「それじゃあ、喜多ちゃん、ぼっちちゃんの合格を祝して!」
「「「「かんぱーい!」」」」「かっかんぱい……」
というわけで祝賀会である。結束バンドのメンバーは居酒屋の個室を予約してのお祝いである。
大学合格のお祝いが居酒屋なのは、星歌のおごりだからである。
「お姉ちゃん、ありがとう!」
「まあ、二人の合格はめでたいし、特にぼっちちゃんが大学行くとか二つの意味ですごいことだからな」
「いやー、本当にめでたいねー!」
すでにジョッキを半分減らしているのはバンド〈Sick Hack〉のボーカル/ベースの廣井きくりだ。
「何でお前ここにいるんだよ」
「何となく気配がしまして……いだだだだ!!」
星歌のアイアンクローを浴びて悲鳴を上げる廣井。
「そういえば、ぼっちちゃん大学どうだった? 入試の時は緊張で記憶飛んでたけど、印象は?」
「あっ、はい。えっと…敗北感で燃え尽きちゃいました…」
「いきなり何に?!」
「断片的にしか話を聞けてないんですけど、少し話した人と似たもの同士と思ってたら全然違ったみたいで。ギャップで苦しいと」
「ぼっちちゃんに似てるって……そんな人いるの?」
「はっ、はい。小早川セナくんって言うんですけど」
「……それってアメフトの? 世界大会とか少し前にテレビでやってたよな」
「店長〜あれって2年前ですよ?」
「えっ、そんなに前なの……? 虹夏の卒業だってつい先日の……」
「1年前です」
PAに指摘され自分の時間感覚のズレにショックを受ける星歌。
「そういえば、私が着く前に少し話してた人いたわよね。あの人がそうなの?」
「そ、そうです」
〜郁代のうっすら覚えている記憶〜
セナ「それじゃあまた」ペコペコシュババババ
「確かに似てたわね!高校時代に私が他の人と話し始めた時にその場を去る時とか」
まさかの後藤ひとり、人から逃げる際には光速の4秒2を出していた疑惑が浮上した。
「速いというか、ぼっちちゃんのアレはステルスじゃない?」
「柳葉揺らし」
「リョウはなんの漫画読んだのさ…」
「ぼっちちゃんが運動部の人と似てるとか想像できないねー」
「大山みたいなやつがいっぱいるのかと思ってた」
大山とは、STARRのバイトでありひとりや郁代の通う秋華高校の後輩である。中学時代運動部だったからなのか、非常にやかまし……賑やかである。そこでリョウのロインがピロンとなった。
大山『呼びましたか?!!!』
「「なんでわかるの?!」」
「でも…オドオドしてるかと思ったらすごいアメフト選手だったとか、コミュ障だと思ったらギターヒーローだったぼっちちゃんに確かに似てるよね」
「能ある鷹は〜ってことですか?」
「そうそう」
「そ、そうですかね」
〜ひとりWorld〜
「えーッ、今や結束バンドのリードギターでありギターヒーローでもある後藤ひとりさんはアメフトのプロ選手、小早川セナさんと同じ大学だったんですか?」
「ええまぁ……何度か話しましたよ、同じ一流として……得るものがあったので」
キャーッさすが後藤ーッキャーッ
セナに勝てる気がしないのでせめて同じレベルにすることで帳尻を合わせた妄想を繰り出すひとり。肥大した承認欲求とぼっち特有の自己肯定感の低さをカクテルするとこんなものである。
「そ、そんなこともありますかね、うへへ」
「今直接褒めてないのにどうやってメンタル治したのかしら?」
「もう元気ならそれでいいよ」
シラッとした顔で味付き卵を摘む虹夏。付き合いも4年目ともなれば慣れてきたものである。
「ま、まぁ一流として……ね」
「最近ぼっちの世界ではクール系イキリの濃度上がってきたな」
リョウの分析も何処吹く風、ひとりはすましたようなドヤ顔だ。
「正直ひとりちゃんが知り合いのいない大学で1人とか心配だったから、話せそうな人がいてよかったわね」
「じゃあ入学式とか付き添いしなくて大丈夫そうだね」
郁代と虹夏の、友人と言うより子供に対しての物言いに対してぼっちは
「さ、さすがに大丈夫ですよ〜」
((((絶対無理だ))))
入学式当日。
(今日は入学式。中高のクラス替えとは違い、完全に人間関係がリセットされている……。また再構築しなくちゃ行けないけど、しがらみがないからまっさらな状態からスタートできる好環境とも言える……。ポジティブに捉えろ後藤ひとり! 行くぞ!)
思考循環10週目。
「もうお姉ちゃん1時間はトイレにいるよー?」
「新記録更新だな!」
「そろそろ遅れちゃうわよ〜?」
「だってさ」
「やっぱり迎えに来といてよかったね」
4月1日朝。
結局、ひとりはトイレに閉じこもり、下北沢の大天使が迎えに来るのだった。
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