朝陽食堂・銀ベロ始めました ~赤き瞳のクレイドル 外伝~   作:末末

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何となく、始めたお話。
外伝なので、更新は気紛れとなります。あと、少々短めになると思います。


( ´-ω-)y‐┛~~


プロローグ・いかに、銀ベロを始めたか

 

 

 グレイオウル領、商店街裏通りの飲み屋が立ち並ぶ一角に、食堂がある。

詰めて十四、五人の小さな店。二人掛けのテーブルが二つ。九人掛けのコノ字型のカウンター席。営業時間は、夕方~深夜から朝陽が昇るまで。

 外看板と暖簾(のれん)には“飯処(めしどころ)”の文字。誰が言うとも無く、“朝陽食堂”と呼ばれている──メニューは各種酒類と、豚、鶏、野菜と茸、豚汁の各定食の他に、丼物等。惣菜や酒のつまみになる一品料理が幾つか。

それ以外にも、頼めば大概の物は作ってくれる。そして、店の常連には馴染みのメニューも──

 この店の大将は、東国出身という以外、身の上は分かっていない。

鍛え込まれ、引き締まった体に、穏和な顔付き。歳は、五十少しといった所だろう──

 

 「大将ー、追加の看板立てましたー」

猫族の娘が、店内に戻って来た。歳は十八、九ほど。赤毛の可愛らしい丸顔で、クリクリとした丸っこい瞳が、生来の愛嬌を引き立てている。

 「おう。ありがと」

煙草片手に、年季の入ったエプロンと作業着姿の大将が云う。

 「銀ベロねー。他のお店では聞いた事無いけど、頼むお客さんどれくらい、いますかねー?」

猫族の娘が、カウンター席を拭きながら云う。

 「今日からだからな。物珍しさで頼む客は多いと思うよ」

ふうぅ~、と煙草の煙を吹きながら、大将が答える。

 

 ──銀ベロ。これを思い付いた、というより、“せんべろ”を思い出したのは、つい最近の事だ。

週に二回ほど、同じ様な時間帯にやって来る、初老の男性客がいるのだが、注文内容はいつも同じ。

酒を三杯に料理はお任せの二品。

 酒の種類は決まってなく、ウイスキー、エール、ワイン、果実酒、 蜂蜜酒(ミード)等。

飲み方も、ストレート、ロック、炭酸割り、水割りと決まっていない。

 

 お任せ二品に対して、何ら文句も言わず、美味しそうに口に運び、たまにお勧めする一品も、喜んで口にする姿に好感を持った。

飲食を終えると、礼を言って店を後にするのだが、代金は決まって銀貨一枚に収まる。

 

 この客の注文の仕方を見て──前世の記憶から、“せんべろ”を思い出したのだ。

 

 

 「大将ー、銀ベロ用の丸札の用意出来てるよー」

猫族の娘が、小箱に入った小さな丸い札を、ざらりと鳴らす。

“銀”と刻印されている丸札は、銀ベロを注文する客に渡す物だ。

 

 銀ベロのルール──銀ベロ注文時、銀貨一枚を先払いして、丸札を三枚受け取る。銀ベロの内容は、酒を三杯に、料理を二品。二品は日替わりのお任せ。

三つ渡した丸札を、酒を一杯頼む事に一枚回収。三つ回収の時点で、銀ベロの酒は終了となる。

 ちなみに、銀ベロは追加出来る──

 

 「ちょっと早いが、暖簾出しとくか」

煙草を灰皿で押し消し、暖簾片手に磨りガラスの引き戸を開く。

すっかり身心に馴染んだ、飲み屋が立ち並ぶ商店街裏通り。

早くも、酔客の喧騒が通りの空気を満たしていた──その空気を吸い込む様に、深呼吸する。

 「……よし」

飯処(めしどころ)の暖簾を、今日も店の軒下に掛ける。

 

 “朝陽食堂”の開店が、他の店より少しばかり遅い理由は、飲み屋街の雰囲気が充分に感じられる頃合いを見計らって開店するからだ──

 「店の灯り、着けてくれ」

 「はいはーい」

大将の声に、店内にいた猫族の娘が応える。

少しの間を置いて、店内が明るくなり、その灯りが外を照らす。

 「……さて、“銀ベロ”の開始だ」

お任せ二品は、すでに決まっている。

その仕込みは全て済み、それなりの数は出せる様になっている。

お任せ二品が終了しても、食材があるならば大概の物は作るさ……さて、飲んべえ連中を、満足させる事が出来るかな?

 

 大将の顔には、不適な笑みが浮かんでいた──

 





 気の向くままに、更新となるでしょうね。
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