カードゲーム世界でサイコロリ扱いされてるのだが??? 作:53860
ところで、ネットフリックスの「ガス人間」、見ましたか?
「ああいうグロ表現があるのか」と学びました。
まだまだ発想が未熟ですね、反省……。
というわけで、今回もどうかよろしくお願いします。
「で、家政宝傾組から追い出されたってか?」
「うん。失礼なヤツだよね?久しぶりの幼馴染との再会だってのに」
「組が存続の危機なのに、死んだ目のガキと長々話してらんねぇだろ」
「なにおう」
カードショップ「不夜城RED」でカンナさん相手に愚痴る。まったくヤクジュは幼馴染への対応がなってないんだから。所詮はセミ女、情緒というものがないんだから。
それはともかく気になることがある。
「てか、存続の危機って何?」
「……忘れろ。ガキには関係のない話だ」
「教えてよ。乗り掛かった舟なんだし。海外ギャングとの抗争?」
「うるせぇ。これ以上、カタギが裏社会に関わるな」
カンナさんはカウンターに肘をついて煙草を吸っている。珍しく貧乏ゆすりをしていた。
「ヤクジュは頑張ってるアピールがすごかったんだ。地域に愛されるのが、次世代のヤクザだってさ」
「てめぇのケツもふけねぇで何がヤクザだ。嫌われるのを恐れて、他人にツケを払わせて、愛されるわけねぇよ」
スマホを目の前に置かれた。画面には、ボロボロになった居酒屋がいくつも写っていた。どれもが昔ながらの個人店のように見える。それに、店の近くで座り込んだ人たちの表情は恐怖で引きつっていた。
大きく舌打ちしたカンナさんは、鼻をすすった。目尻に涙があると言ったら、殴られそうだから黙っておこう。
「最近の抗争で、たくさんの店が潰された。あのガキが裏切り者を放置して敵を叩き潰さねぇから、被害が大きくなっている。自分のシマを暴力で守れないヤツらなんか、いらねぇんだわ」
「……悪いのは海外ギャングでしょ」
「ヘマかましたのは、あの跡取りのガキだ。どれだけの人間が泣いたか、女が苦しんだのか、しっかりと見せてやりてぇよ」
「現実って冷たいんだね……」
「今の傾奇町に必要なのは、優しさじゃねぇ。愛の力が必要なんだ」
手を強く握りしめている。それに、いつものスケベな顔じゃない。
何か違うのかな?よくわからないや。
カウンター上のラジオからニュースが流れてくる。闇のカード流通への注意喚起、ネ連との首脳会談の予定、そして、海外ギャングとヤクザの摘発が相次いでいる話。いつの間にか、傾奇町のならず者が減っているようだ。
「海外ギャング、減ってるんでしょ?なんでヤクジュの組が危ないの?」
「……真正宝傾組が独立したせいで、家政宝傾組は構成員が大量流出した。もう虫の息だ」
カンナさんは窓の方を見た。夕焼けに傾奇町が照らされている。
スマホの画面には、色んな人からメッセージが届いていた。抗争を恐れて怯える声、被害を訴える切実な声、支援してくれたことへの感謝の言葉。傾奇町の人たちの声が詰まっていた。
「家政宝傾組は時代に消される運命なのかもしれねぇ。警察組織も相手にしなくなっている」
「いいじゃん。警察のお世話にならないなんて、クリーンってことでしょ?」
「違うな。ヤクザとして価値がねぇってことだ。残り1カ月で勢力を戻せなければ、ハンシャインシティの運営権まで失っちまう。デカいシノギがなくなったら、いよいよ終わりだ」
ラジオからジャズが流れている。カンナさんの吐いた煙が、鼻の近くを漂う。
そんなの納得できない。あのセミ女をボコボコにするのは私だ。時代だか運命のせいで消されるなんて許せない。私が復讐を果たすまで、元気いっぱいでいてもらわないと困る。
すると、アホムラが後ろから煽るように話しかけてきた。
『マスターってば、もしかしてヤクジュちゃんのことが心配なの~?』
「そんなことない」
『まぁたまた~!お姉ちゃんに話してごらんよ~?』
「黙れアホ!」
『うぎゃっ!』
生意気なアホの尻を引っ叩く。最愛の相棒だからって調子に乗り過ぎだ。
私が上で、お前が下。そろそろ、しっかりと教育しないといけない。
突如、カードショップ内の棚が震える。どうやら私の身体から溢れ出てきた闇のエネルギーが原因のようだ。空中に集まった黒い靄は、人型の影になった。
『ひどいなぁマスター……。こんな使えないアホに構ってないで、ボクを頼ってほしいんだけどなぁ』
『うげぇっ!何こいつ!?まさかあの蟲!?』
「アホは黙ってろ。メンヘラ芸しかできないお前が何を知ってるっていうの?」
『クソ女神が作り上げた理想郷にはさ、ヤクザのガキが居座れる場所なんてないんだよ』
ヤクジュが居座れる場所はない?いったいどういうことだろう。
杖を掲げて殴ろうとするホムラを、メンヘラ女はひらりとかわしている。メンヘラ女はケタケタと笑い声をあげていた。
こういうところは、邪悪なボスっぽくて何か好きなんだけどなぁ。普段の情けない姿のせいで魅力半減だ。
『死ね!邪悪なカス女!』
『お前ごときに殺されないよ~だ!ばーか!ばーか!』
「ちょっと!ヤクジュはどうなるの!?」
『きひひ。ボクが教えちゃあ面白くないじゃないか。せいぜい自分で探すんだな』
意味深なことを言ってメンヘラ女は消えた。
きっとアホムラが怖くなって逃げたんだろう。そうに違いない。今度会ったらバチクソに煽ってやる。
大きな音がした。カンナさんが勢いよく立ち上がって、椅子が派手に倒れたせいだ。
「おい!今の黒い靄はなんだ!?レジィやズイをおかしくしたヤツじゃねぇか!?」
「あの2人はもとからおかしかったでしょ」
「……ッ!そりゃあ、そうだけどよ……」
「そこ、認めちゃうんだ」
「だが!お前が闇に浸食されているのは事実だ!」
灰皿に煙草を力いっぱい押し付ける。
カンナさんはバトルユニットを起動した。
「外に出ろ!カードバトルでお前を正気に戻す!」
「前に負けたくせによく言えるね」
「だとしても!ガキの間違いを正すのが、大人の責任だ!」
「じゃあ、私が勝ったら裏社会の情報、全部吐いてもらうから」
私はホムラの方を見る。明るい笑顔を浮かべたアホ精霊は、任せろと言わんばかりにない胸を張っていた。
・・・・・・・・・
カードショップの近くにある公園で、カンナさんと対峙する。
「行くぜ、アタシのターン!手札から【KY(極東ヤンキース)・出前走行のヤス】を召喚!そして、ヤスの効果で手札に加えたスペル【ヤンキー合流】を発動し、【KY・女度胸のアイナ】を特別召喚するぜ!」
蕎麦屋が使う出前用の原付バイクに乗った少年に続いて、ピンク色の特攻服を身に纏ったバイク乗りの少女があらわれた。
「アイナの効果だ!召喚時にデッキから【KY】アタッカー1体を手札に加える!そして、カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
KYアタッカーは場に同じカテゴリのアタッカーが並ぶほどパワーアップする。アイナはパワーアップ効果でAP900ポイント。強くはないが、ホムラ以外のJKガールズでは倒せない水準だ。なんて厄介な。
カンナさんは、デッキからエースアタッカーの【KY・覇道走行のビル】を手札に加えている。きっと次のターンに展開するはずだ。となると、猛攻撃を受ける準備をしなければいけない。
「おい、クソバカアホ女」
『は!?もしかして私のことじゃないよねぇ!?』
「お前以外にいないでしょ。なぁんで大事な初手で来ないの?役立たずだから?」
『だぁーってマスターにとって最愛かつ最強の相棒でしょおー?1ターン目から出てきたらカッコよくないじゃーん!』
「マスターの、私が、さっさと出ろって、言ってるんだけど?」
『カードにだって、出るタイミングを選ぶ権利があるもーん!ここぞ!っていう見せ場じゃないと出られませーん!だって、私は、マスターの相棒だからね!』
ほう。そこまで言いやがるか。いずれ痛い目に遭わせないといけないだろう。まぁ、たしかに山場で活躍してくれた方がカッコいいけどさ。
とはいえ、山札からカードをドローしても、武装カードばかりで大したアタッカーがいない。仕方がないので別の雑魚を出して、無理やり強化するか。
「私は手札から【JKガールズ・雷撃のヒカリ】を召喚!そして武装カード【ガールズ・ファイトロッド】と【ハラワタチェーンソー】装着!これでAPは2300ポイントだよ」
ウィンクして登場した白のワンピースドレスをまとった金髪ショートヘア少女は、突如あらわれた魔法のロッドとチェーンソーを手にして、苦笑いを浮かべた。
『えっと……今日は私だけ、かな?』
「そ。だからキリキリ働け」
『うぅー!マスターはそうやって別の女に浮気するー!金髪なら誰でもいいんでしょ!?』
んなわけあるか。たまたま出せるアタッカーがヒカリしかいなかっただけだ。
アホムラめ、何かドンドン面倒くさくなってないか?メンヘラは2人もいらないんだけどな。
「ファイトシーンに移行。【JKガールズ・雷撃のヒカリ】で【KY・女度胸のアイナ】を攻撃!寄生虫サンダー!」
『違うよ!?ジャスティスサンダーだってば!』
うるさい。お前はマナのヒモなんだから、この程度の技名で十分だ。
それに、サンダーとか叫んだくせにお前だって物理攻撃しようとしてるじゃないか。
飛翔したヒカリは、暴走族の紅一点にチェーンソーを叩きつけると、真っ二つにした。
肉がミンチになる音、飛び散る血飛沫と中々なグロ描写だが、ちょっと新鮮味がない。早く新しいグロカードを手に入れなきゃいけないね。
「アイナ!くっ……よくやった。怖かったよな。あとはアタシに任せろ」
『きゃはは!素のAPが500ポイントしかない雑魚にあんな言葉を投げるなんて!ヤンキーのくせにやっさしぃ~!雑魚に人権なんかないのにね!きゃはは!』
『……え、ホムラさん?私って人権ないんですか?きっと冗談ですよね?』
『冗談なわけないじゃん。マスターを誑かす雌豚。雑魚はとっとと死ね』
「お前ら……ふざけやがって!覚悟しろ!アタシはカウンタースペル【ヤンキーならず者の絆】を発動し、デッキから【KY・後輪走行のウィル】を特別召喚するぜ!」
カンナさんの場に、ウィリー走行するリーゼントのヤンキー男が登場した。
むむむ。これでELは2100ポイントにまで削れたけど、次のターンにトップグレードアタッカーを出されてしまう。ここはカウンタースペルで対処すべきかな。
「くそっ!スルメだけじゃなく、アイツのカードまで性悪ドブカス畜生女になりやがった!これが闇のエネルギーの力だとでもいうのか!?」
「は?なんつった?この虫けらどもと私を一緒にするな」
「APが低いってだけで捨て駒扱いしてんのは同じだろ!?見てろよ!アイナがつないでくれた絆の力で、次のターンはアタシのエースが大暴れする!今のお前の攻撃、却ってアタシを有利にしただけだぜ?」
「……ふん。それは見ものだね。私はカードを2枚伏せてターンエンド」
別にいいし。ELは私の方が上だし。カンナさんのエースなんて大したことないし。
まぁ、なんにせよ。あのセミ女を我が手で捻りつぶす。そして邪魔する人間は、全員ボコボコにする。それだけだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回初登場のアイナは、漫画「チキン」の美咲さんをイメージしています。
みなさんの推しヤンキー娘ちゃん、いたらぜひ教えてください。
次回はカンナさんの爆走コンボが炸裂!……するはずです。
引き続き、どうかお付き合いください。