人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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今回物凄く賛否が分かれる回だと思います。


【王の雫】

【写し身の雫】

 

 かつてエルデの地は混沌を極めていた、ありとあらゆる力ある者がエルデの王と成る為に争いあっていた時代。

 時が流れ個は群を成し、群は軍となる、そうして肥大していった軍は一つの勢力と相なった、その中でも当時最も力を誇ったのが巨人王が率いる巨人の勢力と、遍く竜を従えた竜王率いる竜の勢力の二つ、両陣営の力は激しく拮抗しその争いは地形すら容易く変形させた、エルデの地に於ける最大の争いである。

 

 無論その様な地で脆弱な人間が生きていけるはずもなく、当時の人類達は地上の喧騒から身を潜める様にそっと地下の中で生きていた、されどその者達もエルデの王を諦めた訳ではなかった、彼等は己達が王になれないと早々に悟るや否や理想の王の建造に至る。

 彼等は極めて高い知性を持ち合わせていた、特に液体金属の製造及び扱いに長け、更には生命の真似事すら可能な程の高度な技術力を有していた。

 彼等の叡智を演算機能として詰め込み、更に液体金属特有の流体性を損なう事なく変形し絶え間なく自己進化を促す、加えて意志能力を損なわせればその王を傀儡として裏から自由自在に操る事すら可能、そうすれば我等は世界を制する事も出来る…筈だった。

 

 結果から言うと、製造そのものは成功した。

 しかしそれと同時に地下の種族たる夜の民の中に神から見出された神人の存在が明かされる、曰く、宵眼の女王と。

 時を同じくして地上での争いにも終止符が撃たれる、竜王率いる竜勢力の勝利である、無論ただで勝てた筈もなくその際に竜王は翼を一対、五つある首の内一つを巨人王の腕力を持って破壊されるという傷を残した。

 その竜王が女王を迎えに上がった、そうして地下の都には竜王と女王の加護により“永遠”が付与される事となり、それは同時に彼等の理想の王の建造研究の停止を意味した。

 

 最強の王とその伴侶を得た地下の種族達は永遠の民と名乗り益々その力を拡大させていく、しかし肥大する力は傲慢を生みだし、傲慢は大罪を創り出す事となる。

 彼等は極めて傲慢になった、最早神ですら我等を止める事は出来ぬと、彼等の叡智の結晶たる一振りの刃、それはエルデの地に落ちた()()()()()()を傷つけたのだ。

 これにより神たる大いなる意志は永遠の民とその加護を与えた竜王を見限り都の殲滅を決断、破壊の力を込めた()()()()()()を落とす事となる、結果都は滅び民達もその数を著しく減らし今や数える程度…これにより永遠の都の活動は停止した…

 

その間も絶え間なく演算を行なっていた

ソレを除いて。

 

 ソレ…便宜上“彼”は愚直なまでに創造主達の思惑に応え続けた、絶え間なく成長する事、しかして決して意志を宿さない事、一見すると矛盾しているがそれでも彼は実行し続けた、後は理想となる器を待つのみ。

 そして今、彼は理想的な器を手にした、器がもたらした極めて高性能な身体能力とそれを成す為の自身に搭載されていた高度な演算能力に変幻自在の肉体組成、正しく無敵だ、しかし完璧ではなかった。

 


 

 硬質な物を打つ音が地下世界に響き渡る、大鎚と大盾が正面からぶつかるよりも鈍く重厚な音、これが生身の肉と金属製の肉が打ち合う音というのだから驚きだ。

 両者は絶え間なく攻撃し続ける、写し身の黄金の肉体は打撃痕による窪みはあれど即座に修復される、対して黄金の褪せ人は生身故に小さくはあれど多数の傷を付けられ血を流している。

 

 

──身体の創りの差が明確になって来たな…俺の傷は時間をかけないと治らんが向こうの傷は即座に修復される、しかしある程度奴の身体について分かって来た。

 一つ、奴の身体は変幻自在…それは形の変容だけじゃなく硬度すらも自由自在な訳だ、硬さと柔らかさを兼ね備えた物質、理屈は知らんがそういう物であると分かればひとまずそれでいい。

 二つ、奴は極めて高い再生能力を持つ、一度腕を引きちぎったが即座に新しい腕を生やして反撃を行った、奴は肉体の欠損による戦力低下は見込めない、だが引きちぎった腕を再度取り込んでいた辺りから再生には限度があり、その限度は奴が有する金属の質量分と解釈して良いだろう。

 三つ、奴は極めて効率的に、その場の最適な行動を取り続ける、俺の身体能力に奴の知性が合わさりどんな行動にも対処出来てしまう…まぁこれはこの戦いの中でそうなっちまったってのが正しいんだが…つまりどんな攻撃であっても奴の目に止まれば難なく対処される、面倒だ。

 だが極めつけは──‼︎

 

 

 思考を巡らせる黄金の褪せ人に写し身の黄金の攻撃が当たる、防御には成功しているのだがその攻撃は極めて重い。

 

 

──これだ…‼︎コイツの攻撃は尽く重い、俺の身体を模倣しているとして体重はどれだけ甘く見積もっても100kg強、しかし実際に感じる重さはそれ以上、金属製の肉体で見積もるならば200〜300って所だな…全体重を載せた攻撃が出来るのか、コイツは‼︎

 

 

 剛体術という技が存在する、とある落葉の武術家曰く、攻撃の際に必ず作動する身体に備わる関節、これは攻撃に速度を与える謂わば加速装置であると同時に攻撃の威力を打ち消す衝撃吸収材を意味する。

 もし仮に…攻撃の際に作動するこの関節を全て固定化させる事が出来るならば、人は鉄球に成れると。

 そうなれば後は単純だ、仮にこの技を扱う人間が100kgの体重を有していた場合、それはそのまま100kgの鉄球になる事を意味し、その重さが拳や足という一点から放たれるのだ、生身の生物ならばひとたまりもないだろう。

 

 その剛体術をこの写し身の黄金は使いこなしている…否、最早この写し身の黄金が繰り出す攻撃全てが剛体術による打撃に匹敵、或いは上回る代物だ、そもそもとして彼は人間の姿を取ってはいるが彼に関節という概念はない、故に常に最高威力の攻撃を叩き込む事が可能なのだ。

 

 

──こりゃ打撃力で勝負すんのは分が悪いな、こっちの攻撃は蚊ほども効かねえのに向こうの攻撃は100%俺にダメージを与えてくる…一見詰みに等しいが、それでも負けてはやらねえ…コイツにだけは負けらんねえ‼︎

 

 

 “勝ちたい”ではなく“負けたくない”、それは自分自身との戦いだからか、黄金の褪せ人に芽生えた初めての感情、最早意地に近いそれは写し身の黄金には持ち得ない“精神力”と呼ばれる物、人間たる彼だからこそ扱える謂わば最後の武器。

 

 

──勝ち筋はある、後は俺に“それ”を扱えるだけの技量があるかどうかだ…信じるぞ、俺が生まれ持ったこの五体を‼︎

 

 

 写し身の黄金が姿勢を低く…低く…最早獣の狩りの構えを思わせる程低く構え脚部をバネ状に変形させた姿に黄金の褪せ人は戦慄する。

 姿形がそのまま意思を伝える──只管に前へ、障害物は全て薙ぎ倒す、どこまでも無機質な瞳だったが確実に殺すという確固たる殺意まで搭載されたその姿はある種の美しさすら発する。

 

 

──ああ…そうだな、これで“決着”だ。

 

 

 黄金の褪せ人から力みが消える、黄金の褪せ人自身が身に委ねたその構えは今現在彼が取れる最も打撃に適した構え。

 しっかりと脱力を効かせ、目の前の災害に備え──写し身の黄金の発射を持ってその静寂が打ち消される。

 耳を疑う程の衝突音の後に地に伏していたのは写し身の黄金、その上半身は跡形も無く弾け飛び元の素体となった金属体が露わになっている、対して黄金の褪せ人は負傷したのか痙攣する右腕を押さえている。

 黄金の褪せ人は何をしたのか、それは剛体術ともう一つの打撃法を組み合わせた代物。

 

 攻撃を当てる衝撃の瞬間に稼働する関節を全て固定させるのが剛体術、その威力故にある種の完全な打撃とされるが、もう一つ、完全な打撃と称される技がある、名を──音速拳という。

 落葉の武術家が言うには、攻撃を行う際に作動する都合数十箇所の関節、この全てを加速に用いる事に成功したならば、人の攻撃速度は音の速度に到達するという。

 しかしながら剛体術も音速拳も表演で扱うのがやっとで実戦にて扱える者は皆無、それだけの高等技術なのだ。

 加えて武術家は言う、もし…仮に、この剛体術と音速拳、この二つの要素を兼ね合わせる事ができたなら──それは究極の打撃となり得ると。

 

 その打撃を今、黄金の褪せ人は成し遂げた、音の領域の速度に贅沢にも破壊力を求めた打撃を今彼は完成させた。

 尤もその威力故に右腕に多大な損傷を負った訳だが、結果は見ての通り、上半身を無惨にも弾け飛ばした写し身の雫は、尚も再生を続ける──それを黙ってみている黄金ではない、更なる追撃を持って写し身の雫の全身を吹き飛ばす──吹き飛んだ肉片が再び集合し形を成していく。

 

「…ずっと探ってたんだ、お前の核に位置する存在を…普段は何処にあるか悟らせない為に流動させている、しかし多大な損傷を負った場合はその核を中心にして修復が開始される、従って修復している肉体の中心に核がある‼︎」

 

 

 再生中の写し身の雫に黄金の褪せ人の貫手が突き刺さる、その指先には小さな球の様な物が握られていた。

 

 

「これだけ長い事戦ってれば猿でも要領を掴めるぜ、これで決着だ」

 

 

 そしてその球を潰した瞬間に写し身の雫の反応が消失し、ただの液体金属に戻る、これをもって完全に沈黙したのだ。

 

 

『大丈夫?』

 

 

「まぁ、なんとかな…ハァ…クソッ…なんとか勝てたが…初めてだ…ここまで疲れた相手は、早めに倒せて良かった…まず間違いなく今までの中で最強の敵だっただろう」

 

 

『…まぁ貴方の姿をしていたもの、生半可な敵ではなかったのでしょうね…どうかした?』

 

 

「いやなに、あれと戦って分かったんだがな…どうも俺って奴は存外に負けず嫌いらしい、とにかくブライヴの方に合流しよう、もう終わってると思うが…一応な」

 

 

 

 激闘を終えた彼がブライヴと合流すればどうやら彼方の方も既に戦闘を終わらせていたらしい、肩で息をしてかなりギリギリに見えるがどうにか勝てた様だ。

 

 

「おう、そっちも勝てたみたいだな」

 

 

「そっちこそな、全く何度か死に見えるかと思ったぞ…永遠の都の遺産…とんでもない強さだった…」

 

 

「とにかくこれで番人は倒せた訳だ、さっさと秘宝とやらを持って帰ろうぜ、疲れた」

 

 

 二人は奥の祭壇の様な場所の中に祀られる様な形で佇んでいた箱を開ける、中には一振りの短剣。

 

 

「…こりゃあ短剣か?ただ物じゃなさそうな趣きはあるが…」

 

 

「あぁ、これこそがラニが求めていた秘宝だ、褪せ人よ感謝する、これでラニの目的も果たされるだろう」

 

 

「そいつは結構、俺としてもいい経験ができたとしておくか」

 

 

 そう言う彼等を他所に私は念の為に箱の中身を改める、すると箱は二重底となっておりその中にもう一つ何かが入っていた、これは…球?

 思考するより先に事態が動いていたらしい。

 

 

「おい、そこの女、いつからそこに居た?」

 

 

 突如としてブライヴが声を上げ剣を構える、私の方を見つめて。

 

 

「…ブライヴ、お前メリナが見えているのか?」

 

 

「見えるもなにもそこにいるじゃないか、つい今そこに現れたぞ」

 

 

 それはおかしい、だって私は霊体の姿を解いていない、通常見える筈がないのだ、契約をした彼以外には。

 

 

『メリナ、どうやら君は…“受肉”した様だ、先程の箱の中に入っていた球体の影響だろう』

 

 

 ラティナがそう伝える、受肉…つまりは私は現世で活動する為の肉体を得た訳なのだが…本当に?

 

 

「取り敢えず剣を下ろせブライヴ、コイツは敵じゃない…俺の仲間だ、ラティナが言うには受肉したらしいな、霊体の受肉等聞いた事ないが」

 

 

「霊体で生きる奴に肉体がないんだぞ、それは遺灰で呼び出せる物でも例外はない」

 

 

「…写し身の雫か‼︎」

 

 

 写し身の雫、成程さっき私が触れた球は写し身の雫の核だった訳だ、そしてそれが霊体の私を取り込み形を作り出した、けどここで一つ不具合が生じた。

 本来ならそのまま動き出し敵を攻撃する様に作動する筈の写し身の雫は“私”という霊体をそのまま取り込んだ、それはつまり私の意思がそこに入ったという事、要はこの肉体は私の思うがままに動かせる。

 

 

「問題はないわ、私の意思で動かせる…身体を慣らす事から始めないといけないけれど」

 

 

「なら問題ないだろ、制御できてんだし」

 

 

「うーむ…それなら構わんが…もしや俺はとんでもない出来事を見たのではないか?これまでの常識がひっくり返る事態だぞ」

 

 

「取り敢えず帰るか、地上への道はあの昇降機か、近い方はどっちだ?」

 

 

 私が受肉するという事件こそあったものの終えてみればなんともあっさりと終わってしまって、ここから戻るということになった、そして受肉するという事は彼のソレに連れ添うという事になり…

 

 

『その…なんだ、メリナ…気を強く持って生きて欲しい』

 

 

 帰りも同じ方法を取ったので、まぁ、うん…死ぬかと思った、霊体だけど。




賛否両論あると思いますが、メリナの受肉は一番最初から決めてた事です。

・黄金野郎
 剛体術と音速拳は刃牙から、この二つを合わせた打撃を成立させたが反動もデカいのと、あと単純に写し身の黄金とのカウンターによるのもある。

・メリナ
 受肉した、それはつまり黄金野郎の旅路のあれこれに付き合わされる事を意味する、強く生きろ。

・王の雫
 この段階で破壊できて良かった枠、まだまだ強く進化する。
 進化を続ければ自己増殖機能が追加されてメタルクウラ宜しく黄金野郎の肉体性能を持った写し身の黄金軍団が形成されしかもその一体一体に学習機能と情報を飛ばす機能があるので一体破壊されるとその敵の情報が他全てに共有され他の個体が強くなるという性質を持つ。
 最終的に意思能力が搭載され一つの生命として降臨する。

・落葉の武術家
 ダンではない、喋るの禁句だし。
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