朝陽食堂・銀ベロ始めました ~赤き瞳のクレイドル 外伝~   作:末末

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明るい内の、酒の罪悪感と優越感と解放感。
良いものだ……。

(`・з・)ノU☆Uヽ(・ω・´)



銀ベロ7回目 朝陽食堂の連鎖注文と酒呑みの哀しさ

 

「銀貨一枚分の料理二品と飲み物三杯。丁度黒字に収まる様にしているんだよ。だから──」

煙草を吹かしながら大将が云う。

「銀ベロは、まあ黒字ってとこかな」

銀ベロを始めて少しすると、やって来た客の最初の注文は、まず銀ベロが多くなった。銀ベロで軽く済ませると、それから本腰を入れて飲み始める客。銀ベロで満足して、さっと腰を上げる客──

それらは半々だ。

 

「以前より、客の回転早くなっているという事ですか?」

身なりの整った、商人風の客が大将に尋ねる。まあ、そうだな、と応えながら大将が煙草を吹かす。

「銀ベロだけを、楽しむお客さんに限ればだけどねー」

にっひひ、と笑う猫娘のシャーリィ。まあ、そうだな、と苦笑する大将。

「ふむ。飲んべえが、銀ベロ一回で済ませられる訳は無いからな」

褐色の色肌をした、鍛え抜かれた体付きをした中年男性が杯を傾けながら云う。

整った口髭が特徴的の、グレイオウル領の衛兵隊副隊長リカルドだ。

 

「リカルドさんはお酒の〆に銀ベロだよねー。そんな注文の仕方する人、他にいないよー」

「うむ。私の場合は、飲みすぎを抑えるのに銀ベロが良い具合になるんだよ」

シャーリィに、リカルドが応える。

「はいよ、ベーコンとジャガイモの煮込みお待たせ」

大将が、リカルドの前に一品を置く。

煮込みの薫りと湯気が、リカルドの顔前を横切って行く。

「おお……これは良い。想像通りの品だな……では、いただきます」

何とも嬉しそうに顔をほころばせるリカルド。

 

「大将、私にもリカルド副隊長と同じ物頼めます?」

ベーコンとジャガイモの煮込みを、横目で見た商人風の客が注文をする。

はいよ、との大将の返事に、笑みを浮かべる商人風の客。

 

連鎖注文──作れる料理は、メニューに無くとも大概の物なら提供する、朝陽食堂ではお馴染みの風景。

今だ見ぬ料理を見た客が、「それ、美味そうだな。大将、同じやつ頼むよ」と、注文が入る。

これが何度か続くと、正式なメニューになる事があるのだ──

 

「よく煮込まれたジャガイモと脂ののったベーコン……うん。実に美味いな」

衛兵隊副隊長の沁々とした感想に、商人風の客がゴクリと喉を鳴らす。

「パラリとさりげなく振られた香辛料……コショウ。これがまた、何とも良い引き立て役になっているな……良い香りだ」

遠い目で、ベーコンとジャガイモの煮込みを語る衛兵隊副隊長、リカルド。

 

「リカルド副隊長、大げさー」

その様子を、クスクス笑いながら見るシャーリィ。咥え煙草の大将の口角も上がっている。

「……大将、ベーコンとジャガイモの煮込み、まだですか?」

恨みがましく、商人風の客が云った。

「ああ、すまないね。はいよ、お待たせ」

どうぞ、と商人風の客の前に湯気立つベーコンとジャガイモの煮込みを置く。

その薫りが、湯気とともに客の顔を包んだ──先ほどまでの恨みがましい顔が、一瞬で和らいだ。

 

「ほう。食の恨みは怖いというが、美味いものを前にすると、恨みもすぐ消えるか」

にやりと笑みを浮かべ、杯を干すリカルド。次いで、云う。

「さて、〆の銀ベロを頼むとするかな。酒は……そうだな、オウルリバー炭酸割りで」

リカルドの注文に、シャーリィが明るく応える。

「あーい、銀ベロ一つ入りまーす。ベロ札どーぞ!」

シャーリィが腰のポーチから、一杯目を引いたベロ札二枚をリカルドの前に置いた。それを確認したリカルドが、嬉しそうに頷く。

 

「大将。今日の銀ベロの、おまかせ二品は何だ?」

オウルリバー炭酸割りを手に、リカルドが尋ねる。

「まずは、鶏団子と大根のつみれ汁だね。あとは──」

「すまん、大将。聞いておいて何だが、おまかせは、出てくるのを楽しみにしておくよ」

そう云うと、リカルドは照れ隠しの様にオウルリバー炭酸割りを飲み干した。

ふう、と一息吐くと、二杯目はどうするかと考える。

 

(蜂蜜酒(ミード)の炭酸割りといくか……待てよ?いつだったか、鍛冶師のドルヴィスが蜂蜜酒(ミード)のオウルリバー割りとやらを頼んでいたな……酒を酒で割るとはな、と思ったが、美味そうに飲んでいたな……明日は非番で、女房は息子を連れて里帰り中。今日の夜は悠々と過ごせるが……いや、明日は急に呼ばれるかもしれないからな……むう)

 

リカルドの思考は忙しない。酒呑みとして、そして同時に、グレイオウル領の衛兵隊副隊長としての思考に入り込んでいた(家族の事も少々)──よし、と銀ベロ二杯目を決めたリカルド。

 

「シャーリィちゃん。ええとね……蜂蜜酒(ミード)のオウルリバー割り、お願いね」

商人風の客が注文をする。それを耳にしたリカルドが眉をひそめた。注文の機先を制されたのだ──その心境は、「それを頼もうとしていたのに……」だ──

「あいあーい。相変わらず強いの好きだよねー、明日はお休みなのー?」

「ん? いや、お仕事だよ」

シャーリィと商人風の客とのやり取りを聞いたリカルド。

酒呑みの、無駄な意地に火が付いてしまった。

(明日は通常勤務だと?その上で、蜂蜜酒(ミード)のオウルリバー割り……むう、負けられぬな!)

 

 

 

結果、今日が非番で良かったと心から思う事になるリカルドだった──

 

 




感想あれば、どぞ。



(`・з・)ノU☆Uヽ(・ω・´)
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