「なにはともあれ、ご苦労だったな。リム」
何か言いたげだったリムアリーシャにそっとエレンは言った。
「・・・」
その名前を聞いたシオンはチラっとリムアリーシャを見た。
「気づいたか。お前が真っ二つに斬った馬に乗っていた護衛が、こいつ・・・リムだ」
あの時は鎧で体格はわからないが、口調が似ているような・・・。
(もしこの人の捕虜じゃなかったらどうなっていたか・・・)
シオンはハア、と息を吐いた。
(まあ殺される前に殺してたな。それには変わりないか)
「・・・ッ」
リムアリーシャはシオンに向かって舌打ちするように口を動かすと、エレンの方を向いた。
「・・・エレオノーラ様。時間を無駄にしてはいけません、早く次の仕事を」
「わかってる、わかってる」
エレンは真面目な表情になり、シオンを見た。
「じゃあ、本題に入ろう、シオン。あなたが言っていた『ニホン』と言う国についてだが、あらゆる地図と文献で調べたがその存在を見つけられなかった・・・。だが、あなたの目を見る限り嘘は言っていない、な?」
口元を緩ませてエレンは言う。
「嘘はないです、もちろん」
シオンの言葉にニッと笑顔を作って、エレンは話を続けた。
「とりあえずあなたは表向きには今回の戦闘に参加した小国の捕虜、として扱われる。勿論、あなたには全く関係の無い国だが、こうすることで我がライトメリッツ公国に従わせることが出来るのだ。そうすれば、あなたは完全に私のものになる、良いな?」
「は、はい」
色々と突っ込みたい箇所があったが、取りあえず命の危険はなさそうなので口出しはしない。
エレンは片手をシオンとリムアリーシャが出てきた方に向けた。
「あなたはここ・・・公宮で暮らしてもらう。脱走したら、わかるよな?」
「・・・・・」
出来るもんなら、とか言いたかったシオンだが戦う気も理由も無い今は静かに頷く。
「用はこれだけですか?」
周りをキョロキョロ見ながらシオンは言った。
「まさか。やってほしいことがあるんだ、シオン」
そう言ってエレンは顔を動かした。
その先には弓で射るための的が並んであった。
(流鏑馬とか出来ないんだけど・・・)
シオンはボーっと的を見つめる。
「馬を割った時の魔法?で、あの的を射てくれ」
「やる意味あるんですか」
「ああ」
エレンはそれだけ言うと、剣を杖のようにしながら座ってシオンを見つめる。
シオンは手をパーに開いて、手と的を交互に見る。
(的が割れそうだな・・・)
シオンはそんなことを思いながら視線だけをエレンに移すと、ニコっとした無邪気な笑顔を返してきた。