ハイスクールA-A   作:右眼

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過去

「個別にくるならさっさとこい」

 

「それなら私が…」

 

向かってきたのは猫のような少女だ

 

だが先の少年のようなスピードを持っているわけではなさそうだ

 

「いきます」

 

少女は肉弾戦闘を挑んできた

 

「なるほど、貴様は力か」

 

その一撃を見てわかる

 

この拳に込められた力は先の少年の比ではない

 

「リトルボーイ」

 

右拳に炎を纏いそのまま少女を殴り飛ばす

 

「くっ!」

 

少女は猫のように受け身を取る

 

「力だけでなく硬さも兼ね備えている…か」

 

だがなにかピンとこない

この少女は本来の実力をいや本来の力を使おうとしていない

 

「貴様、なぜ力を使わない」

 

その一言で猫の少女の表情が変わる

 

「なんで…そのことを」

 

「ほぅ、猫又…とやらの力か」

 

その一言を聞いた猫の少女は取り乱したように殴りかかってくる

 

「余程トラウマがあるようだ。だがトラウマ程度乗り越えなければ本当の強さに到達などしない」

 

「フーッ!フーッ!」

 

少女は唸る

どうやらここの悪魔とやらはなにか心に抱えているようだ

先の少年もエクスカリバーとやらにご執心だったようだったことからわかる

 

「なんであなたが知ってるんですか」

 

「貴様から思考がダダ漏れだ。忘れたのか?私は神だ。思考を読むなど造作もない」

 

 

正確には破片、念動力の能力の一つ意思受信(テレパシー)を使っただけではある

 

「姉の能力の暴走を見たから力が暴走するのが怖い…か」

 

「だからなんだって言うんですか」

 

「使え、貴様程度が暴走した所で私を倒せるわけが無い」

 

確かにそれは間違いではない

例えこの世界そのものが相手になろうとアークライトには糧としかならないのだから

その世界の一部である個人が暴走した所でなにも変わらない

 

「それどころか貴様が暴走した事さえ私は気付かない」

 

その挑発に乗って猫の少女は能力を解放する

 

猫又の能力を解放する

すると猫耳が現れ本格的に猫に近づいて行く

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

少女の全力の雄叫びと共に小さな体からは想像できない力の波動が迸る

 

「飲み込まれたか…」

 

アークライトは呟いた

半ばやけくそになりながら解放したのだ

能力が暴走するのは目に見えていた

だがアークライトはあえてそうさせた

 

何故か

 

「それでいい。ビビってなにもしないよりはその方が百倍マシだ」

 

アークライトは少女の全力の一撃を軽々と受け止める

 

「貴様のそれはまだ覚える価値もない。だがいつの日かそれを使いこなし力から技へ昇華したらその時私は貴様の力を覚えよう」

 

アークライトは右腕を振り上げる

 

(パワー)

 

そしてその圧倒的な力で小猫をねじ伏せる

力に飲み込まれ我を忘れていた小猫を黙らせるにはこれしかなかったのだ

 

 

 

「小猫ちゃん!」

 

 

すると兵藤一誠が声を荒げ駆けてくる

 

「大丈夫か?」

 

心配そうに少女の心配をする兵藤一誠

だが意識を完全に手離しておりその声に応えはしない

 

「安心しろ、死んではいない」

 

「死ななきゃいいってもんじゃないでしょう!」

 

「死ななければ何度だろうとやり直せる。何度だろうと立ち向かえる」

 

アークライトは兵藤一誠の目を見て言う

恐らくアークライトが初めて明確に兵藤一誠に告げたアドバイスだろう

 

「それに…」

 

その時優しい光が少女を包み込む

 

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)

 

アークライトがアーシアから覚えていた能力である

それもアーシアのそれとは段違いの治癒力である

 

「その娘に言っておけ。力を使う使わないは自分の勝手だ。だが使おうとしないものに力は制御など出来ない」

 

「使おうとしないものに力は制御など出来ない…」

 

アークライトの言葉を噛みしめるようにつぶやく兵藤一誠

 

「それは貴様も同じだ」

 

アークライトが指したのは姫島朱乃である

 

だが特別なにか言うわけでもなくアークライトは真っ直ぐに黒髪の少女を睨む

 

 

「あらあら、怖い。なんのことでしょうか?」

 

姫島朱乃は普段と同じように答えるがその目は笑ってはいなかった

 

考えを見透かすアークライトの前に隠し事など無意味

だがそれでも普段と同じような態度を取るのはプライドからだろう

 

「貴様の場合は使うのが怖いではなく使いたくない。それ故の悪魔か」

 

アークライトは完全に姫島朱乃の思考を読みきっている

 

「貴方にわかりますか?」

 

姫島朱乃は口を開く

 

「わからんな。ここにいる全員の思いなどわかりたくもない」

 

アークライトは答える

 

「一昔前の私ならその気持ちもわかっただろう。だが過去の些細な出来事などに気を取られるほど私も甘くはない」

 

 

確かにアークライトは破片を集める為にニードレス狩りを行っていた

その理由は自身の強化、聖痕を集める為だけでなく奪われた破片を取り返すという理由も含まれていた

 

それだけでもなくアークライトは本物のアークライトである左天のクローンだ

その事実を知って尚自分の事をアークライトと名乗るのだから既に過去を割り切っている

 

「貴様が父親を恨もうと、そこの男が聖剣とやらを憎もうと、あの女が自身の力を畏れようと私には関係ない」

 

アークライトは言う

 

「過去に縛られ満足に全力も出せない貴様らが強さを求めるなど笑わせる。いい機会だ言っておく。小さい器に欲張って詰め込むと醜くなるぞ」

 

その場を立ち去ろうとするアークライト

 

「待てよ!」

 

だかそれを止める声が一つ

 

「確かにアークライトさん、あんたの言う通りだ。言う通りだけどよ…みんなだってなにかしら抱えてんだよ。それを纏めて過去の些細な出来事で済ませる事なんて出来ねぇんだよ」

 

兵藤一誠はアークライトに詰め寄る

 

「私は忙しい。逃げの姿勢しか見せないような奴の面倒を見てやれるほど私は心は広くない」

 

「でも!」

 

「何度言えば分かる。今の貴様らの修行とやらに私はもう付き合ってられんと言ったんだ。心の弱いものが強さなど得られるはずもない」

 

アークライトは小猫を掴み抱えるとそのまま連れて帰る

 

「だがこいつだけは違ったようだがな。貴様らも過去の柵を乗り越えたら私のところに来るがいい。それまでは修行に付き合うのはこいつだけだ」

 

アークライトは小猫に何かを見出したのかはわからない

 

「魔剣の男よ」

 

アークライトは木場を呼ぶ

 

「力は憎しみだけでは得られない」

 

「!!」

 

「小僧よ」

 

次に兵藤一誠を呼ぶ

 

「なんですか」

 

「己の力、そのルーツを知れ。更なる力があるはすだ」

 

アークライトは既に兵藤一誠の中に何かが居ることを見抜いている

それが赤龍帝とまではいってはいないが

 

「女」

 

次に呼んだのは姫島朱乃だ

 

「貴様にはなにも言うまい。だが敢えていうならば思いは口にしなければ伝わらん。皆が皆私のように心が、記憶が読める訳ではない」

 

「それは…」

 

「自分でわかっているだろう。なにをすべきなのかを」

 

アークライトは旧校舎に歩いていく

 

 

 

「私も甘くなったものだな」

 

アークライトは一人呟き旧校舎へと姿を消した

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