カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが??? 作:53860
だって、私にはワムデュスがいるから。太ももムチムチかわいい。私史上最高のスキンです。
でも使うのは土ウィッチ。ノノ最高!レミラミ最高!カリオストロ最高!
「バカなああああ!オイラのッ……チョ・ドング成り上がり物語のッ……復活の場所があああッ!」
『あれ?マスター。あのオジサンってもしかして……』
「うん。ヘラたちが言ってたヤツだと思う」
私に絡んできた小太りのオッサンが、どうやらチョ・ドングらしい。カンナさんたちが保護したヘラとレンの働いていたコンカフェの店長で、どうやらBSS団と関係があるらしい。言うならばホビーアニメで言うところの敵キャラなわけだが、四つん這いになって泣き叫んでいる姿はあまりにも情けない。
とりあえず情報を聞き出さねば。
「そこのオッサン。BSS団と闇のカードについて知ってること、洗いざらい吐け」
「なぜそのことを知っている!?さては家政宝傾組のスパイだな!?」
「違いますけど?」
「あるいは、ワールド・サタニック・セイバーの狂信者か!?腐った目してるしそうに違いない!」
「ねぇ、いつも思うんだけどさ……私の目ってそんなに変?」
『えっと、私はマスターの目すごく好きだよ?汚水みたいにキラキラ虹色で素敵だなーっていつも思ってる!生気とかは正直あんま感じないけど……』
うん?それは褒めているのか?
まぁ、相棒に好きとか素敵と言われて悪い気はしない。親愛の意を込めてホムラのお尻を優しく撫でてやる。心底嫌そうな顔をされた。解せぬ。
奇声をあげて頭をかきむしった後、チョは充血した目で睨んできた。その手には、バトル・ユニットと漆黒の液体が入ったボトルが握りしめられている。
「こうなったら証拠隠滅のカードバトルだ!オイラが集めたBSSカードとマケーチン粒子の威力におそれおののけ!」
「ん、上等。返り討ちにしてやる」
お互いのバトル・ユニットが起動し、ARビジョンが展開された。
すると、オジサンはいきなりドロドロした黒い液体をかぶって、雄叫びをあげた。先ほどまでの酒焼け声にノイズがかかって聞き取りづらい。
「うおおおおォォオオオ!ホスト狂いと風俗女とヤクザのドロドロした感情ガ!傾奇町で集メたマケーチン粒子ガ!オイラに力をワケテクレルゥゥウウ!」
『気をつけてマスター!さっきまでミジンコ並みだった黒い靄のオーラが急激に増幅してる!』
「むむ……それって戦闘力53万くらい?大丈夫?スカウター壊れない?」
『…………え?なにそれ?』
教養のないアホムラの尻を蹴り上げた。チワワみたいな鳴き声をあげた。
「オイラの先行!ドロー!手札スベテ墓地ニ送りスペル【全弾射出】発動!シネェ!チビメイドォオオ!」
「な!?くそっ……!」
『危ないっ!マスター!』
実体化した5つのミサイルが飛んでくる。慌てたホムラが私を力一杯に抱きしめて庇ってくれた。一応、黒い靄のバリアが守ってくれるからそうする必要はないけど、でも嬉しい。
爆風が舞い、破片が飛び散る。ミサイルが着弾した道路は凹んでいて、ビルの壁はボロボロと崩れた。やはりマケーチン粒子とやらでカードが実体化しているようだ。平和なネオジャパニスタに似つかわしくない爆発に、怯えた野次馬たちはクモの子を散らすように逃げていく。
「シャーッシャシャシャ!コレデチビメイドノELハ半分!ドウダ!コワカロウ!」
「愚かな……その程度のバーンダメージで闇を滅ぼせると思うなよ?ハラワタ引きずり出して畜生のエサにしてくれるわ……!」
『だからマスター!一々、言動と顔つきが邪悪なんだって!』
失礼な。私は無表情系クールキャラなだけで邪悪さのかけらもない。むしろすさんだ現代社会では珍しいくらいの聖人を自負している。
しかし不味いことになった。第二の手札ともいえる墓地を肥やされてしまった。最悪、墓地からアタッカーを大量展開されるだろう。
BSSカテゴリでカードバトルしたことがあるヘラによれば、墓地から特別召喚できるアタッカーが多いらしい。それこそ【BSS爆撃ピエロ】は1ターンに1度、手札の武装カードを墓地に送ることで、墓地から特別召喚できる効果だ。
何をしてくるのか。緊張のあまり、ごくりと喉を鳴らす。でも、オジサンの次の手は拍子抜けしてしまうものだった。
「オイラはターンエンド!ドウダ!コレデELヲ半分減ラシタゼ!」
『……何もしてこないね、あのチビオジサン』
「セルフ坊主めくりとかマジか……」
しかもバトル・ユニットで捨てられたカードを確認したら、伏せたり召喚した方がよさそうなカードばかりだった。どうやら、このせっかちなオジサンは大したプレイングスキルを持っていないようだ。
「ふん。とんだ雑魚だね。ママのおむつでもしゃぶってろ」
『……私がおかしいのかな?ママのおっぱいじゃなくておむつをしゃぶるのが普通なの……?』
「私のターン。山札からカードをドローしてメインシーンに移行」
うわ……私の手札しょぼすぎ?
トップグレードアタッカーと微妙なカウンタースペルばかりじゃないか。しょうがないから唯一、通常召喚できるアタッカーを出そう。
「私は手札からアタッカー【JKガールズ・雷撃のヒカリ】を召喚」
私の場に、若干アホっぽいけど元気溌剌な金髪っ娘がひらりと登場し、決めポーズをした。
すると、きょとんとした顔をして、キョロキョロと周りを見渡している。どうやら幼馴染のマナを探しているようだ。普段と違う状況に少なからず困惑しているのだろう。
イカレ根暗女ことマナを守るためにいつも戦場に駆けつけているヒカリには、マナが場にいると特別召喚できる効果がある。バックストーリーによれば、二人はほのかな百合関係にあるとか。そんな都合のいい効果を利用して、私はいつもマナとヒカリを場にそろえて、グロカードで惨殺してきた。
『……あれ?私を通常召喚するなんて珍しいね!』
「たまたまお前しか手札にいなかったから。ほら、さっさと武装カード【ハラワタチェーンソー】を装着して攻撃しろ。それとも、ハンバーグにされたい?」
『ははは……それは勘弁してほしいかな?うん、了解だよマスター!ここは私に任せて!』
気合を入れるように拳で手のひらを叩くと、きらりと白い歯を見せて臓物まみれの電動ノコギリを掲げた。グロイ武器も明るくて元気なヒカリが持つと、正義の武器に見えてくるな。
「私は【JKガールズ・雷撃のヒカリ】で直接攻撃。いけ、原材料アタック!」
『そんな技名じゃないよ!?くらえ!ジャスティス・サンダー!』
勢いよくチェーンソーの刃を回転させると、大きく振りかぶってチョを叩き切った。これで1400ポイントのダメージだ。すると、機械に宿った怨念がチョに纏わりついて苦しめている。
ほう、グロテスクでキモイ装備をここまで使いこなすとは。しかもトーナメント大会で自分の内臓をぶちまけたチェーンソーを持つのに一切の抵抗がない。不平不満だらけのアホムラと違って案外、使い勝手の良い優秀な駒だ。
それに素直で明るい元気っ子というのは、魔法少女としては王道のタイプだろう。人懐っこい子犬みたいだし。なんだか好きになってきた。
「よく見たらヒカリもなかなか正統派の魔法少女って感じだね。いいじゃん」
『んなっ!?ま、マスター!?私はッ!?私はどうかなッ!?』
「うーん。ホムラも可愛くてカッコいいところあるけど、アホで煽りカスな畜生だしなぁ」
『それはドブカスなマスターを相手にしているからそう見えるだけだよっ!全部マスターのせいっ!』
「は?」
『本来の私は皆に愛される強くてプリチーな正義の味方なんだからっ!それにヒカリちゃんだってロクでもないところ山ほどあるしっ!』
『あはは……いやー否定できないなぁ』
「ふーん。何?捨て猫を虐待するのが趣味とか、嫌いなヤツにミミズ食わせて虐めてるとか?」
『そんなことしないよっ!?てかマスターの発想が怖いんだけどっ!?』
そうなのか?前世でそういうヤツいたけどな。私もよくセミとか食わされたし。
数少ない前世の思い出を懐かしんでいたら、顔を真っ赤にしたホムラが吠えた。
『普段はだらしなくて怠惰だから、ちゃんとお世話しないといけないってマナちゃんが言ってたもん!言うならば堕落しきった豚!ぐうたら女なんて全然カッコよくないでしょっ!?』
「へー、可愛いじゃん。そういう弱点なら十分チャームポイントになるでしょ」
『なっ!なっ!んなぁっ!?』
「それにしても、そんな怠け者がなんで魔法少女になったの?」
『大切な幼馴染を守るため!マナが魔法少女になったから私も隣に立ちたかったんだ!』
『ほら!周りに流されるがままなんてとんでもない!正義の味方としての覚悟もなければ矜持もないじゃん!そんな正義に相応しくないヒカリちゃんよりも、最強で可愛いくて誇り高き信念のある私の方がずーっと正統派ヒーローっぽいでしょっ!』
「正統派ヒーローは他人を貶めないと思うけど?」
『むきーッ!!』
というか、友人と並び立つために魔法少女になるって結構王道な展開じゃないか。それを覚悟や信念がないなんて、いくらなんでも言いがかりが過ぎるし、なんなら単なる誹謗中傷だ。
なんだろう。今日はやけに張り合ってくるんだけど、一体どうしたんだろう。
チンパンジーみたいに騒ぐアホムラを無視して、ヒカリに語りかける。
「さて、正統派ヒーローさん。ちゃんと活躍してよね?」
『うん!マスターのために頑張るよ!』
「よろしい。なら今回は殺さないであげる。感謝しろよ?」
『ありがとうマスター!その期待に必ず応えるから!』
おぉ……なんて従順なんだ。素晴らしい。
ジーンと感動していたら、足元に大量の黒い靄がやってきた。相変わらず芋虫みたいだ。両腕を広げて待機すると、足をつたって胸元にまであがって私と一体化した。
「うわあああッ!なんだよッ!なんなんだよお前ッ!?どうしてマケーチン粒子を……闇の力を自由自在に操れるんだよッ!?」
チョが狂ったように叫ぶ。気のせいでなければ、カードバトル開始時に自ら被っていた黒い靄がすべて失われたように見える。甲高い酒焼け声にかかっていたノイズもなくなっている。
「さぁね。ほら、私はターンエンドだよ。次にドローするカードで挽回してごらんよ」
「クソッ!クソッ!クソッ!オイラのターン!ドロォオオオオッ!」
やけくそになったチョは引いたカードを見るや否や不敵な笑みを浮かべた。
「よぉし!オイラは【BSSライオット・シールド】を召喚するぜ!自分の場にコイツ以外のカードがない場合、戦闘では破壊されないぜ!」
「運の良い虫けらめ……。なぶり殺しにしてやるからな。余命をせいぜい楽しむがいい……」
『悪役!マスター悪役っぽいよ!』
ヒカリにまでヴィラン扱いされた。不愉快だ。こんな美少女が悪役なわけないだろ。
機動隊の格好をした悪魔は、巨大な盾でオジサンを守っている。AP1200の壁アタッカーか。打開できるカードは手札にあるけど、生贄が足りないなぁ。
「これでオイラはターンエンドだ!なはは!これで安泰だぁ!」
「ふん。私のターン。山札からカードをドローしてメインシーンに移行。あ……。このカードは……」
引いたのはトーナメント大会の報酬として、カンナさんから貰ったアタッカーだ。気のせいか強大な黒い靄をまとっている。しかも今の状況でこそ輝く効果を持っていた。
「ごめん。前言撤回」
『え?』
「お前を殺す」
『……へ?マスター?それってどういう……』
「私は手札のカード2枚を山札の一番下に戻すことで、トップグレードアタッカー【三枚おろしのパペットマスター】を特別召喚!呪いの切り裂き人形よ!魔法少女を贄に闇の儀式の礎を築け!」
『え?え?え?』
バトル・ユニットにカードを出すと、ARビジョンに無機質な機械人形が降り立った。人間の顔の皮を頭部に貼り付けたそれは、ケラケラと大きな笑い声をあげている。そして右腕についた大型ナイフには血・肉・皮の残骸が残っていた。
こんなナリでAP1800だが、その真価は他カードのコストを用意する効果にある。
「【三枚おろしのパペットマスター】の効果発動。自分の場に存在するこのカード以外のアタッカー1体を墓地に送ることで、場にゾンビ族のトークン【死体パペット】2体を特別召喚する」
『あー……やっぱりこうなるのかー。ははは』
「うん。それが最適なプレイングだから。せいぜい良い感じに死んでね」
『りょー……かい、です。うん!またね!マスター!』
ヒカリはひきつった笑顔でサムズアップした。日の光でキラキラ輝く金髪を、機械人形に掴まれる。さぁ、処刑の始まりだ。
刹那、苦痛と絶望の交響曲が場に轟いた。楽器となるのは力なき魔法少女の悲鳴だ。頭から顔へ、そして顔から足へ。機械人形はナイフを器用に動かしながら、ヒカリの肉と皮を切り分ける。上機嫌に身体を揺らしながらナイフを下ろしていく姿は、まるでバイオリニスト。その美しい音色に思わずうっとりとしてしまう。
ーー本当は、正義とか魔法少女なんてどうでもいい。
ヒカリの言葉にならない絶叫が響き渡る中、少女の声がした。
「ん?なにホムラ?何か言った?」
『つーん!浮気者のマスターなんか知らないよーだ!つーん!』
「はぁ?」
『どうせシズクとかヒカリの方が好きなんでしょ!つーん!』
「そうやって、へそ曲げる面倒くさい女より、素直な娘の方が好かれるのは当たり前でしょ」
『つーん!つーん!つぅぅぅううん!』
「うるさ……」
最高の演奏を邪魔してきたのかと思いホムラに話しかけたら、そっぽを向かれた。やれやれ面倒くさい相棒だ。デカい声でツンツンしてるアピールするなんて、カードのくせに生意気だぞ。そうやって反抗的な態度をとるなら、そろそろゾンビ族アタッカーの生贄にしないといけないな。
とりあえず尻を蹴り上げたらビンタされた。なんだこいつ。
ーーでも、マナから離れたくないから、仕方なくやってるんだ。だって、なんでもお世話してくれるんだもん。すっごく楽で良かったのに、なんで正義の味方として面倒な使命を背負わなきゃいけないのかなぁ。
どうやらヒカリの心の声のようだ。
だけど、カードに書かれているバックストーリーとは食い違う。しかも、どこか気だるそうな印象を受ける。さっきまでのやる気に満ちた正統派ヒーローではなく、厭世的でやさぐれた感じだ。
ーーあー、はたらきたくないなー。このままきえてしまうのもわるくないなー。
なんか疲れ切った社畜みたいなこと言ってる。魔法少女は危険と隣り合わせだからイヤになるのも仕方ないけどさ。今も三枚おろしにされてるしね。
ーーなにもしたくない。たべて、ねる。それだけをしていたい。しんだら、てんごくでごろごろしていたいなー。
元気溌剌な正統派魔法少女は、幼馴染に寄生するヒモ女だった。
大好きな幼馴染、その言葉に偽りはない。ただ、ヒカリにとってマナは愛する人であると同時に、生命活動を維持するための宿主でもあった。なにせヒモ女は、怠惰で無気力なパラサイト・ガールなのだから。なんて空虚な偶像だ。
カードのバックストーリーは建前に過ぎない。こいつらは自分でも気づかないうちに本性を、美しい物語でごまかしているんだ。もし、そんな本心を白日の下に晒せたら、きっと何かが変わるに違いない。
それこそ邪悪なエネルギーを注ぎ込む隙が生まれるとか。覆い隠されたカードの本心を暴く。黒い靄をまとった強力なグロカードに、まさかそんな副次効果があったなんて。
気づけば、皮と肉にヒカリが分解されている。機械人形は嬉しそうに皮を引っ張ると、魔法か何かでそれを自立させた。汚いアクリルスタンドだなぁ。
肉と骨の姿のヒカリを目の当たりにしたオジサンは盛大に嘔吐した。
「う……っぷ!おぇええええ!」
「わー。きたなーい。おじさんえんがちょー」
「はぁ……はぁ……。なんで!?なんでお前は正気でいられるんだよ!?」
「まだ私のターンは終わりじゃないからね。まず【JKガールズ・雷撃のヒカリ】が墓地に送られたことで、オジサンに500ポイントのダメージを与える。あと場の肉盾も破壊ね」
「うわああ!オイラの鉄壁の布陣が!」
雷撃に貫かれた盾持ちの悪魔は爆発四散。これでチョの場はガラ空きだし、ELは2100ポイントだ。
もちろん、AP1800の【三枚おろしのパペットマスター】と、戦闘破壊されないけどAPゼロなトークン【死体パペット】では、相手のELを削り切れない。
だから、久しぶりにこのアタッカーが輝けるというわけだ。
「私の場に3体のアタッカーが存在するとき、手札からトップグレードアタッカー【冥府の暴走機関車ポイズンスカル】を特別召喚できる」
「な、な、なにぃいいい!?1ターンにトップグレードアタッカーを2体も特別召喚だとおお!?」
「汽笛一声生き地獄。呪怨の汽車が死を散らす。あらわれよ!【冥府の暴走機関車ポイズンスカル】!」
先頭に大きな髑髏をこしらえ、悪霊と瘴気をまとった蒸気機関車が、威勢よく汽笛を鳴らしながら場を駆け抜ける。暴走列車が通過した後に残ったのは、闇と死だけだ。
ちなみに、【冥府の暴走機関車ポイズンスカル】は特別召喚に成功したとき、このカードを除くお互いの場のアタッカーをすべて墓地に送る効果を発動してしまう。そのせいで拍手喝采で大喜びだった【三枚おろしのパペットマスター】と物言わぬ死体と化したトークン2体が場から消えた。
このときトークン【死体パペット】の効果で私は合計1000ポイントのダメージを受けてしまったが、なぁに気にすることはない。勝敗は決したのだから。
「AP2400のトップグレードアタッカーが……特別召喚……ってことはつまり!?」
「お、オジサンわかっちゃった?そうだよ。オジサンの負け。ばいばーい」
「うわああああああ!いやだあああああ!」
いつの間にか黒い靄を沢山まとっていた暴走列車は、チョに突撃した。高く吹き飛ばされた小太りなオジサンは、グエッとカエルがひき潰されたような声をあげると気絶した。
世界の敵との初対決は、歯ごたえのないカードバトルだった。
・・・・・・・・・
「ありがとうな、スルメ。まさかお前がビリヤニテポドスのヤツを捕まえてくれるなんて思わなかったぜ」
「結構、余裕だったよ。ギャングも大したことないね」
「ははは。まぁ、これからはちゃんとアタシらを呼べよ?今回はたまたまアイツが弱かったからトラブルを回避できたに過ぎないからな」
「はいはい」
結局、カンナさんたち自警団に身柄を引き渡した。怖い顔をしたお兄さんたちがオジサンを詰めているが、BSS団の情報は大して持ってなかったみたいだ。薄いつながりのビジネスパートナーって感じらしい。ギャングといえども中枢メンバーでないとBSS団の内情は知らないのだろう。
それにしても、ホビーアニメ世界の敵は、随分と裏社会と深く関わっているようだ。これまでは海外ギャングやヤクザの間で、ある程度のすみ分けがされていた。ちょっとした喧嘩とカードバトルはあるけども、全面対決となるような闘いはしないというのが暗黙の了解だった。
ここ数年で勢力を伸ばしてきたBSS団は、その絶妙なパワーバランスを意図的に崩した。ピロシキサーカスやビリヤニテポドスなどに武器として闇のカードを供給し、傾奇町で大がかりな抗争を引き起こしている。そこで生まれた悲劇や苦痛が源となって、新たな闇のカードを生成しているようだ。結果、ギャング同士の血で血を洗う闘いが今も続いている。
「最近は闇のカードに手を出したヤクザたちが、真正宝傾組として勝手に独立しやがった。そのせいで昔気質な家政宝傾組のヤツらまで闇のカードを集め始めてるし……もう傾奇町は滅茶苦茶だ」
「闇のカードを使うと命の危険が伴うもんね。カンナさんは大丈夫なの?」
「おう!アタシはつえーからな!むしろ心配なのは、ショウタとホクトだ。アイツらはビリヤニテポドスのメンバーを片っ端から襲撃しているから、きっと目を付けられているはずだ」
『……あのクソガキそんなことしてんの?』
「まぁ、暴走列車みたいなヤツらだけど心配はいらないよ。きっとインリンも一緒だろうし」
まさか反社に主人公が殺されてアニメがエンディングを迎えるなんてことはないだろう。ショウタの名前を聞いたとき、尋問中のチョも小鹿のように震え上がっていた。相当、ギャングたちを一方的にボコボコにしているのだろう。なんだかんだでアイツって強いし、大丈夫なはずだ。
「スルメ、お前変わったな」
「いきなり何?っていうか、生暖かい目で見ないでよ。バカにしてるの?」
「おっと、一応褒めてるんだぜ?何せお前から他人への興味ってのを感じられるようになったからな」
ワシワシと頭を撫でられる。相変わらず乱暴で下手糞だ。でも、悪くない。
「意味わかんない」
「おー、そうだな。何にせよ、今回はありがとよ」
ニカっとカッコよく笑うカンナさんだったが、不意に影のある表情を浮かべた。
「なぁ、スルメ。お前にズイのことを頼んでもいいか?」
「あの図太そうな守銭奴メイドを?だいぶこき使われてるんだけど?」
「アイツは人一倍頑張り屋で傷つきやすいからな。本当はアタシが守ってやらないといけないんだが、襲撃や抗争が激化しているせいで、自警団活動にかかりっきりでな……」
「ふーん、そっか。まぁ、バイト中ならいいよ。仕方ないなぁ」
「ああ、恩に着るぜ。お前が好きそうなカード仕入れとくから、頼んだぜ」
「あ!ここにいたんだ……スルメちゃん。早く帰ろうよ、ね?」
振り返ると笑顔のスズが、ずるずると大きなカバンを引きずっていた。私くらいの小柄な人間ならすっぽりと入ってしまいそうなサイズだ。そしてポケットからは包丁が見え隠れしていた。
未だかつてない強烈な悪寒がする。それはスズの顔のせいだろう。夕日の逆光になっているせいで見えづらいが、目は笑っていない。そして恐ろしいオーラを感じる。現に、先ほどまで私の傍で浮遊していたホムラは、恐怖のあまりデッキの中に逃げてしまった。
この状況には既視感がある。幼馴染の1人だったカルティが私にキスをしたときだ。その後、スズにお仕置きされたヤツは借りてきた猫のように大人しく、私が近づいたら泡を吹く体質になってしまった。恐怖が薄れるまで、アイツはしばらくロクな日常生活を送れていなかった記憶がある。
何が言いたいかと言うと、この表情をしているスズはマジギレしていて、この世の何よりも怖いということだ。
あれ?もしかして私、ここで死ぬのか?
AIに負けないよう、これからも超ニッチなフェチ全開小説を、全力で書いていきたいと思います!
話のテンポは遅いし、更新頻度もカスですが、どうかお付き合いいただけますと幸いです。
ちなみに、前回の話に少し文章を追加しています。カスちゃんの考えるカードゲーマー像です。わ、私の意見ではないので!石をなげないでくださいっ!