Brave×Beat   作:明石雪路

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お久しぶりです。


初バイト!

 

かくあってスターリーのバイトの面接を受けた炎馬1年組。

その結果は果たして!

 

 

「全員採用だ」

「えええ?!」

 

 

 ハッキリと言い放った星歌にPAは今まで出したようなことがない声を上げた。

 

 

「え、いいんですか?」

「まぁな」

 

 

 面接を終えた星歌は履歴書を眺めながら言った。

 

「セナ君モン太君、鈴音ちゃんは1度バイトに来てくれてるしな。クセはあるけど3人とも仕事ぶりは真面目だった。

 甲斐谷くんも真面目で賢そうだし、正直今のスターリーに居ないタイプで頼りがいがありそうである。字も綺麗だし。

 水町くんはなんかこう……アホそうだが良い奴だな。明るすぎるのがウチのライブハウスっぽくないかって感じだけど……大山も馴染んでたしなんとかなるだろ」

 

 

 理由は納得出来たが、それ以外に懸念点があるのではないか。

 PAは恐る恐る尋ねた。

 

 

「あの子たち試合の日とか練習日に一気にシフトに穴あきませんか?」

「それなら他のバイト入れりゃあ大丈夫だろ」

「他のって……」

「考えても見ろ。今まで結束バンドの4人とバイト2人だけで経営回ってた訳ないだろ。アイツらがライブの時とかレコーディングとか、アニメや漫画に写ってない時にいるんだよバイト。ここ休業日ないんだぞ」

「そういう話はやめましょう!」

 

 

 

 世界の真理に触れてそうな理由をツラツラ言い出した星歌をPAは大声でとめた。

 なんかもう色々とヤバすぎる。

 

「てか、練習日とか出られる日とかシフトの希望時間も聞いたけど、レンタルスタジオの夜の番なら練習の後からも出られるとか言ってたぞ。体力どうなってんの?」

「いや……知りませんけど……」

 

 

 さすがは普段からグラウンド100周したり、試合で1時間ずっと走り続けたり、夏休みに2000キロ走り続けた連中である。体力が段違いすぎる。25歳を超えてから寝ても体力が満タンに回復しなくなってきたし、なんなら休むのにも疲れてきた大人な女性の二人には彼らがどういう仕組みで動いているのか分からなかった。原子炉かパラジウムリアクターでも積んでるのだろうか。

 

 

 自分たちだって二徹で楽器をかき鳴らしたり曲作ったり桃鉄したり、元気のあった時期はあるはずなのだが……。

 

 

 

 それはさておき。

 

 

「それに何よりぼっちちゃんの友達だし、信用できるだろ」

「うーん、相変わらず後藤さんに甘い……。大丈夫ですかね?」

 

 

 

 

 

 そして、初出勤日が来る。

 

 

 

「だ、大学生活楽すぎる!」

 

 

 後藤ひとりは、ルンルンで朝の支度をしていた。寝巻きのピンクジャージから外出用ピンクジャージに着替え、水道水で顔を洗って準備OK。花の女子大生とは思えない、男子小学生めいた身支度を終える。

 

 

 大学が始まって三週間ほど経過したが、ひとりの評価は「最高」だった。

 

 

 出席はスマホで取るから声を出して返事する必要ないし、席は自由だから誰かが自分の席を使っているという心配もない。席自由はひとりにとってかなりありがたかった。

 

 

中高時代の悩みの全てがとっぱらわれた世界がそこにはあった。

 

 

唯一の悩みはグループディスカッションだが……今のひとりには鈴音達がいる。大抵は4人以上か2人組なので、ひとりにとってはさしたる問題ではない。

 というかほぼ常にあの3人と一緒にいるのでぼっちではなかった。

高校時代は郁代の友人と滑る話で盛り上がらなくて苦労したこともあったが、今は鈴音のおかげで話が無限に続くのでそんなことは無い。

 オマケに高校時代のことを知っている人間がいないのも素晴らしい。

 

(贅沢だなぁ、リア充だなぁ)

エヒエヒ笑いながら電車に乗る。

 

今の悩みを強いてあげるならバイトは相変わらず少し憂鬱だということくらいか。しかし、

 

(今日は小早川くんとモン太くんが来るんだっけ。一緒なのがリョウさんと猫々ちゃんだからバイト初めての人だったら怖かったけど、知ってるふたりでよかった〜)

 

 やはり最近はバカヅキのツイてる時期なのかもしれない。

 

 

(二人ともすぐに仕事覚えちゃったりするのかな……最近は大学新生活でシフト減らしてもらってたからミスしたりするかも……で、でも私も3年はバイトしてるし……。

6日は先輩面出来るはず!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして授業後、気合を入れて出勤。

 

「おっ、お疲れ様です……」

 

どんだけ前向きになってもバ先に行く時にテンションが下がるのは相変わらず、そっとドアを開けて中に入ると、

 

「おーっ、後藤遅かったな!」

「あっ、後藤さんお疲れ様」

 

 

 既に到着していたセナとモン太が掃除と設営作業に勤しんでいた。

 既にステージや客席はピカピカに掃除され、テーブルは光沢を放っている。デジャブである。

(あれ? 猫々ちゃんが来た時もこんなだったような)

(ってそうじゃなくて)

 

「あの、小早川くん達部活で遅れていくって」

「ミーティングはすぐ終わったから」

「意外と走るとすぐなのな!」

 

(バッ、バイトに走ってくるなんて! これから死ぬほど疲れるのに?!)

 

彼らの無限の体力に度肝を抜かれるひとり。これで同い年とは思えない。

 

 

「こんちはーーッ!!!!! すんません進路相談で遅れましたーッス!!!!!!」

 

 

そこで、秀華高校3年の大山猫々がクソデカボイスで元気よく入ってきた。ここでのバイトも2年経ち、溢れ漲る明るさといつまで経っても抜けない新人感はスターリーの超新星とも呼ばれている。

 その声を聞いて、音響スタジオから機材の調整をしていたと思しき星歌とPAが出てきた。

 

 

「おお、大山来たか。それじゃあ新人の紹介を……」

 

 

 奥から出てきた星歌がセナとモン太に紹介させようとして、

 

 

「元泥門デビルバッツの小早川セナ選手と雷門太郎選手?!」

 

 

 大山が代わりに説明した。

 

 

 

 

 

(有名だとは思ってたけど、猫々ちゃんも知ってるんだ……)

 

 

「あっ、猫々ちゃん詳しいの……ですか?」

「もちろんですよ! あたしクリスマスボウル優勝するまでの試合も世界大会も全部見ました! どの試合も好きですけど、巨深戦と王城戦は特に何度も見直してます!

どっちも体格差がある相手に挑んでるんですけど、セナ選手はどっちにもすばしっこさで勝っちゃって!

もうペララペラペラペラペラペラペラペラペラ小結選手もペラペラペラペラモン太選手も桜庭選手にペッペラペラペラペラ帝黒もアメリカもペラッペラペラペラ」

 

 

 

(ね、熱量がすごい!)

(というか私の時と反応違いすぎるような……)

 

 

 セナとモン太の二人にぐいぐい近づきながらオタトークを詠唱する猫々を見てショックを受けつつも回顧してしまうひとり。ギターを教えてほしいと毎日付きまとってきたあの日が懐かし……いや、やっぱり懐かしくなかった。トラウマだった。全てがNになってたし。

 

 

「たまたま見たテレビで小柄なのに頑張ってる選手がいるなーって思って! 背の高かったり大きい選手に何度も立ち向かってる姿見てたら感動して元気出て! 中学でバスケ3年間頑張れたのも皆さんを見て勇気貰ってたからなんです!」

「……この子は良いやつだ……!」

 

 

 モン太は腕を組んで天を仰いで男泣きを見せた。かつてプロ野球選手、本庄勝野手に10年あこがれ続けてきたモン太にとって自身が憧憬の対象になるのは感慨深いものがある。

 感涙にむせぶモン太を置いてセナが尋ねた。

 

 

「アハハ、なんかありがとう。バスケは今もやってるの?」

「高校入ったときに辞めちゃいまして……。でもその後始めたバンドが楽しいので! 今はバンドで全国優勝が目標です!」

「……! やってみたら今のが楽しいってあるよな!」

「!」

「はい!!」

 

 

 モン太が、アメフトに誘った時にかけた言葉を覚えていたのがセナはなんだか嬉しくて顔がほころんでしまう。

 

 

(確かに、前まで働きたくないって思ってたけど……皆と働ける今はそうでもないかも)

 

 

 ひとりもまた、昔と今の自分の心境の変化に感慨深さを感じていた。

 

 

「憧れの選手のお二人と今の憧れのバンドマンのヒッピー先輩がいるこのバ先最高です!!」

 

 

 そういって猫々はスマホの壁紙を交互に変えて見せた。一枚はバンドグッズ衣装に身を包むクソダサバンダナグラサン姿のひとり。もう一つは賊学戦前にヒル魔に撮られた中指を突き立てるアイシールド21。

 ダサさとコンプラ違反のマリアージュに3人が慌てた。

 

 

「ねっ、猫々ちゃんそれは止めて……!」

「どこで手に入れたのそれ?!」

「中指の待ち受けはまずいだろ!」

 

 

 

 アワアワしながら制止しようとする三人と(∩∀∩)?とした顔の猫々の姿を見、彼らは大丈夫そうだと安心する星歌。ただ一つ懸念点があるとするなら……。

 

 

 

「山田どこいった」

 

 

 星歌はしばし考えた後、女子トイレに向かった。しばらくするとトイレでサボっていたリョウが両手を拘束されジャケットで顔を隠しながら連行された。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「そ、それじゃあ仕事をお、教えます。初めにドリンクを……」

 

 

「は、はい」

「お願いしまっす!」

 

 

 緊張するセナと、気合に満ちたモン太。

 

 

(ムサシさんの大工の手伝いならあるけど、接客とかは初めてだ。緊張するな~……。説明聞き漏らさないようにしないと)

「うっしゃあ、やる気MAX!」

 

 

 

 二人からジッと視線を向けられ、普段の数倍の緊張感を味わうひとり。

 

 

 

(間違ったことを教えたら二人が間違ったまま覚えることになって、そしたら失敗してショックで辞めちゃうんじゃ)

「どり、どりドリドリ……」

「ちょっ、後藤さん?」

「なんでそんなポケモンみたいな鳴き声を」

 

 

 かつてのひとりならばプレッシャーで爆散していたことだろう。しかし、今のひとりは違った。

 

(めげるな後藤ひとり、私は登録者13万人のギターヒーローだ!)

 

 これぞ後藤ひとりの真骨頂、予備動作無しからの気合充填である。

 

 

 

「そっ、それじゃあ曲にして教えます!」

「なんで急に?!」

「ギターどっから出したんだ?!」

 

 

 戸惑う二人を全く気にせず、アンプなしのギターで鮮やかに軽快に音と仕事内容を紡ぐひとり。

 その唐突で滑らかなテクニックにいろんな意味で注目してしまう。

 

 

(すごい、やっぱり後藤さんのギターってかっこいい!)

(大学の過ごし方からじゃ想像できないくらい力強い演奏、これがギターMAXの後藤ってことかよ!)

 

 

 

 

((でも内容全く頭に入ってこないな……))

 

 

「山田ーッ、大山ーッ、頼むわ」

 

 

 一曲演奏を終えた後、星歌はレコーダーの録音ボタンを切ると二人を呼んだ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「設営はテーブル動かしてアルコールスプレーで拭いてって感じです!」

「わかった。それにしても結構重いんだねこれ……」

 

 

 

「モン太、男子トイレはおっけー。次は女子トイレね」

「うっす! ……そっちは山田先輩がやった方が良いんじゃないすか?」

 

 

 

(み、皆仲良さそうにしてる……)

 

 

 セナは猫々に、モン太はリョウからそれぞれ仕事内容を教わっていた。ひとりは一人ドリンクの準備である。

 どっちのペアもなんだか円滑に仕事をしている。ひとりだけぼっちだった。

 

 

 自分だけ一人で、周囲が仲良さそうにしているとき、つい平気じゃないのに平気そうにしてしまうのがガチぼっちの習性である。

 

(今も店長さん、PAさんと機材の確認でここにいないのか……前は店長さんに気を遣わせちゃったし、心配されないようにしないと!)

 

 

 ひとりはカウンターという障害物を利用して、準備しつつ素早くステップを踏んで横移動したり上下移動で出たり消えたりを繰り返した。ぼっち感どころか存在感を薄めることにしたのである。ついでに薄まった存在感を活かして仕事の教え方を練習することにした。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ドリンクの方を教えます!」

「ドリンクについて教えるから」

 

 そして猫々、リョウの指示に従ってセナとモン太、計4人の視線が偶然ドリンクの受付にそろった時、彼らは見た。

 

 

 ゴースト分裂して複数人に見えるひとりの姿を。

 

 

「ひとりぼっちゴースト?!」

「というわけでここがトニックウォーターで、ここがビールで。さすが後藤さん! わかりやすい」

 

 

 ふたりのひとりが漫才みたいに話している。見ていられない光景だった。いろいろと心配になってくる。

 

 

 

 この後何とか正気に戻し、二人は無事ドリンク作業を学ぶことが出来たのだった。

 

 

 

 そしてライブ開始前の繁忙期を乗り切り……。

 

 

 

 

「セナ先輩意外と接客苦手っすね!」

「う、うん。結構バッサリ言うね……」

 

 

 

 先ほど客が入り始め、次々と訪れる客にドリンクを配っていったのだが、

 

 

「セナ先輩、コーラっす!」

「はい!」

「これウーロン茶です」

「あっ、ごめん」

「つぎカルーアミルクです!」

「はいっ」

「これコーヒー牛乳です」

「あ」

「ソルティドッグです!」

「ち、ちょっと待ってね」

「……なんで味の素だしてるんです?」

 

 

 

 こんな具合である。

 

 しかも渡すときは目が光速4秒2で泳ぎまくっていた。黒目がスカッシュ状態である。

 

 

「ご、ごめん……」

「大丈夫っすよ! 冴えないところも少年漫画の主人公みたいでカッコいいです!」

「本当に歯に衣着せないね……」

 

 

 少年漫画の主人公であるセナは引きつった笑みで答えた。

 そんなセナの肩を叩きながらひとりはニヘラと笑ってサムズアップ。

 

 

「だ、大丈夫大丈夫……! 私にもそんな時代あったから……!」

「ヒッピー先輩めちゃくちゃご機嫌ですね!」

「なんでうれしそうなの?!」

(少なくとも今日追い抜かれることはなさそう!)

 

 

 やっぱり先輩風を吹かせることへの安心感からの笑みだった。

 3年目の手練手管を見せるときだと、ひとりはドヤ顔でカウンター後ろの棚を開いた。

 

 

「か、カルーアの場所はここで……」

「あ、ヒッピー先輩、改修で配置変わったんでそこじゃないです。こっちですよ!」

「……」

 

 

 撤回。練度は初日のセナと同じくらいになった。

 

(3年目の後藤さんも慣れないんだ、この程度でへこたれてる場合じゃないや)

 

「ありがとう、大山さんも後藤さんも。もう少し頑張ってみるよ。場所と作り方もっかい教わってもいいかな」

「はいっす!」

「もっ、勿論です。……あ、猫々ちゃん新しいドリンクの場所教えてください……」

「はい!」

 

 

 

 

 

 

「暇っスね」

「ライブ始まったからね」

 

 

 モン太とリョウはポツポツとやってくる客にチケットの受付を行っていた。

 

 

「モン太はもう受付大丈夫だね。次からは一人で行けると思うよ」

「あざっす!」

「掃除も鮮やか、これで私がいなくても安心」

「……もしかして仕事全部投げようとして無いっスか?」

「……」

「……」

 

 

 疑い気味に見てみるとリョウはすっと目線を外した。

 モン太はやっぱりかと思いつつ、入口に埃がたまっているのが見えて箒を持ち出した。

 シャカシャカ掃き掃除を行うモン太を見ながら、リョウが口を開いた。

 

 

 

「……モン太はさ、卒業してからもアメフトやるの?」

「? 勿論っスよ。世界一のレシーバーになるのが目標なんで!」

 

 

 どや顔でサムズアップ。そこのない自信に満ちたその表情をリョウはかつて毎日のように見ていた。

 

 

『見てくださいよリョウ先輩! ここの韻の踏み方最強じゃないですか?!』

『ここの下り! めちゃカッコいいフレーズにしてください!』

『私らの曲なら絶対ランキング1位取れますって!』

 

 

 虹夏に結束バンドに誘われる前の、かつてのバンド仲間だ。馬鹿正直で青臭い歌詞ばかり書くギタリスト。文句と注文ばかりだったが、暑苦しくて、真っすぐな彼女に何となく似ている気がするのだ。少し前までは彼女らのことを思い出すので似たような奴からは距離を取っていたが、最近はそうでもなくなってきていた。

 

 

「やっぱ似てるね」

「何にっすか?」

 

 

 思わずこぼしてしまった言葉をモン太に拾われ、慌ててごまかした。

 

 

「秘密」

 

 

 

「やっぱモン太の真面目で熱血(チョロくて単純)なところ気に入ったな」

「今とんでもないルビ振ってないっスか?!」

「ないない、はい虹夏が大きく映ってるアー写。500円」

「ふっ、ぐっ、これはっ、いただくっス……」

 

 

 丁寧に折って胸ポケットにしまうモン太。

 

(やっぱチョロい)

 

 リョウは500円玉をがま口財布に放り込んだ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「それじゃあみんなお疲れ様」

 

 

 

「お疲れ様でした!」

「お疲れーっス!!」

 

 

 ライブハウス閉店後。清掃を終えて一日の労働が終わった。

 

 

「初めてにしちゃあやれてる方だったよ。それじゃあ次もよろしくな」

「ハイ(っス!)!」

 

 

 星歌に仕事ぶりを認められ、快活に返事を返すセナとモン太。

 着替えを終えて帰ろうとするも、ひとりもリョウも帰らないことに気が付いた。(猫々は受験のためもう帰った。)

 

 

「あれ、二人とも帰らないの?」

「こ、この後新曲で少し合わせがあるので……」

「店長、スタジオ少し借りる」

 

 

 バイト終わりのこの後に打合せをするという二人にセナは驚いた。

 

 

「これからバンドの練習なんてすごいね」

「こ、こんなの普通ですよ、えへへ」

 

 

 照れるひとりをよそに、モン太は思い出したように星歌に言った。

 

 

「そうだ伊地知店長、俺ら次のシフト練習後なんで今日より遅くなるっス」

「ああ、前言ってた時間に間に合うならいいよ」

「え?!」

 

 

 練習後に来ると言い出したモン太にひとりは驚いた。

 

 

「れ、練習してからバイトするんですか?」

「うん、時間的に意外と入れられそうだったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

「後藤さんたち、これからバンド練習なんてすごいや」

「ああ、体力どうなってんだろーな。やっぱすげえな、バンドマンってよ」

 

 

 

 

「れ、練習の後にバイトなんて、すごいですね」

「体力おかしい。アメフト部ってあんななのかな」

 

 

 

 一方は帰路で。一方はスタジオで。お互いに自分たちの凄さに自覚のないまま、相手の凄さに驚嘆していた。




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