進撃の巨人~隔絶都市にて~   作:Doress

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早く、下巻がでないかな~といいつつ、悔いなき選択の漫画版を買ってしまって
お金が喉から手がでるほど欲しい作者です。

おかげで、私の本棚の漫画スペースは破竹の勢いで駆逐されております..orz



第一話 忍び寄る絶望

 その日...ウォール・マリア南端の突出区画シガンシナ区が落ちたという報が

早馬でクィンタ区に伝わった日――――――

 

 人類の100年の平和が終わりを告げた日―――――

 

 私は、訓練兵時代からの友人であるリタの家で一緒に食卓を囲んでいた。

 

 わずか、100キロ南端の都市シガンシナ区では未曾有の大惨事になっており

ウォール・マリアは一時間ともかからないうちに巨人に突破され

 刻一刻とここクィンタ区にも、その巨大で不穏な足音が忍び寄っているとも知らず……

 

 テーブルには灯油ランプと蝋燭立てが置かれ、夕食の雰囲気にふさわしい

とても柔らかな光を広げている。

 その周りに魚のオイル漬けや肉の煮込み、蒸した野菜など

さまざまな種類の料理が飾り立てられるように並べられていた。

 外を見るとまだ夕焼けの空が街を覆っている。午後5時、少し早く食事会は行われようとしていた。

 

「すいません、たびたび御馳走になってしまって。」

 

「いやいや、いいんだよ。ほら、人数多い方が会話も弾んで料理もうまくなるもだ。」

 

 リタの母ドリスが料理をとりわけながらいう。

 

「そうだよ!ㅤ気にせずどんどん食べて!」

 

 唯一無二の親友に催促されては仕方がない。シャーナはフォークを手に取ると

目の前にあった肉の煮込みに手をつけ、一口の大きさに切り取り口へと運ぶ。

 

「おいしい!ㅤやっぱり、ドリスさんの手料理は一番です」

 

「いつもありがとうね。でも、まずいと思った時は素直にいってくれていいんだよ?」

 

「そ。そんなことありませんよ!」

 

 慌ててシャーナは手を横に振って否定する。

 

「ははは、その顔みる限りいつもおいしく食べて貰ってるってことだね!

 疑って悪かったよ!」

 

 ドリスはにっこりと笑った。一方のシャーナは、その顔をみて安心したように

また手を動かしはじめる。

 

 シャーナは、リタがいつもこんな食事を食べているかと思うとうらやましかった。

なぜなら、自分は兵団に入るまで毎日食べられるか食べられないかの瀬戸際で

パン一個でも食べられたらもう十分満足だったからだ。

 

 兵団に入って、そんなことはなくなったものの末端である訓練兵団や駐屯兵団に

支給される食料はどれも質素なものばかりである。

 むしろ、食わせてもらえるだけありがたいのだが。

 

 だから、週一程度でのリタの家での食事はそんな生活をしてきたシャーナにとっては

御馳走そのものであった。

 

「ほーんと、うらやましいよ。リタが。」

 

「えっ?何が?」

 

「こんな素敵な料理が毎日食べられるんだもの。」

 

「そ…それは……」

 

 リタは顔を赤らめる。実際リタも母親ドリスの腕の良さは認めていたし自慢の種でもあった。

 

「でも、この子ったら料理はからきし駄目でねえ。小さい頃から料理はできるようにっ てしっかり教えてきたつもりなんだけどねえ……」

 

「えっそうなの?ㅤリタ」

 

 シャーナは驚いてリタを見つめる。

 

「もう、お母さんったら…今はその話はいいでしょ?ㅤってシャーナもそんな目でみない でよ」

 

 リタはますます恥ずかしくなり椅子の中で縮こまった。

 

「へえーなんか以外です……ドリスさんを見てるとリタも――ってずっと思ってました。」

 

「そう。なのに、いつの間にか兵団に入ってさ、立派な運動馬鹿になっちゃって。」

 

「うう……耳が痛いよ……」

 

 リタはうつむいたまま小声でいった。シャーナはそんな普段は見せないリタを見て苦笑する。

 いつものリタは、至って真面目で堂々とした性格であるからこんなに恥ずかしがる姿を見るのは初めてだった。

 

「だけど、こんなに根性がある子だとは思わなかった。兵団に入るって言い出した時は

絶対、続かないって反対したんだけどね。でも、ちゃんと最後まて残ってさ。

今じゃ立派な兵隊さんだよ。」

 

「懐かしいなあ~。お父さんなんてお前には勤まらないの一点張りで口も聞かなく なっちゃったよね。」

 

「あの温厚なヘニングさんが?」

 

 ヘニングは、リタの父親で薬屋を営む医者だった。

その名は、クィンタ区中に知れ渡っており、商会も御用達だったほどだ。

 

「そうそう、結局は、娘がやりたいって言い出したことだからっておれたんだけどね。」

 

「だから、無理いって入団させてくれた以上は絶対に諦めたくなかったの。」

 

「なるほど。でも、私なんかと違ってすごく頑張ってたものね。教官だってよく褒めて たし。もう、私なんて怒られてばっかり。強いていえば、無事卒業できたことくらい かな?」

 

シャーナは訓練兵時代の苦い思い出を思い出しつつ笑いながらいう。

 

「そんなことないってば、シャーナも努力怠ったなんてことなかったじゃん」

 

「でも…結果は散々だったから。」

 

 今でこそ、少しは笑い飛ばせるようになったが、シャーナにとっては未だにコンプ  レックスの塊そのものであった。

 

「結果がどうであれ、あの厳しい訓練に耐えぬいたことがすごいことなんだよ!」

 

「リタの言う通りだよ。親としては、立派な兵士になって一人前に育ってくれた。それ だけでもう十分な恩返しなんだよ」

 

    (十分な恩返しか。)

 

 ふとシャーナは、心の中で自分の親と重ね合わせた。

思い返せば、5年前に故郷を出てから一度も帰っていなかった。

 それは、訓練兵団でいい結果を残せず、合わせる顔がなかったのが一番だが

心の奥底では、身も心も荒みきってしまった今の自分を見せたくなかっただけかもしれない。

 しかし、ドリスの言葉に、今まで体裁ばかり気にして親に逢うのを意図的に避けていた自分を恥じた。

 

≪自分は逃げていただけなんだ。親の気持ちも考えないで≫

 

 

「しゃ・・シャーナ?」

リタが、心配そうに顔を覗き込む。その言葉でシャーナは我へとかえった。

 

「ご…ごめん。ちょっと、考え事してて。」

 

「どうかしたのかい?」

 

「あ、いえ。その、大丈夫です。すいません。でも、励ましてくれて

ありがとうございます。おかげで心のモヤモヤが晴れました」

 

ドリスと親友のリタにむかってシャーナはお礼をする。

その姿を見て、二人は顔を見合い笑顔になった。

 

「よかった。訓練兵時代の話すると、シャーナはいつも暗い顔するからさ。」

 

「ちょっと、ネガティブになりすぎてた。やっぱ、ポジティブにいかないとね」

 

「うんうん。その方がシャーナらしいよ。」

 

「辛い思い出なんて、食べて忘れちまいな。」

 

「あと、まだお変わりはたーくさんあるからね!」

 

 というと、またドリスが料理をテーブルの上へと並べる。

 みると、リタとシャーナが大好きな鶏ガラスープであった。

 

「うわっ! すごい。お母さんったらいつの間に……」

 

「ほ…本当にいいんですか…?」

 

「肉屋のおばさんが今日は、特売だからって安く売ってくれたのさ!

 だから、おかわりもたくさんあるからどんどん食べな!」

 

「ハイ!」

 

リタとシャーナ…二人の声が同時に響くのであった。

 

 

 その後もリタの家での食事会はつつがなく進んだ。

 外をみれば、夕焼けはもう西に傾いており、星がではじめていた。

 やがて、食べ終わると二人は、リタの部屋に移動して雑談に花を咲かせる。。

 

 

 

「っで、最近どうなの?マティアスくんとは? 順調?」

 

 マティアスは、クィンタ区を基盤としている有数の商会であるクラマー商会の

御曹司である。リタとは、父親のヘニングがクラマー商会専属の医者をしていた

関係で小さい頃からの幼馴染であった。

 

「順調って何も..最近会ってないし..」

 

「ええ!会ってないの? なんで??」

 

 シャーナは驚いた表情をする。

 

 リタとマティアス二人の関係は、お互い喧嘩をすることもなく成長し恋仲という間にまで達していた。

 それは、周りの目からも明らかであったが、まだお互い告白しておらず

友達以上恋人未満という関係が続いていたのである。

 

 シャーナは、そんな二人を見てなかなか告白をしないリタを気にかけているのであった。

 

「今、ちょうど繁盛期らしくてね。ずっと、お父さんと王都で仕事しているみたいな  の。だから……しばらくは会えないと思う。」

 

 リタは不意に視線を下へと向けた。そこには、ずっとあえていない寂しさと

 どこか虚ろなもどかしさが漂っていた。

 

「でも…。いいの。今は、お互い仕事も忙しくなりはじめてるしさ。それに、マティアス も、今が商会を継ぐ立場としては一番大切な時だし、変に邪魔しない方が彼のためで もあるから」

 

「そっかあ…。でも、ちゃんとマティアスくんのこと考えてるんだね。」

 

「ま…まあね。」

 

 リタは照れくさそうな表情をする。

 

 一方のシャーナは、それを見て友人の恋を応援してやりたいと強く思った。

 

「それより、シャーナの方こそどうなの?」

 

「っへ?私?」

 

 シャーナは意外そうにまばたきする。リタはうなずく。

 

「そうだよ。シャーナったら全く男の子と話さないから。最近はどうなのかなって」

 

「うーん。今はそんなこと考えていられないよ。仕事を確実にこなすことだけでも

 精一杯。それに、班長にも任命されちゃったから。」

 

 シャーナは入団してまだ2年目の新兵であったが、訓練兵団時代の散々な成績からは

想像できないほどの働きで日々頑張っていた。

 ついに、昨日その働きぶりが認められ班長に昇進して何人かの同期生や新兵をまとめる立場になっていた。

 

「あっ! ついにシャーナも班長か。じゃあ尚更、仕事忙しくなっちゃうね……」

 

 リタの方は訓練兵時代、憲兵団までは届かなかったものの彼女の評価は

調査兵団に勧誘されるほど同期の中では特に高かった。

なので、シャーナより一足早く班長に任命されていたのである。

 

「ねえ、やっぱ班長って忙しい?」

 

「当然! 今までの倍は仕事ふえると思って! 新兵の教育に面倒。それに..調査書の提出。あと、上官への連絡の取次ぎ。ぜーんぶ、班長の仕事だから」

 

「うへえ..。ただでさえちゃんとまとめられるか心配なのに..」

 

 シャーナは、それを聞いて予想以上の仕事の多さに落胆する。昇進は嬉しいのだが

ついおとといまでは一兵卒で訓練兵時代からずっと、上から指示される立場だったので

明日から自分が上に立つ立場になると思うと実感が未だにわいてこなかった。

 それに、求められる課題が一気に跳ね上がるのも不安を大きくさせており

頭がますます重くなる一方だ。

 

「まあ、そこんところは私がちゃんとフォローするからさ。」

 

「ありがとう..リタ。本当に、いつも迷惑かけてばかりでごめんね。」

 

「いいんだって。私もシャーナに助けられっぱなしだし。お互い様。」

 

「やっぱ、リタが親友でよかっ―――― !?」

 

 シャーナが涙ながらにそう言おうとした時であった。途端に、リタの部屋の扉が

 勢いよく開けられた。

 

「お.お母さん?」

 

 リタが思わず言う。そう、突然慌てて扉を開けて入ってきたのはドリスであった。

 みると、勢いよく階段を駆け上がってきたのか息をきらしている。

 

「どうしたの?そんなに慌てて?」

 

「ああ..あんた達。すぐに、下に降りてちょうだい。同僚のヴィルコくんがきて

 すぐに伝えたいことがあるって」

 

「ヴィルコが?」

 

 何事かとリタとシャーナは顔をみあう。ヴィルコはシャーナ達と同期で今は同じクィンタ区の駐屯兵団に所属する同僚の駐屯兵であった。

 とりわけ仲の二人と仲のいい部類には入る方だが、男なのでプライベートまで付き合う関係ではなく、仕事上の付き合いといった方がいいだろう。

 

 おそらく、その彼がリタの家におしかけたということは何か駐屯兵団からの

連絡であるのだろうか。

 

 二人は、言われるがまま大急ぎで下へと降りて行った。

 

 

 

「お前ら急げ。」

 下の玄関でヴィルコは早くといわんばかりに手を振り、焦っていた。

 

「どうしたの急に?」

 それに比べ状況を把握できないシャーナとリタは困惑した表情で言う。

 

「実はな。たった今、部隊長からクィンタ区の駐屯兵は即刻、本部に集まるようにと

 緊急招集がかかったんだ。」

 

「緊急招集??何かあったの?」

 

「それは、俺もわかんない。だが、早く集まれとのことだ。俺は、リーズとマチルダに も伝えなきゃなんないからもう行かなくちゃなんねえ。とりあえず、本部に集合だ。

 わかったな。」

 

 そういうとヴィルコは一目散に次の場所へと走って行った。

 

 二人は、すぐさま兵団の制服を身に着けると心配するドリスに、すぐ行かなくてはいけない旨を告げ、急ぎ本部へと足を急がせた。

 

 大通りへ出ると、リタ達と同じ通常の任務を終えて家に戻っていた駐屯兵たちが

本部へと忙しく走っている。

 その異様な光景に街の人たちが何事かと一様に呆然とみつめていた。

 

 

 

 本部につくと、ちょうど見張りの登板をしていた者も含めて既に大勢の者が集まっていた。

 みると、その集団の前でクィンタ区駐屯兵団部隊長であるエバンス・フォルカーが

どこかおぼつかない表情をして立っている。

 

 それを見て

 

「なんか、、大変なことになってるね」

 

 シャーナが隣のリタに小声で囁いた。

 

「そうみたいだね..」

 

 場の状況と部隊長の表情から察するに、重大な出来事が伝えられることは間違いない

 

 しかし、急すぎたので二人の心はまだ落ち着くのには時間がかかっていた。

 

 やがて、副部隊長の「静まれえええ!」という声とともに突然の緊急招集にざわついていた雰囲気が一瞬にして静寂へとかわる。

 

 そして、エバンスは集まった駐屯兵の面々を見渡して、もう来るものがいないと

 分かるとその重そうな口を開いた。

 

「皆、驚かないで聞いてほしい。たった今、王都の憲兵団から私のもとへある一報が

 届いた。それによると…シガンシナ区に突如…これまでに類をみない超大型巨人が

 出現…巨人は……い……一時間もたたない内にシガンシナ区を制圧。し..

 う……ウォール・マリアを……と…、突破!多数の巨人がクィンタ区へ向かっている…と」

 

 その時、私たち人類の虚偽の繁栄は音をたてて崩れ去った。

 




すいません。タグにあった神様転生要素はまったく以てこの作品にはございません。
作者の不手際で読者の皆様に誤解を招いてしまいました。

即刻、削除いたしました。

深く反省いたします。
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