夢子は力を受け取った翌日も、いつも通り自分の仕事をこなしていた。
「ふ~~~……」
いつもの掃除を終え、ひと段落した夢子は神殿から魔界の街並みを眺めていた。
「あら、掃除が終わったところ?」
「神綺様!」
「何度見てもこの街並みはいいわね」
街並みの奥には少し大きめの池があり、どこからか湧き出てくる水によって溜まっている。こればかりは神綺様しかわからない。この謎の水を浄化して魔界の人たちは生活に利用している。
「夢子、今日はアレが食べたいわ!」
「え……アレですか?」
「そう!アレよ!」
「もしかして一昨日食べたアレですか?」
「そうよ!」
「わかりました。材料がないので買いに行ってきますね」
「いってらっしゃい!」
神綺様のお願いのために町に買いに出かけた。
◇ ◇ ◇
2人組の少女が謎の部屋にいた。
「あの子の様子は?」
「順調よ。早ければ今夜には完全に成長するはずよ」
「フフッ この町を侵略するのが楽しみね」
キイィィーーーッ!!
「いい子ね。もうじき外に出してあげるから静かにしてるのよ」
「こんなに元気なら、夕方には出せるかもしれないわね」
黄色く太長い体の生き物が、巨大な水槽の中で元気に泳ぎ回っていた。
◇ ◇ ◇
「このぐらいかな?」
右手に持つ袋には、神殿になかったひき肉・玉ねぎが入っている。
「神綺様のことだから、明後日にはまた言いそうね」
もちろん、言ったときのために多めに買っている。
「あ!夢子さん!」
「ユキさん、お久しぶりです」
「買い物の帰り?」
「そうですね、神綺様の要望する夕食に材料が足らなかったので」
「……持とうか?」
「マイさんいいのですか?」
「……大丈夫」
「じゃあお願いします」
ユキとマイに手伝ってもらうことになったため、その他日用品もいろいろ買うことにした。
「多くない?気のせい?」
「あ、すみません。思ったよりも多いですね」
昼時に神殿を出ても、帰るときには空が赤くなっていた。
「夢子さんはいつもこんなに買ってるの!?」
「今日は特別ですよ。買うことを忘れていたものが多かったので」
量が多く、心配してくれた八百屋の店主の大きな台車に載せて押している。
「重いぃぃ!!」
「あと少しです。頑張ってください」
「……なんか腹立つ」
◇ ◇ ◇
「もうできるの!?」
「ええ、まさかこんなに早いとは思わなかったわ」
驚いた少女と話すのは少女……ではなく、セミのような顔の異星人だった。
「行くわよ!!」
「ええ!!」
驚いていた少女もセミのような顔に変わり、2人で水槽の近くにある赤のボタンを押した。
ボコボコボコボコ
水が流れる音が響き、水槽にいた黄色の生物は穴から水槽の外に出た。
「暴れなさい!!」
「エレキング!!」
2人がさらに青いボタンを押すと、黄色の生物が巨大化した。高さは50mを越えている。
キイイィィィーーーーッ!!!
池から突如として出てきた生き物、エレキングはそのまま町へ向かっていった。
「あれは!?」
エレキングは神殿にいる神綺からもはっきり見えており、異常を感じた神綺は町に飛んで行った。
◇ ◇ ◇
「ここから逃げてください」
「……夢子さんはどうするの?」
「私なら心配ありません。神綺様に仕えていますから!」
夢子は逃げ惑う人々の頭上を飛んでいた。
「夢子!!これは一体どういう状況!?」
「神綺様!!あの巨大生物は家を壊しているので討伐対象です!!」
「わかったわ!!」
幻想郷と違い、魔界には「スペルカード」の概念がない。詠唱もない弾幕が多いが、戦う経験が少ないために魔界の大半の人は無意識に威力を弱めてしまう。だが、経験者の中には幻想郷の巫女である博麗霊夢と同等の力を持つとされているものがいる。それがエレキングに飛んで行った2人である。
夢子が高速で短剣を放ち、神綺が弾幕を放つ。2人の連携による攻撃は幻想郷のレミリアとフランドールの連携の速度・威力を超える。
キイイィィィーーーーッ!!!
2人の猛攻によってエレキングが少し怯んだものの、エレキングは標的を神綺に絞って口のようなところから光弾を放った。
「でかい!!」
光弾は大きく、光弾が5つあれば神綺の弾幕を全て相殺しきれるほどの威力を有していた。
「くっ!!」
「神綺様!!」
夢子は神綺の防御に徹したため、一瞬にして形勢が逆転してしまった。
「夢子!!」
「しまっ……」
別の方向から飛んできた光弾に耐え切れず、遠くに吹っ飛んで行った。
「痛っ」
何とか無事に着地した夢子は神綺とエレキングの戦いを見ていた。魔界の異物で倒さなければいけないのに、恐怖で足が動かない。次あの光弾を受けても今のように無事でいられる自信がない。
「どうすれば……」
そのとき、脳裏にあの赤い巨人の言っていたことが浮かんだ。
『私の残る力を君に預ける
どうしようもなくなったとき
この眼鏡をつけなさい
君たちを救ってくれると約束しよう』
「あれを使えば!!」
夢子はポケットに入れていた赤いメガネを自分の目につけた。メガネをつける瞬間、何故か掛け声らしきものを叫んでいた。
「デュワッ!!」
◇ ◇ ◇
「っ!!」
夢子が吹っ飛ばされたことで、光弾を避けることしかできない状態にまでなった神綺は、敗北を感じていた。ただ、腐っても神綺は魔界の創造者。立ち向かわない理由がなかった。
その瞬間、池から少し離れたところから謎の赤い光が輝いた。
「何っ!!?」
キイイィィィーーーーッ!!?
エレキングもあまりの眩しさに苦しんでいた。神綺が指の隙間から見ると、そこには謎の赤い巨人が立っていた。
「赤い……巨人?」
デュワッッ!!!
赤い巨人、ウルトラセブンは池を飛び越えてエレキングを組み合った。
「すごい……」
神綺は目の前で繰り広げられている巨人と怪獣の戦いに圧倒されていた。
セブンは町から少し離れた郊外までエレキングを投げ飛ばし、追い詰めていた。ただ、そこで簡単にやられるほどエレキングも弱くない。
キイイィィィーーーーッ!!!
セブンの後ろから尻尾を巻き付けたかと思うと、締め付けると同時に放電した。
セブンは痺れでうずくまり、エレキングに殴られていた。
「はっ!!助けないと!!」
今まで戦いを見ていた神綺は、代わりに戦ってくれているセブンを援護することにした。
「ふんっ!!」
エレキングの頭上から光弾の雨が降り注ぎ、エレキングが怯んだ隙にセブンが転がって離れた。そのままセブンは左膝で立ったまま、右手を引いて左腕を胸の前で横にした。
「っ来る!!」
その瞬間、セブンの額から緑色の光線が放出された。光線はエレキングの頭にある黒い部分を破壊し、エレキングは動きを止めた。そんなエレキングに、セブンは腕をL字に組んで白い光線を放った。
光線を受けたエレキングは爆発し、魔界の脅威が去った。
池から少し離れたところ、エレキングを使って侵略を企てていたピット星人の2人は状況を立て直すために宇宙船でピット星に戻ろうとしていた。
「早くいくわよ!」
「わかってる!」
クール星から奪った透明化機能を使い、空に飛び立った。
◇ ◇ ◇
「どうかしたの?」
神綺はセブンと同じくらいまで浮き上がり、お礼を言おうとしていた。だが、急にセブンが後ろを振り向いたために困惑していた。
「あなたには何か見えるの?」
デュワッッ!!!
セブンは何かに目掛けて頭のアイスラッガーを投げた。
数秒後、アイスラッガーが何かに当たる音がした。そして2つに切断された謎の円盤のような形のものが降ってきた。
「あれは……」
神綺がすぐに中を確認すると、エレキングを飼育していたと思われる設備が備えられていた。
「これで本当に勝ったということなのね」
墜落した場所からセブンを見上げると、返事をするようにセブンは赤い光の粒子となった。
◇ ◇ ◇
メガネをかけてウルトラセブンとなった場所、そこに夢子は立っていた。
「これが……あの巨人の…」
右手にはメガネが返ってきていた。夢子は神綺と合流し、人々の無事を確認してから神殿に戻っていった。
「あれ?」
「どうかしたの?夢子」
「何か忘れているような気がして…」
「夢子が忘れるなんて相当ね。そんなものないわよ!」
「そうですね!」
「夢子さん!!これどうすればいいの!?」
「……どうしよう」
大きな台車に荷物を載せた2人組が必至で引きながら神殿に向かっていた。
サブタイトルはウルトラセブン第3話「湖のひみつ」を少し変えました。
登場させる怪獣は決まっていますが、セブンには侵略者の相手をしてもらうのが一番です!
魔界の情報が少なすぎて池という存在を付け加えました。ご了承ください。
映画の内容の前に「人里編」「旧地獄編」「魔界編」の3つを順に繰り返す予定です。
もしかしたらそこに共闘もあるかも……?