私の名前は転生者Aです。今ポケモンの世界にいます 作:TSスキー三世
はいどうも皆さんおはようこんにちはこんばんは。
転生少年です(威風堂々)。
突然こんなことを言われても「お前は何を言ってるんだ(例の画像)」と思われるのが普通なもんですが、ところがどっこい……!! 夢じゃありません……!! 現実です……!! これが現実……!!
この世界で生まれる前……つまり前世では、それはもう馬鹿なことやりまくってた「どこにでもいそうな一般市民A君」という代名詞が付きそうな人間がこの私です。
前世の名前はトラックにはね飛ばされた際、頭の中から綺麗さっぱり吹っ飛んでしまったので覚えておりません。
まぁ、親からもらった名前を忘れてしまったのは悲しいことですが、そこは切り替えが早い私、割とあっさりと受け入れました
ちなみに今世の名前は「アイテール」とのことですが、馬鹿な私にはどんな意味が込められたのか見当もつきません。
きっと健やかに育ってほしいとかなんとかなのでしょう。
『あぁ……! 生まれてきてくれてありがとう……! 私達の子供……!』
『えぇ本当に……! 本当に生まれてきてくれてありがとう……! 愛しの『アイテール』……!』
そんな名前の付けられた私こと「アイテール」、実はこの広い世界の片隅にある小さな村で生まれた当時の私は混乱でいっぱいでした。
馬鹿な私と言えども一度死んだかと思ったら、私の顔を覗き込み、泣きながら喜んでいる男性と女性の姿……そして、『
最初の一瞬こそ、「宇宙人に捕まってしまったのか!?」とか馬鹿なことを考えていたのですが、しばらくするとその『見知らぬ生き物』……いえ、子供の頃から慣れ親しんでいた存在について理解が及びます。
『ルカァ……!』
青と黒の体毛に、鋭い目つきながらも理性を秘めた眼差しの生き物――『ルカリオ』。
『ラッキー! ラッキー!』
お腹のポケットにタマゴを入れていて、こちらを優しく見つめてくるピンクの体色をした生き物――『ラッキー』。
『イーブイ!』
茶色の体毛と長い耳、首元のフワフワした白い毛が特徴の小型の生き物――『イーブイ』。
『クル……』
『リル!』
『ブゥル!!』
『ブーバーン!!』
(……おーまいがー)
『え!? し、しっかりしてアイテール!?』
『せ、先生! うちの子が気絶してしまいました!!??』
他にも、『クルマユ』や『マリル』、『エレキブル』に『ブーバーン』……といった様々な生き物が次々に目に映り、情報の暴力に耐えきれなくなった私はそこで気絶してしまいました。
当時生まれたばかりであった私が気絶してしまったことに、お医者さんや私の今世の両親は大慌てしていたというのはちょっとした余談です。
その時から数時間後でしょうか。
何とか目を覚ました私は再度周囲を確認し、ようやく結論を出すことができたのです。
『これポケモンの世界じゃないデスカー』と。
――『ポケットモンスター』
世界的にも有名なゲームソフトシリーズの一つであり、このゲームの世界観の中だけに登場する生き物――『ポケットモンスター』縮めて『ポケモン』と共に、主人公である少年少女が様々な地方を冒険する夢のあるゲームだ。
作中に登場する「地方」や「ポケモン」も、現実のものなどをモデルにしているため、世界観を考察するのも楽しいゲームとなっている。
可愛いポケモンやカッコいいポケモンなど種類は様々で、国内外問わず大人気。
そんな世界に転生してしまったのが私という馬鹿なのです。
いや、確かに人生で一度は言ったことがありますよ、「あ~、一度でいいからポケモンの世界で思いっきり冒険して~」とか。
ですが、この世界で生きていくには割と厳しいものでして……例を挙げるとしましょう。
仲間のポケモンがトラックに間違えて乗ってしまって、それに車の持ち主が気づかず発進させてしまいました。
声をかけるにはエンジンの音にかき消されて聞こえない程度の距離にいます。
そうなった時、この世界の住人はどうするのか……答えは簡単。
『こうなったらタ〇シ! 『こうそくいどう』だ!』
『おう!』
『『うぉおおおおおおおおおおおお!!』』
はい、生身で車に追いつきます()
ちなみに『こうそくいどう』というものはポケモンが使う「わざ」の一つです。
説明としては『ちからを ぬいて からだを かるくして こうそくで うごく。じぶんの すばやさを ぐーんと あげる。』とのことだそうな。
いや凄いですね人体、しかもこれやったのがまだ成人でもない少年2人ですからね?
人間とはいったい……うごごご……。
と、いう感じに生身でポケモンの技を使い始める、通称『スーパーマサラ人』でもないとこの世界で楽しく生きていくことはできません()
他にも10万ボルトの電気をゼロ距離で浴びたり、火炎放射を食らっても生きていられないとポケモンと付き合うのは難しそうです。
そんな世界に転生した私だったのですが……まぁ、しばらくはどうもせずにゴロゴロしてましたよ。
流石に赤ん坊でしたからね、動こうにも何もできなかったのです。
動けなかったから、本当に暇になりそうでしたよ……。
まぁ、その時は父さん達のポケモンが一緒に遊んでくれたのでいいんですけれどね。
「アイテール……本当に大丈夫かしら……」
「大丈夫さ。あの子は私と君の大切で勇敢な息子だろう? アイテール、全力で楽しんで来い!」
「うん! 行ってくるよお父さん! 心配しないでお母さん! 僕は大丈夫だから!」
「~!! ……頑張ってきてね! アイテール!」
それからというものの、成長した私は7歳になり、ポケモンスクールに通うようになりました。
心配性なお母さんと、背中を押してくれたお父さんの声を聞きながら、私は学校へと入っていきます。
ちなみにですが、今世の家族である「お父さん」と「お母さん」には私の事情……転生云々に関しては既に話しています。
私自身、隠し事が苦手というのもあったのですが……長年ポケモントレーナーをやってきたお父さんとお母さんには見破られてしまったみたいで……。
――その時に全て打ち明けたのです。
恐る恐る言葉を紡ぎ、全てを話し終えた時には何を言われてもいいように体を縮こまらせていました。
拒絶されるのが怖い、でもこの秘密を抱えたまま生きるのは嫌だ……そんな2つの思いに板挟みにされ、2人の言葉を待ちます。
『……そうか、そんなことが……世の中凄いことがあるのね……』
『そう、ですね……私自身、今でも信じきれません……ですが、何度も頬をつねって考えてみたんですがやはりこれは現実でした……自分でも、気味が悪いと思ってしまいます……もし、出ていけというのなら今すぐにでも……』
『――そんなことを言うなアイテール。どんな事情があっても、お前は私達の息子……大切な家族なんだよ』
『! ……受け入れてもらえる、のでしょうか……?』
『最初からそうよアイテール。あなたがどんな子であろうとも、私達はあなたを受け入れる。だから安心していいのよ』
『っ……あぁ……!』
2人はどこまでも優しい人です。
こんな私でも受け入れてくれて、愛情を注いでくれる。
ならばその愛情に応えねば……!
「……と、思っていた日が私にもありました。は……は……ハッ、クシュン!」
ぽつーん……という擬音が付きそうな状況の中、一人でベンチに座りながらクラスメイト達が楽しく遊んでいるのを眺めます。
なんとですね……私ことアイテール、学校に通って1週間と経たずに風邪をひきました()
なんでだ……体調管理は完璧だったはず……。
昨日やったことなんて、『ブーバーン』と遊んだあと、『ユキメノコ』と一緒にお昼寝しただけなのに……いや心当たりバチバチにありますね。
やはり馬鹿は死んでも治らないというやつですか……不肖アイテール、一生の不覚……!
「フィーアァ……」
「ブレァ……」
「クィーン……」
「あぁ……『ニンフィア』、『ブレイブ』、『プリンセス』。大丈夫ですよ、この程度……は……ハッ、クチュン!」
そんな私を心配してくれたのは、私のバッグに入れてある『モンスターボール』から出てきてくれた『ニンフィア』。
そしてニンフィアの後に出て来た2人のポケモン――『ブレイブ』と『プリンセス』は、実は前世の知識にはいなかった『新種のポケモン』でして、発見者はこの私です。
体長は両者ともに、おおよそ2メートル半程度。
『ブレイブ』はスマートな全身甲冑を着込んだような人型をしており、いざとなれば手の甲から伸びる「剣」で相手を切り伏せます。
まるで護衛の騎士のような見た目の『ブレイブ』とは違い、華やかなバトルドレスを着こんだような見た目の『プリンセス』は、その華やかさとは打って変わったアグレッシブさで相手を翻弄します。
『行くよイーブイ!』
『イーブイ!』
彼と彼女との出会いは今から2年ほど前に遡り、当時『スーパーマサラ人』を目標として遊ぶついでに体を鍛えるため、近くの森に出かけていた時のことです。
一緒についてきてくれた『イーブイ』……今は『ニンフィア』に成長した彼女と森を探検していた当時の私は、それはもう森の奥深くに足を進めてしまっていたのでした。
その時に2人と出会ったのです。
『ブ、ブレァ……!』
『ヒュ、ヒュー……ヒュー……』
ひんしの状態であった『プリンセス』を庇うようにして、こちらへと敵意を向ける『ブレイブ』。
当時は今よりも小さく、見た目だけなら『コマタナ』のようにも思えました。
ですが「あくタイプ」特有の雰囲気を持つ『コマタナ』と違って、どこかの王族なのかと思えそうな高貴な雰囲気を持つ2人の姿に、「まさか新種のポケモン?」と思ってしまえたのも無理はないでしょう。
『えっと、えっとぉ……ワタシ、キミ、タスケル。ソノコ、トッテモ、アブナイ。オッケー?』
『……! ………………!(コクリ)』
『よし! それならついてきてください!』
しかしそれも束の間、明らかに危険な状態である『プリンセス』を治療するため、『ブレイブ』に何とかボディランゲージで敵意がないことを伝え、お父さんとお母さんに大慌てで診てもらいました。
『大丈夫かなあの2人……』
『大丈夫だと思いたいね……ところで、君はあの2人をどこで見つけたんだい?』
『えっと、森の中で見つけて……』
幸い、父さんの伝手でポケモンセンターに緊急搬送されることになった2人。
一目でひんしだということが分かる『プリンセス』もそうでしたが、そんな彼女を守っていた『ブレイブ』も傷は深い状態でした。
『ふぅむ……各地の図鑑を見返してみたが……彼らのようなポケモンは見たことがないな……』
『やっぱり、ですか……』
『……君もうっすらと分かっていたのかい? まだ幼いのに勉強を頑張っているんだね』
『そ、そうですかね……?』
そんな彼らの無事を祈りつつ、遅れて到着した博士の話を聞いていたところ、やはり彼らが新種のポケモンだということを伝えられます。
それも自分が今いる地方だけではなく、世界中の図鑑を見返したらしいのだが、それらしい情報は見つからなかったらしいとのこと。
それから数時間後、包帯に巻かれた2人の部屋の前で、両親に連れられた私は博士と話をします。
――彼らを博士に預けるかどうかの話を。
『彼らは研究という観念を除いても希少すぎる……もしこのまま野生に返しても、その珍しさから『ポケモンハンター』に襲われてしまうだろう。ならば私の伝手を利用してしかるべき機関に彼らを連れて行くことの方が良いかもしれない……』
『そうですね……その方が一番安全のはずですね……』
『――だが、最初に見つけたのは君であり、彼らも君に心を許している。それを鑑みると「君が引き取る」という選択肢も「アリ」ではないかと私は考えているんだ。それに……彼らを見たまえ』
『……え?』
『ブレァ……』
『クィーン……』
博士と私の話が聞こえていたのか、ガラス越しにこちらを見つめる2人の姿。
その眼差しにはおそらく、「お前の選択に任せる」という『信頼』が込められていたのかもしれません。
私はポケモンと言葉を交わせるような力を持っていないので、これは推測でしかないのですが……当時の私は直感でこう答えていました。
『――博士、もしよければ僕が引き取ってもいいですか?』
『……それが君の答えなんだね?』
『はい。信頼されているのならそれに応えたいと思ったからです』
『……ふふっ、親御さんも、それで大丈夫ですかね?』
『ええ。この子が決めたことなら喜んで』
『私もです! アイテール、大切にしてあげるのよ?』
――そうして、私は彼らを引き取ることにしたのです。
「……いつの間にか私以上に大きくなりましたね、『ニンフィア』、『ブレイブ』、『プリンセス』。今更ですが、ちょっとうらやましく思います」
「ブレァ……」
「クューン……」
「フィーア!」
「……ふふっ、私も早く大きくなりたいものです」
私の言葉に気恥ずかしそうにする『ブレイブ』、花の咲くような笑みを浮かべる『プリンセス』、元気に答えた『ニンフィア』の姿に、私自身釣られて笑みを浮かべました。
そんな風に気を取り直して、これからの学校生活を頑張っていこうとした時――
「ねぇ君。少し話をしていいかな?」
「? 君は……?」
「あ、自己紹介を忘れてたね。ボクの名前は――」
――少し、浮世離れした空気を纏う少女に話しかけられるのでした。