知恵の国に咲く花   作:タスク・アスク

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いやー、長らくおまたせしました。
魔神任務「カリベルト」と学院祭のストーリーをどうするか迷ってたらスランプに陥ってしまって更新が遅れました。



間章第3幕【伽藍落ちて】
(7)


 

「それで、なにを計画していたのかしら?」

 

スラサタンナ聖処で男性三人が女性三人の前で正座して項垂れている。

 

「い、いや〜我が神よ。私は貴方の為に……」

「クラクサナリデビ様は【散兵】との戦いに集中してもらうために()()()俺達は知らせていませんでした」

「ちょ!?アルハイゼン!?」

 

サプナが言い淀んでいると、自分達の後ろで拘束されて気絶している博士を見ながらアルハイゼンは答えた。

 

「ちなみにあの【公子】ですが、戦いに満足するとフォンテーヌに帰っていきました。どうやらサプナに手紙を届けるついでに【博士】に誘われて来ただけで、今回の作戦とは何の関係も無かったみたいです」

「サプナに手紙……?一体誰から……」

「……私の弟子でフォンテーヌにいる最高審判官代理アルトリアだよ」

「え!?めちゃくちゃ凄い立ち位置の人物じゃないか!?」

 

予想外の人物にパイモンは驚く、アルハイゼン達も知らなかったのか驚いた顔をする。

 

「何故そんな人物が貴方に手紙を?」

「フォンテーヌの予言について知っているかい?」

「……噂程度でいいなら耳したことがある」

「え、どんな予言なんだアルハイゼン?」

「『ある日フォンテーヌの水位が上昇し、罪を犯した者はすべて溺れて消滅し、水神だけが玉座の上で泣きながら残るとされている。 この大洪水の間にフォンテーヌの人々の罪は洗い流される』……確か、このような予言だったはず………」

「うん、そのとおりだ。この予言は厄介なものでね。普段の彼女(アルトリア)なら絶対にしない私への手紙を出す辺り……これは向こうも余裕がないな」

 

そう言いながらサプナはフォンテーヌの方側へと顔を向ける。

 

「幸いにもまだ予言の『その時』までは時間がある。それに………私はハッピーエンドが好きだがあの予言は()()()()()()()()()()()。それも最悪の形でね」

「……どういうことだ?」

「これ以上はネタバレになるから言わないでおくよ。さて、今回の犠牲者は()()……いや、無しだったね」

「!?」

 

その言葉に旅人は驚く。彼は世界から忘れられたはずの人物を数えようとしていたからだ。

 

「旅人、オイラ達はどうする?」

「……………サプナには色々聞きたいことがあるから、もう少しスメールを楽しんでからフォンテーヌに行く」

「決まりだな!!」

 

その後、素直に答えたアルハイゼンとセノは正座から解放され、誤魔化そうとしたサプナだけ旅人達が宴会をしている中、後片付けと名ばかりの隠蔽工作を徹夜でやらされていた。

 

 

──────────────────────────

 

「……さてと」

「おや、宴会は終わったのかい?」

「いいえ。いつまでも旅人の体を借りるのは申し訳ないから先に抜けさせてもらったわ」

「そうか……楽しかったかい?」

「えぇとても」

「それはよかった」

 

楽しい会話を切り上げる為にナヒーダは未だ意識のない【博士】を見る。

ひとまず捕らえたのはいいが、これからどうするかはまだ話し合っていなかった。

 

「……博士についてなんだけど……ここは私が………」

「いいえ、(わたくし)が一対一で直接彼と話すわ。これは私の意思………命令よ」

「……わかったよ、我が神よ。(千里眼)で視ておくから何かあったら突撃するよ」

「任せたわ」

 

サプナはナヒーダの意見を尊重し、凄く憂鬱な表情をしながら【博士】を花の繭で外界から隔離した。

 

「博士」

 

ナヒーダは未だ拘束され、意識を失っている【博士】に草原素を送り込み、強制的に起こす。

 

「ん?ここは………あぁ、そうだ私は捕まって…」

「──────────取引よ」

「……何?」

「貴方が私に対して話そうとしていたこと。それが本当に有力な情報だった場合、それに応じて“神の心”を譲渡しましょう」

「正気か?」

「あら、(わたくし)とお話したかったのではなかったのかしら?」

「………いいだろう、話しに乗ってやる」

 

まだ出し抜けると思い込んでいた【博士】の思考を塗りつぶすように、頭上から降り注いだ圧力が彼を押しつぶす。

 

「ぐ!?」

「あぁそうそう、外ではサプナが監視してくれているの。立場を越えた発言にはペナルティがあると思ってくれていいわ」

「貴様ッ…!」

「ペナルティ」

 

【博士】の不遜なる発言に再び圧力が彼を襲う。

 

「……旅人達の前だったから抑えていたけど(わたくし)も怒ってるの。もう一度言うわ、“発言には注意しなさい”」

 

【博士】を見下ろす草神(かのじょ)の瞳は一切の感情も魅せないまさしく“神の目”であった。

 

 

──────────────────────────

翌日、改めてナヒーダの元を訪ねた旅人達は昨夜に起こった事を伝えられる。

 

「えぇ!?【博士】をスネージナヤに帰したぁ!?それも“神の心”を二つとも譲渡してぇ!?」

「落ち着いてパイモン」

「でも旅人!」

「………何か、理由があったんだよね?」

「そこは私が答えよう」

 

何もなかった筈の空間からサプナが姿を現す。

 

「そうだな……。君達にわかりやすく言うと渡したほうがメリットがあったから。そして、“アレ(神の心)”は我が神には不要な物だからだね」

「……………色々聞きたいけどメリットって何?」

 

その言葉を待っていたとばかりに杖で床を突き、幻影(プロジェクター)を呼びだす。

 

「まず、今回の事件を【散兵】を中心に整理するとファデュイ、教令院……この二つが共同で“神を創ろうとしていた”」

 

【散兵】と思わしき(ちびキャラ)の左右に教令院とファデュイの(シンボル)が表示される。

 

「教令院はファデュイをコントロール出来ると息巻いていたみたいだが、向こうには執政官がもう一人いた。それが【博士】だ」

「結果的に旅人達のお陰で被害は最小限に抑えられたけど他の執政官がまた“神の心”を狙ってきた時、私達だけでは対処が出来ないかもしれない」

「特に執政官第一位【隊長】なんかが来たらこちらに勝ち目はない」

「ん?サプナは【隊長】に会ったことがあるのか?」

「あるよ。いやー、アレは人が人を超越したバケモノだよ」

(わたくし)貴方(サプナ)の目を通してみたけどあんな男が存在するとは驚きだったわ」

「そんなにやばいのか……」

「ま、その話はまたの機会に………そういうわけだからこちら(スメール)が優勢に立っている今の内に不平等な条約を結んだというわけだ」

「具体的にはどんな条約なんだ?」

「ファデュイ、スネージナヤに対して高い関税をするのは当然としてスメールの学者がスネージナヤに向かう際の優遇、他にも執政官はスメールシティを含めたスメールの都市には足を振ることを禁止にしたわ」

「お、おう……とりあえず、ファデュイがスメールで活動出来なくなったのは理解出来たゾ」

「でも、ファデュイならそれを無視する可能性もあるじゃないの?」

「う〜ん、【博士】を含めて【雄鶏】【富者】は破ってくるかもね、【公子】も別の意味で破ってきそうだ。【少女】【傀儡】はわからない。【隊長】【召使】は破らないだろうね」

「え!?そこまでわかるのか!?」

「まぁ、今『そんな条約(もの)我らの力で押しつぶせばいい』なんて息巻いている【富者】を“視た”からね」

「お前の(千里眼)、反則だろ………」

「まぁ、そういうことで対策はしてるよ。コレがその証拠だ」

 

そう言ってサプナは懐から古びた巻物を取り出す。旅人は元素視覚を使って巻物を見るが、ただの巻物にしか見えない。

 

「これは自己強制証明(セルフギアス・スクロール)。簡単に言うと条約を破るとファデュイの執政官全員に連帯責任としてその命を落とす……そんな巻物さ!」

「なに恐ろしいもの使ってんだ!?」

「いやー、これは色々と厄介な代物でこの世界(テイワット)で一つしかないんだよね〜」

「待って、それって…………」

 

旅人は何かに気づくがサプナは人差し指を立てて口の前にもっていき、「しーっ」とポーズする。

 

「そういうことだからファデュイの脅威はもうないと思ってもらっていいわ」

「最後に、このスクロールには書いてないけど………」

 

そう言いながらサプナは自身の後ろにいる人物をチラッと見やる。

 

「彼…………【散兵】の身柄を向こう(スネージナヤ)からこちら(スメール)に渡してもらうことだね」

「…………ふんっ」

「【散兵】!?なんでお前がここにいるんだよ!?」

「彼にはこの後の作業の為に必要な人員だった為、ここに残って貰った。自己強制証明(セルフギアス・スクロール)にも彼の名前だけは記入されていないよ」

「世界樹に残っている貴方(旅人)のお兄さんの記録を調べるために、彼には直接世界樹に行ってもらう予定よ」

「!?」

「………サプナは行かないの?」

「すまないが私は今から一度工房に帰ってやらなければならない作業があるから参加出来ない」

「なんだい、そんなにファデュイの僕がいることが不満かい?」

「「すごく」」

「……チッ!」

 

【散兵】と共に世界樹に行くことは本当に大丈夫なのか不安に思い、旅人はナヒーダに視線を向ける。

ナヒーダはその視線の不安を取り除くように微笑む。

 

「彼は神の入れ物として創造された人形、遠隔で(わたくし)の意識を繋げることが出来るの。あと、今回の事件の首謀者を野放しにするのはよくないから、一応(わたくし)の管理下で動いてもらうことにしたの」

「あくまで建前、だけどね」

「僕としても今後執政官がスメールで活動出来ないことも含めて、ファデュイでは僕の用途を再評価するだろう。その時にある程度スメールの神に恩を売っておくのも悪くない」

「なんか、納得できないゾ!」

「そこは諦めてくれ。……そうだ旅人、これは私からの助言だ『世界が“ソレ”を忘れたとしても、“ソレ”が世界にある限り世界は“ソレ”を記録し続ける』」

「……?どういう意味だ?」

「いづれわかるよ。それじゃ」

 

サプナが踵を返すと花が吹き荒れ、サプナの姿は粒子となって消え去った。旅人達は意味が分からず首を傾げるが、ナヒーダはその意味を理解できたのか右手を口に当てる。

 

「…………成る程ね。旅人、準備して。もうすぐ世界樹に送るわ」

「わかった」

 

 

──────────────────────────

サプナが転移したのは普段住んでいる拠点とは違い、厳重に守られたこの場所には結界が無数に常時展開され、サプナにとって重要な拠点であることがうかがえた。 

 

「………全く、塔に戻ってきた途端これだよ」

「GAAAAAAAAAAA!!!」

「GUUUUuuuuu!!」

「本当に懲りないね君達」

 

楽園(アヴァロン)”、それがカーンルイアに最も近く、彼が約数百年間も引きこもった拠点の名称だ。

そんな場所であるため、深淵から漆黒の魔物が楽園(アヴァロン)を侵食するために結界を昼夜絶えずに攻撃するのだ。

 

「“罪なき者のみ通るがいい”これは楽園(アヴァロン)の通過条件だ。知性も品性もない一塊の魔物がここを通るのは不可能だと何故理解できない?」

「GAAAAAAAAAAA!!」

「……その思考回路すら持っていないか。とは言え、やかましいから消すとしますか」

 

サプナは杖の穂先に莫大な元素を凝縮(チャージ)し、弾丸として群がる獣域ハウンドへ放つ。

ハウンド達は避ける暇もなく全弾命中し、大爆発と共にその体を灰へと消えていった。

 

「フー………さて、向こうが世界樹で探索している間に()()()()()()()()()()()()()()()の消滅と共にテイワットから消えてしまった記録を見つけるとしますか」

 

サプナは肩を回しながらテイワットの住人ならば忘れている筈の神の名前を呟いた。




一応補足ですが、サプナはテイワットの住人な為、世界樹にも記録されていますし世界樹から消された情報は彼の記憶からも例外なく消されます。
ただ、彼の体内にはテイワット外の力もいくらか混ざっているので世界樹からの消去に対する対処法を持っているだけです。
また、楽園(アヴァロン)は外界からの干渉を一切遮断する領域な為、世界樹の影響は一切受けません。(←ここ重要)

放浪者の物語は次で終わります。
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