旧地獄の地霊殿にある一室で、こいしは手に持っているベータカプセルを見ながら考えていた。
「どうして私なんだろう?他にもパルスィとかお姉ちゃんとかいるのに………」
あのウルトラマンとかいう巨人が言っていた怪獣が現れたとしても、怪獣を追い返せる自信がこいしにはまだなかった。
◇ ◇ ◇
こいしは無意識に旧都を散歩していた。普通であればこいしが何かを抱えていることに気づくが、今のこいしは無意識を発動しているために誰も気づかなかった。
こいしが灼熱地獄跡まで来たとき、燐と空が忙しなく働いていた。
(本当に私でいいのかな………)
少し下を向いたとき、お燐とお空の2人が話している内容が聞こえてきた。
「お燐!!急激に温度が上がってる!!死体はいらない!!」
「え!?あたいはどうしたらいい!?」
「とりあえずさとり様に報告!!」
お空の近くの温度計を見ると、もうすぐ29℃になろうとしていた。
「何があったの………?」
地獄跡を覗き込むと、マグマが透けて底に鎮座している巨大生物が見えた。
「!?」
巨大生物の皮膚は茶色く、背中にマグマと同じ色の角があった。巨大生物の目は開いていないものの、角の色が心臓のように点滅していた。お空には見えていないようだった。
(伝えないと!!)
教えるために肩を叩こうとしたとき、無意識に手を止めてしてしまった。その理由は後になってこいしの頭に浮かんできた。
(もしお空が見えないことを言っても信じてくれるかな………私が見えるのは巨人のおかげっぽいし………)
そう思った直後、低い唸り声のような音が小さく響いた。
ギヤアアァァァ
「え?何?今の音、この灼熱地獄跡からじゃ………」
こいしが無意識にお空の手を引いて旧都の方に飛んだ瞬間、灼熱地獄跡から寝ていた巨大生物が出てきた。出てきたときの衝撃で、マグマがさっきいたところに降り注いでいた。
「ってこいし!?」
ギヤアアァァァァ!!!
灼熱怪獣 ザンボラー
叫び声を聞いたこいしとお空は、さっきの声がこの巨大生物だと確信した。お空はザンボラーを遥かに上回る速度で、こいしを連れて旧都に急行した。
◇ ◇ ◇
「そうなのね、道理でいつもより暑いわけだわ」
「どうしましょう?」
「水をかけるにも焼け石に水でしょうし、お空に任せましょう。お空なら………」
そこまで言いかけたとき、お空がこいしを連れて飛んできた。
「あら、噂をすればよ」
「さとり様!!大変です!!巨大な生き物が灼熱地獄跡から出てこの旧都へ向かっています!!」
「「!!?」」
4人で外に出ると、遠くからでもわかるほど異様な大きさのザンボラーがこちらに歩いてきているのが見えた。
「っ!!」
「お姉ちゃんどうかしたの!?」
「あの生き物はかつて生きていた場所から連れ出され、この地を襲うように仕向けられているわ!!」
「え!?」
「嘘でしょ!?」
ザンボラーのことが可哀そうだと思った次の瞬間、ザンボラーの角と背中の突起が赤く光って近くにあった家数軒が爆発・炎上した。
「どうしたらいいの!!?」
さとりは文字通り頭を抱えていた。暴れるザンボラーの操りを解除したくても方法が思いつかず、倒してあげたくても倒せない。そんなさとりの心情を察したこいしは、ベータカプセルを服の上から触った。
(私なら………!)
こいしはこっそりみんなから離れて未だ暴れているザンボラーを見た。するとザンボラーの顔の周りを飛んでいるお空がいた。
「こっちを向きなさい!」
お空が攻撃を受ける前にこいしはベータカプセルを掲げた。
◇ ◇ ◇
お空が攻撃を受ける前に、ウルトラマンがお空を両手で包んで地霊殿に近いところまで移動した。
「巨人!?」
ウルトラマンは両手を広げてお空を開放すると、お空を向いて頷いた。お空が瞬きをする間に、ウルトラマンはザンボラーの目の前に移動して飛び蹴りをした。
灼熱地獄跡の方に転がるザンボラーを追うように、ウルトラマンも走っていった。
灼熱地獄跡の近くで睨み合い、ザンボラーの角が光るとウルトラマンは腕を胸の前でクロスに組んだ。そのままウルトラマンが近づき、ザンボラーの下に体を入れて横に転がした。
「すごい………」
地霊殿にいた3人は決着を知るためにウルトラマンを追いかけ、戦いを物陰から伺っていた。
ザンボラーは負けじと体を回し、長い尻尾を引っ掛けてウルトラマンの体勢を崩していた。その間にウルトラマンの上に乗りかかって角を光らせ、爆発と共にウルトラマンを追い込んでいた。
ギヤアアァァァァ!!!
ウルトラマンは何とか下から抜け出したものの、カラータイマーの音が灼熱地獄跡に響いていた。
ピコン
ピコン
「何の音かしら?」
「さとり様、あの巨人の胸にある赤い光の点滅と間隔が同じです」
「あの巨人が焦り始めたわ。おそらくあれは戦える時間を示すものよ」
自分たちの弾幕がザンボラーのとどめを刺せないことを理解しても、彼女たちはウルトラマンを援護するために攻撃をした。
「猫符「キャッツウォーク」!!」
「核熱「ニュークリアフュージョン」!!」
「想起「テリブルスーヴニール」!!」
その攻撃はとどめをさせないものの、ザンボラーを混乱させるとともにその場に留めた。ウルトラマンはその瞬間を逃さずに両腕を十字に組んだ。
さとりはウルトラマンの過去を覗いたときに見た光線と今の構えが一緒であることに気づき、2人に叫んだ。
「お空!!お燐!!その生物から離れなさい!!」
「「はい!!」」
3人がザンボラーから離れると同時に、十字に組んだ右手から光線が放たれた。
ギヤアアァァァァ!!!
攻撃を受けたザンボラーは爆散した。
ウルトラマンは3人の方を向いて頷き、光の粒子となって消えていった。
それと同時に地霊殿の近くで光の粒子が集まり、人型を形成すると姿がこいしになった。
「今のがウルトラマン………」
そしてこいしの右手にベータカプセルが現れた。こいしはベータカプセルを両手で胸に近づけて呟いた。
「あまり使いたくないけど、もしあんな生き物が現れたら使わせていただきます」
『君がこの地のために戦う限り、私は君の力になる』
「!!?」
『頑張りなさい』
こいしは声の主がウルトラマンだと気づき、笑顔でさとりのもとへ走った。
◇ ◇ ◇
「あれ?こいしは?」
「そういえばいませんね」
3人が周りを見渡したとき、地霊殿の方からこいしが走ってくるのが見えた。
「どこ行ってたの?」
「避難した妖怪たちが心配だったの」
「心配するから言ってからにするのよ」
「わかった!」
4人はあの生き物が退治されたことを伝え、避難していた妖怪が各自の家に戻っていった。
◇ ◇ ◇
旧都が安心と安堵で包まれる中、緑色の目にカニのような手を持つ怪人が謎の場所で体を震わせていた。
「おのれ~~~!!ウルトラマンめ~~~!!」
近くにはカプセルと名札がセットで11個きれいに置かれていた。だが、1か所だけ名札のみがある場所があった。そこには「ザンボラー」という文字が書かれてあった。
「だが、私は地底の侵略を任されたヤプール四天王の1人!!必ずやこの地を恐怖で覆いつくしてやる!!」
謎の空間で不気味な笑い声が響いていた。
サブタイトルは初代ウルトラマンでザンボラーが登場した第32話「果てしなき逆襲」を少し変えました。
また投稿までに長くなりますが、待っていただけると幸いです。
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