人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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弊作品は3部構成です、今は第一部の中盤辺り。

後今回は試験的に特殊タグの脚注を多用してます。


・雪の魔女

 黄金の褪せ人は近づけずにいた、それはラニの攻撃密度の凄まじさにある、それもその筈現在のラニの身体はある種の“完全無欠”と言えるからだ、両の手で魔術を行使しても対の両の手が空手となり、更にラニは霊体の面を持つ両面故に詠唱の口も二つ、従って呪文の詠唱を絶え間なく続ける事が可能。

 魔術を扱う者にとって腕と口が常人の倍ある事はこれ以上ない優位性となり、その上その身体を扱うのは他でもない“雪の魔女ラニ”自身である為に動きに支障が発生する理由はない。

 

 この世界に於いて魔術師を自称する者は数居れど()()()()()()を遂行出来ている者は限りなく少ない、その中でも魔女の名を冠する事が赦されたのは長い魔術史に於いても指の数程で足りるほどである、当然その中には事実上の最高位である魔術女王*1*2を冠したレナラや後に現代戦魔術師の母とも言われる双月のレラーナも学院に在籍していた若き日の時点で魔女の位を授かっている。

 ラニは魔術女王レナラ直々に雪の魔女を名乗る事を許される程の才を知らしめる程の魔術師である、父親と同じく燃える様な赤い髪を持ちながら母親譲りの魔術の才を見せ独自に雪の魔女に師事し見事これを極めレナラが見出した月に自身が修めた魔術を練り込む事で新たな月…つまり星を見出したのだ、これが彼女が雪の魔女と言われる所以である。

 

 そんな彼女が魔術を扱うことに特化させた躯体を自らの身体として動かす、それは最早意思を持った災害に等しい、事実基礎的な性能ではレナラを圧倒して尚余りあるのだ。

 ラニは各手に仕込まれた魔術触媒の宝石に魔力を流し魔術を行使する、無論これらがなくともラニは魔術を行使出来るが著しく威力は下がる、しかしラニ自身が膨大な魔力量と規格外な出力を誇る為に問題とならない、前提として優れた魔術師程触媒・詠唱等の手順を無駄や不要としこれを省略する、そもそもとして魔術師の中でも魔女や魔導士の位を冠する者達は魔力生成・行使の水準が既存の其れ等とは一線を画しており基本的にその人物達の詠唱は速すぎて聴き取れない、或いは複雑難儀で読解不可能という領域にある為に事実上無詠唱で魔術を行使している様に見えるのだ。*3

 

 

──魔術の威力と速度だけじゃねえ‼︎魔力の精密操作性も桁違いだ‼︎指を弾いて不可視の斬撃やら弾やら滅茶苦茶に飛ばしてきやがる‼︎*4*5

 その上──。

 

 

 瞬間黄金の褪せ人は身を拗らせ大きくその場を飛び退く、直後蒼く太い斬撃が地面を割った。

 

 

──これだ…‼︎あの剣から放たれる斬撃‼︎これの威力がまずとんでもねえ、まともに受けたら真っ二つ‼︎恐らくレナラやレラーナが使ってた輝石のアークや輝剣の斬撃魔術の応用…か?

 なんにせよあれは単なる斬撃じゃねえ、一つの斬撃に見えるがその実、極めて微小な氷の魔力の粒の集合体、それが数万、数億数兆と重なって斬撃の形になっている‼︎

 問題なのはその一粒一粒の温度‼︎割れた地面は兎も角としてその溝の周囲が指の幅とは言え瞬間的に凍る程の超低温、これはとどのつまりあの斬撃は対象を“斬る”事を目的としておらず“氷結”させるのが目的という事…とんでもねぇ剣を引っ提げて来てくれたもんだ、恐らく俺が使ってもこうはならんだろう。

 その癖にあの女、こんなにバカスカ撃っても全く息切れ(魔力切れ)の気配が見えない…恐らく魔力量が馬鹿なのと極めて効率良く運用してるんだろう、レナラと同じだな。

 

 

「どうした?近づいてこないのか?私はまだここから一歩も動いてはいないぞ?」

 

 

「もうちょっと待ってろ、否が応でもそこから動かしてやるからよ」

 

 

──とは言えやはり以前から懸念していた俺の弱点(射程距離の無さ)が浮き彫りになったな、ラダーンとの戦いで幾らか改善したとは言え完全に克服したわけではない、どうにか近づかねえとな。

 レナラ達やラダーン、そして今のラニに続いて、魔術についてある程度理解出来てきた…魔術師って奴は大小の規模問わず魔術を行使する際には触媒や詠唱の有無に限らず、必ず発生の直前に“魔力の起こり”の様な物がある、よくよく考えれば当然だ。

 

 

 例えば仮に…前に向かって走るとする、当然その際には自分の身体の重心は前方に寄っていなければならない、言うなれば“前に出ようとする意志”そのものが身体に出る、それが動きに於ける“起こり”である、従って達人同士の戦いとはこの起こりを如何に掴み取り先手を取るかで勝負か決すると言っても良い。

 これは魔術師同士での戦いにも同じ事が言える、術式を発動させる際の僅かな魔力の流れ、起こり、其れ等を読み取って相手の術を潰し自分の利を相手に押し付ける…魔術師同士の争いとはそういう物なのだ、そして魔力の起こりを完全に消す事はラニを始めあの魔術女王レナラですら不可能なのである。

 

 

──狙うとするなら起こりが発生して実際に起動するまでの極僅かな隙…一秒にも満たない時間だがそこを狙うしかねえか…全く試されてる様な気分だぜ。

 とはいえこの魔力の嵐を潜り抜けていかねえとダメなのも事実、本当はもうちょい隠しておきたかったが…()()を使うしかねえか。

 

 

 ラニの大剣と魔術にて黄金の褪せ人の前方が埋まる、対して黄金の褪せ人は回避の素振りを見せずただ悠々と前に歩き始めた、それを見たラニは流石に訝しむ。

 

 

──回避を捨てたか?それとも魔力の障壁で防ぐか?

 随分と舐められた物だ、にわか仕込みの魔力の障壁で防げる程私の出力は低く無いのだがな。

 

 

 魔力による攻撃に物理的な防御は効果が薄い事は周知の事実、魔力による攻撃には魔力による防御しか意味を成さない、しかしそれも防御側の出力が攻撃側を上回っていた場合のみ、出力で劣る者が防御に回った場合その壁は薄氷の様に脆く砕け散るだけだろう。

 事実ラニの思惑は正しい、今現在エルデの地に於いて、純粋な魔力の出力でラニに勝る存在は片手指で足りる程、つまり事実上ラニの魔術を防ぐ手段は皆無に等しく必然的に対処法は回避か反射、そもそも発動させないの何れかになる。

 そんな思惑を他所に黄金の褪せ人は掌から魔力を放出する。

 

 

──やはり魔力障壁か、構わん、その薄っぺらな壁ごと消しとばして──。

 

 

 ラニの思考がそこで停止される、黄金の褪せ人が放出した魔力の形や波長が既存の障壁と違った為だ、黄金の褪せ人が放出した魔力は、なんと蠢いていた‼︎しかも確かな()()となって‼︎

 その力場は内側から外側に向けて回転していた、そしてその力場に触れたラニの魔術は軌道を大きく逸れ、斬撃は中心をかき分ける様に広がって行く。

 

 

「俺は信仰ってのに興味はねえが…旅の途中メリナから聞いた事がある、遠い遠方の…エルデの地の遥かその向こうの地に…祈りで海を割りその海底を歩いた人間が居たとか居ねえとか…俺のこれは魔術によるものだが…こんな気分だったんだろうな」

 

 

──魔術…⁉︎知らん術式だ、魔力の流れから見て輝石魔術…新しく見出された物か‼︎

 形式としては“永遠の暗黒”に近しい、とても母が使う様な代物ではないが…成程大凡他の()()()が構築した術式を更に改良した物だな、これの基盤を創り上げた奴は中々目の付け所が良い。

 あの魔術は返報の様にタイミングを見計らう必要もなく常時展開も可能、その上で暗黒と異なり燃費も良い、魔術のみを対象とした魔術ではなく魔力そのものに干渉するという点も良いな、まだこれだけの逸材が残っていたとは。

 

 

 思案するラニを他所に黄金の褪せ人は攻撃を凌ぎ切り、ラニが魔術を発動するよりも早く拳打を繰り出す、それをラニは剣の面部分で防御、なんとか直撃を避けるも威力は殺せても衝撃まで殺せる訳ではない、結果としてラニは大きく後方に下がる事になる。

 

 

「…まさか本当に私を動かすとはな、いやそれにしても驚いたぞ、まさか魔術で私を一杯食わせるとは。

 

 

()()()()()()が構築した()()()()()だ、まあ流石にそのままだと使い辛かったんで俺なりに改良させてもらったが、効果は的面の様だ…お陰でアンタを動かせた

 

 

 時は黄金の褪せ人がレアルカリアを出立する前に遡る…

 

 

──ん…トープス先生じゃねえの、随分と身なりが整ってるな。

 

 

──ああ、お前さんもここに居たのか、はは…私なぞを先生とは、お前さんの方がもっともっと凄いだろうに。

 

 

──少なくともアンタが居なきゃ俺は魔術を知ろうともしなかったさ、あの時のアンタの教えは間違いなく今の俺に糧になっている。

 

 

──それは良いことだ、かくいう私は新たな術式を構築してね、今し方女王レナラ様に新たな魔術として認めてもらった所なのだ。

 

 

──そりゃ凄まじい偉業だな、あの人並大抵の代物じゃ認めねえだろ。

 

 

──はは…それはまあ、色々あったのだよ。*6

 

──これはまだまだ改良が必要ではあるのだが私ではどうにも…そこでお前さんにこれを托したい、きっと役に立つ筈だ。

 

 

──まあ…そういう事なら有り難く頂いていく。

 

 

 そうして黄金の褪せ人は魔術を授かり学院を出た。

 

 

「…驚いたな、よもやあの厳格な母が新たな魔術師を認めるとは」

 

 

「それは俺も驚いてる」

 

 

 今し方黄金の褪せ人が扱ったのは後にトープスの力場と称される物、本来この魔術は魔力を点に発生させてそれを膨らませる様にして力場を生成する物、それを黄金の褪せ人は発生した魔力の力場の流れを操作する事で最小限の燃費で持続的に発動させる事を可能とした。

 

 

「大した奴だ、新たに見出された魔術を難なく戦闘に組み込むその才能、叔母上が聞けば喜ぶだろうな、あの人は当時廃れつつあった戦魔術師という概念を復興した程の経歴を持つ、母が見出した魔術を叔母上が戦闘用に改良するなどして互いに高め合っていったんだそうだ」

 

 

「…レナラが魔術師に対して求める基準が高すぎるのって自分の腕とレラーナの所為なのでは」

 

 

「ふっ…気がついたか」

 

 

 黄金の褪せ人は頭を抱えた。

 

 

「青天井な自分達と比べてんじゃねえよアホか」

 

 

 それは、尤もな言葉であった。

*1
最高冠位は魔導元帥、または魔法使いとされるが、この二つは魔術師の領域から大きく外れた存在の為事実上存在しないとされている、遠い過去には存在した…らしい

*2
因みに男ならば魔術王

*3
つまりレナラは滅茶苦茶手加減していた、事実上の孫との戯れで本気出すわけ無いだろ。

*4
モーションは宿儺の斬撃飛ばしに近い

*5
不可視なのは仕様、夜の魔術という見え難い魔術を飛ばす代物がある、完全不可視になってるのはラニの腕、完全不可視の攻撃を難なく捌くな

*6
カーリア魔術の返報から着想を得て且つ輝石魔術にしか適性がない者にでも扱える様に術式基盤を構築しサリアの魔術基盤である夜の魔術の秘奥“永遠の暗黒”の存在を読み取り其れを簡略化した術式を手元で発動させ詠唱を止めても僅かに反応が滞留する様に構築した等々の様々な説明をレナラと一対一でやった。




そろそろナイトレインの要素ぶち込む準備するか…(タグを編集しながら)

・黄金野郎
 敬える者にはちゃんと敬意を持って接する、その基準は過程や結果がどうであれ頑張ってる者や純粋に強者。
 大体の事はそういう生き方もあるとして割り切ってるので接ぎ木や力を得る為に贄を使うのは特に気にしないしなんなら腐敗の王のそれも生存競争の一環として割り切ってる。
 嫌悪感を募らせるのは、自分で事を為し得ようとしない者。

・雪の魔女ラニ
 単純に強い、遠距離で攻撃し体勢が崩れたら大剣でデカい一撃をぶち込むスタイル、割とAC6みたいな挙動してる。
 とはいえ本人が戦乱時代で戦場を駆け抜けた訳ではないので、動きは割とシンプル、ゲーム的に言うならばエルデ式ディレイが無い単調なボスと言った感じ。

・魔術教授トープス
 圧迫面接()を乗り越え祝:最新の魔術師&魔術教授の称号を獲得し自分の教室を授与されるという凄まじい成り上がり方をした御仁、盛り過ぎかと思われるが本編でもこの人が作った魔術とんでもない刺さり方する奴いるから…
 裏話として弊作品のトープスのキャラを作り上げるに至ってモチーフにしたキャラが居ました、型月のエルメロイ2世です。

・魔術女王レナラ
 事実上の魔術師の最高権威、幼少の頃からレラーナと魔術の高め合いをしていた為に魔術師の基準が自分とレラーナになってた人、青天井を基準にするな。
 トープスが新たな術式を発表しにきた時にはその仕組みを即座に看破した上で説明をさせた、魔術師には他者に術式を説明させれるだけの論文を書ける能力が必要ですので…じゃなきゃスクロールとか魔導書とか残せないからね。
 この全てを乗り切ったトープスに対して内心ハイテンションだった、具体的には下の通り、舞台から降りたからか知らんが父方の祖母と違い余生を滅茶苦茶謳歌してる母方の祖母である。
『これが私が求めてた魔術師像ですよ‼︎』
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