※セルブスの精薬について独自解釈がございます、ご了承下さい
黄金の褪せ人が行ったという奇行にラニは起こりうる筈がない頭痛に頭を悩ませながら再び口を開いた。
「…はぁ、色々と出鼻を挫かれる形となってしまったな…改めて問うが、黄金の、お前は何の用で此処に出向いた?」
「んー…特にこれと言えるほど用があるわけじゃない、強いて言うならデミゴッドとしてのアンタと戦う事だが…」
「無理だな、私はデミゴッドとしての機能を持つ肉体を棄てた、お前達褪せ人が求める大ルーンもな、お前が望むような戦闘はできまいよ」
「だろうなぁ…人形遊びに興じる性分でもねえし…収穫ゼロって事で他を当たるか」
そう判断した黄金の褪せ人が踵を返す様に立ち去ろうとするとそこに待ったをかけたのは意外にもラニの方であった。
「ふむ…特段用があるわけでもないし急を要する事柄も無い、お前の来訪を運命等と認めたくは無いが、母上と叔母上を相手に勝つだけの実力もある…おい」
「ん?」
「お前が王を目指すのかどうかは知らんが…特に当ても無く此処に来るくらいだ、大凡暇なのだろう、ならば少し頼まれてくれるか」
「…おれは便利屋になったつもりはないんだがな、それで頼み事ってのは?」
「その説明を行うためにも私の魔術師塔に来い、外部に漏れては敵わんからな」
ラニに誘われて魔術師塔に赴いたのだが少々手狭だな、窮屈だ、魔術師塔は魔術師に於ける研究室であると同時に公房でもあるという、つまりこの中こそ奴等魔術師が本領を発揮する場という訳だが、どうもラニからは攻撃意思と言った殺意の類を一切感じない、取り繕っているわけでもなさそうだが。
して、何故己を呼び止めたのか問うとどうやらラニは探し物がありそれが秘匿されている場所が少々面倒な場所にあるらしく幻影とはいえレナラとレラーナを同時に相手取り勝利を収めているのだから実力も申し分ないとして頼み込んだのだそうだ。
探す物とはつまりノクローンというこの地の地下にて繁栄した大都市の秘宝、それを探り当てて欲しいとのことその際にラニの配下であるブライヴを筆頭に小巨人のイジー、魔術教授セルブスを利用しても構わないと。
うぅむ、探し物の類はあまり得意ではないのだが…まぁやれる限りの事はやろう、それに地下都市の秘宝、なんと心躍る言葉だろうか、単純な金銀財宝の類ではないのだろうな、金銭の類とかこの地でどれだけの価値があるというのか。
ラニとの会話を終えて下の階層に戻ればそこにはブライヴと先程出会った鏡兜を付けた小巨人が居た、何やら色々言われたが兎も角協力してくれるらしい、して…セルブスとやらはなにやらグチグチと宣いやがったがまぁ曲がりなりにも同じ主に仕える故に無碍にも出来ないとか何とか…拳が出てしまいそうだ。
その癖自分の魔術師塔に挨拶に来いという割に出向いたら出向いたらでまたグチグチ言いやがる…ふぅ、一周回って殺意が治まった、良い鍛錬になりそうだ。
一応セルブスからの使いとしてネフェリという女に薬を飲ませて来いと言われたのだが当然承る気は無い、そもそもネフェリってギデオンの娘じゃないか、年端もいかない娘に怪しげな薬を飲ませるとか良い歳した大人の男として恥はないのかコイツ…まぁ一応ギデオンに鑑定はしてもらってその後これの処理は決めるか…
あのクソ野郎絶対許さねえ。
おっと、言葉が荒々しくなってしまったか、あの後即座にギデオンに薬を鑑定してもらったのだが案の定碌でも無い薬であった、どうやらこの薬は対象者に摂取させると肉体と魂を分離させ魂を束縛する物、空になった肉体は持ち主の言いなりとなる傀儡人形と化す代物らしく、なんともまぁ悍ましい物を作り上げたものだと呆れを通り越して感心が勝る。
ギデオンが此方の方で処理しておくと提案されたのだが、この手の道具は何かしらに使えるだろうと思い、敢えて自身の手の元に置いておく事にした、兜越しに伝わる訝しい目を寄越されたが己にそのような趣味は無い、断じて。
誤解を解いたついでに今ネフェリの居場所を問うと彼女は今しろがね村という場所にて任務を行っているとのこと。
曰く、しろがね村にはミケラの聖樹に至る鍵が有るらしく、それを探させているらしい、尤もギデオン本人はそこまで期待してなさそうだがな。
それから、二つの大ルーンを集めた事も既に知られているらしくこの短期間に二つも大ルーンを集めたのは己が初めてらしく二本指も大いに期待しているらしい。
二本指なあ…正直言って物凄く胡散臭いと思っている、一種の神託の様なものを送るらしいがそんな物に己の旅路を左右されたく無い、ので二本指がある間は無視してやった、そもそも指が2本だけだとじゃんけんできないだろ、馬鹿が。
相変わらずフィアは己に王の器を見出している様で、依然にも増して崇拝度が上がっている気がする、円卓に足運ぶんじゃなかったな。
で、広間の方に見知った顔が一つ、ロジェールとか言ったか、こいつも円卓に来てたのか、椅子にもたれかかる様に座っていたので何かあったのかと尋ねたらストームヴィルの地下に死の躯に見えたのだと、それはかつて黄金の最盛期、何者かがマリケスから死のルーンを盗み出しゴッドウィンを殺したのだと、その遺体は如何やら黄金樹の麓、つまり黄金の都の更にその地下に埋葬されているのだとか。
ゴッドウィンねぇ…正直言ってそこまで興味がないが…行く先々でこうまで人違いが発生するなら一度出向いて文句の一言でも言ってやるのも良いかもしれん。
ギデオンに地図に印を付けてもらいその場所に出向いた、大きな崖の下に隠れ潜む様に作られたその村は地獄の形相と化していた。
◆
──荒らされた、顔も名前も知らない輩達に。
──徹底的に破壊された、隠している物を探り当てられる為に。
──種族としての尊厳すらも、奪われた。
──だけど、決して希望を捨てなかった、これだけは奴等に手渡してはいけない。
隠れ潜んで幾つの時が過ぎただろうか、ラティナは逃げ切れただろうか?
今も尚鳴り止まぬ破壊と呪殺による同胞達の悲鳴が耳の中で木霊する、もはや動く事すら叶わぬ我が身、いつまでも隠れ切れる訳もない。
分かり切っていた事だ、結局世界とは悲劇なのだと、だから私たちはあの方に希望を見出したのだ、いつかきっと、優しい世界を作ってくださると信じて。
忌まわしきあの音が途絶えた、力強い黄金が儂の前を通り過ぎてすぐだ、村中に響き渡る程の打撃音がしたから要はそう言う事なのだろう。
「おい、終わったぞ、生き残ったのは…アンタだけだが」
そうか…やはりバレていたのか、しかしこの御仁からは悪意を感じられぬ、この方になら託しても良いかもしれん。
◆
アルバスと名乗ったしろがね人は様々な事を教えてくれた、しろがね人の使命とラティナという女のしろがね人の事も、恐らくこれがギデオンが言っていた聖樹とやらに至る鍵の半分なのだろう、そしてギデオンが言っていた任務とはつまりここの襲撃、各々の事情に特段興味はないがこのまま任務完了とさせるのは癪だな、色々知恵を授けてくれた恩こそあれどそれとこれは別件だ、協力しあう気など更々無い、無いが…あの失意に呑まれた娘に導きを与える事くらいは出来よう。
「娘、お前は立派な戦士になるのではなかったのか」
「いつまでも他者から施される導きに甘んじるな、お前の人生は誰が決めるものじゃない、こんな世の中だ、せめて自分が歩む道は自分で決めるんだ、お前の手足がまだ、動くならな」
「ではな風の戦士よ、精々次に会う時迄にその斧を腐らせぬ事だ」
◆
勝手な男だと、そう思った、私にとってはあの義父は全てに等しかったのだ、彼の言うことは全てに優先されるとすら思っていた、だがあの黄金はその現状に甘んじるなと言った、あの男程に芯が通っていたならどれだけ良かったのだろうか、あの男程に力があればもっと義父の力になれただろう。
しかしな黄金の戦士よ、誰もがお前程強くは在れないのだ、心も身体も…お前程強くはないのだよ、だが…そうだな、あれ程の戦士が私に立ち止まるな激励を施してくれたのだ、そろそろ独り立ちしてみるのも悪くはないか。
あの後アルバス老の導きの通りの場所に向かえばそこにその娘、ラティナが横たわっていた、その娘は此方の姿を見るや否や警戒心を露わにしていたが此方の事情を語るとその警戒心を軟化させてくれた。
曰く、百耳の男の手先ではないか…とな。
ギデオンめ…随分と手広くやっていた様だな、お前の名は結構知れ渡っているらしい、まぁ褪せ人に命じられた使命を考えると手段等選んでいる暇はないというのは理解できるがな。
ラティナが言うにはアルバス老から授かったこれは割符と言うらしくもう片方と合わせることで大昇降機を動かすんだと、そしてこの片割れは黄金樹の更に北上した先にある山、通称巨人山嶺に聳え立つソールの城にあるらしい。
巨人山嶺…名前からして巨人が居るのだろう、しかも小巨人と区別させられているところから察するにより強力な種族と見た、これはまた楽しみが増えた。
その後ラティナは自ら遺灰と化して我等の旅路に加わった、丁度メリナの話し相手が不足していたから助かる、海月と犬じゃ愛でる事は出来ても会話は出来んよ。
リエーニエ編も終わりが近づいてきた、まぁこれ実質ラニ編なんでまだ半分くらいなんですけど。
・黄金野郎
基本的に誰が何しようと興味ないけど今回のセルブスの件については流石に地雷案件だった。
・メリナ
この度新たな仲間にラティナが加入、黄金野郎の洗礼が近いと思うと流石に同情した。
・ネフェリ
早めに立ち上がりギデオンと決別した、初期プロットでは失意中に幼黄金の魅了洗脳で手駒にされていたのだが流石に人の心がないので泣く泣くお蔵入りとなった。
・ラティナ
遺灰の皆さんは黄金野郎の旅をリアタイで観てます、具体的にはプレイヤーカメラの視点でふよふよ浮かんでるイメージ、なので黄金野郎がとんでもない速さで移動するとそれに追随させられるので遺灰の皆さんはちょっとしたジェットコースターの気分を味わっている