力の一撃を木場は簡単に躱す。魔力の塊は隣の山にまで飛び……。

 ドッゴォォォォォォォォォォンッッ!

 巨大な爆発が山の一部を消し飛ばした。凄まじい攻撃だが、これだけの魔力を打ち出したら魔力消費も激しいだろう。

 

 「これが……俺の……力」

 「イッセーさん!」

 一誠は両手両膝をつき荒い息をする。

 

 「流石に力尽きたみたいね。祐斗、どうだった?」

 「はい。正直驚きました。実は、最初の一撃で決めようと思ってたのですが、イッセー君のガードが固すぎて崩せませんでした。魔力で木刀を覆って強化してたのですが、この有様です」

 木場がみんなに木刀を見せると、木刀が半ばから折れた。修行前とは比べ物にならないな。

 

 「イッセー、あの一撃は上級悪魔クラス。当たれば大抵のものは消し飛ぶわ」

 「マジっすか!!」

 部長やライザーと同等の一撃。……だが俺みたいにカウンター使いがいたら不味いな。

 

 「基礎を鍛えたあなたはの体は、莫大に増加していく神器(セイクリッド・ギア)の力を蓄えることの出来る器となったわ。現時点でも力の受け皿として相当なものよ。……あなたはゲームの要。おそらく一誠の攻撃力は状況を大きく左右するわ。私達を、そして何より自分を信じなさい。そうすれば、イッセーも私たちも強くなれる。勝てるわ!」

 一誠は大汗をかきながら、部長を見る。

 

 「あなたをバカにした者に見せ付けてやりましょう。相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷属がどれだけ強いのか、彼らに思い知らせてやるのよ!」

 『はい!』

 全員が力強く返事をする。

 決意を新たに、結束を深め合い修行は順調に進み無事に終わる。

 そして……決勝(ゲーム)当日を迎えた。

 

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