人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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本編の前に作者からの言い訳。

大前提として黄金野郎は身体能力が馬鹿であるという事を念頭に置いておいてください。

ご存じの通り作中では黄金野郎は啜り泣きの半島においてモーンの城と黄金樹の化身を倒してその後それらしい事述べてUターンしますが。
これは作中的な意味合いで無くメタ的に深い訳があります、と言うのも既プレイヤーの方なら分かると思いますが啜り泣きの半島にはローデイルの神授橋に繋がる転送門があります、そしてうちの馬鹿はパッチの転送位置からケネスの所まで跳躍して着地した実績があるので、飛ばされた位置からそのままローデイルを闊歩してモーゴットまで一直線です、マルギットとして別れて1日も満たない内に再会するとかいうギャグになるのであの場面で帰しました。
同様の理由で四鐘楼にも近寄らせません、間違ってファルムアズラに飛ぼうものならそのままマリケスまで行っちゃうので。

では本編どうぞ。


【まずは反省】

【探究の時間だ】

 

 …強かった、間違いなくこの地で戦った者の中では一番と言っても過言ではない程に、魔術…実に強烈な力だった、主体的に使うことはないだろうが控え札として抱えておくのは悪くないだろう、戦略性も広がることだしな。

 しかし一言二言喋ったとはいえ完全に正気に戻った訳ではないのか、簡単な物しか教われず、幾つかの魔術を数種学んだのみ、本来ならば更に上級の魔術を引き出せるのだろうがこればかりはな…

 後はトープス氏との約束を守る為にこの学院を探索せねば、道すがらの魔術師を大概を倒してしまったが如何にしたものか…

 

【懐かしい奴】

 

 学院の探索を行い鍵を探すつもりだったが、思い返せば屠った魔術師から鍵を強奪すればいいことに気がついた、死体に口無し、冥土に貴重品は持ってゆけぬ故に今を生きる我々が有効に扱おうではないか、やはりこの手に限る。

 

 トープス氏に*1鍵を手渡し*2そのまま別れる事にした、その際にレナラの事を僅かばかし話し、その際にカーリア城館の事を聞き及んだ。

 ふむ、現在位置からそこまで遠くないし一走りすればすぐなので直進する事にした。

 目的地に向かっている途中にちょっとした小島を見つけそこに人の気配があったので出向いてみたらまぁなんとも懐かしい顔がいた、確かコイツは…

 


 

「げ…アンタは」

 

 

「お前は確か…プッチ?

 

 

「パッチだ」

 

 

「あぁ、そうだったな、まぁあの時は色々あったがここの湖に免じて水に流そう、んで何してんだ」

 


 

 如何やらコイツは商売をしているらしい、折角なので幾つか購入しておこう、紛い物にせよ商人との繋がりは確保しておかなくてはな、まぁ碌なものが無かったが石剣の鍵とやらと銛*3を買っておこう、レナラ戦で学んだのはあの手の敵に対して飛び道具を持ち得ないというのはかなりキツイ物がある、とはいえ半端な弓等引けるはずも無し、ならば直接投げる物として備えておくに越したことはないだろう。

 買う物も買ったし、荷物をメリナに渡して適時渡してもらおう、余り持ち込むと嵩張るしな、物を瞬時に出し入れする魔術とか存在しないものか。

 

【巨大な奴、おそらく良い奴】

 

 北上を続け荒れ果てた廃墟を通り越した辺りで鏡の兜を被った小巨人が座り込んで本を読んでいた、本がデカい。

 話しかけてみるとかなり警戒されているようだが如何やらこの御仁、鍛治師であるらしいが傍らにある剣は鈍の類だ、とはいえいつぞやの時のようにへし折る訳にもいかないのでカーリアの城館について聞いてみたが終ぞ碌な返答は返って来ず、如何やら己の目で確かめよとの事か、それにしても随分と警戒されたものだ、いやまあ大凡原因は判りきってはいるのだが、この姿でこの地に来てからこんなのばっかだな。

 


 

 女王レナラを倒して二つ目の大ルーンを回収した彼は僅かに会話が成立するレナラから魔術の手解きを受けていた、と言っても初歩的な魔術ばかりで周囲を明るく照らす物や結晶の散弾、実戦で使えそうなのは返しの魔術位の物だった、それにしても彼は記憶力が良いのだろうか、二つ三つの魔術を難なく覚えた辺り才能はあるのだろうけど、並の魔術師が二つ三つ、良くて四つを習得するのが限界なのを鑑みるといきなり三つの魔術を学んで尚余裕を感じさせるのは魔術の才能に優れていると見て良い、おそらく祈祷も才もあるんだろうけど本人の信仰が皆無だし、何より本人が物理で殴るのを主体としている関係上あまりこの手の攻撃手段は好まないだろう。

 でも彼は気づいていない、女王レナラから師事を受ける事がどれだけ名誉な事か、全ての魔術師がその生涯を賭けて尚届かない領域の存在から手解きを受けるという事がどれだけの価値があるか、彼は正しく理解していない、彼の中ではレナラという存在は一番強い魔術師だからその人に学んだ方が率が良いという程度の認識でしかないのだ。

 

 レナラから一旦の師事を終えトープスさんの約束を果たす為に二本目の鍵を探す事になったのだが、ここでふと彼が

 

 

「鍵どこにあるかわかんねえし道中で殺した魔術師から掻っ払うか」

 

 

 とか宣いだした、いやまぁ言いたい事は分からなくはない、死人には無用の長物だし、それなら必要な人に譲るのは分からなくはない、だけど…

 

 

『魔術師を沢山殺しておいて言うセリフじゃ無いわね』

 

 

「仕方ねえだろ、全員俺を見るや否や襲いかかってくるんだから、現に襲ってきてない奴は殺してないだろ?」

 

 

──多分見て見ぬ振りをしたのだと思うのだけど。

 

 喉まで出かかったこの言葉を飲み込む、彼自身自覚があるか分からないけれど彼は大きい、常人の倍くらいあるその背丈にがっしりと筋肉が付いているのだからインテリ派な魔術師達が関わりたくないのは分かる、ただでさえ始まりのデミゴッドと同じ姿をしているのだから派手な行動は控えて欲しいのだけど、それでもこの言葉だけは言わないといけない気がした。

 

 

『貴方が彼等にダル絡みするからでしょ、幾ら情報が欲しいからと言って石膏の頭を壊すのはやり過ぎよ』

 

 

「人と話す時は人と目を合わせましょうって教わらなかったのか?ここ学院だぜ?なのにあいつらと来たら石頭被って見ざる聞かざるを貫くんもんだからよ、話しやすくしてやったまでだ」

 

 

 発想が馬鹿。

 その後トープスさんに死体から掻っ攫った鍵を手渡し事無きを得たけれど、その際にトープスさんが物凄く感謝する物だから流石の彼も良心が痛んだみたい、学院に戻って研究を続けると言っていたが今の魔術学院は殆どもぬけの殻に等しい、彼が大多数を殺してしまったから、まぁ流石に腐臭や衛生面の観点から滑車が回っている所から底に向けて廃棄したけれど、かつての同士達が居らず一人寂しく探究を続けるあの人は何を思うのだろうか。

 あと彼がトープスさんからカーリアの城館の情報を得ていた、リエーニエに来てから幾度あの人の世話になっただろうか、彼にしては珍しくトープスさんへの評価はかなり高い…というかここまで彼が他人に対して好意的に評価するのはかなり稀な事だ、受けた恩は忘れないという事なのだろう。

 

 受けた恩有れば受けた仇有り、いつぞやの禿頭が小さな孤島にて佇んでいた、プッチって誰よ。

 彼は先日のレナラとの戦いで飛び道具がない事を不味いと感じたのか大矢とボルトを買い漁っていた、後石剣の鍵、流石の彼もあの霧の壁は壊せないらしい、良かった。

 レアルカリアを覆う魔術結界も壊せなかったが多分そのうち物理的に壊すんだろうなぁ…とか思いながら彼とパッチのやり取りを流し目に見ていた、すっかりと荷物持ちに拍がついた物だと思いながらトレントに荷物を載せる。

 立ち去る際にパッチが鉄製の乙女人形について語りだした、なんでもそれは転送装置らしいが今や壊れた物ばかり、しかしレアルカリアの大水庫の底にある一台だけがその機能を残しているらしいとの事。

 その底に思い切り遺体遺棄を行った彼はなんとも言えない表情をしていた、後これは確信だけどその人形の中に彼は入らないと思う、図体がデカすぎるし、それを察したのかパッチもその先の言葉を綴らなかった。

 

 更に北上して廃墟を抜けた際に変な兜を付けたトロルが居た。

 

 

「おや…貴方は…何用ですかな、彼の黄金と同じ姿をする者よ」

 

 

 かなり警戒されてる、まぁ当然だけど。

 

 

「カーリアの城館ってあの建物であってる?」

 

 

 この馬鹿は火に油を注ぐ事しか出来ないのか、この物腰柔らかいトロルの警戒が更に高まってるのを感じないのか、それとも感じた上でそう言っているのか。

 

 

「如何にも、ですが進むのはお止めなさい、あの場所には恐ろしい罠が今も機能しています、愚かなカッコウ共と同じ屍を晒したくはないでしょう?」

 

 

「俺は死なんし、それで死んだ馬鹿共と同列に語るんじゃねーよ、見る物見たらすぐ帰るさ」

 

 

「…警告は致しましたよ」

 

 

 名前も聞かずに勝手に向かっていってしまった、私は姿が見えないと分かっていてもこの優しいトロルに謝罪の意を込めて頭を下げておいた。

 

 

「…これは一人言ですが、あの黄金の褪せ人と共に進まれるならば、あのお方達の運命を動かしてくだされ…」

 

 

『貴方…私が見えているの?』

 

 

「…」

 

 

 気の所為…なのだろうか、彼は随分と遠くに行っているからこの人の言葉を聞けるのは私だけだ、霊感が高いのだろうか…

 

 城館に備わっていた迎撃魔術をすり抜けて内部に入り込んだ私は早くもゲンナリとしていた、原因はこの館を当然の様に闊歩?する手の化け物の所為だ、12本とかいう最早両手の指より多い指を手から生やしたこの化け物は確かユビムシとかいう生物だった気がする、コイツらが地中から掴み取る様に襲ってきたり壁に引っ付いている奴がポトリと落ちてきたりと、やる事なす事が気色悪い。

 そんな中彼は何故かじゃんけんをしていてしっかりと勝利を収めており、そしてまた何故かじゃんけんをする為に行列が出来ている。

 彼等*4にも手の生物としての誇りがあるのか物凄く真剣にじゃんけんを行なっているように見える、まるで真剣勝負みたいだ、負けたら物凄く落ち込んでトボトボと去っていく彼等の後ろ姿は哀愁が漂っている…私は何を見せられているのだろうか。

 

 

「コイツら後出しに厳しいんだよ」

 

 

『そんな事聞いてない』

 

 

 知りたくもない事実を他所に彼は着実に勝ち星を上げていく、ジャンケンの王にでもなるつもりなのだろうか、馬鹿なんだな、コイツは。

 結局全てのユビムシとじゃんけんで勝利を収めたコイツは何故かユビムシを従えてしまった、彼等なりの法であるらしい、知りたくなかった。

 大型のユビムシの上に王の如く跨り運ばれている彼を見て私は何を思えば良いのか、壁をよじ登る際には小さなユビムシが座席代わりに付く始末、それで良いの貴方達。

 道中にいる人間達の視線が痛い、もし視線に物理的接触があるならば私達は穴だらけになっていただろう、まるで珍獣を見るかのような視線だ、何せあのトロルが余りの奇怪な光景に道を譲ったのだ、私のこの感覚は間違いではないと信じたい、あとここの館の主に心から謝罪したい、黄金の馬鹿が申し訳ないと。

 

 城壁を登り崖を登った先は三つの魔術師塔が点在しているのだけど、こんな形で館を突破していいの…?

 絶対に何かしらの番人を配置していたと思うけど、彼は無視してしまった、ああでも、この飛竜は流石に此方に敵対するらしい、声高らかに雄叫びを上げている。

 

 

「うむ、ご苦労お前達、戻って良いぞ」

 

 

 ユビムシから降りた彼は目の前の飛竜に警戒心を高める、何せリムグレイブの湖で戦った飛竜とは比べ物にならない程の強さをこの飛竜から感じる、ならば彼とて自然と戦闘態勢に入る…筈だった。

 

 

「良い、下がれアデューラ、お前ではソイツには勝てん」

 

 

 女の声、だけど私達はこの声を知っている、あの時の夜、私達はその声の主に出会っていた。

 

 

「…とうとう此処まで来たか、まさかユビムシを使って崖を登るとは流石に想定してなかったが」

 

 

「じゃんけんでアイツ等を制したからな、是非指の王と呼んでくれ」

 

 

「そうか、じゃんけん…何?」

 

 

「じゃんけんでアイツら全員に勝ったからな、従えてやった」

 

 

「…聞き間違いではなかったのか、そうであって欲しかったのだが」

 

 

 分かるよ、私もそうであって欲しかった。

 

 

「其方の娘も苦労してるのだな…同情するよ」

 

 

『貴女もね、本当に申し訳ないと思ってるわ』

 

 

「謝るような事してなくない?アイツ等の法に従っただけだぞ俺」

 

 

「…もういい、兎に角何の用だ、私はお前に招待状の類は渡してないのだがな」

 

 

「俺も貰った覚えはないが…此処の主がお前ならちと話は変わる、ラニってのはお前の事だな、レナラと戦う前に部屋に響いた声とお前の声が同一な物だ、つまりあの仕掛けを施したのはお前だ、そうだろ?」

 

 

 その問いを掛けた瞬間に目の前の存在…十中八九ラニなのだろうけどその魔力の圧が高まる、今この瞬間にでも魔術を行使してきそうだ。

 

 

「貴様…母に手を掛けたのか?」

 

 

「いやまさか、余りにも強い魔術師だったんでほんの少しだけ手解きをな、案ずるまでもなくレナラは無傷だ、そこは安心して欲しい、あぁただ…」

 

 

「ただ…なんだ?」

 

 

「お前さんの術式の詰めが甘いとよ、契約切られてたぞ、後で学び直させるとかなんとか言ってた」

 

 

 そういえばそんな事言ってたわね、この事は流石にラニ本人も予想外だったのかピタリと動きが止まった、まるで悪戯がバレた子供の様に。

 

 

「…私の契約を切ったのはまぁ…母上なら出来るだろうが…その際母上は何をした?」

 

 

「二本の剣使う魔術剣士呼んでたぞ、多分姉妹だと思うが」

 

 

「クソッ、よりにもよってレラーナ叔母上か、いや確かに母上が最も信頼できる前衛となるとそうなるのだが…」

 

 

「…なんだ、やけに歯切れが悪いな」

 

 

「母上の教えは厳しいんだ」

 

 

「あぁそう言う…」

 

 

 一触即発の雰囲気から一転、何やら和気藹々とし出した、そろそろツッコミを放棄した方が良いのかもしれない。

*1
強奪した

*2
偉く感謝されたが出所を知る故に善意が痛い

*3
大矢とボルト

*4
性別あるのかな




信じてくれとは言わん、だけどこれだけは言わせてくれ。
俺はシリアスが書きたかったんだ。

・黄金馬鹿
 大凡の原因、その場の雰囲気と勢いだけで生きてる奴、ユビムシじゃんけんは相手が襲いかかってきた時に思い切り開手してたから反射でチョキを出した、後出しでキレられた。

・メリナ
 そろそろ馬鹿の振り回しに胃痛がし始める頃合だが霊体に効く胃薬は存在しない。

・トープス
 何気に主人公から絶大な評価をされてる人、彼は同志が殆どいなくなった学院を見て何を思うのか。

・パッチ
 パッチ

・プッチ
 遠い別の世界で神父を務めた男、記憶スロットにセットした魔術や祈祷をDISCにして封印したと思ったら重力の反転させたり応用で表裏をひっくり返したり極め付けには全宇宙の時間を加速させたりするやべー奴。
 当然だがこの世界には存在しない、してたまるか。

・ラニ
 多分一番の被害者、ユビムシで壁越えは予想できんて、幻影ローレッタもスルーされたし母親からの再教育も控えてるし、割と踏んだり蹴ったりかも知れない。

・ユビムシ
 当然だがこんなコミカルな奴ではない、でも燃やした際の反応からして多分感性豊か、指相撲をさせなかっただけまだマシ
(相手の指の本数が足りん)
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