人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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カーリアの人間の愛や情は深い。

今話から黄金野郎の怪物っぷりが加速していきます。


・破片の君主─魔術女王

──済まない、レナラ

 

──何を謝る事があるの?二度も攻め込んできた事?それとも…

 

──全てだ。

 

──だったらその話はもう済ませたでしょう、これは仕方のない事でした、貴方達が決めた事に私が首を突っ込める事ではありません。

 

──…ッ‼︎好きなだけ私を恨め、貴女には、その権利がある。

 

──恨みませんよ、私だって()()と同じ立場ならそうしたでしょう、勿論、隠し事をされたのは少し気になりますが…それでも私はあなたが何者であろうと心から愛しています。

 

──…。

 

──だから、ね?最後の時位笑って見送らせて下さいな、黄金のあなた──。

 


 

──自分の分身を引っ込めてまで呼び出したのはあの剣士か…接近戦においては自分以上の実力があるから呼び出したんだろうが…雰囲気からして姉妹って所か。

 

 褪せ人は未だ知り得ぬ事だが、レナラには1人妹が存在する、姉と同様に魔術を修め姉と同じく月の魔術を行使する事からいつしか二人は双月の姉妹と呼ばれ畏敬の念を集めたという、曰くその名を──。

 

「二人で戦うのは随分と久しい物です、()()()()…腕は鈍っていませんね?」

 

「姉様…私は幻影の身、貴女が思う最上の身を構築し現出しています、鈍りようがありません、寧ろ私を呼ぶ姉様こそ鈍っているのでは?」

 

「私のこの肉体も幻影なのよ、呼び出したのは娘のラニだけれど…」

 

「なんと、となりますとこの場を作り上げたのはラニの仕業ですか、随分と成長したようだ」

 

「ええ全く…尤も少々詰めが甘いのは変わらないようだけれど、現に今もこうして私に術の契約を切られていますし、これは後で学び直させなければなりませんね」

 

「ならば我等の役目はあの男を始末する事…姉様が私を呼ぶ程の実力者と察しましたが…彼とは別人なのですよね?」

 

「ええ、彼と違いあの褪せ人は戦闘を楽しんでいる、これは彼には無かった事です、そして何より強い、それこそあの黄金の王や息子のラダーンにも匹敵する程に」

 

「それはそれは…最早幻影の身である私でどこまで戦れるか判りかねますが…折角の姉様との共闘、思い切りやらせてもらいましょうか」

 

 発言が終わると同時にレラーナと呼ばれた騎士の姿が消え黄金の褪せ人の目の前に現れる、転送魔術ではない、単純に姿が消えたと思わせる程の速度で動いただけだ、そのまま流れる様に剣を振るい、褪せ人はそれを黄金の斧槍で受け止める。

 

「む…」

 

──速いな、そして…剣戟も重い‼︎そして何よりコイツ、かなり強いぞ‼︎

 

──難なく止めますか、流石にその姿を形取るだけはある‼︎

 

──不味いな…これだけの実力の持ち主が前衛に来る事でレナラに足りて無かった前衛の壁が出来ちまった、つまりこの後に飛んでくるのは…‼︎

 

 数瞬の鍔迫り合い後褪せ人はレラーナを蹴り飛ばし自身も後方に大きく跳躍する、直後に褪せ人がいた場所を抉るように蒼い彗星が迸っていた。

 下手人は言うまでもなくレナラだ。

 

──さてとどうしたもんか、二人の連携は完璧、剣士の方の幻影を消すんなら術者である女王を先に消すのが一択だがそれでコイツが消えなかった場合が問題だな…

 

「やはり、王の首を取るにゃ親衛騎士を殺らねえと駄目だろうな、それに何より…此処までの剣の使い手とは滅多にお目に掛からねぇからよ、存分に堪能しなくちゃ拵えてくれた奴に申し訳ねえ」

 

「ほう…随分と口が回る様だ、ならば我が剣、存分に味わってみるといい‼︎」

 

 レラーナが双剣を光らせる、青く冷たい光だ、かつての魔術師達はこの光に目と心を奪われこう口にしたという

 

曰く──【月の光】と

 

──ただ光らせただけではないな、コイツもレナラと同じ魔術を扱う、ならば何かしらの魔術処理を施していると見ていい。

 

 そう当たりを付けた褪せ人はレラーナの光剣と交わる一瞬で、その刃を見た事でその光の仕組みを理解した‼︎

 なんと、レラーナの光の剣は動いていた‼︎高速で、細かく微小で鋭い刃がレラーナの剣の刀身を滑る様に動いていたのだ‼︎その小さな刃が一つ一つ複雑な光を発する事で剣そのものが光り輝いている様に見えたのだ‼︎

 これに度肝を抜かれたのは褪せ人だ、ただの直剣なら多少浅く斬られるだけで済む、しかしこの刃は違った‼︎この剣は小さな刃の集合体、斬られたならば肉体は大きく抉られ、斬られる事を意味していた‼︎更にこの剣はあらゆる防御をも意味を成さない事も一瞬で理解させられた‼︎

 故にこの攻撃からは回避しか逃れる事ができない、しかも大きく身を躱す方法でしか、無事は保証されない、何故なら‼︎

 

「避けたつもりが…この様か」

 

 優れた武芸者程相手の攻撃をギリギリのところで避けようとする、しかも必要最低限の動きで回避し反撃を取る、その癖をレラーナの光の剣は見事に突いた物となっている、即ち、直前までそのことに気づかなかった褪せ人は文字通り身を斬る程の授業料を支払う事となった‼︎

 

──カス当たりでここまでズタズタにされるとなると直撃は考えたくないな、見た目の派手さはそこまでないが文字通りの一撃必殺の剣だ、あの小さな刃の正体は輝剣の魔術か?よく考えついた物だ。

 

「どうやら気付いた様だな、察しの通り私の剣の光は小さな輝剣魔術の集合体、あらゆる物体を両断する事も可能、いつまで凌げるでしょうね?」

 

「目の前の妹に集中するのは構いませんが…私も居るという事をお忘れなく、気を抜けば穴だらけになりますよ」

 

 上空から魔力弾の雨を降らせるレナラと前方から防御不能の剣を振るうレラーナ、客観的に見れば褪せ人の絶対的不利、最早敗北まで秒読みといったところだ、しかし褪せ人はこの様な状況下にありながらけい獰猛に笑って見せた。

 

「絶体絶命、今までにない程の窮地だ、なのに何故かな…俺はこういう窮地を長らく待っていた‼︎愉しくて仕方がねえ‼︎もっと見せてくれよ‼︎お前らの技を‼︎魔術を‼︎全部物にしてやるからよ‼︎」

 

 黄金の戦意尚も衰えず。

 

──曰く、魔術とはまず魔力の存在を認知する所から始まるんだったな、そしてそこから魔力の流れを律し、己が物とする事で初めて魔術を扱えるという、いわば初歩中の初歩、魔力の存在を認知…そして流れを律する…ありがたい、最高の環境が用意されてやがる。

 

 魔弾の嵐と必殺の剣戟を避けながらも観に徹する、どれだけ2人がこの地屈指の実力者であっても防御に徹した黄金の褪せ人を崩すのは容易くはない。

 

──魔力、触媒、詠唱、流れ、術式、神秘……

()()()

 

 レナラから結晶の弾が連射される、黄金の褪せ人はそれを目視、即座にレラーナを遠方に蹴り飛ばし、放たれた結晶片を手で受け止める。

 

「何度も見たからな、手に取るのは訳ねえ、そんでもって、丁度結晶(これ)が欲しかったんだ‼︎」

 

 褪せ人は手に取った八つの結晶を片手で握り込み圧縮させ一つの塊に変形させた、かなり歪な形ではあるが即席の魔術触媒という訳だ。

 

「今更なにを…⁉︎」

 

 レラーナが渾身の剣を浴びせようと褪せ人に振るうと褪せ人が繰り出した新たな光の剣によってレラーナの剣が止められてしまった。

 

「この結晶はあの魔術女王が創り出した代物、魔力の質も神秘の量も十分過ぎる、そして結晶であるが故に魔力の伝導率十分、そして思った通り、お前のその必殺剣は物理的には防げないが、魔力を込めた物体なら防げるらしいな」

 

 流れる様に剣を弾きそのままレラーナの首を刈り取る様に蹴り飛ばし、その事に動揺したレナラのその僅かな隙を突く様に懐に潜り、正拳を叩き込んだ。

 戦士ではないレナラにとってこの一撃は致命的となりもはや戦闘続行は不可能、決着だ。

 

「…ま、さか、魔術を…」

 

「俺がアンタ等に求めてたのは手本だ、俺が魔術を無理矢理会得するための手本、魔術の基礎は道すがらのおっさんから聞いたからな、あとは俺に適した手本から学ぶだけ…アンタ等が俺に見せた魔術の数々は至難の業ではあったが実に良い手本だった、感謝する、お陰で俺は更に強くなれた」

 

 世界が崩れていく、形取っていた物が紐解ける様に、微かな戦いの色香だけを残して。

 


 

 愛していた、あの人を、あの力を、優しさを、温もりも、誠実さは…ほんの少しだけ濁される事もあったけれど、それでも私はあの人の全てを愛していた。

 だけどその人の真の愛は最も強大な力を誇る王に注がれている、まぁあの人の出自とその男が成し遂げた事を知ればその者に捧げられるのは間違いはない、だって私も同じ事をされたならば同じようにその人に愛を捧げるだろう。

 正直言って欺かれていたという事に怒りはないと言えば嘘になる、だけどそれ以上にあの人の運命が残酷過ぎて、あまりにも報われない人生が過ぎて、そんな感情なんてとうに無くなっていた。

 世界の人間が彼女を崇高な物として見ても、信仰対象として見ていようと、どこまで行っても彼女もただ一人の人間だったのだ。

 人間とは世界や星から見ればとても矮小な存在だ、だけど彼女は人の身でありながら世界と、運命と、我々が神とすら呼ぶ其れ等と戦ったのだ、一体どれだけの人間が同じ事ができようか、何故そんな残酷な運命に立ち向かう彼女を凶弾できようか。

 出会いは最悪だったけれど、確かに私とあの人の間には真の愛があった、それだけは誰にも否定させない、そうでしょう?

マリカ…

 

「誰…?ゴッドウィン…?……いいえ、貴方じゃないわね?」

 

「生憎だが人違いだ、そのゴッドウィンって奴じゃなくてすまんね」

 

「何か用かしら…?」

 

「いやなに、アンタ以上に適任が居ないんでな…俺に魔術を教えてくれ」

 

 黄金の褪せ人と魔術の女王、その戦闘は終ぞ誰にも知られる事なく、静かに決した。




アッサリ終わっちまった、二つに分けたのに。

・黄金野郎
 レナラとレラーナという最上級の手本から見て学び魔術をラーニングする、何気に結構ギリギリ。
 レナラから魔術を学ぶ(前作でもやったな)

・魔術女王レナラ
 全てを知った女、それでも伴侶への愛は変わらない、彼女は一途だったのだ。
 ラニの術式が甘かったから召喚された側から一方的に契約を切るとかいうマダラムーブをした女。

・輝剣の剣士レラーナ
 幻影の為ロイヤルカーリアとメスメルの炎エンチャントが使えない、その代わりに某光の流法を使用してくる、効果としては魔力ダメージと出血蓄積のガード不能技、結構大きめの回避をしないと当たり判定に引っかかる糞仕様。

【魔術女王の追憶】
 黄金樹に刻まれた 魔術女王レナラの追憶

 彼女はその知力を持ってこの地の全てを知った
 それでも尚彼女は己の伴侶の人間を愛したのだ
 たとえその正体が判っていたとしても。

【全知のタリスマン】
 星の神秘が込められた秘石
 「伝説のタリスマン」の一つ
 それはレナラの知力の全てが込められているという
 最大HPと強靭度を減らしスタミナ消費量が上昇するが
 あらゆる魔術の発動速度と威力を大きく高め
 FPの消費を大きく減らす。

 星を見出し凡ゆる魔術を修めた女王の若気の至り
 曰く「全知である事のなんと愚かな事か」
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