人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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※ラダーン戦から一日位しか経ってません


汝星を堕とす者

 暗黒の落とし子アステール、その額に宿る瞳は標的を捉える為だけの物ではない。

 その効力はアステール自身が精密且つ円滑な重力操作を行う為の補助機の様な物であり唯一堅牢な装甲で覆えなかった部位である。

 

今、その瞳が破壊された。

 

 それが意味する事は一つ、現在アステールは従来通りの重力操作が極めて困難な状態にある‼︎

 悠久の時を生きたアステールにとっての何度目かの未知の事態、死なない生命、自身を傷つける生命、何よりもこの様な不具合を起こした己自身。

 今日アステールが経験した其れ等全てが其れ迄の自分にとって未知の経験である。

 しかしそんなアステールにも一つ理解している事がある、これら全ての出来事を起こしたのは目の前の、先程まで虫の息だった小さな黄金の生命であるという事、それを理解した瞬間にアステールの思考は一つの事に埋め尽くされる。

 

──全ての細胞の隅々に至るまで今すぐこの生命を殺せと警鐘している‼︎

 損傷していたとはいえ容易く我が身を切り裂く程の攻撃力、間違いなく何かしらの変化が起きたのだ‼︎

 コイツは危険だ‼︎もしやすると我が主(大いなる意志)に届きうるやもしれぬ‼︎

 

 そこまでの思考を回した後に即座にアステールは転移を使い黄金から一気に距離を取り自身の全機構を最大出力で回していく。

 それは嘗ての永遠の都を悉く消し去ったアステールの力の在り方を最も示した言うなれば破壊の象徴、後の星見達は彼の種族名になぞりこう呼んだ。

 

【アステールメテオ】

 

 アステールの背後に宇宙が展開され隕石群が召喚される、その圧倒的な質量と物量に物を言わせたそれはもはや攻撃などという生優しい物ではなく絨毯爆撃と称するのが適切であろう。

 この日──狭間の地全体が大きな地震にが襲い一部の建物が崩壊、多くの建造物や地形に被害が見舞われその最たる物がデクタスの大昇降機が機能不全に陥った事だ、後の世では原因不明の大地震と記録されたが各地にいる有力者達は震源地がリエーニエの南西に位置する月光の祭壇の地下深くであると突き止めていたので大凡の検討は付いていたとされている。

 大きな衝撃と爆風にて洞窟の広間は埋め尽くされそれによって生じた振動により洞窟が少しずつ崩落していく、隕石爆撃と落石により煙が立ち込めり視界が効かなくなっていく、もはや一寸先も見えない形相だ。

 その煙が──突風によって振り払われる。

 

「ったく…馬鹿みてえにブチかましやがって…」

 

──その中から死んでいる筈の生き物の声がする。

 

「今のが…あの都を消したっていうお前の切り札か、確かに昨日までの俺なら何も出来ずにお陀仏だったかもな」

 

──損傷はある、当たってはいる筈なのだ。

 

「文明を滅ぼす事は出来てもたった一人の人間を滅ぼす事は出来なかったみたいだな、ククッ…」

 

──黄金は辛抱ならないとばかりに笑い始め、そして

 

「有難い‼︎隕石じゃ俺を倒せない事が証明された‼︎」

 

──獰猛な笑みを絶やす事なく、そしてとびっきりの闘志を燃やしてなお活力を取り戻していた。

 

 何故黄金はあの隕石群を凌げたのか、それは単純明快な答えとして当たる前に迎撃していただけの事。

 無論言葉通りに容易く行える行為ではない、しかしこの黄金はこれと似た様な攻撃を経験している。

 そう──誰もが認める最強のデミゴット、星砕きのラダーンとの決闘により、飛来する岩石群への対処法を既に学習済みだったのだ。

 つまりこの瞬間アステールの切り札は切り札として機能し得ず、アステールの渾身の力を込めた隕石群は黄金の体力をほんの少しばかり削っただけに留まる事となったのだ。

 

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 死の淵から立ち上がる時、人は急激な成長を見せる、それはアステールにとっては無縁な物であり、そして宇宙線によって瀕死であった黄金が先刻より強くなり戦線に戻って来た事もこれに起因する。

 加えてそこにメリナの祈祷による援護も加味するならば尚の事である。

 

『いい?貴方に掛けるこれは暫くの間貴方を強くしてくれる、貴方の肉体の強度を鑑みると長く持つだろうけど効力が切れたら激しい反動がある事を忘れないで』

 

──とか言ってたな、切り札の件があるとはいえ早めに終わらせなきゃな、最低でも腕は持っていく。

 

 黄金はこれまでのアステールとの戦闘を踏まえアステールは転移を行う際に必ず両手を振るうという事に着目していた、そしてそこから片腕を破壊されば厄介な転移は無くなるもしくは時間が掛かると考えた。

 その考えが当たればそれで良い、外れても戦力は大幅に削れるので何方にせよ御の字という形だ。

 そして大きく削った後に後詰めの切り札で葬り去る、それが黄金の作戦であった。

 

「…本気で言っているのか奴は」

 

「…少なくとも彼はそう言った、後は私達に託すと」

 

「机上の空論として処理されていた筈だ、()()は」

 

 そう言うラニの手元にはある魔術を示したスクロールが一つ、それは黄金が旅立つ前にレナラが黄金に託した物であり最終手段、そのスクロールにはこう記してある。

【混成魔法について】

 

 それはかつてレナラがレアルカリアを治めるより前、レラーナ共に旅をしていた時に深い森に立ち寄った、特に何かを思った訳でもなく唯々都合の良い魔術触媒でもないかと、そんな気持ちで足を踏み入れた。

 そこで彼女はその森に住む魔女と出会った。

 優秀な魔術師であったレナラは彼女達が極めて優れた魔術師であると即座に看破した、しかし魔女達は半ば世捨て人の様な生活をしており現世に余り関心がなくあくまで自身の研究の為に魔導の研鑽を行っていたのもあり進んで二人に関わる者は少なかったがどんな人種にも変わり者というのは存在する。

 それが姉妹に混成魔法の在り方を教えた人物(隠者)である、彼女は当時姉妹にとって初めて出会う自身より優れた魔術師であり、そして隠者からしても二人が持つ魔導に関しての知見は年齢に対して優れていたのもあり両者はすぐに打ち解けた。

 姉妹と隠者の交流が長らく続いた頃、姉妹は混成魔法の扱いの基礎となる異なる属性魔力の同時使用、それを修練の末会得した。

 これにより二人の戦略の幅は大きく広がったと言える、特にレナラは魔導の才に愛されていると言っても過言ではない、既にこの瞬間に幾つもの組み合わせが彼女の脳内にて構築されていたのだ、それを見越していた隠者がレナラにこう言ったのだ。

 

『危険…ですか?』

 

『正確にいうなら、“危険な組み合わせがある”と言った方が良いね、複数の属性の魔力を同時に使用するレナラの才能には正直嫉妬しちゃうけど…だからこそこの才能が失われるのは惜しいと思う、一歩間違えたらこの技は自分も危ないからね…』

 

『…どの様な組み合わせが危険なのでしょうか?』

 

 レナラの問いに答える様に隠者は指先程の大きさの氷属性の魔力を掌に生成する。

 

『これに貴女の炎の魔力を重ねてみて』

 

『…?炎と氷の魔力は同時に扱わないのでは?威力を殺し合ってしまいますし無意味ではないのですか?』

 

『いいからいいから、その代わり私の魔力と()()()()()()に合わせてね』

 

 言われるや否やレナラは隠者と同じ威力の炎属性の魔力を掌に形成し隠者の魔力と重ねていく、するとレナラにとっても驚愕する反応が発生した。

 なんと二つの魔力が混ざり合い弾けたのだ、この瞬間レナラとレラーナは学ぶ。

 温度を変化させる様に運用するという点では炎と氷の魔力は同質の存在なのだ、従って完全に同威力で合成すると両極の力が混ざって新たな魔力に変質する。

 

──それこそ全てを消滅させる様な、全く別の魔力に‼︎

 

『貴女は私が出会った魔術師の中でも極めて優秀、()()()()()()、ね。だから不用意に実験して身を滅ぼすより先にこうして身体で覚えてもらったの、だから気をつけてねレナラ』

 

 その後学ぶ事が無くなった姉妹は隠者に深く感謝して森を後にする、この事を踏まえてレナラは今後あの様な魔術を扱う魔術師に備えて反射魔術を探求する事になるのだがそれはまた別のお話。

 

 その混成魔法を黄金はラニとメリナに託した、その意味することは二つ。

 一つ目はこの魔術を完成させる為には炎、氷、そしてその二種の魔力を安定させる為の第三の魔力、通常の輝石魔術で扱われる魔力を踏まえる事で完成する、黄金は通常の魔力と氷の魔力は扱えるが*1炎属性の魔力は未だお目にかかった覚えがない、*2今回炎の魔力を担当するのはメリナだ。

 二つ目は単純に黄金の技量不足、この技は極めて難易度が高い、というのもこの魔術は二つの異なる魔力を安定させ、相手に標準を定めて放つという離れ業を行う、元々この技自体一人で行う想定で作られており今回の二人で行うのはこれでも相当難易度が下がっている方なのだ、それを魔術を覚えて一週間足らず黄金では少々無理がある。

 

 結果としてこの混成魔法を発動させる為には現状メリナとラニしかおらず且つ標的が逃げない様に惹きつけておく役割として黄金が担った形になる。

 

「はぁ…分かった、標準と照射は私が担うからお前はありったけの炎を出す事に注力しろ、それに合わせる、どの道これを決める他勝ち目はない訳だしな」

 

「当然、問題は私達の魔力残量から考えてもこれは一度しか発動できない、相当上手く当てないと…」

 

「そこは奴に任せる、アイツならどうにかするだろ、今は術の完成に集中しろ」

 

──致し方ないとは言え、私が黄金の一族と手を取り合うとはな、何が起こるかわからん物だ。

 

 一方で黄金の方は向上した身体能力と相手の動きに慣れて来たのもありアステールの激しい攻撃とは対照的に実に緩やかな動きで攻撃を捌いていた。

 

──重力魔術を扱える様になったのは良いが案の定コイツには効かねえ、そりゃそうか。

 とは言えコイツの重力操作も完全無欠な訳じゃねえ、出力こそラダーンより上ではあるが扱い方に関しては大きく劣る、あくまでも強い出力をブチかますだけに留まってる辺りコイツの戦歴が窺える。

 

 黄金はアステールの重力攻撃を躱しながら人生最大の好敵手たるラダーンの実力を改めて認識する。

 

──コイツ自身が弱い訳じゃない、重力操作の副次効果で手札は多数だ、でもなぁ…惜しいよなぁ…

 さっきの重力波もラダーンが使ってたなら合間に攻撃を差し込んで来てた。

 この重力弾もただ飛ばすだけではなぁ、攻撃としては弱い、ラダーンならそれを囮にして高速接近、自慢の両剣でザックリ…って所か。

 あの攻撃(アステールメテオ)も、あの攻撃(重力波)も、あの攻撃(重力弾)も、全部強力だがあくまでそれ止まり、そのどれもがラダーンの命を刈り取るには足りん。

 

 そこまで思案して黄金は気付く。

 

──はぁ、女々しい物だ、目の前の敵に集中せずに嘗ての好敵手に想いを馳せてる、存外浮気性…なんだろうな、現にラダーンとの決闘は楽しかった。

 それが証拠に、初めて出会った時のコイツに対しての畏怖…だとか恐怖?がもう感じねえ、ちょっと手を伸ばせば届く距離みたいに近くに感じる。

 有難い事だ、お前のおかげで俺は更に強くなれた、なら後は俺の役目を全うして決着と行こう。

 

 アステールが六本の腕を前方に突き出しエネルギーを充填していく、戦闘の開幕に見せた重力光線の予兆だがその出力は開幕時の比ではない。

 重力を扱う腕を全て一点に集中させて放つ、単純だがそれだけに中々強力、恐らくこの一撃で全てを灰燼に帰すつもりなのだろう。

 その攻撃に対して黄金は至って冷静で自身の右手に魔力を集中させる。

 

 アステールから、最大出力の重力光線が放たれる、対して黄金は魔力を充填した手で空間を掴む様に引き寄せる。

 すると光線は軌道を曲げ標的の黄金を逸れて上部へ向かう、更に黄金はもう片方の手なら先程と同じ様に魔力を充填させて空間を掴み今度は振り下ろす、すると逸らした光線の軌道上に魔力の力場が生まれそれに触れた光線は先程と同じく軌道を捻じ曲げ発射主であるアステールへと向かっていく。

 すると必然的に光線はアステールの頭部に直撃する、トープスの力場を更に改良した事で可能となったこの技はある種黄金の彼自身のオリジナルと言える。

 

──ある程度狙ったとはいえ頭部に直撃は出来過ぎだな、運がいい、そして思った通り…‼︎アイツの攻撃はアイツの装甲を容易く貫ける様だな‼︎

 

 直撃を喰らったアステールの頭部、及び顎の牙が双方ともへし折れている事から先程の光線の威力の高さが分かる。

 その際に生じた僅かの沈黙、それを見逃す黄金ではない、彼は咄嗟に落ちた牙を拾い上げると即席の武器として使用する、アステール自身の攻撃がアステールの装甲に有効なのはつい今確認したばかりだ。

 

──軽い‼︎その癖馬鹿頑丈だ‼︎咄嗟に拾ったが良い拾い物した‼︎感覚としては斧槍に近いな、だったら‼︎

 

 黄金はその牙から嘗て握っていた斧槍を思い、そして即座にあの決闘にて使用したあの一撃を使用する事を選択した。

 あの時はまだ未熟だった、それは今も変わらないがあの頃より強くなった自負はある、そして手元の武器もあの時の物より更に極上、ともなれば──‼︎

 

今再び、巨星を落とした一撃が放たれる

標的は正真正銘星の怪物

相手にとって不足無し

 

 星の怪物はこの一撃を持って胴体と頭が分たれる、それでも生きているのはやはり既存の生物に収まる存在ではないからか、すぐさま頭部と胴を繋げようと足掻いている。

 この攻撃と同時に黄金に掛かっていた加護が切れる、直後に凄まじい疲労感が黄金を襲うがそれに意を介さずその場を大きく飛び退く、自身の役目を終えた事を本人が悟ったからだ。

 飛び退いた直後に途方もないエネルギーを秘めた閃光が飛来する、黄金はその光が例の魔術であると即座に看破した、その上で本人にも警鐘が鳴ったのだ。

 

アレに当たってはならない。

 

 結果から言うとその判断は正しかった、その光は倒れたままのアステールを包み込み、アステールに一切の抵抗を許す事もなく、そしてアステールの堅牢な装甲等始めからなかったかの様に通り過ぎ──

 

その光に触れた肉体と地面ごとこの世から消滅した。

 

 暫しの沈黙が流れる、先程までの激闘が嘘の様に、ただこの場には静寂の空間のみが残っていた。

 

「終わった…のか?」

 

 沈黙したアステールの残った胴体部分を見てラニが発言する。

 

「そりゃ流石にな、頭が消えて生きてる生物は居ない、アレが埒外の生命体だとしても何処まで行っても生物、その理から逃れる事はない筈だ」

 

 黄金の発言にラニとメリナがその場にへたり込む、どうやら疲労が祟った様だ。

 

──かなりギリギリだったな、よく一発で成功してくれた、誰か一人欠けても勝てる戦いじゃなかった…俺にアレを叩き割れるだけの力があればここまで苦戦を強いられる事もなかったが…

 

「…もっと強くなるしかねえな」

 

 そう呟いた途端残されたアステールの胴体に異変が生じる。

 なんと重力操作も無しに一人でに動き出しその長い胴体が球体状に丸まっていく、この事態には流石の三人も面食らった。

 

「こいつ…まだ⁉︎」

 

「ラダーンの時みたいに再生するの⁉︎」

 

「いや違う、これは…‼︎」

 

 魔術師の一環として魔導生物についても探究していたラニだけがアステールの異変に察しがついた。

 アステールには、もし機能不全に陥った際にその機構や身体が回収されない様に自爆機能が搭載されている、倒した敵諸共道連れに出来る様に、或いはその文明に致命打を与えれる様に、何処までも兵器運用として製造されたアステールの生態であった。

 球体となったアステールの残骸から閃光が漏れ出し、凄まじい出力を持って周囲を灰燼と化した。

 その威力は近くにあった腐敗湖とノクステラを平然と巻き込み上部の月光の祭壇すらも崩落させた。

 

この日リエーニエの一角に大穴が空いた。

*1
ラニのを見て盗んだ

*2
飛竜等の炎は正確には飛竜由来の燃焼器官が持つ息なので今回の事例には当てはまらない為




アステール戦で使った他作品の技の数々
・射殺す百頭(fate)
・結晶ノ御子(鬼滅の刃)
・天喰(終末のワルキューレ)
・トープスの力場を応用した空間を掴んで逸らす技(呪術の烏鷺の術式)
・メドローア(ダイの大冒険)
そろそろなんの作品か分からんくなって来たな。

・黄金野郎
 間違いなくこの戦闘で滅茶苦茶強くなった奴、そろそろ戦う相手の選出に苦労しだす頃合い。

・メリナ
 種火だから火属性理論、実際お兄ちゃんも火属性だしいけるいける

・ラニ
 やらなかったけど仮想展開では黄金に暗月の大剣を投げ渡すシーンがあった、アステールの顎で代用された。

・アステール
 爆発オチなんてサイテー‼︎

・爆発に巻き込まれた方々(主にアレクトーと二本指)
 死にました。
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