進撃の巨人~隔絶都市にて~   作:Doress

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隔絶された都市
プロローグ


  ウォール・マリア最西端の突出区クィンタ区。人口は二万弱を抱えており

 国内では有数の都市でもある。有数の都市とはいってもその住民の約7割は

 労働者階級で占められていて、残りは商会の人間など一部の特権階級で構成されている。

 

  実際、街の経済はその一部の特権階級の者によってまわっており、利益の大半も

 商会の人間によって牛耳られるため多数の労働者階級は最低限の生活を送るのが

 やっとであった。

 

  しかし、この街を代表する有数な商会であり、街の重要な経済基盤を支えている

 クラマー商会は決して特権階級という地位を盾にして労働者を卑下にはせず

 よく、奉仕して慈善活動も活発なことから多くの住民から支持されており

 住民と商会の人間との対立は少なかった。

 

 とまあ、私が駐屯兵として常駐するクィンタ区は良くも悪くも生活はしにくいが

 治安はいいため結果としては住みやすい街ということだ。

 

  生活がしにくいといっても最低限の生活を維持することができているため

 この街=突出区外のマリアとローゼの間に住む山奥で放牧や狩猟なんかで生計を建てている人々や

 王都の地下にある今はもう公的には使われなくなり貧困者や犯罪者の溜まり場となっている

 地下街の人々に比べれば、豊かな生活を享受しているのにはかわりない。

 

  もっとも、同じくウォール・マリア最南端の突出区≪シガンシナ区≫に比べれば

 まだまだである。あそこは、クィンタ区の2倍の人口である4万強を誇り、尚且つ調査兵団の

 壁外調査の出発点になるなど潜在的な経済力のみならず兵事的にも重要な国内随一の都市……

 いや、国内最大の都市であるので生活レベルもまた一段と違うのであろう。

 

  しかし、このようにウォール・マリアの突出区が経済的に潤って人の集まる

 大都市となっているのは、このウォール・マリアが一番外側にあるということと

 裏で王政府が巨人のとある習性を利用したうえでの、とある思惑があるからなのだが

 それを説明しているとややこしいことになるのでここでは割愛しておく。

 

  ともあれ、経済の規模によって賃金の格差は大幅に生じるものである。

 それは、同じ駐屯兵団といっても色濃く反映されていて

 実際、クィンタ区の駐屯兵とシガンシナ区の駐屯兵の間には倍近い賃金の差があった。

 

  憲兵団に比べれば序の口にもならないものの、やはり世の中カネというものがすべてである。

 訓練兵団から、最も危険性の少ない内地で一生の生活が保障されるという憲兵団に入れなかった

 者は、シガンシナ区の駐屯兵団を目指せ≫という格言が訓練兵達の間で

 ささやかれるほどであった。

 

  シガンシナ区の駐屯兵ともなれば周りの突出区に常駐している各駐屯兵団の中でも

 一番の高給取りであり、並みの生活は保障されたも同然。

 

 

  毎年、憲兵団からあぶれた多くの駐屯兵団を志望する訓練兵達が

 シガンシナ区の駐屯兵団への配属を願い出て高倍率になる。

 

  だが、シガンシナ区はウォールマリアの最南端に位置していて、それは壁を隔ててはいるものの

 人類の天敵である一番巨人に近いということであり、巨人は主に南側からやってくるというのも

 確認されているので、もし壁が破壊されでもしたら、まっさきに甚大な被害を被るのは

 シガンシナ区であった。

 

  過去に一回、巨人信奉者なる者によってシガンシナ区の門が意図的に開けられて

 当時の住民の半数が犠牲になるなどの類をみない被害を出した歴史もあった。

 

  ゆえに、必然と質の高い駐屯兵が求められる。そのため、シガンシナ区の駐屯兵になれるのは

 訓練兵団を卒業してすぐに憲兵団に志願できる上位10名を除いた更に上位の数十名だけであっ  た。

 

  憲兵団に経験を積んだ駐屯兵団の兵士が転属される場合もあるということから

 シガンシナ区の駐屯兵団を経て憲兵団に入るというエリートコースもあり

 訓練兵からの羨望の対象はいつの時代も変わらなかった。

 

  私も、そんな夢を見て兵団を志望した一人であった。

 厳密にいえば、家の経済的理由で志望せざるを得なかったわけだが。

 

  私は、ウォール・ローゼ東区にある人里離れた放牧民の村の出身であった。

 生活は裕福ではなく、放牧だけでは生きてはいけなかったから冬には街へ出稼ぎ

 にでも行かなければならないほど貧しかった。

 

 また、成長するにつれ、日々の生活は苦しくなっていくばかりだった。

 

  両親は、そんな中でせめてこのまま餓死するなら..とでも考えたのか

 3人兄妹のうち後継ぎである兄だけを残して真ん中の姉を商会へ奉公に

 末っ子であった私を訓練兵団へと出した。

 

  私は、家の家計が苦しいことは十分分かっていたうえに、商会へ奉公に出された姉も

 見ていたので親の負担が減るならばと思って素直に受け入れた。

 

  あぁ……今でも思い出す。訓練兵団に入るために村を旅立った日の朝のことを…

 

  私を抱きながら涙を流す母と傍らで「ごめんな。ごめんな。」と必死に謝る父。

 娘を家計のために死と隣り合わせの職場に出す気持ちは、耐え忍び難かっただろう。

 

 しかし、そんな両親の気持ちなどよそに私は抱かれる母の腕の中で自信に満ち溢れていた。

 

 「私、憲兵団になって絶対みんなを幸せにするから! だから、それまで待ってて!」

 と綺麗言を声高々と誓って出てきたものだ。

 

  それが人生の分岐点とでも言うべきだったのか。今、思えばその時、嫌でも駄々をこねて

 そのまま家の家業を手伝っていて親の厄介になっていた方がいいかもしれない。

 そっちの方が割に合っていたとも思う。

 

 でも、気付いた時にはもう遅かった。

 

  訓練開始当初までは、使命感と訓練に対する意気込みで心はまだ弾んでいたのである。

 年齢が近い子とかかわりあう機会が皆無だったのもその一つだった。

 

  私は、訓練を甘く見すぎていた。社会の現実を知らな過ぎたぽっと出の田舎娘には

 あまりにも過酷でしかなかった。憲兵団に入って家族を幸せにする!という程度の

 淡い信念で簡単に兵士にさせてくれるほど訓練兵団は甘くはなかったのである。

 

  どのくらい過酷であるかというと、その厳しさのあまり死人がでるくらいだ。

 そのあまりの厳しさに耐えかねて脱走する者が後を絶たなかった。

 

 (正直、私も何回もこの刑務所同然の施設から脱走したいとも思った)

 

  毎年2、3人は必ず死人が出るそうなのだが、私の代はとりわけ

 酷かったらしく5、6人程度はいたそうだ。

 

  そして、訓練についていけないと分かった時点で事実上の解雇通告。

 即、強制送還か開拓地送りだというからおっかない。

 

  私は、最初の一週間で身も心もズタボロにされ帰りたい、帰りたいと夜な夜な泣いては

 よく、教官から怒られ「お前は、不適合だ!帰れ!」とも言われ、同僚にも迷惑をかけたが

 両親を楽にさせるために来ていると決め込んでいる以上、のこのこ帰るわけにもいかないので

 底辺の底辺で足掻き続けた。

 

  結局、3年間を通して体力でも座学でも上位に食い込むなんてことはなく、憲兵団は

 雲の上の存在で、順位も後ろから数えた方が早く、むしろ3年間脱落せずに卒業

 できたことの方が奇跡であるといっても過言ではない。

 

  まざまざと現実を叩き付けられ、精神は荒みきった私に残された道は駐屯兵団に入るか

 あるいは調査兵団に入るか…もしくは、兵士はあきらめて故郷にかえるかであった。

 

  故郷に帰るというのも、考えたがそれはさすがに、恥ずかしすぎて

 両親に合わせる顔がなかったために必然的に二択であった。

 

  導き出した答えは、駐屯兵団だった。別に、こんな落ちこぼれの命なら

 人類の役に立って死んだ方が良いと調査兵団でもよかった。

 しかし、当時15だった私はまだ生への執着が強く、親より先に旅立つなんてことは

 親不孝すぎるためそんなことできなかった。また、駐屯兵団で結果を残せば憲兵団にも

 入れるというわずかな希望にすがっていたのも事実だった。

 

 (まぁ、もうその時は、当初の目的を達成すること事態が困難になっておりその罪悪感に

 みまわれていたうえに、自分の生活で手一杯だったのだが)

 

  敗者の烙印を押された私は、駐屯兵団でも一番人気に高い

 シガンシナ区駐屯兵団に配属される以前に希望を出せず、ウォール・ローゼ最西端突出区

 クィンタ区でのしがない一兵卒としての駐屯兵生活が始まったのである。

 

 ~~~現在公開可能な情報~~~

 

 主人公:シャーナ・イズリエルは、クィンタ区駐屯兵団に属するしがない駐屯兵。

 年齢は16で特にこれといって特筆すべき能力もなく、淡々と与えられた任務を

 こなすだけの日々を送っている。

 駐屯兵団2年目。

 第99期訓練兵団時代の記録。230名中198位

 現在の記録:討伐0体 討伐補佐0体

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さん初めまして、閲覧していただきありがとうございました!
今回、やっとハーメルン様で私の大好きな漫画「進撃の巨人」の二次創作を書くことが
できました!
といっても、原作とは少し違うスピンオフ作品の「隔絶都市の女王」の二次創作です。
もちろん、原作も大好きですがスピンオフ作品も大好きな私は、原作とはまた違った視点で
描かれる作品にもハマってしまいましてその中でもとりわけ好きな「隔絶都市の女王」の
二次創作を描いてみたらまた面白いのでは?と勝手に思い書きはじめた所存です。

どうか、こんな駄小説ではございますが皆さんのご意見ご感想お待ちしています。
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