今回は弓のターンが終わるまでです。
陽は落ちた、空模様は雲一つなく満天の星空だ、正しく祭日和と言った所だ、ジェーレンが言うにはこの時の為に各地から腕に自信がある者や単純に戦を見たい者、そしてラダーンを弔いたいとな願う者を募ったらしい、道理で人が沢山集まった筈だ、特に弔いの気持ちが強い兵士は既に立ち上がり従事している、2、3日は失神する位打ち込んだのだが、曰く赤獅子に惰弱は居らず、あの程度の打撃なら日頃の鍛錬で受けているとの事だ。
後壺が居た、語弊でもなんでもなく本当に壺なのだ、名をアレキサンダーというらしい、壺だから銘柄ではないのかとつい口に出てしまったが本人は軽快に笑い飛ばしてくれた、気持ちの良い奴である。
ミリセントもしっかりと見物に回っており今はメリナに介助を受けている、未だ少々歩くのが覚束ないらしい。
暫しすると白いサーコートを着込んだ女騎士が声を掛けてきた、名をレダというらしい、どうやら此度の戦祭りのきっかけになった己に会いにきた様だ、一目見られて驚愕していた所を見るにコイツもゴッドウィンの関係者だろう。
さて、時は満ちた、いよいよ祭り本番だ、気合い入れて戦ろうか、するとジェーレンから現在ラダーンについての概要が伝えられる。
将軍ラダーンは、ずっと、さまよっている
マレニアの朱い腐敗に、体の内から蝕まれ、正気を失い
かつての敵、そして味方の死体を集め、犬のように喰らい
…空に慟哭しているのじゃ
『▇▃▞▜▀▆▀▛▚▆▅▟▅▟──‼︎』
…やはり、この地に赴いてからずっと響いていた声の主はラダーンの物だったか、そして今のラダーンの有様、些細承知した…が、やる事は変わらん、思い切り戦い、討ち取る…それだけだ。
ジェーレンは奥の転送門から砂丘に行けると言っていたがそんなものは必要ない、城壁に飛び乗りそこからさらに跳躍し砂丘に直接乗り込んだ、さてラダーン、舞台に上がってやったぞ、疾く死合おうぞ‼︎
◆
大きな砂埃を上げて着地…最早着弾の領域だが、兎に角戦場に降り立った黄金の褪せ人を出迎えたのは一本の
黄金の褪せ人は歓迎の一発目を黄金の斧槍で難なく弾く。
──
腐敗の影響を感じさせない技量に舌を巻く暇もなくラダーンは第二射に入る、構えは上向き、従って曲射の構え──槍が放たれ、黄金の褪せ人の真上から槍の雨が降り注ぐ。
──かなり精密な曲射だな‼︎放った槍が全て俺に向かって降り注いでいる‼︎追尾するのかこの雨は‼︎
黄金が駆ける、密度の濃い槍の雨を防ぐ事は出来ようが今現在足を止める事は即ち死を意味する、何故ならば──‼︎
「おいおい…第三射だと⁉︎無尽蔵か奴の槍は‼︎」
既にラダーンは第三射の構えに入っている、再び手に持てる限りの槍を番え──放たれる。
散弾の様に放たれたそれは当然の様に豪速、まともに喰らえば最後蜂の巣所では済まないだろう。
──論外、死ぬ。
・走り続けて避ける
──キツイ、あの野郎偏差の構え取ってやがる。
・飛来する槍の隙間を潜り抜けて接近する
──
黄金の褪せ人はラダーンに向かって走り出す、突如の暴挙に赤獅子城から声が上がる。
「馬鹿な‼︎嵐に突っ込む様な物だぞ⁉︎」
「奴の後ろから降り注ぐ矢の雨もまだ続いている、諦めたのか?」
野次の声など一切気にせずメリナは戦場を見て思う、彼の戦闘に私達の常識等通用する筈が無い、あの弓矢…この場合は弓槍か。
アレを避け続けるのも弾くのも彼なら容易いだろう、しかしそうするとラダーンから意識を外さないといけなくなる、そうなればラダーンは楽々と彼に接近出来る、そこまで彼は理解しているからこそあの槍の嵐を躱し続けながらも一度たりともラダーンから視線と意識を外していない、ここからでは彼の表情はわからないが恐らく…いや間違いなく笑っているのだろうと確信があった。
ラダーンの第三射が放たれる、この豪弓から放たれる槍がもたらす威力は凄まじい、岩や鋼鉄製の防具であろうと容易く貫通それは地面が砂であるこの砂丘に於いて深々とした穴を開けることができるだろう。
加えて散弾状に放たれたそれは上段中段下段全てをカバーしている、つまり空に跳ぼうが地面に潜ろうがこの槍は当たる、直撃と行かずともこの速度故に掠めた所から肉の大部分を抉る事すら容易い。
加えてラダーンは弓手としても超一級の腕を持つ、この槍の散弾に対して左右何方かに回避を行ったとしても即座に第四射を持って撃ち抜ける程の早業を修めている。
そんな槍の群に黄金の褪せ人は突貫する、背後からは今の尚槍の雨が降り注ぎ正面からは槍の群、両者が交差するその刹那、黄金の褪せ人は低く、槍に対して体勢を地面と並行にし身体を高速で捩らせまるで螺旋状に回転しながら跳躍した‼︎
そしてなんと‼︎すり抜けたのだ‼︎槍の群を‼︎
要は二点、一つは高速で飛来する槍にある、高速で飛来するという事は即ち接触時間は1秒にも満たない、ましてや今回は標的の方も接近しているのだから尚の事‼︎
もう一つは黄金の褪せ人が槍の群に対し地と並行になる様に螺旋状に飛んだ事、これにより肉体という“面”を細くした“線”に、そこに回転を加える事で“点”へと変容させた‼︎
つまり槍との接触時間と接触面積を極小にしての回避、これを成し遂げたのである‼︎
そしてこの回避はただ危機から逃れる為ではない、反撃の一射の為の布石である、なんと黄金の褪せ人は回避の最中飛来する槍を一本くすね掴み取っていた、右手に掴まれた槍は黄金の着地と同時に投擲の構えと共に放たれる、その槍の狙いはラダーンの頭部、黄金の褪せ人の力を持って放たれるその投擲は容易く頭蓋を撃ち抜くだろう、しかしラダーンの反射神経の賜物か顔を横に逸らし直撃を避けた、しかしその槍は確かにラダーンの頬先を僅かに掠めた。
戦祭りの先手を取ったのはラダーンである、しかし先制ダメージを取ったのは攻撃に晒されていた黄金の褪せ人の方であった。
この攻防を見た全ての人間は流石に面食らった、何せ今黄金の褪せ人が見せた回避、それの失敗はは即ち死に直結する、しかし黄金の褪せ人は死の恐怖に恐れる事は無い、“恐怖”は“身体”の動きを大きく乱す、しかしその“恐怖”を支配したならば“身体”の動きに乱れは生じない‼︎
“恐怖”と相対しても立ち向かう覚悟と勇気が在るならば‼︎人間は神や悪魔にすら勝利し得る‼︎
故にこそ万人は勇気ある者を“勇者”と讃え称賛するのだ。
戦が始まってから未だ1分は愚か30秒程でしかない、しかし既に見物者達の手には汗が握られていた。
「…あの状態から回避して即座に反撃する黄金の彼もそうだが、それにすら対応して直撃を避けるラダーン将軍も大概だな、やはり理性を失ってなお“最強”は揺らがないという事か」
「理性が無くともその身に蓄えられた技量まで失われたわけではない、今の将軍は其れ等を本能や直感で扱っておるのだろう」
ラダーンがその巨大な身の丈の半分にも迫る二本の大剣を抜く、今の回避を見せつけられては単純に放っても当たらないという確信があったからだ、もう一度あの回避をさせられても当てられる自負はあるのだがそれは相手も理解しているだろう。
何よりここまで接近されては弓を番える隙に手痛い反撃が来るというのは予想に容易い。
「…二刀流か、悪くない」
ラダーンが抜いたこの剣こそかつて降り注ぐ星すら破壊した伝説の剣そのものであり最も手に馴染む武器だ、相棒もその身に合わず猛き嘶きを上げており気合い十分だ、故にこそ──これより本番である。
ラダーン戦はかなり細かく出していきますよ。
・黄金野郎
今回の回避はゲームに於けるフレーム回避を無理矢理再現したもの、尚相手が腐敗の影響がなかったり、それこそラダーン自身がこの回避をもう見たので次からは当てられる。
・ラダーン
槍の雨の出発地点を黄金野郎からにして追尾時間を長くするとかいう殺意の塊。
因みに技量が殆ど死んでないのは型月のバサスロと同じ理論、コイツが無窮の武練持ってなかったらそれこそもうマレニアだけだよ。
腐敗の所為で技量に若干曇りがあるが型月のバーサーカヘラクレス宜しく直感と本能と反射神経で最適解を叩き出す、つまりバサスロ+バサクレス=星ラダーン。
・観客達
刃牙のギャラリーみたいになった。