ダイヤのA〜世代最強右腕〜actⅡ   作:ホークス馬鹿

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26話です。


26話

ズバアアンッ!!

 

室内練習場にて、ミットの音が響き渡る。

惇が、御幸に投げ込んでいるのだ。

 

ズバアアンッ!!

 

由井「っ!」

 

その後ろで、由井はただ絶句するしかなかった。

 

由井(す・・・凄い・・・ブルペンの時と全然違う・・・これが・・・足立さんの本気・・・そして・・・この球を引き出しているのは・・・)

 

惇の本気の球、そしてその惇の力を引き出す御幸のキャッチャーとしての力を肌で感じていた。

 

栄純「ぐぬぬ・・・相変わらず手元で伸びてくるな・・・!」

 

暁「・・・負けない!」

 

そんな2人を、複雑な気持ちで見ている栄純と暁。

すると

 

ズバアアンッ!!

 

御幸「悪い、キャッチングミスった!」

 

御幸が、少し悔しげにして返球した。

 

惇「俺も、少し抜けました!!すいません!!」

 

惇も、ボールが抜けたと御幸に謝った。

その様子を見て

 

由井(この緊張感・・・ただの個人練習とは思えない・・・)

 

由井(これが・・・青道の正バッテリー・・・!!)

 

由井は、2人を中心に纏う独特の緊張感に冷や汗をかいた。

 

「「・・・」」

 

栄純と暁も、この緊張感に言葉が出なくなった。

すると

 

御幸「足立・・・お前は一体、どこを目指してる?」

 

御幸が、惇に対し目指す場所を尋ねた。

 

惇「・・・去年の夏、俺が打たれたせいで監督を、哲さん達3年生を日本一にする事が出来ませんでした。今でもその時の事は夢に出てきます。」

 

惇「俺の今の目標はただ一つっす。日本一多く、日本一高く・・・片岡監督を胴上げする事だけしか考えてないっす!」

 

惇「その為に、俺は壊れても構わないっすよ!」

 

御幸「っ!」

 

惇の強い言葉と意志に、御幸は絶句するだけで

 

「「「・・・」」」

 

他の皆も、御幸同様惇の決意に驚くだけだった。

 

御幸(エースの自覚と責任・・・それが、更なる力を引き出しているのか・・・)

 

御幸は、昨夏の悔し涙と片岡を思う気持ちが、惇の力を引き出し、そしてそれがエースの自覚と責任、そしてプライドを確固たるものにしているのだと感じた。

しかし

 

御幸「分かった!でも、監督の方針は分かってるよな!怪我と引き換えの勝利はあの人は望まないぞ!」

 

片岡は、クリスの一件と昨秋の都大会優勝時、惇は肘の内側上顆炎と右手人差し指末節骨の疲労骨折をしてしまい、御幸もその時の彼のボールを受けた影響で左手を負傷した事で、怪我などには気を使うようにと言われている。

彼は、怪我と引き換えの勝利はいらないと常々話しており、惇のこの強い意志と姿勢は、ある意味方針に反する事なのだ。

 

惇「分かってます!でも、俺はその覚悟ですよ!!」

 

とは言え、惇も分かっており、尚且つその覚悟でいると返したのだ。

 

御幸「・・・分かった。それじゃあ、今日はここまでにしよう!!」

 

御幸は、惇の覚悟に若干の危うさを感じつつも、練習を切り上げた。

 

惇「うっす!んじゃあ、飯食ってきます!」

 

御幸「ああ!準決は多分ベンチだけど宜しくな!」

 

惇「うっす!」

 

そして、個人練習を切り上げ、惇は室内練習場を後にしたのだった。

 

御幸「アイツの球、受けてみるのと後ろからしっかり見ててどうだった?」

 

御幸は、惇のボールについて由井に聞いた。

 

由井「えっと・・・俺が思ってた以上に手元で伸び上がってくるなと・・・それに、ブルペンと違ってやはりボールの質が全く違うと感じました・・・」

 

由井は、ブルペンで受けた時を思い出し、少し悔しげだった。

 

御幸「確かにアイツの球は他のとは違う・・・現に俺も苦労した。」

 

御幸「ある時は、左手に力が入らなくなって、加えて人差し指も突き指してしまって茶碗を持つのに苦労したからな。」

 

由井「っ!?」

 

御幸も苦労した事を知り、由井は驚きの顔を浮かべた。

 

御幸「まぁ・・・最初は苦労すると思うが、お前もそのうち慣れるさ。」

 

御幸は、それでも慣れていくと言い、由井に笑顔を見せた。

その後、暁と栄純の投げ込みが始まるのだが

 

暁「では・・・僕が・・・!」

 

栄純「いいや!俺が先だ!!」

 

2人共惇の言葉に刺激を受けたのか、以前より競うように言い合った。

すると

 

御幸「いや、まず降谷から行こう!」

 

御幸は、先に降谷から受けたいと言った。

 

暁「・・・やった。」

 

栄純「ちぇ・・・ヘロヘロになるまで投げんなよ!」

 

そして、暁から投げ込みが始まった。

 

ズドオォンッ!

 

全て構えた所には来てないが、まるでミサイルのような豪速球が投げ込まれていく。

 

御幸「これで満足か?」

 

暁「・・・まだです!」

 

御幸「じゃあ、しっかりコースに投げろ!ビタハタに投げろとは言わんが、全部逆球だぞ!ブルペンからずっと!」

 

暁「・・・投げます。」

 

御幸は、厳しい言葉を言いつつ、ミットを構えた。

そして

 

ズドオォンッ!

 

ラストを受けたその時

 

御幸「降谷。お前、センバツで何を見た?」

 

御幸は、暁に質問を投げかけた。

 

「「「・・・」」」

 

周りは、御幸の言葉に疑問を感じたが、御幸は気にせず

 

御幸「求めているのは、桐生との試合か?」

 

御幸「コントロールにスピード、そして集中力・・・あの桐生の強力打線を相手に、9回4安打2失点完投。これまで受けた中で最高のピッチングだった・・・去年練習試合で投げた時と比べて、大きな成長を感じた・・・」

 

去年の夏予選前の合宿で桐生との試合で投げた時から大きな成長を感じ、自己最高と言っても過言ではない快投だったと答えつつ

 

御幸(正直・・・コイツもどこまで行くのかとゾッとしたぜ・・・)

 

彼の成長スピードに背筋がゾッとしたのを感じた。

しかし

 

暁「・・・でも負けました。自分が奥居に打たれたから負けたんです。」

 

暁は奥居1人にやられ、負けてしまったと答え

 

暁「手に入れたいのは・・・あの日以上のピッチング・・・そして、惇に勝ち・・・奥居を三振に打ち取る事・・・!」

 

更なる高みと、惇という高い壁と打倒奥居という強い決意を口にした。

 

御幸(更なる高み・・・自ら進むは茨の道か・・・)

 

御幸は、暁の強い意志を感じつつ

 

御幸「分かった!今日はここまでだ!」

 

暁との練習を切り上げた。

 

暁「え?まだ投げれます・・・」

 

御幸「いや、もう10球投げたし。それに・・・気持ち空回りして、地に足ついてないボール受けんの、結構しんどいんだよ!」

 

御幸は、空回りしたピッチャーのボールはこれ以上受けたくないと言いつつ

 

御幸「明日の対戦相手は市大三高で、先に言うと先発はお前だ。ベストな状態に持っていく事が、お前の役目だ。」

 

御幸「それが出来ないなら・・・準決の先発は沢村だぞ!」

 

コンディションを整える事が今は大事だと諭しつつ、煽った。

 

栄純「何!?」

 

暁「!?」

 

御幸「待たせて悪いな沢村。じゃあ、始めるぞ。」

 

栄純「全く何なんだよ、一体!?」

 

栄純は、突然明日の準決の先発は自分だと言われ、少し動揺していたが

 

栄純「少しナンバー11をメインに投げたいので、お願いしますよ!」

 

御幸「分かった分かった!早くアップするぞ!」

 

すぐにアップを始めた。

すると

 

暁「・・・マウンドを譲る気はありません。」

 

御幸「それを決めるのはお前じゃねーよ、監督だ。」

 

暁は、マウンドを譲らないと言ったが、御幸は決めるのは片岡だと返した。

暁は、少し悔しそうな表情を浮かべたが

 

暁「・・・あがります。」

 

練習場を後にした。

その際

 

御幸「ちゃんと飯食って、リカバリーしとけよ。後アイシングとマッサージも・・・」

 

暁「分かってます!」

 

御幸「分かってねーから言ってんだよ!」

 

御幸は、暁にリカバリーをしっかりするよう言った。

因みにこれは何度も言っているのだが、暁は怠るところがあったのだ。

まぁ、そんなこんなで栄純と練習を始めた。

その初球

 

御幸「ナンバー4!」

 

ズバァンッ!

 

外低めに構えた御幸のミットに正確に収まった。

 

由井(凄い・・・構えた所に寸分の狂いも無くミットに・・・!)

 

由井(それに・・・ギリギリまでボールの出所が見えず、思った以上に手元で伸びてくる・・・初めて受けた時、俺はミットを鳴らせなかった・・・)

 

由井は、栄純の精密機械の如きコントロールに改めて舌を巻いた。

その後も真っ直ぐを投げ込み続けていき

 

御幸「次!ナンバー2!」

 

ナンバー2、つまりツーシームを要求した。

 

ククッ!

 

栄純は、ナンバー2をまた正確に投げ込んだ。

 

御幸「もう少し行けるか?」

 

栄純「勿論!」

 

そして

 

御幸「じゃあ次!ナンバー7!カットボール改!」

 

ナンバー7を要求した。

 

由井(カットボール改?カットボールとは違うのか・・・?)

 

由井は、何故カットボールに改と加えているのか疑問に感じた。

そして、御幸は右バッターの胸元に構えた。

 

栄純(クロスステップで、全身を使っていたカットボールに、プラス握りの改良・・・右バッターの胸元・・・抉るように・・・!!)

 

すると

 

ギュイッ!!

 

右バッターの胸元から一気に抉り込むように鋭く曲がり、御幸のミットに収まった。

そのキレは、通常のカットボールより遥かにキレや曲がり具合、そして威力が増していた。

因みにこのボールは始めた投げたわけじゃない。

オフの間、惇がカットボール改を見た事があるのだ。

この時は、今と比べてまだ未完成だったのだが、初めて見た惇曰く

 

惇『なんだ今のボール・・・カットボールよりエグいぞ・・・!』

 

惇『他のボール同様、このボールも完成したら、コイツがエースナンバーを背負うんじゃねーのか・・・!』

 

と危機感を抱いたのだった。

 

御幸「ナイスボール!だが、少しコースがズレたな!」

 

栄純「はい!すいません!」

 

由井(凄い・・・初めて見るボールだ・・・カットボールより遥かに鋭い・・・!)

 

由井は、惇と同様の驚き方をしていたのだった。

そして、練習を終えると

 

由井「御幸先輩。2人の間で数字で呼んでる球・・・全部で何種類あるんですか?」

 

由井は、御幸にナンバーズに関する質問をした。

 

御幸「何種類と言うか・・・殆ど未完成だけどな。」

 

由井「未完成?」

 

御幸「ああ。元々酷い癖球を投げるコイツの場合、握りを変えるだけでボールを変化させる事が出来るんだ・・・」

 

御幸「オフの間、片っ端から握りを試して、生き残ったのがナンバーズなんだ・・・」

 

御幸は、オフに色々握りを試させて残ったボールがナンバーズとなったと言い、まだまだ完成していないと答えたのだ。

 

由井「成程・・・」

 

由井(ある意味では、足立先輩と降谷先輩とは違うタイプ・・・『技巧派』と言う異名も納得だ・・・)

 

由井は、改めて栄純の実力を感じたのだった。

一方、監督室では

 

片岡「・・・」

 

片岡が、選手の野球ノートを見ていた。

 

惇『全国のてっぺん目指すなら、皆と共にレベルアップが必要』

 

惇『個人の課題・・・ボールを上手くコントロールする・・・頭に血が上らないようにする・・・』

 

惇『まだまだ・・・てっぺんには届かない・・・去年みたいに俺が打たれなければ、チームを・・・監督を日本一に出来る・・・』

 

片岡(足立・・・)

 

惇のノートを見て、片岡は彼の気持ちを改めて受け止めていた。

昨夏の甲子園決勝、最後に打たれてしまい、惇はマウンドで崩れ落ちた。

その際、御幸が彼の肩を担ぎ上げたのだが、片岡もベンチから駆け、肩を抱いたのだ。

その際

 

惇『すいません・・・すいません・・・』

 

惇は、泣きながら謝り続けていたのだ。

その時の事を、片岡は未だに憶えており、思い出すだけで胸が締め付けられるような感覚になるのだ。

 

片岡「・・・」

 

そんな思いになりながらも切り替えて彼のノートを閉じ、次に読んだのは暁のノートだった。

その内容には

 

暁『全国の頂点を目指すなら、個々のレベルアップが必要』

 

暁『個人の課題・・・立ち上がり、ランナーを出さない・・・セットポジション、頭の切り替え・・・』

 

暁「足りない物が多すぎる・・・今のままでは、惇に届かない・・・』

 

暁『惇を超えたい・・・そして、日本一の投手になりたい・・・』

 

暁の強い決意が伝わる内容だった。

そして、片岡は彼のノートを閉じ、思いに浸ったのであった。




投稿出来ました。

少し長文になりましたが、読みにくかったらお許し下さい。

それでは、また。
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