カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが???   作:53860

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なお今回、何かを察したとしても言わないでください。
ただ、これだけは伝えたい。5D'sは最高だ、と。



私って……なんなんだろう……?

 

「ミーは手札からスペル【ドラゴニック残価設定ローン】を発動しマース!EL2000ポイントをコストとして支払い、このターン通常召喚できない代わりに、デッキからドラゴン族のトップグレードアタッカーを1体特別召喚できマース!」

「ローン……つまり、借金して車を買うってこと?」

「イエース!レバレッジなしにビジネスはスケールしまセーン!」

「気を付けて、スルメちゃん!きっと、何か強力なアタッカーを出すつもりなんだよっ!」

『間違ったことは……許せなかった。理不尽に泣く人がいれば……手を差し伸べた。だから……今もカードの精霊として、戦っている。……でも、なんで?それなのに……どうしてシズクの言葉が……否定できないの?』

 

 なんかメンヘラが増えた気がする。シズクに罵倒されてからホムラの様子が変だ。頭に手を当てて、髪の毛を握りしめて、小刻みに震えている。まん丸くて愛嬌のあった瞳は、不安と恐怖で大きく見開かれていた。

 それはともかく、スズの言う通りヘンテコジジイはおそらく高APアタッカーを特別召喚するつもりだろう。ヤツは獰猛に輝く眼を細めると、カードをバトルユニットに叩きつけた。

 

「冷たい戦禍の炎が世界の全てを包み込む!旧世代の漆黒の兵器よ、蹂躙せよ!現れよ、トップグレードアタッカー【ブラック・ウォーズ・ドラゴン】!」

 

 刹那、鉄のように無機質な黒をまとった巨龍が登場する。仁王立ちするモンスターの股間には、厚い装甲をした黒鉄の巨獣、戦車が鎮座していた。

 

「戦車と合体したドラゴン?」

「オー!ドロップアウトガールのくせに博識デース!これぞ旧世代最強のビークル!」

『私は……正義の味方だ……。そうじゃなきゃ……こんなこと、やってられないよ……。もしかして、私って、間違っているの……?』

 

 たしかに戦車は最強の乗り物かもしれないけど、なんとも趣味の悪いアタッカーじゃないか。気色悪いドラゴンが前後に腰をカクカクさせるたびに、戦車のキャタピラがキュルキュルと音を立てている。終いには戦車が砲塔を上げて、天高く空砲をぶっ放した。随分と威勢のいいキモアタッカーだ。

 だけど、攻撃はできないはずだ。スペル【ドラゴニック残価設定ローン】で特別召喚したアタッカーが攻撃したり場を離れた場合、ターンエンド時にそのアタッカーが持つ元々のAP分のダメージをプレイヤーは受ける。

 ヘンテコジジイのELは1500ポイント。【ブラック・ウォーズ・ドラゴン】のAPに匹敵する2400ポイントのダメージを耐えることはできない。

 

「このスペルで特別召喚したアタッカーのAPは半分になりマース!バーット!ノープロブレム!ミーは伏せていたカウンタースペル【ビックリ!不正な保険金請求】を発動しマース!」

 

 オジサンがカードを掲げると、パトカーを股下にぶら下げたドラゴンに小人たちが群がった。そして握りしめたゴルフボール入りのソックスでタコ殴りにし始める。モノトーン調の小型龍は、切なそうに甲高い鳴き声をあげると爆発四散した。

 

「場のドラゴン族アタッカーを墓地に送ることで、AP分だけELを回復しマース!」

「なるほど。これでELは3900ポイントになって、戦車のローンが払えると。オジサンやるじゃん」

「ノー!資本主義社会でサバイブするのにキャッシュを抱え込む暇なんてありまセーン!手持ち資金をすべてインベストしてさらなるリターンを狙うアグレッシブさなしに、ビジネスをスケールさせることはインポッシブル!」

「食い逃げしようとしてるくせに一丁前なこと言うじゃんね」

「ミーは下らないことにマネーを使わないのデース!スペル【ドラゴニックカーオークション】を発動!ELを2500ポイント支払うことで、手札から効果を持たないアタッカー1枚を特別召喚できマース!カモン!トップグレードアタッカー【ゴールデン・リムジン・ドラゴン】!」

 

 長い車体のリムジンを股間から生やした金色のドラゴンが現れる。光り輝く金竜は咆哮をあげると頭の後ろで腕を組み、こちらもカクカクと腰を振り始めた。エンジン音とクラクションがうるさい。

 

「そしてミーは【ブラック・ウォーズ・ドラゴン】の効果を発動!1ターンに1度、手札1枚を墓地に送ることで、相手の場のアタッカー1体を破壊できマース!」

「はぁ!?」

「まずいよスルメちゃんっ!」

「喰らいなサーイ!ブラック・ウォーズ・キャノン!」

 

 ヘンテコジジイの叫び声に呼応するかのように、漆黒龍の股間の戦車がシズクに狙いを定めた。そして次の瞬間、鋭利な砲弾が魔法少女を貫いて上下に分裂させた。飛び散る鮮血。轟く声にならぬ絶叫。幼馴染を救えなかった冷徹な少女の残骸は、地面に散らばると跡形もなく消滅した。

 

「くっ……!【悪魔的美食!瞬殺スムージー】を装着した【JKガールズ・水麗のシズク】が墓地に送られたことで、オジサンは合計1300ポイントのダメージを受けてもらうよ!さらに私はカードを1枚ドローできる!」

「オー!ザッツ・ワズ・クロース!バーット!ミーのELを削り切るには不十分デース!」

『私って……なんなんだろう……?正義の味方、じゃない?いや……違う、そんなはずない……だって私は、魔法少女で……マスターのヒーローで……』

「あーもう!さっきからブツブツうるさいなぁ!アホムラのせいでピンチじゃんか!」

「ンフフ~、敗北を認められなくてイマジナリーフレンドであるフールガールに八つ当たりするなんて。やはりクソガキッズは底辺キッズに過ぎまセーン!オット!少々お待ちを!クライアントから電話デース!」

 

 ホムラは震えた声で嚙みしめるように呟いている。私の言葉なんて届いていないようだ。

 なんなの、もうっ!私のヒーローなのに勝手に自分を見失わないでよねっ!アホで無様だけどカッコよくて素敵な魔法少女としてちゃんとしたプライドを持っていてほしいよ!まったく!

 今までにない不安感と焦りから気分が落ち着かない。意気地なしのホムラにイライラしていたら、脳内にメンヘラ女の言葉が響き渡る。

 

『ひひひ……これだから雑魚カードはダメなんだ。自分を定義するものが揺らぐなんて、カードの精霊として三流じゃないか。無様で愚かな小娘め』

「いきなり出てこないでよ!それに貴女の方がちっこいでしょっ!」

『それは……その、力が散らばった弊害だよ。うん、そうだよ。そうなんだ。それにここで言う小娘というのは未熟で愚かという意味合いが強くてだね』

「そんなことよりもさ!ホムラはどうなの!?大丈夫なの!?」

『……あんなアホ女のために、そんな心配そうな顔をしないでくれよ。嫉妬のあまり消し炭にしたくなる』

「心配とかじゃないもん!ただ迷惑こうむってるだけだし!そんなんじゃないし!」

『どうだか。……残念ながら問題はないだろう。こいつが持っているバトルパワーとカードソウルはケタ違いだ。今は色々と隙がある状態だけど、所詮は思春期特有のアイデンティティクライシスに過ぎない』

「…………ほんと?ほんとの本当にホムラは大丈夫?」

『嗚呼……なんて不愉快で目障りで狂おしいほどに憎いんだ!こんなにもマスターに愛されているなんて!お前がいなければ!このボクがマスターから溢れるほどの愛と力を得られたはずなのにッ!今ここで嬲り殺しにしてやろうかッ!?』

「急にキレた……こわ……」

 

 何にせよ、ちょっと安心したせいか気分も落ち着いた。別にホムラのことなんて、どうでもいいんだけどね?ただ、ちょっとだけ心配してあげただけだ。だって、能天気でアホアホ魔法少女なホムラが、あんなにも思いつめた表情をしていたんだから。そりゃあマスターとしてちょっぴり不安になるさ。

 一瞬ヒステリーを起こしかけたメンヘラ女も、私が落ち着いたのを見ると、冷静になったようだ。

 

『……おほん!ただ不思議ではあるね。よほど強大な外的プレッシャーがかからない限り、これほどのエネルギーを持ったカードの精霊が不安定になることはないはずだ』

「だれかが、ホムラをおかしくさせている、ってこと?」

『もしくは、そもそもこのアホ女の内面に矛盾があった、とかね。相反する心は、精神に不調をきたし自我を崩壊させる劇物となるだろう』

「むじゅん……あいはんする、こころ……」

『くふふ。カードの在り方というのはマスターであるキミが決めるものさ。下らないことに拘って本質を見失っている、いや真実から目を背けようとしている阿呆を導けるのは、マスターだけだよ』

「わたしが、ほむらを……」

『なぜグロテスクに惨殺されてもヤツらがマスターから離れないのか?無知蒙昧で救いがたいほどに愚かだから?それが自然の摂理だから?それとも、深層心理に何かがあるから?カードの情報だけでなく一度ヤツらと向き合ってみるといい。きっと何かが変わるだろう』

 

 実体化していないはずなのに、どうしてか金髪赤眼の美少女を幻視した。そういえば、このメンヘラと何だかんだで和解できたのも、トーナメント大会の決勝戦のときに丘の上で対話したからだ。もしかしたら、ホムラたちとも話し合わないといけないのかもしれない。

 

「ありがとう。これからやるべきことがわかったかもしれない」

『くふふ。お安い御用さ。そうそう、ボクの残滓の回収を忘れないでくれよ!キミの必ずやマスターの役に立てるから、ね』

「オー、ソーリー!クライアントから緊急のジョブが来たのでとっととバトルを終わらせマース!」

 

 ヘンテコジジイの叫び声で唐突に現実に引き戻された。勝ち誇った表情で両腕を広げている。そのウザったい顔といい、サングラス姿のゴリラの顔がでかでかと刺繍されたスーツといい、腹立たしいな。

 

「さて!マスマチックの時間デース!すべてのアタッカーでクソガキッズに直接攻撃すると~、どーなるでショーカ?」

「……はえ?えっと、そこの戦車がAP1200で……リムジンがAP2800……ってことは、合計4000ダメージ!?」

「イエース!つまりはユーの敗北なのデース!」

「なっ!うわあああ!」

 

 戦車と合体したドラゴンによる砲撃と、気色悪い金ぴかドラゴンのタックルで後方に飛ばされた。いたた、尻もちをついちゃった。腕に着けていたバトルユニットからブザー音が鳴る。これは、敗北を知らせるものだ。

 

「そ……そんな……ヘンテコジジイなんかに負けるなんて……」

「スルメちゃんっ!大丈夫っ!?」

 

 現実を受け入れられず、思わず跪いてしまった。心配したスズが駆け寄ってきて抱きしめてくれる。むにゅっと寄せられるたわわな感触に思わず口角が緩んでしまう。ヘンテコジジイに負けてショックだったけど、なでなでされながら慰めてもらってご満悦だ。不意にスズが呟いた。

 

「あの……スルメちゃん、変なオジサンどこか行っちゃったけど……?」

「……そっか。仕事が忙しそうだったもんね」

「うん、そうだね。でも、その……ランチの支払い、どうしよっか?」

「あ゛……そうだ、忘れてた……」

 

 そういえば、ズイさんのぼったくりカレー店のランチ代をめぐってカードバトルしたんだった。どうしよう、4000円なんて大金持ってない。お金持ちのスズに払ってもらってもいいけど、でもそれって何かヒモみたいだし。うーん、どうしたものか……。

 そんなこと考えていたら、いつの間にかヴリンダが傍に立っていた。冷ややかだけど、どこか小馬鹿にしたような雰囲気も感じる表情だ。私を指差すと、メイド少女は最悪な命令を下した。

 

「お前、無償労働の刑」

「え?」

「ま……ま、まままさかっ!?スルメちゃんが、めっめっめメイドさんとして、ごっごごご奉仕をぉっ!?」

「当たり前。泥棒逃がして店長は怒ってる。お前が責任とる」

「え?えっ?」

「ど、ど、ど、どうしようっ!?いーっぱいお写真撮らなきゃっ!それにっ!え、え、えっちな接待サービスとかももももっ!?」

「そういうのない。皿洗い、接客でこき使うだけ。ただ働き」

「えっ?えっ?えっ?」

「来週からよろしく、新人」

 

 結局、次の休日からなぜか働かされることになった。

 食い逃げヘンテコジジイめ!いつか必ず仕返ししてやるっ!

 





評価や感想、誤字報告などありがとうございます!
とっても励みになっています!沢山の人に読んでいただけてうれしー!
とにかく筆が遅くてすみません……頑張って更新します……。
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