(・・・重い)
シオンは心の中でそう呟く。
体全体に人が乗っかっているような感覚があった。
(何だ?血生臭い・・・)
目を瞑ったまま、シオンは眉を寄せる。
(あれ、俺死んでないの・・・?)
体が動いたので、シオンは勢い良く体を起こした。
瞬間、どさっと自分の上にあったであろう二、三人の死体が左右に退く。
「・・・・?」
シオンは取りあえず自分の左胸に手を当てる。
しかし、銃弾の貫通した後も出血も消えていた。
片手に掴んでいた自分の刀を持ち直すと、シオンは立ち上がって周りを見た。
見渡す限り死体だらけで、自分以外生きてる人がいなかった。
「ここは、鳥羽か?いや、さっきまで五稜郭近くにいたからそれはないか・・・」
死体を踏まないよう足場に気をつけながら、シオンは歩き始めた。
甲冑、矢、やり、西洋風な剣、そして見たことも無い軍旗。
数分歩いて、少し立ち止まっていると、馬の足音が聞こえた気がした。
シオンは目を細めて、前を見る。
すると、予想通りこちらに向かって馬が駆けて来た。
しかし馬の上には年老いた男が乗っていて、剣を構えていた。
ハッキリとお互いの姿が見える距離に来たところで、騎士がこちらに向かって叫ぶ。
「貴様、ブリューヌの生き残りだなァ!覚悟ォォ!!」
「えっ、ちょっ・・・!」
騎士が言っている事が全く理解できない。
シオンは剣を地面に立っている自分に向けて伸ばしてきた騎士の攻撃を避ける。
「っと・・・」
一瞬体がよろけたが、後ろに下げていた片足でバランスを保つとこちらを睨んでいる騎士に言った。
「あの・・・、ここどこですか?何か、教えてくれません?」
「戦いで気が狂ったか?今、楽にしてやろう!」
騎士はシオンの問いかけを無視すると、馬の手綱を引いて再び襲いに掛かろうとした。
(これは完全無視だな・・・)
ハアとため息をついたシオンは向かってくる騎士に片手を出した。
「覚悟ォォォ!!!」
鬼のような形相の騎士との距離が一定になった時、シオンは呟いた。
「さいなら、爺さん」
瞬間、馬の下に魔方陣が現れる。
騎士は馬を制止させ様子を見ている。
馬は高く上半身を上げて、止まると少し興奮しているのか落ち着きが無かった。
その間にもスーッと魔方陣が騎士を包む。
それを見たシオンは出していた手を思いっきり握った。
同時に騎士を包んでいた魔方陣が一気に潰れて、血で染まる。
シオンが手を開くと、魔方陣もゆっくりと開いていきやがて消えた。
騎士がいたところにはただ血と、騎士が身に着けていた鎧と剣しか残っていなかった。
「ごめんね、爺さん。こっちがやられそうだったからさ」
シオンは右に曲がってさっきと違う方向へ行こうとしたが、数歩歩いたところで止まる。
視線の先には、今殺した騎士と同じ装備をした騎士がゆっくりと進軍していた。
手には長い槍を持っていて、一定の速さを保っている。
「・・・!」
ただ、真ん中にいる人だけは周りの騎士と違った。
白い馬に乗り、銀の髪、ドレスのような鎧を身に纏っていて、見たことのない形の長剣を身に着けていた。
年は同い年くらいだろうか、まだ幼さが残る少女だった。
(敵の大将か、姫様か・・・?なら周りは護衛だな・・・)
シオンはそう思いながらも、馬に乗っている彼女の美貌に目を奪われた。
銀色の髪が光の反射で時折、眩しく反射していて、思わず手から刀を離しそうになる。
(とりあえず、近寄ってみるか・・・)
シオンは先回りして、岩陰から進軍する彼女等を見た。
(・・・)
刀を腰に付けると、両手で魔方陣を展開する。
白の魔方陣はシオンの手の中で風でできた形の無い刃へと姿を変える。
シオンは光に照らして刃を確認すると、道に飛び出した。
「・・・!?」
相手も気づいたのか、その場で止まってこちらを見ている。
「ハアッ!」
シオンは左手に持っていた風の刃を思いっきり投げる。
無音で飛んでいく刃は綺麗に甲冑姿の騎士の喉を貫通する。
同時に騎士は馬から落ち、バランスを崩した馬もその場に横たわる。
「ッ!」
右手に持った刃も放つ。
シュッ!
刃物が擦れる音がすると、右側の馬が綺麗に真っ二つになる。
乗っていた騎士はバランスを崩して、地面に倒れる。
前衛の二人の騎士が倒れ、前がガラ開きになる。
銀の髪の彼女は勢い良く長剣を抜刀して、赤の瞳でシオンを見た。
しかしその顔は明らかに笑っていた。
「・・・!?」
瞬間、彼女の乗っている馬が高く跳んだ。
恐らくありえない、といえる高さまで跳んだだろう。
シオンは一瞬怯みかけたが、直ぐに両手に刃を出現させると手をクロスさせて放った。
しかし少女はそれを読んでか長剣を両側に振るって刃を弾いた。
音と共に、空中で魔方陣が消える。
「・・・マジかよ」
口元だけをニッと緩めたシオンは抜刀して、思いっきり地面を斬った。
すると斬った地面から魔方陣が展開され、無数の剣へと変化する。
シオンが指を鳴らすと、空中に漂う剣達は彼女に向かって一直線に向かって行く。
音速の速さで向かってくる剣を少女は次々と振り払いながら、馬を走らせる。
いつの間にか彼女との距離は数十メートルにまで迫っていた。
(なら・・・!)
シオンはその場に立ち尽くすと人差し指の先に赤い魔方陣を出現させた。
そして片手で持っている刀を根元から先まで指の魔方陣に付ける。
すると刀の先から炎が燃え上がり、やがて刀全体に炎がつく。
(これなら・・・!)
両手で刀を持ち、構え直すとシオンは少女に対し、斬り込もうとした、だがーーーー。
いつの間にか少女は目の前まで来ていて、シオンの喉元に長剣を突きつけた。
(・・・あの距離からほんの数秒でここまで移動できるか?)
「ッ・・・!」
片手に持った剣の炎がユラユラと揺れている。
完全に行動できなくなったシオンは力無く片手を揚げて、剣を突きつけている彼女を見つめた。