人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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何気にレナラとゴッドウィン()を書く事に縁がある作者、言っとくが今回はアステールは来ねえぞ。


・破片の君主─満月の女王

()()()()()()

 

 それが黄金の彼にとっての共通認識である。

 

 魔術とは武器を扱えない筋力の弱い女子供の様な人種が扱う護身術──とても武力に数え上げて良いものじゃない、それが、彼が狭間の地の魔術師という人種に対しての感想であった。

だが、今回の相手は今まで対面した魔術師とは一線を画す…等と生優しい表現ではなく文字通りに次元が違う相手であった。

 

 満月の女王レナラ、彼女は類い稀なる才を持った魔術師である、輝石魔術を筆頭に様々な魔術を扱い、さらにその魔力総量と出力も桁違い、全ての魔術師が彼女に戦う前に敗北を認めたのだ。

 唯一異なると言えば彼女の妹たる双月だが…其方は姉より魔術には優れてはいなかったがそれ以上に剣の才があった、そして彼女は自身が会得した魔術と剣技を掛け合わせた魔術剣技を完成させたのだが、それはまた後述。

 要するに…だ、純粋な魔術の腕でレナラに勝てる魔術師は存在しない。

 

──青い光線に、デカい弾…追尾性の高い小さい弾に結晶弾、色々手数が豊富だが近づかれたくねえのが丸わかりだ、露骨なまでの超遠距離タイプ、近づけば終わりだと思ったが……

 

「まさか接近戦も齧ってたとは、驚きだ」

 

──ここに来る迄に散々聞かされた、曰く、女王レナラは黄金樹の勢力を一度跳ね除けたのだと、そして後の二度目の侵攻を持ってしても完全には落としきれず和睦という道を選んだ。

 つまり‼︎この女は魔術だけじゃなく武力の方もイケるって事だ、文武両道という言葉を体現したかの様な女だな。

 それが証拠にあの杖を持ち手に据え剣の魔術を杖先から出す事で即興の槍にしてみせた、無策に近づくのは無いな、とはいえ距離を置き過ぎると無限に引き撃ちされてジリ貧だ、無論負ける事はないにせよかなり面倒な事になる…

 

()()()

 

──一撃ぶち込めばあの女は殺れる…だが向こうもそれを理解してるだろう、この女はあくまで()()()()()()()()()であって()()()()()()()()()では無い、肉体の強度は知れてる…が、いかんせん距離を詰め様にも此処は平地で遮蔽が無い、常に俺の場所は向こうに割れてる、まぁそれはこっちも同じだが。

 

 思考を巡らす*1褪せ人を横目にレナラは絶えずに魔術を行使する、瞬間褪せ人の上部に魔力反応が出現し一拍も置く間もなく魔力弾が雨の様に降り注ぐ。

 

──魔力弾を雨の様に降らせる魔術も追加…と、コイツ…どれだけ手札があるんだ?しかもさっきからバカスカ撃ってる割には一向にガス欠が見えねえ、流石に魔力が無限って事はねえだろうが…消費を抑える何かしらのカラクリがあるんだろうな。

 

 避け続けながら思考を巡らせるが、思考を巡らせているのはなにも褪せ人だけではない、レナラも魔術を放ちながら相手と自身の戦力を推測っており、今その大まかな計算が終わった様だ。

 

──このまま悪戯に撃ち付けても決定打はない、ならば……

 

「何か仕掛けてくるか、さてどう来る?」

 

 レナラが地面に杖を当てると二人の小巨人(トロル)が召喚される、本来この様な召喚魔術は高度な代物なのだがレナラ程の魔術師ならば当然の様に習得している。

 

──デカブツ二体を壁に自分は射撃に専念か、徹底してやがるな。

 

 剣を携えた小巨人が二人同時に迫り来る、だがこの男にとって小巨人の膂力等既に経験済みであり、その感想は黄金樹の化身の方がまだ力が強いという、まぁなんとも言えない物ではあった。

 巨剣が身を切り裂くより先に拳が小巨人の肉体を抉る──だけに止まらず、彼はその肉体を持ち上げあろうことかレナラに向けて投げつけた、当然これ程の質量の物体を受けて無事では済まない、レナラは当然の様に回避を選択したのだが──。

 

 僅かに出来た弾幕の綻び、極めて一瞬とは言えレナラの視界は黄金を捉えていない。

 その一瞬を、黄金は詰めてきた。

 

──殺った。

 

 そう認識し振られた拳は覆しようもなくレナラの肉体を貫いた、しかしその違和感を即座に感じ取ったのは他でもない黄金だ、

 

──なんだ…この手応えの無さは‼︎まるで霞を掴まされた様な…

 

 そしてその極僅かな思考の隙を、満月の女王は見逃さない

 

 瞬間黄金の褪せ人の背中に襲いかかった衝撃、極めて物理的な物に近く、その正体は他でもない女王レナラが放った結晶の散弾である。

 零距離から放たれた散弾の衝撃は凄まじい物があり、更には放たれた弾丸が結晶という事もありその肉体に数多の結晶が食い込み、黄金の褪せ人の肉体から僅かとはいえ赤い血が飛び散る。

 

「…幻影による分身…って所か、つまり俺がさっきまで見てたのは幻影のアンタでそのアンタは姿隠しの魔術で機を伺ってたって事だな」

 

「如何にも、まさかこの段取りで仕留めきれないとは思いませんでしたが…」

 

「いやアンタは誇っていい、俺が出血する程のダメージなんざ初めてだからな…これは魔術に対しての認識を大いに改めなくてはなるまいよ、魔術恐るべし…とな」

 

「故に、もう今みたいなヘマは無い、学習しちまったからな」

 

「そうでしょうとも、貴方は特に近接戦闘に優れているようだ、二度も同じ手段を喰らう等とは私としても思ってはいない、では質問致しましょう、貴方に先程見せた幻影による分身…この手札を貴方に晒した今私はどう動くと思いますか?」

 

「……ありきたりだが自分を呼び出して前衛と後衛を分ける、俺ならそうする」

 

「頭の回転も悪くありませんね…そして安心しましたよ、()()()()()()()()

 

 杖で湖面を叩き詠唱を挟むと魔法陣が展開されレナラの幻影が二人召喚される。

 

「…1対3か」

 

「申し訳ありませんね、戦の作法には疎い物で…ですが卑怯とは言わないでしょう?」

 

「言わんよ、殺し合いってのは文字通り互いの生き残りを賭けた物だ、勝った奴が最後に笑うのさ、それに…卑怯だのなんだのってのはそれに対応できない弱い奴の言い訳にしかならんだろう」

 

──とは大見得切ったのは良いもののどうしたものか…仮にあの分身達が本体と同じ性能をしてたらかなりしんどいぞ…‼︎

 

──まさか早々にこの札を切らされるとは…トロル二体を瞬時に殺せるなら他の物を呼んでもおそらく時間稼ぎにもならないし逆に攻めの起点にされるでしょう、つくづく…

 

──接近戦用に能力を振り当ててるらしいにせよその背後から高火力をブッパしてくる本体が控えてる、全く…

 

面倒な相手だ…‼︎

 

 二人の幻影レナラが杖先から剣を現出させ槍に見立てて攻め立てる、二人とも自分なのだから連携は抜群、加えて本体のレナラ自身も分身ごと巻き込むのを厭わずに魔術を行使する為に黄金の褪せ人の行動は制限されていく。

 

──これだ…‼︎レナラは魔術で浮遊移動をする、それはつまり動きの起こりが存在しないという事、接近する時や後ろに引く時に身体の重心移動を必要とせずに移動出来る、だからこそ動きが読みにくい‼︎

 加えて、魔術の行使には詠唱が必要な筈だがアイツにその様子はこの幻影を呼び出した時以外見受けられなかった。

 推し量るにレナラはほとんど詠唱を必要とせずに高威力の魔術を行使し更に無駄な魔力のロスを限りなく零にしてるという事、正しく魔術師の完成形、魔術でこの地一帯を支配した実力は紛れもなく本物…‼︎

 

 三位一体と化した攻撃を凌ぎながらも褪せ人は着実に反撃の機を伺う、一見するとレナラが優勢に見えるが、その実は逆でありここまでして漸くレナラは攻めに回れているのだ。

 依然としてレナラと黄金の褪せ人の身体能力の差は著しい、その上で黄金の褪せ人はトロル二体を瞬殺する程の実力、レナラが呼べる物は切り札たる代物を除けば自身を使うのが最大の一手、他は精々が飛竜か猟犬騎士、後は狼や防御用の結晶人程度な物、とてもじゃないが釣り合わない。

 

 そしてレナラは自身が呼び出した自分自身もそんなに持たないという事も既に理解していた、していたが故に…女王は静かに切り札を切る覚悟を決めた

 


 

 稀代の天才とされた魔術師レナラは入学当時から学院から大いに期待されていた。

 それは彼女なら彼のアズールやルーサットと並び新たな“星”の魔術を手にするかもしれない、そう期待されていた、そしてレナラはその期待に応えれるだけの技量と才覚があった。

 同時に入学した妹の方もかなりの才を持っていた、妹の方は魔術を戦闘に応用する事に長けており戦魔術師の才が飛び抜けて高かった。

 いつしか二人は魔術学院始まって以来の天才と称された、無論その事に腹を立てた者も居た、中には女ごときと下に見ていた輩もいた、だがレナラはその様な者に知力や魔術戦で圧倒し、妹の方も下手に言い寄って来た下卑た輩を全て返り討ちにしていた、次第に二人は畏れられ、しかし誰からも尊敬される程の魔術師となった。

 

 レナラがアズール、ルーサットの両者に認められ魔術を授かったという噂は即座に広まった、アズールが極めた彗星とルーサットが極めた流星、二つの源流魔術にレナラが見出した新たな“星”が名を連ねるのだと全魔術師が息を巻いた、何故ならば自身が生み出した魔術に名をつけられる者は長い魔術史においても限られるからだ。

 しかしレナラは、何も見出さなかった、寧ろ彼女が推奨したのはそれまで学院が探求して来た輝石魔術ではなく全く別の、それでいて起源を輝石魔術とする新たな流派の魔術であった、それは輝ける剣を基にした魔術、今ではカーリア王家の魔術と称されるそれを、レナラは広めたのだ。

 学院は落胆したが、しかしその魔術の果てにあるという魔術、つまりレナラの異名の由来となった月の魔術を見せた事で全ての魔術師はカーリアの魔術を受け入れ、魅了されたのだ、その中には妹やレナラも世話になったユミルという魔術師も居た。

 それでも輝石魔術の探究を行う者がいたがその者達は学院を統一し学院の長となったレナラが悉く追放されてしまった、その中にセレンという人物がレナラにより恨みの籠った視線を寄越していた、その事にレナラは遂に気付くことはなく。

 

 何故レナラは輝石魔術の、しかも源流の探究を禁じたのか、それはレナラがアズールとルーサットの現状を見て、輝石魔術のその根幹を知り、全てを知ったからだ、アズールとルーサットは既に頭部の殆どを輝石に侵されており廃人所か半ば無機物と化していた、これが輝石魔術の果てであり、源流の一つである、そしてレナラは両師から学び聞いた。

 

星の神秘を知るには我等の思考は次元が低すぎる

 

 こうしてレナラは全てを知った、輝石魔術の根源、その果ての先にある物も、実を言うとレナラは既に学院にて学びを得ている時からある程度輝石魔術の果てを推測を立てていた、そしてその推測が最悪の形で的中してしまったのだ。

 更に不幸なのは、レナラは輝石魔術の根源とその果ての全てを知り得て尚無事であった事、なんの支障もなくその知識を蓄えれた事、通常ならば廃人になっているのはアズールとルーサットを見れば分かる。

 更に言ってしまえばレナラは早い段階で源流魔術を習得していた、だがこの結果を無価値と断じるには少々歴史が長すぎるし、何よりレナラも星見の一端、既にレナラの魔術的知力は途方も無い領域に達していたのだ、その結果が月の魔術である。

 

 その後レナラは攻め込んで来た黄金樹の勢力と二度の戦争を行い尚も滅亡を回避させるという大偉業を成しとげ魔術史上姉妹で唯一と言って良い武力にも長けた英雄として名を残し赤髪の英雄との間に三人の子を成すのだった。

 


 

 突如として幻影二体が消失する、レナラは地面に杖を突き立て更なる詠唱を重ねる、途方もない魔力反応だ。

 

──数のアドバンテージを消した…?だがこの魔力反応、只事じゃねえ、次は何を呼び出すつもりだ。

 

 レナラの幻影が消え、新たな魔法陣から呼び出されたのは二本の剣を携え銀色の甲冑に身を包んだ女騎士、正真正銘女王レナラの切り札である。

*1
現実時間約1秒




レナラが最も信頼出来る前衛、参戦。

・黄金野郎
 柄にも無く苦戦してる、こいつが弱くなったというよりは向こうが戦い方が上手いだけなのと、若干のプロレス。
 幻影レナラ達から結構斬られてる。

・満月の女王レナラ(知力100超)
 魔術的な神秘を全てを知った女、しかし彼女もまた星見の一人であり“まだ”真っ当に魔術師をやっていた。
 因みにセレンがレナラに向けていた感情は憧れと尊敬、そしてそれを裏切られたという気持ち、言うなれば天才が憧れた天才、しかし彼女もまた幼かったのだ。
 実は幻影レナラと本体レナラは視覚がNARUTOの輪廻眼よろしく共有されているので誰か一人でも黄金を視界に入れておけば他全てが位置を把握出来るという裏設定があります。
 尚本物レナラは書庫で良い子良い子してます。

・妹(幻影)
 モーゴットがマルギットとして派遣出来たのと同じ理由。

Q.ラニ様叔母が参戦してますけど?

A.何それ…知らん…怖

初期プロットではここに更に追加でローレッタをぶち込む予定だった、流石に黄金が勝てないのでやめにしました。
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