朝陽食堂・銀ベロ始めました ~赤き瞳のクレイドル 外伝~ 作:末末
何とも楽しみな物です。個人的に、良いせんべろは、摘まみの良し悪しで決まると思っています。
(`・з・)ノU☆Uヽ(・ω・´)
カラリ。店の戸が軽快な音を立てて開いた。
「いらっしゃーい! お一人ですよねー、お好きな席どーぞ!」
暖色豊かな、エプロン姿の猫族の娘が客を迎い入れた。耳がピコピコと、感情豊かに動いている。
ピシリ。店の戸を丁寧に閉めた客が、苦笑混じりに云う。
「一人って、決めつけないで下さいよー」
今日の最初の客が、苦笑しながら向かって左端のカウンター席に着く。
歳は二十歳半ばの、身だしなみが整った、役所勤めといった雰囲気の青年だ。
「いらっしゃい。今日は早くないか?」
店の奥から出てきた大将が、青年の前に白湯を出す。
「今週のシフトは昼勤務なんですよ」
大将に応え、白湯を口にする青年。すでに寒くなっているこの頃、白湯は体に染み渡る。
「いつもの、と言いたいとこですけど……ええと、この“銀ベロ”というのを試してみようかな」
青年は、店内に貼られている“銀ベロ”の説明を見ながら云った。
「はーい、ベロ一つ入りまーす! んじゃあ、この丸札どーぞ!」
猫族の娘が、腰に着けたポーチから“銀ベロ”札、三枚を青年の前に置いた。
「なるほど……これが銀ベロ札ですか」
青年が物珍しげに、銀ベロ札を手に取る。手のひらに乗るほどの大きさ。硬貨より少し重い。
「先払いですね……はい」
青年が、猫族の娘に銀貨一枚を渡した。
「んじゃあ、お酒の注文どーぞ!」
「そうだね……たまには、違うお酒にするか、な……うん、オウルリバーの炭酸割りにするよ」
「リバー炭酸ですねー、んじゃあ、ベロ札一枚、いただきまーす!」
猫族の娘は銀ベロ札を受け取ると、カウンター内に戻って行く。
「まずは、これでも摘まんでいて」
大将が、青年の前に小鉢を置いた。
──お通し、というやつだ。これが定着するのに、少しばかり時間がかかったのは、別の話──
小鉢は椎茸と筍の煮物。温めたばかりでまだ湯気が立っている──「おお、美味しそうですね」
青年は早速にと、テーブル上に備えられている、
「いただきます」
まるで、注文した料理に向き合う様に、青年が云う。
「……お通しに、少しおおげさじゃないか?」
大将が、苦笑混じりに云う。その言葉に、青年が応える。
「いや、とてもお通しとして出る様な物だと思わなかったもので、つい」
「まあ、いいや。直ぐに酒も来る。お任せ二品はもう少しかかるから、ゆっくりやっててくれ」
厨房に戻って行く大将の背に軽く頭を下げ、煮物に箸を伸ばす青年。
(……筍、柔らかいな)
「リバー炭酸割り、お待たせー。ごゆっくりどーぞ!」
丁度、酒も来た。青年は猫族の娘に礼を言い、筍を口に含む。
柔らかいだけではなく、充分に味が染み込んでいる──筍の甘味と煮汁の塩気がほどよく合っていて、何ともいい味だ──お通しでこれだからな。お任せ二品が、楽しみだ……椎茸の前に、まずはオウルリバーの炭酸割りだ。琥珀色、というんだっけか? この色。
弾ける炭酸の音を聞きながら、グラスに口を付ける──いつもの果実酒炭酸割りとは違う薫り、風味……そして強さ。果実酒とは明らかに違う。
最初に感じたのは、爽やかさではなく、グウッ、と薫りが喉に差し込んで来る様な感じだ……その後に炭酸の爽やかさがやって来る──ウィスキー。これが、大人の味というやつか。
腹の中に、熱さが微かに溜まる。こんな感覚は初めてだ……でも、悪くないな。
美味しいかどうかまでは、まだ分からない。分からないが、思ったよりも飲みやすい──炭酸割りで強く感じるなら、水割りやロック、ストレートで飲めばどんな風になるのだろうか?
続けて、一口飲む。炭酸が喉を抜けていき、風味の強さが 腹に落ちていく……これが、ウィスキーか。うん、覚えたぞ。
誰の言葉だったか──飲める酒の幅が広がれば、食は豊かになる──その意味が分かった気がする。
さっきよりも、お任せ二品が楽しみになってきたな。
そして、あと二度頼める酒は何にしようか……。
青年は、待ち遠しさに笑みを浮かべながらオウルリバー炭酸割りに口を付ける。
「お任せ一品目、おまちどおさまー!」
猫族の娘の明るい声が聞こえた。
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(`・з・)ノU☆Uヽ(・ω・´)