かつて狭間の地の地下深くに高い技術と知性を持った人間、その者達を中心にして栄えた都市が存在した。
そう、お前も知る様に永遠の都と呼ばれる物だ。
写し身の雫を筆頭にかの者達は模倣、複製の類が優れていた。
そして遂にはこの短剣…大いなる意志の端末たる指を傷付ける事が可能な物を創り上げたのだ。
それこそが永遠の都の最大の罪、そうして大いなる意志は
三つ目の流星をこの地に寄越し、三つあった都を滅ぼしたのだ。
ノクローン、ノクステラ、そして…ノクラテオ。
これ等は一夜の内に消え去ったという。
大いなる意志としてもこの短剣の存在は拙かったのだろうな。
物質の模倣複製を得意とする都の民がこの短剣を量産してはな…いや、それ自体は恐れてなかったのかも知れん。
もしかしたら大いなる意志はかの者達の技術が
神である己達に届きうる事を恐れたのか、或いは…
今となってはもう…知り得る事も出来ないがな。
話が逸れたな、滅ぼされた者達は後にこう記している、曰く──
【
地下空間に擬似的な星空をも創り出した奴等が
こうまで言ったのだ、余程の物を見たのだろうな。
そして恐らくそれこそが我等星見達が
長年探し求めた物…だった。
今となっては求める理由も無いがな。
◆
ラニとの戦闘を終えた後に一息付ける為、後いい加減右腕を治したいのもあって今絶賛療養中だ。
いや仕方ない、これはもう本当に仕方がない事なのだ、ラニも己も回復系の術を持ち得ないし傷を癒やし体力を回復させるという聖杯瓶とやらには数が限りがある、ならばとメリナが扱う回復の祈祷を持って我が身を療養させるのが一番率が良いという物だ、いやこれは本当仕方がない事だ。*1
その間にラニが永遠の都について語ってくれた、なんともまぁ壮大な話だなぁと思いながら結構呑気してたが、しかしこれ程の規模の都を一夜にして消すとはその流星とやら、侮れんな。
ただ都を滅ぼすだけならばレナラやラダーン、それこそやり方によってはおのれやゴドリックですら出来よう、しかし我々はあくまで人の身、一度に攻撃できる規模と範囲には限りがあり一夜の内に都とそこに住む人間、即ち文明そのものを消すとなると少々厳しい物がある、やる意味が無いというのもあるがな。
しかし流星…
これまで竜やら兵器、英雄半神やらと色々と戦って来たが星と戦う想定はしていなかった。
これは僥倖だ、かつて己が知り得る強敵は半神のや無双の英雄止まりであった、それも良い。
しかしなんという巡り合わせか、今や己は星そのものと相見えるかもしれんのだ、浮き足立つのも仕方がないというものだ。
ラニの案内の下、道なりに進んできた*2がどうも次は此処を通り抜けて行かねばならんらしい。
一面見渡す限りの赤、血液よりも深い赤をしている深紅の湖、腐れ湖を渡らねばならん訳だ、うぅむ…地上のケイリッド、その一端にて垣間見たエオニアの沼よりも更に深い赤、然も禍々しさも一際だ。
して、どう渡ろうか、いやまぁ自分だけなら難なく渡れるのだがいかんせん今はメリナもラニも居る*3二人位なら担いで走れるが…軽いし。
「悩む必要は無いだろう、腐敗の源泉とは言え所詮液体、ならば凍結させてしまえば良い」
そう言ってラニが氷の魔術で湖一面を凍らせてしまった、やはりこの女、先程は全然力を出していなかったな、この範囲を一瞬で凍らせるとは。
ともかくこれで難なく渡れる様になった、足元が冷たいのが難点だが…まぁこの得体の知れない水に触れるよりは遥かにマシであろうよ。
対岸の遺跡に辿り着いた際に例の蟲達が崇めている祭壇の様な物があった、蟲達を自分の姿を認識した瞬間それはもう怒髪天を突く勢い*4で殺意昂って襲いかかってきた。
はて、此奴等に此処まで殺意を向けられる様な事をした覚えはないのだがな。
「腐敗に飲まれたラダーンを殺したでしょ、多分それで怒ってるんだと思う」
あぁ、そう言う…武人ではない野生ゆえに生存競争に怒りも憎悪も無いと思うがな、殺さねば殺されるから先に殺した、この世は何処まで行ってもその循環であろう、そこに怒りも憎悪も関与する間はないだろうにな。
何はともかく襲いかかってくるのであれば捻らねばならん、大人しく道を譲れば生き残れた物を…無謀は勇気とは違うのだが、ままならんな。
遺跡群の蟲共を蹴散らした後に水の流れ行く場所を見る、どうも此処から引力の様な物を感じ取ってならない、まるで深淵が我等を手招きしているかの様だ、その招待に肖っていざ向かってやろうか、さて鬼が出るか蛇が出るか…。
ヒトはソレを始まりと呼び終わりと呼ぶ
或いは創造かはたまた破壊か
宇宙・神秘・星々・流星
神・又は悪魔
始まりの流星は生物に知性を与えた
第二の流星は世界の在り方を変える律を与えた
第三の流星にも意義があった
かつて無知蒙昧たるヒトは愚かにもソレに憧憬を抱き
不遜にも手を伸ばしてしまった
ソレは応えた、有無を言わさぬ破壊を持って
ソレにはその機能しか備わっていない故に
ヒトはソレを
それこそが第三の流星・
先程までいた赤い水とは違い清く透き通った水が流れる洞窟の更にその奥、グラムはその広間の光景に目を奪われた。
否、正確に言えばその広間をまるで自分の縄張りかの様に主張しているソレの姿に目を奪われていた。
クワガタを彷彿とさせる牙、或いは角
三対の腕、指は六本
二対の蜻蛉を思わせる羽
無機質な水晶、されど星々を思う長い胴体
その先端にある蠍を思い出させる鋭い針の尻尾
その全ての特徴を彼は余す事なく目に焼き付けていた。
異形だ、紛れもなく異形だ、さまざまな生物の特徴が継ぎ接ぎになった様なチグハグな感──だがどうだ、目の前の生物?は其れ等の特徴を一つにしてもまるで違和感が無い、寧ろそれでこそ一つの完成形であると言わんばかりの存在感、全生物にこの姿を見せたなら間違いなく目を奪うだろうその姿は何処か神々しく、美しさすら感じさせ、そして同時に恐ろしさをも孕んでいた。
と、脳内で反芻させる事僅か一秒。
グラムがソレの姿を確認してから僅か一秒しか経過していないが彼の中では既に何時間分もの情報が入っていた、加えるが彼とソレを目視して経過した時間は僅か一秒だ。
しかし彼にとってその一秒で十分であった、その一秒を持って彼は、目の前の存在が今まで自分が出会ってきた何者よりも圧倒的に怪物であることを理解させられた。
「これは…流石に予想外と言わざるを得んな…‼︎」
空中にて鳥栖を巻いていたソレも黄金のヒトを目視した、両者の目と目が合う。
「星の化け物…‼︎稀有な経験だ、お前の強さ、悉くを平らげようか‼︎」
黄金の人間の雄叫びに呼応する様に星の怪物が怪しく光る、今両者の戦いの火蓋は斬られた。
はい、ラニ編ラスボスを飾るのはご存知アステールです、馬鹿強いです。
・黄金野郎
ラニからアステールの概要を聞き、現地に赴き実物を見た、その姿に目を奪われた。
・メリナ
祈祷で腕を無理矢理回復させた。
ラニが腐れ湖を凍らせたのをみて黄金野郎との血筋を感じた。
・語り部ラニ様
腐れ湖を渡らなきゃだが人形とは言えこんな汚水に触れたく無いので冷気魔術でさっさと凍らせた、サラッと青キジみたいな事やってる。
・アステール
設定だけ見るとゲームのラスボスを張っててもおかしく無い奴。
前作の不甲斐無さから一変こっちでは馬鹿ほど上方修正しました、次回を待て。