エレンの声が部屋に響く。
「こちらは五千の軍。敵は五倍の二万五千、数で不利だったから厳しい戦いになると思っていたんだが・・・」
「たったの半日で終わってしまった・・・!」
(鳥羽の時みたいだな・・・、どこでも同じことはあるもんだ)
シオンはそう思いながら、エレンに言った。
「でも、結局勝ったんなら良いんじゃないんですか」
「・・・」
無言でエレンに睨みつけられたシオンは目を見開いた。
「私はありとあらゆる事を考えて何個もの作戦を立てた。だが、最初に立てた作戦で敵は総崩れした」
「最初の作戦・・・」
「ああ。夜明けと共に敵の背後から奇襲をかけたんだ」
「へえ・・・」
シオンは夜襲をしたことがなかった為、エレンの言葉は新鮮だった。
(場所によってはそれで勝てた所もあったかもな・・・)
シオンはエレンに視線を送った。
それを察知したエレンは話を続ける。
「予め偵察をしたんだ。敵・・・ブリューヌ軍は前後二つに分かれていたから、こちらも二つにわけて攻撃した。結局、偵察の情報よりも呆気なく敵を突破できた。ブリューヌの王子も戦死したらしい」
「・・・・・」
エレンの話を聞いた後、シオンは黙ったまま少し俯いた。
再び、部屋全体に沈黙が走る。
「・・・少し、刺激的だったか?」
エレンはそっと語りかけるようにシオンに言った。
「いえ、こっちの戦争でも、そんなことは沢山ありましたから。それに、俺だって貴女の兵を殺しましたし」
(他国の人の話だから平然としていられるが、これが自分の仲間だったら俺は・・・)
「そうか・・・」
エレンはそう言って首の向きを変えると小さく呟いた。
「あと、エレンで良いからな」
嬉しげな少女の様なエレンの言葉にシオンは小さく頷く。
そして、エレンはまた真面目な表情になる。
「王子が戦死した、というのが伝わるとブリューヌ軍の前衛が崩壊し始めた。我が身を優先してただただ逃げることに専念している敵を後ろから攻めたら、あっという間に崩れた。本当につまらなかった」
「そんな時に、お前に会ったんだ・・・!」
声色が再び幼い少女の様な明るさになり、エレンはニコッとしながらシオンを見る。
エレンは机から降りて、シオンに近づく。
「お前を殺すのは惜しい、本当にそう思った!」
エレンの表情からも声からも、気持ちが伝わる。
目をキラキラさせながら、エレンは両手でシオンの手を握った。
(?、?)
シオンはエレンの唐突な行動に少し混乱する。
エレンは熱弁するように、言う。
「あんな絶望的な状況でも、あきらめずに私の命を狙ったことに驚いた。いや、感動した!!」