Brave×Beat   作:明石雪路

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ランニングトレイン

 日曜日。この日は結束バンドのライブがある日で、日中はアメフト部の練習日だ。

 

 

ラインマンはタックル。クォーターバックとレシーバーがパスとブロックの練習に勤しむ中、ランニングバック兼セイフティーのセナと陸は酒寄から腕輪のようなものをそれぞれ渡された。

 

 

「えっと、これは?」

「重りだ。一キロある。両手両足、ベスト型のも体につける」

 

 

 

 触ってみると砂っぽい何かがぎっしり詰まっている。砂鉄だろうか。

 

 

「普段やってるラン練習やフォーメーション練習でもこれを付けろ。負荷が感じられなくなったら重さを追加だ。」

「これって心肺能力を上げるとか?」

「体幹の強化ですか?」

「さすが陸と……アメリカで勉強してきたセナもわかるか。

 体幹トレーニングは他にもあるがな、これなら走りながら負荷をかけられて効果的だ。タックルという負荷がかかっても走り続けられる体を作らなきゃならねえからな。お前らは身長も170くらいまで伸びてきたが、それでもアメフト選手の中じゃチビだ。体格差で負けやすい。だったらせめて倒れない走りを身に着けろ」

 

 

 倒れない選手。セナには、二人の選手が浮かんだ。

 

 王城ホワイトナイツラインバック・進清十郎。

 帝黒アレキサンダースランニングバック・大和猛。

 

 

 二人とも鍛え抜かれた強靭な体を持ち、生半可なタックルではものともしない無敵のランナーだ。

 すばしっこさでは二人にも負けないと考えているセナだが、逆に言えば他じゃ何も勝てない。

 

 そもそも素早さですら同チームの陸に若干軍配が上がるのだ。時代の最強ランナーの称号〈アイシールド21〉を背負う選手として、誰にも負けたくない……!

 

「けっこーきついぞ。やるか?」

 

 

 ニヤニヤしながら酒寄が煽る。二人の返事はわかり切っていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「いやー、ライブ楽しみっスね!」

 

 

 

 

午後4時。アメフト部の練習を終えたセナ達バイト組はいつもと反対側の駅に向かっていた。

 

 

「とかいって、虹夏先輩を見れるからでしょ」

「ちっ、ちげーよ! ただ生のライブが初めてだからテンションMAXなだけだっつの!」

 

 

 

 鈴音に指摘され、大慌てで否定するモン太。彼のショルダーバッグのストラップには黄色の結束バンドが巻かれている。

 

 

「モン太わかりやすいなー……」

 

 

「僕今回はライブハウスに入れるかな……」

「今回の新宿FOLTというところは結構大きいらしいから問題ないそうだが……」

 

 

 一方で以前ドアに挟まれてしまった栗田はビビっていた。再び挟まったら後始末を請け負うことになる雲水もそれは遠慮したいので、事前に調べてみる。

 

 

「あっ」

 

 

 しばらく歩いたところで、セナは声を上げた。

 

「どうしたよ?」

「定期券部室に置いてきたかも。取ってくるから先行ってて」

「わかった、バスの乗り場間違えないでね」

「うん」

 

 

 

 

 大学までもどって定期券を回収したセナは、喉の渇きを覚えて大学向かいの公園内の自販機にむかった。

 

(重りラン、全身で5キロくらい背負ってたけどもう少しいけそうだなあ。陸はもっと楽そうだったけど) 

 

 

 そんな考え事をしながらミネラルウォーターを1本買ったところで、

 

 

「あの、もしかしてアメフトの小早川セナ選手ですか?!」

 

 

 唐突に少年特有の声変わり前の高い声でその名を呼ばれた。

 

 

「は、はい?」

 

 

 キャップを開ける前に振り向くと、三人の小学校高学年と思しき少年が期待に目を輝かせてアメフトボールをセナに突き出した。

 

 

「そ、そうですけど」

「あ、あの! もしよかったらサイン貰ってもいいですか!?」

 

 

セナは、こういったようにサインや握手を求められることが高1の時のクリスマスボウル優勝後・世界大会出場の後からほんの少しずつ増えてきていた。

 

 未だに小市民の自覚のあるセナにとってはむずがゆさを感じる慣れないシチュエーションではあるが、応援されているのは悪い気分ではないし、彼らの目標になっているのなら恥じないプレーをしたいと思う。

 

 

 おそらく彼らはタッチフット(小学生や女性向けのアメフト。タックル等危険プレーがない)の選手なのだろう。

 

 

「いいよ、えっとどこにサインを」

「僕はボールに!」

「ノートにお願いします!」

「どうしよ、えっと、シャツにお願いします」

 

 

(こういうのってやっぱまるっぽくまとめた方が良いのかな~?)

 

 

 自分の汚い字をごまかすようにシャシャシャと書いていくセナ。彼らの私物にはたちまちセナの竜跳虎臥……というか前衛的な文字でサインが記された。少年たちはそのサインを見て目を輝かせる。

 

 

「世界大会とか見てました! 帝黒戦のデビル4ディメンションとか、世界大会のパンサー選手との一騎打ちとか、ホントに痺れました!!」

「サイン、ありがとうございます!」

「あはは、ありがとう。えっと、次は……」

「水をお願いしますゥゥゥゥ……」

 

 

 ゾンビみたいなうめき声で水が注文された。

 

 

「はい?」

 

 

 よくわからない要求にセナが手元から顔を上げると、いつの間にかタッチフットの少年たちに並んで土気色の顔をした女ゾンビが猫背気味に目の前に立っていた。

 

 

「ヒイイイイイ!!?」

「ぎゃあああああ!!」

 

 

 あまりの恐怖にビビるセナと、ダッシュで逃げ去る少年たち。粗削りながらも素早い走りはなるほど熱心にタッチフットに心血を注いでいるようであった。

 

 

 それはさておき。

 

「うーん」

 

 

 少年たちの高音の悲鳴が鼓膜から脳に刺さってダメージを受けたのか、女ゾンビはぶっ倒れた。

 

 

「あれ、この人……」

 

 

 そこでセナは、目の前の女ゾンビがただの薄汚れた人間であることが分かった。砂でどろどろのスカジャン、若干ヨレヨレ気味のキャミワンピース、下駄という春先にしては薄着なうえに右手にタトゥーを入れたパンチのある外見をしたこの女の正体とは……?

 気が付くと、なぜか二人は並んで公園のベンチに座っていた。

 

「助かったー、名前なんていうの?」

「小早川セナです……」

(やばい人を助けてしまった……)

 

 

 ちゃっかり水を追加で1本たかったスカジャン女はヘラヘラと笑いながら

 

 

「いやー、ごめんね水奢ってもらっちゃって」

「いや、そのくらいなら全然……」

「昨日の夜から飲んでてさー、気が付いたらこの公園で寝ててさ~」

「ははは……」

(なんかこの人、酒寄先生と同じ匂いがする……)

 

 

 

 雰囲気としてではなく、体臭が似ている。汗のすえた臭いというかアルコールが混じっている感じが特に。

 酒カスオヤジと臭いが似ているという、成人女性が絶対に貰ってはいけない感想を抱かれていることにも気が付かずに服の至る箇所から鬼ころ(パック酒)を取り出しては摂取するスカジャン女。近寄りがたいなとセナは思う。

 

 

 あと正直タトゥーを入れている人間は問答無用で少し怖いと感じる小市民セナであった。

 

 

 

(というか時間がヤバイ! バスあんまりないのに!)

 

 

「えっとすみませんお姉さん、今日ちょっとこのあと友達のライブに行く予定があるって言うかそろそろ行かなきゃって言うか……」

「え、そうなの? 私も今日ライブあるんだー。ベース弾くからね~」

(ヒイイイ、逃げ切れない!)

 

 

「新宿FOLTってところでやるんだけどね」

「え、それって結束バンドってバンドと一緒にやったりとか」

「そうだよ! セナ君知ってるの?」

「ギターの後藤さんって人に誘われて」

「えーぼっちちゃんと知り合いなんだ! 私もぼっちちゃんとは付き合い長くてね~、すごい偶然だね!」

「い、意外過ぎる……」

 

 

 まさかまさかの謎のアル中女とひとりが知り合いであることに驚愕するセナ。

 バンドで結構有名であることもすごいが、やはり人脈とかも広いのだろうか? あの性格からは想像できなかった。

 ひとりはバンドの時は性格が変わるとか、話してないときはめちゃくちゃクールとかあるのだろうか。

 

 

 

「さて、そろそろ行かなくちゃ。目的地同じだし一緒にいこーよ」

「そ、それは良いんですけど。もう二時間切ってるのにこの場所にいていいんですか?」

「……」

 

 

 黙って画面がバキバキのスマホを開くと、スカジャン女は……。

 

 

「やっべ」

 

 

 誤魔化すかのようにスカジャン女は紙パックにストローを突き刺すと思い切り鬼ころを吸い込んだ。

 

 

「ここって明大前だよね?」

「炎大前です」

 

 

 

 明大前駅は新宿まで京王線で一本だが、炎大前は『名前似てるくせにバス停だし、そもそも最寄りの駅からクソ遠い上に新宿まで一本で行ける路線がない陸の孤島大学』と呼ばれて有名であることをここに記しておく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 同時刻、新宿FOLT控室にて。

 

 

 

「今日は急にお願いしてしまってありがとうございます、志摩さん」

「いやいや、こちらこそ。誘ってくれてありがとう」

 

 

 

 シデロスリーダー大槻が頭を下げると、とんでもないとばかりに志麻は手を振った。

 岩下志麻。バンド〈Sick Hack〉のドラムであり、母とも呼ぶべき苦労人である。

 

 

「今日ライブするの、昨日か一昨日に決まったんですよね? めちゃくちゃ急ですけど大丈夫だったんですか?」

 

 

 結束バンドリーダー虹夏が尋ねると、志麻は苦悶の表情で顔を歪ませながら口を開いた。

 

 

「廣井がな……前回のライブで機材壊しすぎて足が出そうになったんだ……!」

「Sick Hackの収入で赤字になるほど!?」

「今回は特にヤバかったデース……」

 

 

 Sick Hack一番年下のギタリスト、清水イライザは遠い場所を見るような目つきで言った。

 サイケデリックバンド〈Sick Hack〉といえばインディーズながら知名度の高い人気バンドであり、一回のライブや物販でそれなりのバンド収入が見込まれるはずである。普段は廣井のギャラと相殺することで問題を収めてきたのだが、今回に限ってはそうもいかなかったようだ。

 

 

「だからどっかでライブ増やさなきゃだったから、大槻に誘ってもらえてよかったよ」

「いえいえ! 正直ダメかと思ってたので……!」

 

 

「Sick Hackと対バンなんて胸アツMAX……!」

 

 

 かしこまる信者・大槻とは打って変わってファンであるリョウは先ほどから目をキラキラさせて腕をぶんぶん降っている。

 郁代はその姿をスマホのビデオに収めながら、

 

「でも、どうして急にバンド枠空いちゃったんでしょう?」

 

 

 不思議そうに首をかしげると大槻は、

 

 

「前座を務めるスリーピースバンドだったんだけど、ギターボーカルが逃げたらしいわ」

「うっ」

「何か聞いたことある……」

 

 

 過去の罪を思い起こされて胸を締め付けれる郁代と、そんな郁代にしらっとした目つきを送る虹夏。

 

 

 

 

 それにしても、と虹夏は思う。

 

 

「私たちとシデロス、Sick Hackが急とはいえ一緒にライブってすごいことだなって」

「イソスタやXteraも結構盛り上がってますね」

 

 郁代もタイムラインをチェックしては戦慄している。見たところツイート数はSick Hackとシデロスと結束バンドで5:3:2といったところか。

 

 

 高2の冬はアウェーな空気に白けて終わった苦い記憶が未だに残っている。

 あれから新曲もたくさん作って経験も積んで、レーベルと契約もして……。成長してはいると思う。だが、どのくらい変わったかがわからない。一緒にライブをする彼らと釣り合っているのかも。

 

 

(これでいいのかな)

 

 

 虹夏は思う。結束バンドは順調だ。いくつものバンドが解散していく中、自分たちはうまくいきすぎてるくらいだ。

(でも、このまま上手く行き続けるのかな……。あーだめだ、大学で進路の話やポスターが目に付く機会が増えてからこんなこと考えてばっかりだ……。ライブに集中しないとなのに)

 

 

 余計なことばかり考える。だが、虹夏よりもグロッキーになっている人間がいた。

 

 

(昨日の夜は明日行くからとか頑張ってってロイン貰ったけど、知り合いに見られるってやっぱり緊張する……)

(というか元気出してほしくて小早川くんたち誘ったけど、別に私たちのライブ見せたからって確実に良くなるわけでもないし……

というか今日のセトリ別に聞いたから元気出るような明るい歌詞してない!)

(そもそも私背中押すような歌詞書けないし……)

(でもやっぱり……)

 

 

 自分より緊張している人間を見ると落ち着いてくる。

 

 

「大丈夫? ぼっちちゃん」

「だ、大丈夫ですよ」

 

 ひとりは目を眼球可動域を超えながら泳がせて一人は虚勢を張った。

 

 

「ライブがまた白けたら、わ、私がとっておきの一発芸を披露しますから。喜多ちゃんにも協力してもらって名付けてゴルフ……」

「私絶対やらないからね!!?」

「絶対やめて!!!……ふふっ」

 

 

 あまりのくだらなさに思わず吹き出してしまった。

……何を悩んでたんだっけ?

 きっと、【今】はどうでもいいことだ。

 

 

「いつも通りやれば大丈夫! 全力ぶつけて頑張ろう!」

「はい!」

「あっ、はい!」

 

 

「しかし、そろそろリハしときたいんだけど廣井の奴全然来ないな……ロインの返事は来てたのに」

 

 

 不安げにスマホを確認していると、イライザがベースを背負って志麻のもとに来た。

 

「志麻~。昨日きくりと一緒に打ち上げしたってバンドの子がベース持ってきたヨ~…」

「はあ?! じゃあアイツ今どこに……」

 

 

 志麻はスマホを取り出し――返事を聞き――

 

 

 

「何やってんだあの(ファッキン)アル中!!」

 

 

 どこぞの悪魔の司令塔のようにブチ切れた。

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとごめんって~……」

『いいから早く来い! タクシー呼んでもいいから! ベースも今持ってきてもらったぞ!!』

 

 

 

「やべー、やっちまった~…」

「あの、大丈夫ですか? 電話の向こうめちゃくちゃ怒鳴られてましたけど……」

「まあ、よくあるからね~」

 

 

 えへへと笑うスカジャン女はスマホをポチポチ叩きながらタクシー呼び出しアプリを起動させた。

 

 

「せっかくだしセナ君も乗っていきなよ!」

「えっ、でも僕タクシー乗ったことないし……お金ないですよ?」

「…………FOLTまで行けば誰か持ってるから!」

 

 

 今の間は何だったのか。なぜ自分が払う前提でないのか。セナが『金がない』と言わなかったら誰が払うと思っていたのか……。セナはツッコまないようにした。

 

 

 さてタクシーを呼ぼうとスカジャン女はアプリを起動させたが

 

 

「ち、近くにタクシーが一切走ってない……」

 

 

 都内でもタクシーが見つからないというのはよくある話である。特に炎大は住宅街の真ん中に位置するため、来ないことはよくある。

 仕方がないからギリギリ間にあうバスで行くことにし、炎大前バス停に向かう。

 念のためにと路線情報をチェックすると、

 

 

「前のバス停でフロントライト破損によりダイヤ見直し……!」

「嘘!?」

「というか新宿までのルートで渋滞みたいですね……」

「アハッ、ハハハ……」

「泣いちゃった?!」

 

 

 へらへら笑いながら涙を流されるとガチでどうしようもない感じがして胸が締め付けられる。

 

 

「いやー……まさかここまで詰むとは……。前のライブで過去一機材ぶっ壊しちゃったし、もうさすがに志麻たちに見捨てられるかな……」

 

 

 スカジャン女は先ほどまでのあっけらかんとしたテンションはどこへやら、神妙な面持ちでバス停のベンチに腰掛けた。

 

(ど、どうしよう。どうすればいいかな。というか僕も間に合わないじゃん! せっかく後藤さんが誘ってくれたのに!)

 

 

 

 新宿FOLTまでのルートを確認する。そして距離と移動時間を確認し、セナは覚悟を決めて口を開いた。

 

 

「お姉さんを背負っていこうかなーと思うんですけど、どうですかね……?」

「え?」

 

 

 突拍子もない提案に、スカジャン女の喉から変な音が出た。

 

 

「え、こっから電車もバスも一時間くらいかかるのに?」

「直線ルートで行けば早く着くかもっていうか、意外と小道多いから間に合うかもって言うか……」

「ひ、人ひとり背負って10キロ以上走るの? 体力とかは……」

 

 悲嘆もぶっ飛び、ぶっ飛んだ提案にスカジャン女はただ困惑している。

 

 だがセナは、冷や汗をかきながら薄ら笑いを浮かべていった。

 

 

「足と体力には、少し自信あるんで」

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待ってえええええええ!!!!????」

 

 

 最低限の荷物以外を部室に置き、準備体操をしてからスカジャン女を背負い、セナは駆けだした。

 セナは思った以上に体重の軽いスカジャン女に驚きつつも、道を確認しながら走り続ける。

 大通りならば迷わず走れるが、それでは間に合わない。地図アプリが提案しないような道を血眼になって探しながら走りつづける。

 

 

 一方でスカジャン女は死にたくないと必死にセナにしがみついていた。速さこそ自転車と同じくらいだが、ガクガク揺れて怖すぎる。

 

(あ、レンタル自転車借りればもっと安全だったかも……)

 

 道を直角に曲がり、ガックンとさらに揺れる。

 

 

(二人乗りになるか、飲酒運転になっちゃうか……)

 

 

 腕と足に必死に力を入れる中、頭だけがぼんやりとそんなことを考えていた。アルコールなんてとっくにぶっ飛んでいる。

 

 

(志麻、イライザごめんなさい……。次からはホントに、ガチで気を付けます……)

 

 

 初めのころは無駄な思考や悔恨の言葉が浮かんでは消えたが、しばらくしてからあることに気が付いた。

 

 

(さっきからセナ君全然止まってない。曲がる時に減速してないし、しかも揺れが少なくなってきてる?)

 

 

 スカジャン女の気づきは正しかった。

 

 

(全身力むんじゃない。足だけでもない。体の軸をブラさないようにして、へその下に力を入れるような感覚!)

 

 

 セナは重り(スカジャン女)を背負いながら、少しずつ体の力の入れ方を正しながら走りを最適な形に形成していく。

 コツをつかみながらボルテージの上がったセナはスピードを増しながらさらに新宿へ向かって爆走していく。

 

 セナのテンションが上がる一方で、スカジャン女もだんだんと見慣れた街並みが広がってきたことに気が付いて気分が盛り上がってきた。

 

 

「あ、セナ君! そこ曲がれば近道になるよ!」

「はい!」

 

 

 曲がり、走り、走り、走り――――――――

 

 

「つ、着いた~……」

 

 

〈新宿FOLT〉の看板が見えたとき、セナは地面に崩れ落ちてスカジャン女も地面に転がった。

 

 

「あれ、転がってるの〈Sick Hack〉の廣井じゃね?」

「背負われてここに来たのか?」

「あの男、小早川セナじゃね?」

「どういう組み合わせ?」

 

 

 ライブ前で人通りが多いこともあってざわめき具合が大きいが、セナと廣井は動けなかった。

 

 ライブハウスから出てきたピンク髪の女性は「す、すみません……」と超控えめに人込みをかき分けて出てくると、二人を見て声を上げた。

 

 

「こっ、小早川くんと、お姉さん?」

「あ、ぼっちちゃ~ん……今日はよろしく~…」

「後藤さん……間に合ったかな……」

 

 




泥門は昔アメリカ横断で2000キロ走り切ったのよ! 人抱えて都内の15キロ走るくらい何よ!


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