カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが???   作:53860

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世間はGWらしいし更新しなきゃと頑張って書きました。
つまり見切り発車で進行中です。シュポポー。
ブルアカ新イベ良いですね……シュポシュポ。



グロ、反社、カレー!波乱のメイド喫茶編
プロローグ


 

 新十区のカードバトルトーナメントの翌日。私は自宅のリビングで、カードの精霊であるホムラ、リリカとお話をしていた。

 今日は祝日だというのに、パパとママは緊急の案件で休日出勤らしい。ギャン泣きするママを引きずっていくパパの哀愁漂う後姿を見て、どの世界も大人は大変だなーと感じた。

 それはさておき、リリカには聞かなければいけないことがある。この世界の悪の組織についてだ。

 

『闇から救ってくださってありがとうございます、マスター。改めて感謝申し上げます。私は【JKガールズ・深緑のリリカ】、カードの精霊です。こちらが私についてまとめた資料です』

「……はい?」

 

 なんだこいつ。丁寧で礼儀正しいけど生真面目で面倒くさそうなヤツだな。

 手渡された資料とやらはコンビニに置かれている求人雑誌並みに分厚い。パラパラめくると、生い立ちやカードにまつわるストーリーがイラスト付きで説明されている。

 ちょくちょく「ホムラちゃんの親友」とか「ホムラちゃんの一番の理解者」などといった文言がでかいハート付きで書かれていた。設定集とか読むのは好きだからいいけど、変な女だな。

 

『おー!さすがリリカ!仕事がデキるー!』

『えへへ……そんな、ホムラちゃんってば。嬉しい』

「リリカもカードの精霊の世界から来たの?ホムラたちとは一緒じゃなかったの?」

『次元を超越するときにリリカだけはぐれちゃったんだよー。そういえば、あのとき何か変な力が干渉してきた気がしたけど……』

『はい、マスター。私は次元超越するときに、何者かによって強引にある場所へと引きずられました。それが、カードを悪用するテロリスト組織、BSS団のアジトでした』

「へー。そんなことできるんだ」

『おそらく闇のエネルギーを使うことで次元を超越し、無造作にカードを強奪しているようです』

「手の込んだカード泥棒だね」

『違うよマスター!カード誘拐犯だよっ!それにしてもなんて酷いヤツらなのっ!?』

『そうしてこの世界に生まれ落ちた私は、ネトラ連邦の研究所に収容されました。そこでは、カードに対する非人道的な実験が行われていたのです』

 

 ここはツッコミを入れるべきだろうか。少しツボに入りかけた。非人道的とかウケる。カードに人権なんてないのに。非人道的もクソもないじゃんね。

 リリカは薄い胸元に手を置いて悲痛な表情を浮かべている。そんな幼馴染をホムラは心配しているし、なかなかシリアスな雰囲気だ。仕方がないのでテキトーに質問することにした。

 

「実験ってどんなことしてたの?」

『私が受けたのは、闇のエネルギーをカードに注入するというものでした。マスターたちが黒い靄と呼ぶエネルギーが蓄積されたことで、私は強引に目覚めさせられたのです』

『そんなッ!?バトルパワーを一気に注いでカードソウルを無理やり覚醒させるなんてッ!?カードの精霊に尋常じゃない負荷がかかっちゃうッ!こんなの悪逆非道が過ぎるよッ!』

「それって何かメリットあるの?APが上昇するとか?強い効果を付与できるとか?」

『効果やAPなどカードそのものが変質することは滅多にありません。闇のエネルギーを悪用してもきっと不可能でしょう。そうではなく、絶大な力を持ったカードの精霊を実体化させ操ることに狙いがあるようでした。自由に精霊を暴れさせることができれば、あらゆるものの破壊や殺害が可能となります』

「は?やば……」

 

 そんな危険な力を持っているのか。このカード捨てようかな。よく見たらなんか禍々しいし。

 

『あの、マスター……?なぜアルコール除菌シートで私のカードを拭いているのですか?』

「いや……こうすれば黒い靄とか除去できるかと思って」

『そんな簡単に取り除けるわけないでしょうッ!?こちとら最先端の設備機器で無理やり注がれてるんですよッ!?インフルエンザウイルスとかと一緒にしないでくださいっ!』

「あとなんか汚そうだなーって」

『きたな……ッ!?待ってください!たしかに私は闇のエネルギーを注入されていますが汚くなんかありませんッ!なんで持ち上げるのに端っこをつまむんですかッ!?私のカードを汚物扱いしないでくださいッ!ちゃんと綺麗ですからッ!!』

「えー?ホムラ、どう思う?」

『うーん……。たしかに、言われてみれば周りに瘴気みたいなものをまとってるような?それに、昔のリリカと違って、なーんかくちゃい気が……?』

『ホムラちゃんッ!?』

 

 マジか、臭いのか。なら念入りに除菌しておこう。

 ゴシゴシと除菌シートで拭いて、おまけにアルコールスプレーをかけたおかげか、【JKガールズ・深緑のリリカ】のカードは心なしか光輝いているように見えた。

 顔を真っ赤にしたリリカが、ぷるぷると肩を揺らしている。何かを我慢するように頬をパンパンに膨らませていたが、私とホムラが静かになったのを確認すると、スカート端を握りしめて吠えた。

 

『とにかくッ!あの黒い靄は凶悪なのですッ!なにせマケーチン粒子で満ち溢れていますからッ!』

『……まけちん?』

「…………なにそれ?」

『ネトラ連邦の天才科学者、ヨワ・マケーチン博士が発見したエネルギー粒子です。愛する人を誰かに寝取られたときに生まれる負の感情が、闇のエネルギーとなって邪悪なパワーをもたらすと言われています』

『あの黒い靄ってそんな悲しいものだったんだ……』

 

 なんて情けないエネルギーなんだ……。

 たしかに、トーナメントでイカれ女のレジィが黒い靄を操ったときも、カンナさんを略奪されたと思い込んだときだった。それにスズやインリンも、想い人が誰かに奪われるという危機感を抱いたときに、微かながら黒い靄をまとったことがある。

 腑に落ちない表情を浮かべる私とホムラに、リリカは涙ながらに訴えかける。

 

『世界各地で破壊活動を続けているテロリスト、BSS団はこのマケーチン粒子を悪用し、国家転覆や世界征服を目論んでいます!お願いですマスター!どうかカードの精霊と人間たちの世界を守ってください!』

『う、うおー!すごいやマスター!一躍、ヒーローになれるチャンスだよ!?やるっきゃないね!一緒に頑張ろっ!』

「やだ」

『だよねっ!?知ってたっ!!』

 

 勢いよく拳を突き上げたホムラだったが、私の言葉を聞いて盛大にズッコケた。

 対してリリカは悲しそうに目をうるうるさせている。なんだよ。悪いかよ。

 

『どうしてですか、マスター……。世界が危機に瀕しているというのに……』

「世界を守るなんて壮大なお話は、熱血バカにでもやらせておけばいいよ。私は勝手に黒い靄を集めるから。あくまで自分のためにね」

『そんな……』

 

 いいじゃんか。そのマケーチン粒子とやらが敵の手にあるからいけないんでしょ?なら、それを全部奪い取ってやればいい。私みたいな清廉潔白な聖人が持っていれば問題ないでしょ?黒い靄が集まればきっと我がエースの力も増すはずだ。

 そんなことを考えていたら、脳内にメンヘラクソ女の声が響き渡った。

 

『嗚呼、マスター!ようやくボクのために動いてくれるんだね!?嬉しいよッ!』

「うるさいなぁ……。黙れよ」

『ふふふ!ツンデレだねマスター!本当にかわいいなぁッ!』

「うざっ……」

『マスター?いったい誰とお話ししているのですか?』

『しーっ!リリカ、気にしちゃダメッ!マスターはイマジナリーフレンドと話してるんだから!ああいうカスぼっちはロクな友達がいないから精神的におかしくなっちゃうんだよ』

「おい」

 

 聞こえてるぞクソバカアホ女。

 事実無根の罵倒をしてきた大馬鹿者のカードを折り曲げる。

 

『ちょっ!?痛い痛い痛いッ!やめてよマスターッ!カード反ってるからッ!めっちゃ反ってて逆側の壁が見えてるからァ!』

「アホ死ね」

『ダメですよマスター!力がある限り復活できるとはいえ、気軽にカードを傷つけないでください!』

「……ふん!まぁ、今回はこれくらいにしてあげるよ」

 

 さっきまで反っていたアホのカードをピンとはじいてやる。今度バカなこと言ったらへし折るからな。

 それにしても、カードへのダメージは精霊にも共有されるのか。ホムラは痛そうに腰あたりをさすっている。

 

『いてて……。チッ……この悪逆非道のドブカス畜生ロリが……』

「は?なんつった?」

『な、ナンデモナイヨッ!?そ、そういえばさ!気になってたんだけどさ!リビングに飾ってある掛け軸は何なの!?ゲノシデって読むのかなー!?アハハ!』

「あー……あれね。パパとママが会社で貰ったの。昇進祝いだって」

『Genocide Else Survive Own、ですか。随分と物騒な言葉ですね……』

「ふーん」

 

 ホムラが指差した掛け軸に書いてあるのは、GESOカンパニーの企業理念だ。

 今はバトルユニットやARビジョンなどのカードゲーム設備の製造がメインだが、もともとGESOカンパニーは航空機・ロケットエンジンや発電設備、潜水艦などを製造する重工メーカーだった。

 私の両親も、新エネルギー創造事業本部ってところに所属している。そんな古風で硬い会社だから、企業理念として仰々しい言葉が並んでいるのかもしれない。

 

『なぁ、マスター。ちょっといいかい?』

「ん?」

『そこの新しい雑魚カードに手をかざしてくれるかい?』

「こう?」

『そうそう。それでさ、ちょーっと力を込めてよ。なにかを吸引するようなイメージで』

 

 なんだそりゃ、意味わからん。

 ハンドパワーみたいな感じでいいのだろうか。むむむと目をつむって手のひらに力を込めてみる。

 

『んなッ!?マスターなにしてんのッ!?リリカのカードから黒い靄が吸い込まれていくよッ!?』

「え?マジで?」

『信じられません。私に注入された闇のエネルギーがどんどん吸い出されています』

 

 リリカの方を見ると、先ほどまで実体化していた魔法少女が、少しずつ光の粒子へと変化していた。お前……消えるのか……?

 なんて清々しい笑顔だ。リリカは泣きゲーのクライマックスシーンのような雰囲気で語りかけてきた。

 

『マスター……しばらく私は眠りにつくと思います。でもカードバトルになれば、きっと実体化できるはずです。そのときは必ずやお役に立つと誓います』

『あ……リリカそれは』

「ほんと?じゃあスペルのコストとして惨殺してやるから覚悟しといてね」

『……は?』

「無様な死に顔を晒すの楽しみにしてるから。じゃ、よろしく」

『あちゃー……遅かったか~』

『ホムラちゃんどういうことなのッ!?今マスターは惨殺って言ったよね!?惨殺!惨殺ってなに!?無様な死に顔ってなに!?』

『うおおおお!やめてリリカ!そんなに激しく揺らさないでぇ!』

『だっておかしいよ!?マスターはいったい何をするつも』

 

 あ、消えた。

 ホムラの胸ぐらをつかんで前後に揺らすリリカだったが、質問の途中で消滅してしまった。

 どうやら闇のエネルギーとやらが尽きたらしい。気のせいかもしれないが、私の体内に何らかのエネルギーが溜まった気がする。

 

『うっぷ!オロロロロロー!』

「きたな……」

 

 リリカに揺らされ続けたアホ女は、四つん這いになって虹色のゲロを吐いている。よっわ。三半規管よわよわの低APざーこ。所詮は場に出たら即座に破壊されるざこざこ魔法少女なんだね。

 さて、新しいカードが手に入ったからには、デッキ構築を見直さなければいけない。【JKガールズ・深緑のリリカ】は割と使えそうだし、しっかりと効果を発揮できるコンボを用意してあげようじゃないか。そのためにも、まずはカンナさんのお店「カードショップ不夜城RED」に行くとしようか。

 

「ほら、ホムラ行くよ。一々トロいんだよアホが」

『うぅ……マスターってやっぱ畜生DVロリなんだね……』

「えー、DVってなにー?わかんなーい。たとえばこういうことー?」

『イダダダッ!だからカードを曲げないでぇッ!』

「ふふふ……」

 

 ぐにぐにとホムラのカードを折り曲げながら、カードショップへと向かう。なんだかんだで新しいカードを手に入れるのはワクワクするものだ。そうだ、せっかくだから愛しの幼馴染のスズも誘おう。

 スズやホムラたちとの平穏な日常生活。まさか、その裏側に潜む傾奇町の闇に関わることになるとは。このときの私たちが知る由もなかった。

 





みなさんGXリマスター版、見ましたか?
私は初手強奪と、カードに書かれていたオリジナルイラストのアンティーク猫背ゴーレム君に笑いました。ちゃんと当時を再現していてすごいノーネ。やはり神作なんデスーノ。
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