ハイスクールD×D 蒼の継承者の物語   作:Yunnan

6 / 32
シスターとはぐれ悪魔

一輝Side

 一誠が悪魔になって数日が経過したある日。一誠は顔面蒼白で、椅子に座り眉を吊り上げ無言でいる部長の前に立っていた。

 悪魔として下積みを終え、本格的に契約を取るようになったのだが、どうやら破談となり終えたそうだ。

 

 「前代未聞だよ」

 木場が苦笑していたな。

 訊けば、一誠は魔力が低すぎて契約者の元へジャンプ出来なく自転車で向かったらしい。

 ……そういえば一誠の闘級はどれくらいなんだ? バロールの魔眼で測ってみれば。

 闘級:100(魔力5/武力45/気力50)

 

 「…………」

 本当に魔力が低いな。

 

 「イッセー」

 低い声音が部長の口から出る。

 

 「はい!」

 「依頼者と漫画のことを語って、それからどうしたのかしら? 契約は?」

 一誠は震えながらも経緯を説明しだす。

 

 「け、契約は破談です……。あ、朝まで依頼者の森沢さんと、とある漫画のバトルごっこ(・・・・・・)をして過ごしていました!」

 「バトルごっこ?」

 「はい! ま、漫画のキャラを演じて、お互いの空想の戦いを繰り広げる行為です! じ、自分でも高校生として恥ずかしい……いえ、いち悪魔としても恥ずかしいと考えてなりません! 反省しています! すみませんでした!」

 謝罪の言葉と共に頭を下げる。

 ……バトルごっこね。もしその瞬間を二人(松田と元浜)が見ていたら、腹を抱え爆笑してただろうな。

 

 「……契約後、例のチラシにアンケートを書いてもらうことになっているの。依頼者の方に『悪魔との契約はいかがでしたか?』って。チラシに書かれたアンケートはこの紙に表示されるわけだけど……『楽しかった。こんなに楽しかったのは初めてです。イッセー君とはまた会いたいです。次はいい契約をしたいと思います』……。これ、依頼者さんからのアンケートよ」

 それを訊いた一誠は顔を上げ目を見開いていた。

 

 「こんなアンケート、初めてだわ。ちょっと、私もどうしたら良いか(わか)らなかったの。だから、少し反応に困ってしかめっ面になってしまっていたのでしょうね」

 怒ってはいなかったのか。

 

 「悪魔にとって大切なことは召喚してくれた人間との確実な契約よ。そして代価を貰う。そうやって悪魔は永い間存在してきたの……。今回のことは、私も初めてでどうしたら良いか分からないわ。悪魔としては失格なんでしょうけれど、依頼者は喜んでくれたわ……」

 ふっと柔らかい笑みを漏らす。

 

 「でも面白いわ。それだけは確実ね。イッセー、あなたは前代未聞尽くめだけれど、とても面白い子ね。意外性ナンバー1の悪魔なのかもしれないわ。けれど、基本のことは守ってね。依頼者との契約を結び、願いを叶え、代価をもらう。いいわね?」

 「はい! 頑張ります!!」

 頷く一誠の表情はやる気に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 二日後。公園を散歩していると、一誠がベンチに座り両手で持った紙を見てため息を吐いていた。

 

 「一誠」

 「ああ、一輝か」

 近づき声をかけると、少しやつれた表情でいた。

 

 「どうした?」

 「実はな……」

 何時もより低い声で話してくれた。

 昨日の依頼者との契約が一誠に入ってきた。しかし依頼者は筋骨隆々の大漢で、ゴスロリ衣装を着込んでいたと言う。魔法少女にしてほしいと言う内容であったが、無論、一誠に出来るはずなく契約は破談。

 

 「それで、昨日の深夜から今日の朝方まで一緒にその魔法少女のDVDを鑑賞……で、今に至ると」

 コクリと頷く。

 そして、アンケートには『楽しかったにょ。また悪魔さんと一緒にDVDを見たいにょ』と賛辞を貰っていた……というか『にょ』ってなんだ『にょ』って。

 

 「はぁ。また部長から小言を言われる」

 溜息一つ。ガックリと項垂れる一誠。

 まぁ、悪魔の業界の事なんざ知らんが、契約して願いを叶え代価を貰うなんて早々出来ないだろう。特に元平凡の人間だった一誠ならな。

 

 「はわぅ!?」

 その時、突然声が聞こえ同時にボスンと路面に何かが転がる音が聞こえた。

 振り向くと、そこにはシスターが手を大きく広げ、顔面から突っ伏している間抜けな転びをしていた。

 

 「だ、大丈夫ッスか?」

 一誠はシスターへ駆け寄り、起き上がれるように手を差し出した。

 

 「あうぅ。何で転んでしまうんでしょうか……ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」

 若いな……俺たちと同年代か?

 一誠が手を引いて起き上がらせる。

 ふわっ。

 風が吹き、シスターのヴェールが飛んでいく。ヴェールの中で束ねていた金色の長髪がこぼれ、露になり夕日に照らされて光っていた。

 そしてグリーン色の双眸がこちらを見てくる。綺麗だな。

 余りの綺麗さに言葉を失う一誠。俺はその場から離れヴェールを取りに行く。

 

 「あ、あの……どうしたんですか?」

 「あっ。ゴメン。えっと……その」

 「旅行か?」

 俺は二人の会話に割り込み、シスターにヴェールを渡す。

 

 「いえ、違うんです。実はこの町の教会に今日赴任することになりまして……お二人もこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」

 丁寧にお辞儀をする彼女(シスター)。と言うかこの町の教会に赴任? たしかこの町の教会はあの廃れた教会位しかないが……。

 

 「それで……あの、道に迷って困っているんです」

 両手の人差し指を合わせ、恥ずかしそうに言う。

 

 

 

 

 

 俺と一誠はシスターを教会へ向かう途中、公園の前を横切る。

 

 「うわぁぁぁぁん」

 その時、子供の泣き声が聞こえてきた。見ると公園内で男の子が膝を擦りむいてケガをしていた。

 

 「大丈夫、よしくん」

 母親がいるから大丈夫だろうかと思っていたが、それを見たシスターが子供に歩み寄る。

 

 「男の子ならこのぐらいのケガで泣いてはダメですよ」

 頭を優しく撫で、両手をケガを負った膝へ当てる。すると、シスターの手のひらから淡い緑色の光が発せられ、子供の膝を照らし出す。

 あれは……まさか、神器(セイクリッド・ギア)か? まさか彼女が持っているとは。

 やがて子供のケガは消え去っていき、瞬く間に傷が塞がりケガの後が一切残っていなかった。

 

 「はい、傷はなくなりましたよ。もう大丈夫」

 シスターは子供の頭を撫でると、振り返る。

 

 「すみません。つい」

 舌をだし小さく笑う。

 何が起きたか分からず仕舞いでいた母親は、頭を下げると、子供をつれてその場から去っていった。

 

 「ありがとう! お姉ちゃん!」

 子供が振り返って手を振って、感謝の言葉を伝える。

 

 「ありがとう、お姉ちゃん。だって」

 一誠の通訳に嬉しそうに微笑む。

 

 「……その力」

 「はい。治癒の力です。神様からいただいた素敵なものなんですよ。……そう。素晴らしい」

 微笑む彼女だが、どこか寂しそうだった。まぁ、普通の一般人にとっては異質な力でもあるからな……。オマケに知る事すらないのだから。

 会話が途切れ、若干気まずい雰囲気のまま教会のほうへ足を向ける。

 公園から数分移動した先に廃れた協会が存在していた。

 

 「あ、ここです! 良かったぁ」

 地図に描かれたメモと照らし合わせながらシスターが安堵の息を吐く。本当にここで合っているのか? いかにも運営されていないようだが。まぁ彼女が合ってると言うなら合っているのだろう。

 なら、早々に退散するか……隣で一誠が両腕で自分の身体を抱き震えさせて表情を引きつらせ、汗を滝のように流している。教会や天使の奴らに感知されるより前にさっさと退散するか。

 

 「じゃあ、俺達はここで」

 「待ってください!」 

 その場を去ろうとした俺たちをシスターが呼び止める。

 

 「私をここまで連れてきたお礼を教会で……」

 「お礼はいい。この後用事があるんでな」

 「そ、そう。お礼はいいからさ」

 「そうですか……私はアーシア・アルジェントと申します。アーシアと呼んでください」

 「俺は出海一輝。一輝でいい」

 「俺は兵藤一誠。俺の事はイッセーでいいよ。よろしくアーシア」

 「一輝さんにイッセーさん。必ずまたお会いしましょう!」

 深々と頭を下げるアーシア。

 ……純粋無垢な女の子だったけど、さっきの寂しそうな表情が引っ掛かるな。ま、他人の俺が気に掛けることもないか。

 

 

 

 

 

一誠side

 「二度と教会に近づいちゃダメよ」

 その日の夜。俺と一輝は部室で部長に強く念を押されていた。部長の表情はいつになく険しい。いや、かなり怒られています(・・・・・・・・・・)

 

 「教会は私達悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで神側と悪魔側の間で問題となるわ。今回はあちらもシスターを送ってあげたあなた達の厚意を素直に受け止めてくれたみたいだけれど、天使たちはいつも監視しているわ。いつ、光の槍が飛んでくるか解らなかったのよ?」

 ……マジですか? そんな危ない状況だったのか。

 そう言えば、あの寒気は尋常じゃなかった。恐怖しかなかったもんな。あれが危機感。悪魔としての本能が危険を察知したってことか。

 

 「教会の関係者にも関わってはダメよ。特に悪魔祓い(エクソシスト)は我々悪魔の仇敵。神の祝福を受けた彼らの力は私たちを滅ぼせるほどよ。神器(セイクリッド・ギア)所有者が悪魔祓い(エクソシスト)なら尚更。それは死と隣り合わせるのと同義だわ。イッセー」

 紅の髪を揺らしながら、青い双眸で直視してくる。

 

 「は、はい」

 「悪魔祓いを受けた悪魔は完全に消滅する。無に帰すの。……無。何もなく、何も感じず、何も出来ない。どれだけのことかあなたたちには分かる?」

 無。……正直、(わか)らない。

 反応に困る俺を見て、部長はハっとし首を横に振った。

 

 「ゴメンなさい。熱くなりすぎたわね。とにかく、今後は気をつけてちょうだい」

 「はい」

 俺が返事すると、今度は一輝に視線を移す。

 

 「あなたもよ一輝。人間としての死は悪魔への転生で免れるかもしれない。けれど、もう少し考えてちょうだい。あなたの存在は堕天使に知られてしまっているのだから」

 「……すみません」

 バツの悪い表情を浮かべ、頭をかく。そう言えば二人の堕天使に知られてるんだっけ?

 そこで会話が終わった。

 

 「あらあら。お説教はすみましたか?」

 「おわッ」

 いつの間にか背後に朱乃先輩がニコニコ顔で立っていた。

 

 「朱乃、どうかしたの?」

 部長の問いに朱乃先輩は少しだけ顔を曇らせた。

 

 「討伐の依頼が大公から届きました」

 

 

 

 

 

一輝side

 深夜。先ほど、朱乃さんから話を訊いた俺達全員、町外れの廃屋近くに来ていた

 

 「なぁ。はぐれ悪魔ってのは何だ?」

 一誠の質問に木場が答える。

 

 「はぐれ悪魔は、元々悪魔の下僕だった者(・・・・・・・・・・・)のことを言うんだ」

 「俺たちみたいなもん?」

 「たまに主を裏切り、又は殺して好き勝手に生きようとする連中がいるんだよ。それがはぐれ悪魔さ」

 「そのはぐれ悪魔さんが、この先の廃屋で誘き寄せた人間を食べているとの報告がありまして」

 「た……食べッ」

 一誠が表情を引きつらせる。

 

 「それを討伐するのが、今夜のお仕事ですわ」

 「主を持たず、悪魔の力を無制限に使うことがいかに醜悪な結果をもたらすことになる」

 制約がなければ悪魔は欲に動く……根本部分は人間と似ているな。

 

 「イッセー。いい機会だから、悪魔として戦いを経験しなさい」

 「マ、マジッスか!? 俺戦えないですよ!」

 「そうね。それはまだ無理ね」

 あっさりと言い渡され、ガックリと肩を落とす。

 

 「一誠……別に戦えと言ってるわけじゃなく、戦いを見て学べってことだ」

 「一輝の言う通り。見ることも大切な経験よ。今日は私達の戦闘をよく見ておきなさい。ついでに、下僕の特性を説明してあげる」

 「下僕の特性?」

 怪訝な表情を浮かべる一誠に続ける。

 

 「主となる悪魔は、下僕となる存在に特性を授けるの。前に私たち悪魔と堕天使、天使が大昔に三つ巴の大きな戦争をした話を覚えてる?」

 「はい」

 「三勢力は永久とも言える期間、争い合ったわ。結果、どの勢力も酷く疲弊し、勝利する者もいないまま、戦争は数百年前に終結したの」

 部長の言葉に木場が続く。

 

 「悪魔側も大きな打撃を受けてしまい、二十、三十もの軍団を率いていた爵位もちの大悪魔の方々も部下の大半を長い戦争で失ってしまったんだ。軍隊を保てないほどにね」

 「純粋な悪魔はその時に多くの悪魔が亡くなったと聞きます。しかし、戦争が終わっても,堕天使、神との睨み合いは続いています。いくら、堕天使側も神側も部下の大半を失ったとはいえ、少しでも隙を見せれば危くなります」

 木場から朱乃先輩へ続き、再び部長が語る。

 

 「そこで悪魔は少数精鋭部隊の制度を作ることにしたの。それが悪魔の駒(イーヴィル・ピース)

 「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)?」

 「爵位を持った悪魔は、この駒の特性を自分の下僕に与えているの。主となる悪魔が(キング)。私たちの間で言うなら私のことね。そこから女王(クイーン)騎士(ナイト)戦車(ルーク)僧侶(ビショップ)兵士(ポーン)の五つ。軍隊をもてなくなった代わりに少数の下僕に強力な力を分け与えることにしたのよ」

 「何でそんな」

 「そろそろ来ますよ」

 俺の一言に、皆の雰囲気が切り替わった。一誠だけはまだ困惑している。

 

 「不味そうな匂いがするわ。でもおいしそうな匂いも……甘いのかしら? 苦いのかしら?」

 不気味な声が部屋に響きわたる。

 

 「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅しにきたわ」

 部長が臆さず言うと、奥から何かが飛んできて近くに落ちる。

 ドシャッ。…………女の死体だ。縦半分に裂かれ絶望に染まった表情を浮かべている。

 そして、柱の反対側からゆっくりと姿が現れっ。

 

 「おっぱい!」

 ……上半身裸の女性が宙に現れた瞬間、一誠が歓喜の声をあげる。さっきまでビビってのに、今じゃ鼻の下をだらしなく伸ばし胸を凝視している。こいつに危機感はあるのか?

 

 「主の元を逃げ、その欲求を満たすために暴れまわる不貞の輩。その罪万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、あなたを吹き飛ばしてあげる!」

 「こざかしい小娘だこと。その紅い髪のように、あなたの身を鮮血で染めてあげましょうか?」

 「雑魚ほど洒落たセリフを吐くものね」

 「これがはぐれ悪魔……ただの見せたがりのお姉さんにしか見えない」

 一誠がバカなことを言っていると、暗がりから巨大な下半身が出てきて全体が露になる。

 

 「うぁッ!!」

 「さっき言ったろ? はぐれ悪魔は心も肉体も醜悪になる(・・・・・・・・・・)ってな」

 大きさは約五メートル程。巨大な四つ足の下半身。尾は蛇で独立で動いている。

 闘級:554(魔力76/武力280/気力198)

 闘級はそこまで高くないが、正真正銘の化け物だな、コイツは。

 

 「あんないいおっぱいなのに、勿体ねぇ……あ? あれ魔方陣じゃね!?」

 直後、バイザーの胸から魔力の一撃が放たれる。皆が回避してる中、反応に遅れた一誠を部長が抱え込んで回避した。

 ドォォォォッ! ジュウウウゥゥゥッ!!

 魔力の一撃は壁を直撃し溶かす。なんて下品な攻撃だ、キモイな。

 

 「ウワッ! た、確かに化け物だ」

 「油断しちゃダメよ。祐斗!」

 「はい!」

 隣にいた木場が、一瞬で飛び出す。

 

 「消えた!?」

 「速すぎて見えないのよ。祐斗の役割は騎士(ナイト)。特性はスピード。そして最大の武器は剣」

 化け物が周囲を見渡す中、懐に入り込んだ木場が目に止まらない速度で腕を斬り落とした。

 

 「ギャァァァァァァァッ!」

 傷口から血が噴出し、バイザーの悲鳴が木霊する。耳を劈くうるさい声だ。そんな中、小猫が近づく。

 

 「危ない! 小猫ちゃん!」

 バイザーの顔が醜悪に変貌し、胴が縦に裂け鋭い牙が生え子猫を飲み込む。

 

 「小猫ちゃん!!」

 「大丈夫」

 部長がそう言った直後、徐々に口元が開いていき……大きく開いた

 

 「小猫は戦車(ルーク)よ。その特性はシンプル。バカげた力と防御力。あの程度じゃビクともしないわ」

 「……吹っ飛べ」

 小猫が殴りつけた瞬間、バイザーの身体が言葉通り吹っ飛び柱を叩き折り壁に叩きつけられた。

 

 「……弱」

 手を叩きながら戻ってくる小猫。若干だが制服が溶けて素肌が見えている。やれやれ。

 

 「小猫」

 「?」

 「治れ」

 俺は小猫を手招きで呼び寄せ、魔術で服を修復する。

 

 「あんまり不用意に懐に飛び込むな小猫。いくら戦車(ルーク)の防御能力が高くても、奴の消化液が強力なら制服の損傷だけじゃすまん。もう少し気をつかえ」

 「……ありがとうございます。一輝先輩」

 「朱乃」

 「はい部長。あらあら、どうしようかしら? うふふ」

 制服を修復し終えると、朱乃先輩が微笑みながら倒れたバイザーに近づいていく。その時、木場に斬りおとされた腕が、ピクリと動きリ部長に襲い掛かる。

 

 「部長!」

 それに早く気がついた一誠が神器(セイクリッド・ギア)を顕現させ殴り飛ばした。へぇ、よく動けたな。

 

 「あ、ありがとう」

 「あー、いえ。身体が勝手にって言うか……」

 照れる一誠にお礼を言い、朱乃先輩へ命を出す。

 

 「朱乃、やってしまいなさい」

 「部長に手をかけオイタするいけない子は、お仕置きですわね」

 両手に魔法陣を出現させると雷を迸らせ、微笑を浮かべる。

 

 「彼女は女王(クイーン)。他の駒全ての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 睨みつけてくるバイザーを見て、不敵な笑みを浮かべる。

 

 「あらあら、まだ元気そうね。ならこれはどうでしょうか?」

 両手を天に向けた瞬間、光り輝き雷が落ちた。

 

 「ギャアアアアアアアアアアッ!」

 「魔力を使った攻撃が得意なの。雷や炎、氷などの自然現象を魔力で起こす力」

 激しく感電し、煙を上げて痙攣するバイザーを見て、頬を紅く染め嘲笑を作り出していた…………また始まった(・・・・・・)

 

 「あらあら、まだ元気そう。うふふ」

 「何か……朱乃さん凄く怖いんですけど!?」

 「始まったわね……彼女はね、究極のS()なのよ」

 「どこまで耐えられるかしら! うふふふ」

 楽しそうに雷攻撃を繰り出す朱乃先輩のSには、部長や木場は苦笑を浮かべていた。小猫は無表情だが溜息一つ。

 朱乃先輩ファンの奴らが見たら、幻滅でも……いや。むしろ「俺達を調教して下さい!!」とか言いそうだな。

 

 「朱乃。そのくらいにしておきなさい」

 「もうおしまいなんて……ちょっと残念ですわね。うふふ」

 部長に言われ、漸く攻撃をやめ振り返った表情は愉悦の表情を浮かべていた。あれだけ攻撃したのに関わらず、本当に物足りなさそうな感じだ。

 戦意を失ったバイザーに部長が近づいた瞬間、目を見開き血反吐を飛ばしてきた。跳び避けた時を狙って、最後の足掻きといわんばかりに飛び掛ってきた……俺に。

 

 「シネ――――――ッッ!!」

 「一輝! 避けろ!!」

 「その必要はない」

 スドドドドドドドドドッ!!

 俺を押しつぶそうとした時、EA(エレメント・アーツ)を発動。コンクリートの床を操作し数多の槍に変化させ、飛び掛かってきたバイザーを一瞬の内で串刺。バイザーは声をあげることなく絶命。

 

 「スゲ――! 今の何だ!?」 

 「はぐれ悪魔を一瞬で倒すなんて」

 「一輝君はお強いですわね」

 「……凄いです」

 「眷属にほしい位だけど、残念だわ」

 皆がそれぞれ感想を口に出してくれる。

 やがて槍に罅が入り、崩れ落ち地面に倒れこむ。そこへ部長が打ち出した魔力によって跡形もなく消し飛ばされた。

 

 「終わったわ。さあ、帰るわよ」

 「「「はい、部長」」」

 部長の言葉で、何時もの陽気な雰囲気に戻った。

 部室に戻る中、一誠が質問を投げかける。

 

 「あの、部長」

 「なぁに?」

 「それで、俺は? 俺の駒って言うか、下僕としての役割は何なんですか?」

 一誠が期待を目に宿すが、部長はそれを砕いてくれた。

 

 「兵士(ポーン)よ」

 「兵士(ポーン)ってまさか……」

 「そう、イッセー。あなたは兵士(ポーン)なの」

 笑顔で伝え、歩き出す。

 

 「……って一番下っ端のアレ―――――――っっ!?」

 一誠の絶叫が響きわたる。

 こうして一誠の駒が兵士(ポーン)と判明し、はぐれ悪魔の討伐は無事終了した。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。