カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが???   作:53860

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冒頭は過去編です。長くて申し訳ない……。
皆さんいかがお過ごしですか?モンスターハンティングをエンジョイしてますか?
私は蟲とか楽しく狩っています。
ヤンデレ、すこすこのスコティッシュフォールド。



心の折れたエンジェル

 

 

「スルメちゃんって少しオトナっぽいね」

 

 まだ私が幼稚園に入りたてくらいのときの友人に、一度こう言われたことがある。

 

「え?そんなに私ってセクシーかな?」

「全然違うよ。スルメちゃんはセクシーじゃない。まったく違う」

「いろけってのがないよねー」

「は?」

 

 あのときは、まだスズ以外にも仲良しの娘が2人くらいいた。

 

「私は……その、スルメちゃんは……セクシー、だと思うけど……」

「スズちゃんはスルメちゃんが好きなだけでしょ!」

「えこひいきだー!」

「そっ!そそそ!そんなこと!そんなこと……あるけど」

「なんだこいつ。おかしいよ。頭おかしい」

「へんなのー!へんなのー!」

「そうじゃなくて!なんか落ち着いててしっかりしてるなーって思ったの!スズちゃんもそう思うでしょ?」

「たしかにスルメちゃんってすごいよね……私たちにカードバトルのこと教えてくれるし……」

「まぁ、人生2回目だから」

「なにそれー!」

「へんなのー!へんなのー!」

 

 当時は今以上に異質な子供だっただろう。なにせ前世の記憶がはっきりと残っていたから、やけに大人びた女児だったはずだ。それでも3人は私を受け入れてくれた。スズと私はどちらかと言えば揶揄われる側だったけど、いつも4人で仲良く遊んでいた。

 そんな日常は、あの日を境に失われてしまった。2人ともどこかへと転居してしまい、今はもう傍にいない。

 全部、私のせいだ。

 

・・・・・・・・・

 

 言葉が読めて、意味もはっきりとわかる私は、周りの子たちよりも早くカードを買ってもらった。当時、幼稚園の中でデッキを持っていたのはごく僅かだった。

 

「スルメちゃん、パック開封はどうだったかしら?いいカードは出たかな~?」

「かっこよくて強そうなカードがたくさん出た」

「あらあら、うふふ。スルメちゃんはゾンビ族のアタッカーやスペルにとっても好かれているのね。みんな貴女のことがすーっごく好きみたい」

「ほんと?この子とデッキ組めるかな?」

「いつの間にそのカードを……。でも、いいわね。絶望的なほどに強大な力を感じるわ。うふふふふふふ」

 

 私が【アンデッド・パニッシャー】のカードを見せると、ママは一瞬だけ表情を失った後に、さらに笑みを深めた。その一瞬の間が、グロテスクなカードばかり好む女児を変だと感じたのではないか、と私は不安になった。

 

「グロテスクなカードばっかり使うのって、女の子なのに変かな?」

「大丈夫よ~。所詮、カードは道具なんだから。たとえば、職人さんがどんなに危ない道具を使っていても、スルメちゃんはその職人さんが危険人物だとは思わないでしょう?」

「うん、だってお仕事だもん」

「カードも一緒よ~。どんなカードにも貴賤はない。あるのは優劣のみ。だから、強いカードを正しく使いなさい」

「うん。私、色んなカードでたくさんデッキを組むよ」

「あらあら。複数デッキを使いこなすプレイヤーを目指すなんて、スルメちゃんったら欲張りさんね~。……まぁ、あのカードがそれを許すとは思えないけど」

「え?」

 

 そんな話をしていると、私に誰かが話しかけてきた。それは同い年くらいの少女の声だった。

 

『嗚呼……やっと会えたね。ボクの愛しきマスター。ボクのためにデッキを作ってくれるなんて嬉しいよ』

「……?ママ、なんか言った?」

「ん~?な~んにも言ってないわよ~。うふふふふふふ」

『でも酷いじゃないか。いきなり浮気宣言だなんて。キミはボクだけを見ていればいいんだ』

 

 鈴を転がすように笑う少女の声が耳に残った。

 

『愛してるぜマスター』

 

・・・・・・・・・

 

 悲劇が起きたのは、私がママから貰ったロボット族のデッキでカードバトルをしたときだ。パパとママが持っているものをこっそりと借りて、大人たちから隠れてバトルユニットを使ったバトルをした。

 最初はARビジョンに映し出される大迫力のアタッカーやスペルに興奮していたが、次第に2人の友人が私のデッキを怖がり始めた。

 

「ねぇ……スルメちゃんの使うアタッカーさんたち、気持ち悪いし怖いよ」

「え?」

「そ……そう、かな?私はスルメちゃんらしくていいと思うけど……」

「そんなこと言うのスズちゃんだけだよ!スルメちゃんが何してようがなんでもオッケーなんでしょ!」

「へんなのー!へんなのー!」

「私って……変、かな?」

「だってゾンビとかグールとか気持ち悪いよ」

「スペルもこわいよー!きょうきー!」

『気にしなくていいよマスター。負けた憂さ晴らしがしたいだけさ。これだからガキは困る』

「うーん……じゃあ、こっちのロボット族のデッキでやろ。作ったばかりだけど」

「え!?すごーい!スルメちゃんっていくつもデッキを使えるの!?」

「あたまいいー!あたまいいー!」

『は?は?は?』

 

 周りからおだてられて私は得意げになっていた。だから、時折聞こえていた少女の声が、このときは怒りに震えていたのに気が付かなかった。

 

「バトルユニットにセットして、と。さぁカードバトルを……っ!?」

『どうしてそんなガラクタどもを使うんだッ!?許さない……ッ!許さないよマスタァーッ!』

 

 突如、ポケットにしまったゾンビ族のデッキから、膨大な闇が飛び出した。空中で巨大な人影となったそれは、私からバトルユニットを取り上げるとデッキもろとも握りつぶし粉々にした。灰と化したカードたちが風に吹かれてどこかへと消えてしまった。黒煙が私たちの周りを取り囲んだ。

 

「貴女は……誰なの……?」

『ボクがいるんだからッ!あんな奴らいらないだろッ!?なぁッ!?』

「ひぃっ……!」

『ボクだけを見てッ!ボクだけを使ってッ!ボクだけを愛してッ!ボクとともに死ねッ!求めているのは単なる純愛だぜッ!?なのに阿婆擦れみたいに他のカードに目移りしてッ!今すぐその魂を喰らって永遠に添い遂げてやろうかッ!?』

「スルメちゃんッ!危ないッ!」

「ど、どっかいけぇぇえー!」

「うわぁぁぁん!ばけものー!ばけものー!」

『どけッ!ガキどもがッ!こっちは夫婦の話をしてるんだよッ!』

「ぎゃあっ!」

 

 私に迫った黒い靄は、質量を伴って友人たちを投げ飛ばした。

 

「いたいよー!いたいよー!わああああん!」

「うぅ……っ!この、化け物……っ!!」

「そんな……」

 

 私に向かって言い放った言葉ではなかったのかもしれない。

 それでも、当時の私は自らを強く否定されたような感覚に陥った。

 悲しみ、そして絶望。そんな感情を抱いたとき、私に黒い靄がまとわりついた。

 

『嗚呼ッ!可哀想なマスターッ!でも安心するがいいッ!ボクだけがキミを肯定し愛し守ってやるさッ!』

「守る……?どこがッ!」

『あんな目障りなヤツら滅ぼしてやろうぜッ!ボクのマスターを寝取ろうとする敵は皆殺しにしてやるッ!』

「やめてッ!これ以上、私の友達を傷つけないでッ!」

『そもそも悪いのはロクにカードを扱えないアイツらだ!弱者は存在自体が罪なんだから!それをボク以外の雑魚を使ってまでわざわざ合わせてやる必要なんかない!』

 

 黒い靄が耳元で囁く。嬉しそうに、愉しそうに。

 

『強いカードを正しく使うのがカードバトル、だろう?』

 

 その後のことは、よく覚えていない。気づいたら2人の友人は、どこか遠くへと引っ越していた。ただ1人、幼馴染のスズだけはずっと傍にいてくれた。

 そして私の手元には、いつの間にか手に入れていたホムラたち【JKガールズ】を中心に構成されたデッキだけが残った。

 

・・・・・・・・・

 

『……たー!……すたー!……マスター!』

「ん……あれ?」

 

 目を覚ましたら控室だった。先ほどの準決勝戦での疲れからか、少し眠っていたようだ。傍には心配そうな表情のホムラがいた。

 

『マスター!大丈夫!?なんかすっごいうなされていたけど……』

「悪夢を……見ていた」

『えぇ!?やっぱり医務室に行こうよ!あの黒い靄のカードと戦ってからおかしいよ!』

「ううん。いい。大丈夫」

『マスター……』

 

 これから決勝戦だというのに、忘れていた嫌な記憶を思い出してしまった。

 バトルアリーナの壇上へと歩を進める途中、私はふと気になったことをホムラに聞いた。

 

「ねぇ……私とホムラってどういう風に出会ったんだっけ?」

『えっ!?えっと、マスターってキラキラしてて暖かくて素敵な魂で、それを私が見つけてー』

「それはホムラが私を見つけたときの話でしょ。昔の私と会話とかしなかったの?」

『いやー、ははは。どうだったかなー?マスターは覚えてないの?』

「覚えてない。その辺りの記憶はぽっかりと空いてる」

『……悪夢ってさ、忘れるに越したことはないと思うんだよねー』

「は?」

『思い出せないってことはすっごく嫌な記憶じゃない?なら気にしない方がいいよ!』

「でも……」

『ほらほら!決勝戦はじまっちゃうよ!ステージに上がって上がって!』

 

 なんかはぐらかされたようにも感じるけど、いつの間にか決戦のステージの目の前に立っていた。

 

「えー、波乱万丈の新十区カードバトルトーナメント新人戦でしたが!これより!決勝戦の始まりだゼーイ!傾奇者が誇るサイコロリ、神引スルメ選手!そして新十区のバーサーカー、姉崎ショウタ選手!2人の頂上決戦の開幕だゼーイ!」

「久しぶりだなスルメ!お前とのカードバトル楽しみにしてたぜ!」

「そう」

『マスター……?』

「いくぜ!先行はもらった!俺のターン!ドロー!」

 

 勢いよくカードを山札から引く主人公君だったが、私の気分は晴れない。あの黒い靄と戦ってからモヤモヤした気持ちが残ったままだ。

 

「オレはスペル【鍛冶屋の試行錯誤】を発動!山札から3枚まで武装カードを墓地に送るぜ!墓地に武装カードが3枚そろっているとき、【小さな馬車の鍛冶屋サン】を特別召喚できる!」

 

 ショウタがカードをバトルユニットにセットすると、高校生くらいの桃髪ボブスタイルの勝気な少女があらわれた。大きなハンマーを一振りし、キリッとした表情を浮かべている。

 

『あ!マスター見てよ!巨乳娘だよっ!すっごいね!でっか!』

「そうだね」

『マスター……一体どうしたの?』

「別に」

「さらにオレはスペル【サンの祈り】を発動する!墓地の武装カード1枚を山札に戻し、ELを1000ポイント減らすことで、山札から【小さな馬車の勇者アレックス】を特別召喚する!ただしこのターン、オレは通常の召喚ができないぜ!オレはスペルを1枚セットしてターンエンドだ!」

「ショウタ選手、アタッカー2体を上手く並べたー!だがELを大きく減らしている!これが吉と出るか凶と出るかー!?」

 

 目の前には、嬉しそうに少年を抱きしめるサンと顔を真っ赤にしたアレックス。伏せられたスペルが1枚あるものの、ショウタのELは3000ポイントに減っている。

 

「私のターン、ドロー。私は【JKガールズ・水麗のシズク】を召喚。そして場に【JKガールズ・水麗のシズク】が存在するとき、手札から【JKガールズ・聡慧のアイリ】を特別召喚できる」

『やっぱりなんかおかしいよ。いつものマスターと違う』

 

 隣に立つホムラは不安そうにそうこぼした。いつもならどんな相手でもそこそこは楽しいはずのカードバトルだが、今はなんだか苦しい。

 場には、凛々しい青髪ロングの魔法少女と、彼女についてきた三つ編み眼鏡の魔法少女が、心配そうに私の顔色をうかがっている。

 

『マスター……どうして?ボクがいるのにそいつらばかり使って』

「……っ!?」

 

 夢で聞いた少女の声が脳内に反響する。その冷たさと恐ろしさから思わず腕を握りしめてしまう。

 

「私はっ……武装カード【ガールズ・ファイトロッド】を【JKガールズ・水麗のシズク】に装着する。そしてファイトシーン。【JKガールズ・水麗のシズク】で【小さな馬車の鍛冶屋サン】を攻撃」

『え!?マスター!?いいの!?』

『……私たちには使い慣れた武装だが、マスターらしくないぞ?強力なグロカードを使わなくていいのか?』

『わ……私を墓地に送る、とか、しなくていいんですか?その、手札にも丁度いいスペルが……』

 

 うるさい。

 私が攻撃を宣言すると、少し迷った後にシズクはロッドを振りかぶり、氷柱をアレックスに向かって飛ばした。襲い掛かってきた大量の氷塊になすすべなく、鍛冶屋の少女は血まみれになり倒れ、消滅した。目の前で姉のように慕っていた存在を殺害されたアレックスは涙を流しながら雄叫びをあげた。

 これでショウタのELは2400ポイントだ。私の場にはAP1600に強化されたシズクと、AP700のアイリが場に残っている。

 

「くそっ!だがオレはカウンタースペル【勇者支援要請】を発動だ!場の【小さな馬車】と名の付くアタッカーが破壊されたことで、オレは山札からAP1000以下の【勇者】と名の付くアタッカー1体を特別召喚できる!来い!【小さな馬車の勇者ライアン】!」

「……【ガールズ・ファイトロッド】の効果発動。相手の場のアタッカーを戦闘で墓地に送ったとき、山札からカードを1枚ドローできる。私はこれでターンエンド」

『雑魚カードじゃあ盤面処理さえロクにできない。なのに、どうしてこんな奴らを使うんだい?ボクがいればすべて薙ぎ払えるのに。目の前のクソガキもろとも皆殺しにしてやるぜ?』

 

 うるさい。

 

「ならオレのターンだな!ドロー!オレはスペル【勇者帰還命令】を発動!場の【小さな馬車の勇者アレックス】を山札に戻して山札の上からカード2枚をドローできる!さらに【小さな馬車の修道女ミレイナ】を召喚!これで【小さな馬車の勇者ライアン】のAPは2000ポイントにアップするぜ!」

『今のコイツらじゃあAP2000ポイントのアタッカーさえ倒せない。ボクなら瞬殺なのに。ボクだけがキミを守れる。コイツらにはできっこない』

 

 うるさい。

 

「ファイトシーンだ!【小さな馬車の勇者ライアン】で【JKガールズ・水麗のシズク】に攻撃!」

『ぐっ……だが【ガールズ・ファイトロッド】のおかげで私は破壊されない!』

「そして【小さな馬車の修道女ミレイナ】で【JKガールズ・聡慧のアイリ】を攻撃!これでお前のELは3300ポイントだぜ!」

『ぐはぁっ!』

『アイリッ!』

「これでオレはターンエンドだ!どうする?スルメ!」

 

 メイスでぶん殴られてよろめくシズクだったが、【ガールズ・ファイトロッド】の効果で戦闘では破壊されない。ただ、修道女のロッドで攻撃されたアイリは、吐血すると倒れ消滅した。ショウタのELを500ポイント減らし、武装カード2枚を私に寄越して。残されたシズクは怒りの形相で、眼前に並び立つライアンとミレイナを睨みつけた。

 

『お前たち……よくもアイリをッ!絶対に許さないッ!必ず地獄の底に叩きつけてやるッ!』

『うおー!頑張れシズク!さぁ、マスター!最強のグロコンボをかましてやれー!』

『アホか!?そんなこと言ったら私が被害に遭うだろうが!?』

『愛する幼馴染のためならそれくらい安いことでしょ!?ね、マスター!』

「……私はカードをドロー。【JKガールズ・水麗のシズク】で【小さな馬車の修道女ミレイナ】を攻撃」

『あれ!?』

『ま、マスター!?それでいいのか!?』

 

 私の言葉にホムラとシズクは困惑している。

 それでもシズクは言われたとおりに、氷柱を飛ばす魔法でミレイナに攻撃した。血しぶきを飛ばしながら、悲痛な叫び声をあげて修道女は消滅した。愛する少女を奪われたライアンは雄叫びをあげる。

 ショウタのELは残り1300ポイント。なにも感じることなく淡々とバトルは進行している。

 

「……【ガールズ・ファイトロッド】の効果でカードをドロー。ターンエンド」

『つまらないカードバトルだなー。派手さもなければ力強さもない。なぜだかわかるかい、マスター?【JKガールズ】の奴らが救いようのないほどに弱いからさ』

 

 うるさい!

 

『弱者は存在自体が罪。カードバトルってのは強いカードを正しく使うものなんだからね。だからボクとその配下だけを使うのがただし』

「うがああああああ!」

「えっ!?」

『うおおっ!?なに!?なんなのあのクソガキ!?』

『いきなり吠えたぞあの少年。頭とか大丈夫か?』

 

 頭に靄がかかった状態が少し晴れた。心ここにあらずだったのが、現実に引き戻されたような感覚だ。

 

「ふざけんなよスルメ!真面目にオレとカードバトルしろおおお!」

 

 目の前のショウタは怒りに震えていた。

 





ついに!4月11日(金)から!遊戯王GXのリメイク版が放送されます!
ヤッター!!!Youtubeでも見れます!ヤッター!!!
その前にキチンとトーナメント編は一区切りつけたいと思います。頑張ります……。
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