人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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大変お待たせして申し訳ございません。

【前回の補足:空間転移と転送魔術の違い】

 前提としてどちらも同じ瞬間移動の系譜の技になりますがほんの少しだけ差異がありまして、レナラやラニ等が扱う瞬間移動はゲームで言うところのファストトラベルやソウル系列に連なる篝火事の転送です、これは読んで字の如く。
 そしてアステールが扱う瞬間移動は現在位置から所定の位置まで何の制限も無しに跳べるというもの。
 双方の違いとしては転送は目的地に何かしらのマーキング等の印が必要な事(原作における祝福)
 またドラゴンボール宜しく強い気配の持ち主も同様にマーキングの役割を担います、ラニが以前黄金野郎の転送を妨害し自身の元に手繰り寄せたのはそれの応用、わかりやすく言えば口寄せの術です、勿論高度な技。
 対してアステールのソレは其れ等の下準備は一切必要無く本人の望む場所に自由に飛べます、これには座標の計算能力や位置把握能力等…ちょっと頭が痛くなる様な難しい事の計算を行う必要があるので一々術の発動にそんな手間を掛けられないレナラは早々に此方の方の術式の会得を投げ捨てました。(一応やろうと思えばやらん事はないが脳味噌が焼き切れる)

Q.要は違いは?

A.ヤードラット星の瞬間移動と界王神様が使う瞬間移動位違う。


・天体制圧用最終兵器

 アステール、かつて地下に於いて繁栄した大都市文明を悉く破壊した正に怪物。

 その正体は創造主たる大いなる意志にとって不都合な生命体、文明、即ち不要な存在をその天体ごと消滅させる為に作られた天体制圧用最終兵器である。

 重力、隕石、空間転移、宇宙線等の様々な機能を兼ね備えたソレは正しく破壊の権化と言っても過言では無く、その所業から《悪意ある流星》と呼ばれるに至ったが実はアステール自身に悪意はない、その評価は人が付けた物でありあくまでアステールは自身の役目を全うしただけに過ぎない。

 アステールは創造主(大いなる意志)により製造されエルデの地に打ち込まれた、夜の都の民と文明の根絶という使命を負って赴いたソレは見事に完遂、後は機能停止を待つのみとなっていた。

 そう、狭間の地に飛来したアステールという種族にはそれしか役目がない、生物として本来持つべき筈の三代欲求が無く、繁殖方法も極めて大地や環境を傷つける方法故に容易に行えず、それどころか喜怒哀楽の感情すら無い、ただ創造主(大いなる意志)の指示を全うするだけの、言うなれば破壊兵器の様な存在、それがアステールという生き物の全てである。

 

 アステールは破壊活動を行う際に重力を扱う関係で高次元的な思考能力を持っており凄まじい速度の計算処理能力を誇りある種の自立思考能力を持ち合わせている。

 その高度な思考を持ってして尚目の前の生物に対して感じ取ったのは“不可解”という物。

 何故ならアステールが知る生物とは自身の姿を見て逃げる物や動けなくなる物ばかりで目の前の物の様に向かってくる物は殆どいなかったからだ、ましてや自らの身体に傷を付ける物等皆無だった故に生じた不可解な感覚がアステールを襲う。

 

──宇宙線は絶え間なく浴びせている筈、何故死なない。

 

 通常ならば漏れなく死に至る筈の宇宙線を浴びて尚目の前の生物は向かってくることをやめない、絶え間なく与えられる攻撃は軽微に収まるとはいえ損傷を与えられているというのが最早異常事態、アステールは生まれてから初めて経験する数々の不可解(エラー)によって後手に回らされていたのだ。

 

 暗星に猛攻を続ける黄金だが今やその目や耳からも絶え間なく出血が続いている、攻撃を受けた様子はない、彼は全ての攻撃を回避している。

 戦闘の流れを掴んでいるのは黄金の方だ、しかし傍目から見たなら消耗しているのは黄金の方でありその証拠に彼は肩で息をする程に疲弊していた。

 

──毒の類か?だが植物性の物でも動物性の物でもない、かと言って腐敗のソレとも違う…新種か。

 視界が効かなくなってきた、吐き気が止まらねえし痙攣も始まった、もって後数分か…悪くない。

 

 

「ラニ、私も出る」

 

 その様子を遠方から見ていたメリナが参戦の意を示すがそれに待ったを掛けたのが他でもないラニである。

 

「待て、出てどうする、何が出来るというんだ、ただ死ぬだけかもしれんぞ」

 

「関係ない、例え何も出来なくても私は戦う」

 

──やはりあの男の血族か、血は争えんな…

 

「待て、闇雲に出てもすぐに殺されるだけだ、いいか──」

 

 

 アステールの重力や腕や尾などの猛攻を躱し続ける黄金の動きに軽快さが最早欠けている、アステールが放射し続けている宇宙線の影響が確実に黄金の身体を蝕み続け体力を消耗させていた。

 

──俺は、今までで色んな奴と戦った、その中で分かった事もある、己が圧倒される程の強者と出会う事で、短時間の内に感覚が鋭く練磨されて行くのが分かった。

 人間は…いや、生物というのはギリギリの命の奪り合いの最中で限りなく実力を発揮し、大きく飛躍させるというのを理解した。

 

 戦う者の成長曲線は必ずしも緩やかではない、確かな土壌と一握りの才能と経験値、後は些細なキッカケで人は如何様にも変貌する。

 土壌はあった、糧となる才能も経験値もあった、そのキッカケも。

 だがそれ以上に──

 

黄金の体が膝をつく。

 

──…限界か

 

 ──だがそれ以上に、事を成し遂げるだけの体力が既に残ってはいなかった。

 

 膝をついた黄金は血が混じった吐瀉物を撒き散らし全身の痙攣が止まる事を知らない、目線は定まらず武器を握る手には力が籠っていないのがわかり最早限界なのは目にも明らかだ。

 動きが止まった黄金にアステールは尾の針で狙いを定める、トドメを刺す腹積りだ、動きを止め最早攻撃するだけの力も残ってない目の前の生物は、それでも尚未だ目が死んでいない。

 アステール自身──全く経験した事はなかったが、理屈としては知っている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 下手に刺激してはどんな化け方をするかは判らない、まだ小虫の内に…まだ自身の手に負える内に殺さなくてはならない。

 重力で潰すには死ぬまでに時間が掛かる、かといって直接手で触れて殺すのは危険だ、ならばまだ手傷を負っても問題ない部位の尻尾の針を使用し、脳天を貫き殺す事で確実なるトドメを刺す。

 

──ここまでだな、流石に星の怪物……想像以上に強かった。

 

 黄金は数秒後自身に迫る死に恐怖は無かった、後悔も無かった、あるのは自身に対しての僅かな失望と諦観のみだった。

 死は皆平等にやってくる、それは遅いか早いかだけの違いであり、当人が受け入れるか否かだけの話。

 しかし(それ)は、得てして受け入れた当人以外の人物からは到底受け入れ難い物でもある。

 

 アステールの尻尾が黄金を貫くより先に一筋の青い彗星が黄金の身体を弾き飛ばし、その先に備えていた霊体のクラゲが緩衝材となり黄金を受け止め、そのままゆっくりと地面に降ろした。

 突然の出来事に僅かばかりの停止が生じたアステールの顔面付近に四つの小さな結晶球が浮かび上がり──炸裂する。

 飛来した破片が直撃するもアステール自身には僅かばかりのダメージもない、攻撃した下手人は言うまでもなくラニである。

 

「ダメージ無しか、硬度が足りなかったな」

 

 一方吹っ飛ばされた黄金は小さな黄金樹を形成したメリナの手によって治療を受けており側には霊体のクラゲと狼達が護衛に回っていた。

 

「…手を貸してくれと頼んだ覚えは無いが」

 

「手を出すなとも言われてない、それに貴方に今死なれては私も困る」

 

「…確かにな、だが今ので確実にアイツの標的にお前達も入ったぞ」

 

「何もしないで死ぬならやるだけやって死ぬ方がまだマシ」

 

 その発言に黄金の表情が緩み立ちあがろうとするもメリナに制止される。

 

「今のまま向かってもすぐにやられる、なら少しでも回復した方がいい」

 

 言われるがままに安静状態にされた黄金はふと戦場の方に視線をやる、そこには依然変わらず暴れ続けるアステールと、三人のラニの姿があった。

 

「…あいつ増えてねえか、いやまぁ(レナラ)も自分増やしてたし納得といえば納得だが、あれ使えば勝ってたろ」

 

 ラニはかつてレナラが行った様に自身を複製し召喚する事で戦況を有利にする様試みた。

 しかしレナラの様に魔力だけで身体を構成したのでは肉体の強度が足りず、また魔力が枯渇すれば魔力で構築された身体はすぐに露散してしまう。

 そこでラニは身体を構築する際に自身の冷気魔術を術式に組み込む事で氷で出来た分身体を生成する事に成功、これにより強度と持続時間の延長を両立させ且つラニ本体と変わらぬ出力で術を行使可能となった、その分多く魔力を消耗してしまう為同時に出せるのは二体が限度である。

 加えて、この様に分身にも魔術を扱わせるとなると相応に魔力を分配せねばならず下手を打てばただ魔力を無駄に消費するだけに終わるというかなり博打な技でもある。

 

──氷結は効果が薄い、となれば物理的な術で削る他ないが、彗星アズールは使えばすぐに魔力が枯渇する、かといって生半可な物では傷一つ付けることすら叶わん。

 

 ラニが思案する最中でもメリナが召喚した霊体達が攻撃を続けるも成果は振るわない、その隙間を縫う様にラニの分身体が様々な魔術を直撃させる事でアステールの気を散らす事は出来ている、彼女達は理解しているのだ、この戦いの勝利の鍵はあの黄金であると。

 

──もう分身達の残り魔力が少ない、ならば分身体の魔力を基に術を形成し双月をぶつけるしかない、分身は消えてしまうがこのままだとジリ貧で殺される…‼︎頼む、どうか効いてくれよ…‼︎

 

 双月を放つラニの意図を霊体の狼達は即座に理解、自らを囮として陽動として動いたのだ。

 双月の魔術、魔力を圧縮し月状に形成し地面と衝突させその魔力の奔流にて敵を葬る大技。

 しかしその真髄はその圧縮された魔力塊を直撃させる事で衝突時に生じる全魔力を対象に同時にぶつけるという物、その瞬間火力は既存魔術を遥かに上回る。

 

 狼の霊体に乗り込み機動力を得た分身達から見ればアステールの動きは鈍間そのものであり難なく攻撃を掻い潜り頭部に到着、瞬間ラニが魔術を発動させる。

 双月を形成する一瞬の溜め、アステールはその隙を狙うも残り一匹の狼に乗ったラティナによる精密狙撃により注意を逸らされる。

 無論到底アステールを傷つけるには足り得ない威力だがそれでも狼の機動力によって四方から物が飛んでくるのは目障りではある、その一瞬の気を逸らしが今のラニが最も欲しかったもの、そして彼女は戦士達の様に優れた武勇は持ち合わせていないがその一瞬の隙を見逃す程抜けてもいない。

 

 ラニの双月がアステールに直撃し凄まじい戦塵を巻き起こす、文字通りラニにとっての起死回生の一撃ではある、確かな手応えをラニは感じた、しかし──

 

星を堕とすには未だ足りない。

 

 損傷はある、事実としてアステールの頭部は大きく焦げ目が付き罅が更に広がり破片の様なものが零れ落ちている、それでも未だアステールという巨星を堕とすには未だ足りないのだ。

 

──くそっ…‼︎たいして効いていない…‼︎だが──‼︎

 

『一手』

()()()足りなかったのは後一手のみ

そう──ラニで一手を補えないのであれば

他の物で補えば良い。

魔術師とは足りなければ他で補う生物故に

 

 双月が直撃し僅かに怯んだアステールの頭部よりさらに上部に()()()は居た。

 そう、『一手』足りなかったのは()()()も同じ、通常でもアステールに傷を付けるだけの攻撃力を有していたが致命打には足り得なかった。

 自分だけでは足りないならば、それこそ横に居る人間でも使えば良い、お互いの実力は直前の戦闘で知り得ているのだから。

 

暗星の上部より黄金の彗星来たる。

 

 洞穴の天井を足場に地面に向けて跳躍、その勢いを更に()()()()()によって加速しそこに回転を加える事により極まった質量から繰り出される斧による攻撃は最早兜割り等という生優しい表現では済まされない。

 類似した技に獅子斬りという物があるが、それはかつて将軍ラダーンが率いた赤獅子の軍が得意とする技、その起源は若き日のラダーンが赤い獅子と対峙した際に当時編み出したこの技を使用し討ち取った事が起因する。

 そして成長したラダーンは既存のこの技に自身が修めた重力魔術を加える事で更に技を磨き上げ、遂には完成させ後に軍の名前の由来とされる。

 

つまりこの黄金が繰り出す技は本家本元の──‼︎

 

赤獅子斬り‼︎

 

 ずっと積み重ね、多大に蓄積された損傷は最早無視できる物でなく、そこにとどめの一撃、アステールの頭部の目が大きく裂け流石のアステールも声にならない声を上げる。

 アステールにとって痛みとは日常的な物ではない、従ってその衝撃は十分、更に未経験なの事もあり数秒の硬直、その数秒がアステールの命運を分けた。

 

──既に黄金は次の攻撃の構えに入っている

 

 構えはこれまで散々見た例の高速攻撃の構え。

 

──従来の様に撃つんじゃ威力が散るからコイツには効果が薄い、ならばどうするか…‼︎

 

 この技は超再生を持つ腐敗の王に対して黄金が編み出した物、人体前面部に存在する急所九箇所に攻撃を九発ほぼ同時に撃ち込むという対人絶技。

 しかしアステールのサイズは人間のそれを優に上回る為に効果が薄かった、その上でアステールの甲殻は非常に硬くその装甲を貫くのも容易ではない。

 

其れ等の問題に対しての解は

既に見出されている

 

 無防備なアステールに向けて連撃が放たれる、しかしそれまでと違うのは全く同じ位置に連撃を放つ超精密攻撃であった事。

 黄金が出した答え、それは一撃一撃を散らすのではなく一点集中にぶつけるという物、これにより範囲はかなり縮小する代わりに全ての衝撃が一点に集中する、言うなれば超貫通特化型の九連撃。

 

暗星の眼が遂に消失する

 

 一点集中攻撃によりアステールの第三の眼が破壊され均衡が崩れた。

 

──奴の眼を砕いた…⁉︎いやそれよりも今のはラダーンの…‼︎

 

「お前、いつ重力魔術を会得したんだ」

 

「今さっきさ、これ以上無い手本の奴と戦って来たからな」

 

「見ただけで覚えたというのか…お前も十分“規格外”だな」

 

「それより早めに決着を付けて、それ(黄金樹に誓って)はあまり長続きしないから」

 

「本当にどうしようもなくなったらお前に託した()()に頼るぞ、全員限界だからな」

 

 均衡は崩れた、最早星は絶対の位置を示さない、暗星が堕ちるまで後僅か




次回決着です、一カ月以内に上がると良いなぁ…

・黄金野郎
 今回の射殺の百頭は技が進化した訳じゃなくて新たな段階に進んだ物、要は使い分け。
 拡散型は極まった身体能力だけで扱えるけど一点集中型は技量が要る、因みに射殺す百頭の連打を“全く同時”に撃てたならアステールの装甲位なら普通に抜ける。
 まだアステール単独撃破はむりなので総力戦になった。
 因みに重力で瞳切り裂くのは前作からのオマージュです。

・メリナ
 遺灰や祈祷を駆使するサポーターとして大活躍、メリナがいなかったら黄金は宇宙線の影響で死んでる。
 メリナが使う黄金樹に誓っては効果時間が原作より少し長い。
 切り札要員その1

・ラニ
 童磨戦法使ったけど相手が悪すぎた、同格迄の生物なら余裕で勝てる。
 切り札要因その2

・天体制圧用最終兵器アステール
 重力に載せた攻撃で瞳を切り裂かれる運命からは逃れられなかった。
 滅茶苦茶頭殴られてるけど逆に言うならそこを殴らないと全然ダメージにならない、その辺は原作と同じ。
 弊作品では喜怒哀楽等の感情はなく例の異名も人間が勝手に付けた設定。
 この世界に於ける宇宙線は地上に存在する凡ゆる毒や腐敗毒よりも強力な毒として扱ってます。
 なんかあの黄金生きてますけど普通は即死です、メリナとラニは肉体の組成が水銀と人形なので生身の奴より耐性がある、霊体達は尚更、それでも浴び続けて良いわけではない。
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