人違い(される側)が行く黄金樹への道   作:Another2

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※お見えになったサブタイは正常です。

中の人は某MODの影響でこの位置にマルギットがちゃんといるのがもはや違和感を感じている。


【草】

【この先、パリィが有効だ】

 

 斧槍と杖剣が交差する、戦において得物と得物がぶつかり合う、そんな当たり前の事、聴き慣れた音が此度においては異なった。

 金属同士が奏でる金高く遠くまで響く音とも異なる、木材質の物が奏でる鈍く重い音とも全く異なる、敢えて高い音を上げるならばそう、火薬が爆発したような音。

 そんな代物が既に都合十数回程響かせており、何よりそれを行っているのがたった二人の男だという、唯一幸運なのは二人の周囲には誰もいないということか、もし近場に人間…否、最早どのような生物であれタダでは済まないだろう、それだけの気迫が両者にはあった。

 

 褪せ人が斧槍を横薙ぎに一閃する、マルギットは何気なく身を捩らせ回避した。

 返す刃でマルギットが杖剣で刺突を繰り出す、褪せ人はそれを難なく弾いてしまう、所謂パリィ、又はパリングと呼ばれる技術であり成功させれば相手の体勢を大きく崩すことが出来る。

 しかしこのマルギット、たかだか一度のパリングで崩れるほど脆くはない、寧ろ弾かれた勢いを利用して身を回転、長い尾と剣を利用した回転攻撃を繰り出してくる、長い尻尾はそのまま薙ぎ払いに、構えられた剣は勢いをそのままに加速された突きに。

 

 褪せ人に焦りは無い、寧ろ剣の軌道を見極め身体を伏せる事により難なく躱す──それすらも読んでいたマルギットが空手に光の短剣を生成し地面に向け噛み下ろすように振り下ろす──無論褪せ人もそれを読み大きく後ろに下がり──その隙を逃すまいと光の短剣をマルギットが投擲し──それを褪せ人が難なく弾く。

 先程からこの様なやり取りが高速で行われている、まさに一瞬の判断の誤り、油断が即座に命取りに繋がる戦闘である。

 

 幾度目かの攻防を終えて尚互いに無傷、その事実に互いの表情は対照的だ──片や険しい表情を崩さないマルギットに対し──黄金の褪せ人の表情は獰猛な笑みを絶やさない、まるで新しい玩具を見つけた子供のように──初めて遊園地に訪れた子供のように──何処迄も何時迄も、楽しくて、愉しくて、戦死(たのし)くて仕方ないのだ。

 

──判っていた…褪せ人は戦士の末裔故に侮れぬ存在であると。

 否、あの姿で現れた以上、並大抵の強さではないと言うことは最初から理解っていた。

 しかし…よもやこれまでとは‼︎

 

 マルギットにとって…否、()にとって戦闘とは楽しむ物ではなく忌むべき物である、()は偉大なる父と母を持ち己もその系譜に属する所ではあったが父のように戦を求め楽しむ性分ではなかった。

 従って戦闘を楽しむということに些か理解が及ぶ事がなかった、しかしこの地に於いてはそのような事を抜かしてはおれず()は望むにせよ望まずにせよ戦闘の日々に身を置く他なかったのだ、それが黄金樹を守護する者の役目であるが故に。

 元来()は戦乱を好む主義ではないのだ、平和な…争い等無い平穏を好む、しかし争いが絶えぬこの地ではそれを成す為にはどうしても力が…強さが要る、従って()は自身を鍛え上げた、皮肉な事に強くなる素質はそこいらの有象無象よりは十二分にあった、斯くして()は強くなってしまった、強くありたくはなかったが強くならざるを得なかったのだ、平穏を実現する為に。

 あくまで冷徹に…静に徹するのだ、戦いを…闘争を愉しむなどあってはならない、ましてや望むなど‼︎

 そう己に言い聞かせ、今日まで徹して己を厳しく律してきた。

 

 そんな()の壁を打ち壊す存在が現れてしまった、目の前の黄金の褪せ人だ。

 その姿を一目見た際には己が唯一誇れるデミゴッドたる兄と幻視した、しかし兄はあの夜にて死んだ、それは覆しようのない事実である。

 

 この男は殺さなくてはならない、それが己が誰に言われる事なく己自身に課した使命である。

 この男を消さなくてはならない、それが現在混沌極まるこの地に更なる混沌を招かぬ為にも。

 この男と──()()()()()()()()()()、何故ならば己は──

 

 そこまで思考を巡らせた末に()は自身が目の前の褪せ人との戦闘を望んでいることに気が付いた、何より忌み嫌った戦闘を、だ。

 結局あれやこれやと理由付けた所で己に流れる偉大なる父の血筋には争えぬらしい、何処まで行っても戦士の息子、どう足掻いても戦士の血筋なのだ己は。

 無論自ら課した使命を捨てる気は更々無い、無いが…目の前の男とは十全の状態にて、己が培った全てを出し尽くした末による、完全なる決着をつけたくなった、唯それだけの事にすぎない。

 

 己は偉大なる戦士の父を持つ身であると同時に黄金の都の最後の王でもある、この地において王とは力ある者、強き者だ、従って向かってくる者は挑戦者という事となる。

 この褪せ人はどう言う道筋を辿るにせよ我等が黄金の都に必ず辿り着くだろう、その時に備えなくてはならない。

 何故ならば粗末な歓待を行えばそれこそ耐え難い恥である、この男は戦闘狂の類であるというのはわかりきっている、愚かな野心等持ち合わせていないのももう判った。

 喜びこそしないが我等が黄金の都に辿り着いた際には丁重にもてなしてやらねばならない、それが王としての最低限の役目であるが故。

 

「黄金の褪せ人よ、お前はあの黄金樹の麓まで向かってくるのか?」

 

「勿論、そこに強者がいるならば、黄金樹と言わず世界の果てまでも向かうつもりだ」

 

「ならばこそ、此度の闘い、決着は持ち越すとしよう」

 

「あ?戦いは今から楽しくなるんだろうが」

 

「…今、お前が戦っているこの身は本体ではない、私の本体は…黄金樹のその麓に構える城、ローデイルと呼ばれる場所にて、私は居る」

 

「…つまる所はあれかい…ケリを付けたきゃ手前の足で自分の所まで来いってか」

 

「然り、丁重にもてなしてやろう、全身全霊をもってな」

 

「普段なら『はいそうですか』と、引き下がる事はないんだが…アンタの強さとその行いを持って不問としよう、ありがてえ…次の楽しみができた」

 

「黄金の褪せ人よ…我が名は()()()()()、私は何時如何なる時が過ぎようともお前を待つ、必ず我が元へ来い、お前だけは必ず私が殺す」

 

「ククっ、そのお言葉、お有難く頂いとくぜ王様、存分に仕上げとけよ、中途半端な歓迎とかしたらそれこそ速攻で殺すからな」

 

 斯くして二人の戦いの決着は持ち越しと言う形を持って終わりを告げる、お互いに万全を期した状態に於ける完全なる決着その契りを持って、二人の前哨戦は幕を閉じる。

 


 

【その資格はないの予感…】

 

 モーゴット…か、これはまたとんでもない強敵が控えている物だ、やはり導かれるがままにこの地を赴いて正解であった、己の身体を苛んでいた“飢え”が僅かつつではあるが満たされていくのを感じ取れる、良い兆候だ、このままこの地に於けるあまねく強者を平らげてしまおうか。

 

 ふと、祝福を灯した際にメリナが姿を現した、そういえば此奴も先程の戦いを見ていたのだろうか、どちらにせよこの地における導きの担い手だ彼女にも感謝せねばなるまいが。

 こちらの思惑を知ってか知らずか、メリナが口を開く。

 曰く、己を試していたのだと、祝福が己を導くのか否か、そして己がそれに挑むか否かどうかを、それらの疑問は先程の戦闘の末に払拭出来た様だ、まぁ己としてはその辺は割とどうでもいい、この地に於ける強者と戦えれば、それで良い。

 

 して、何用かと伝えれば円卓なる場所に興味はないかと問われた。

 曰く、そこは己と同じ祝福にて導かれた褪せ人達の集いであると。

 曰く、そこには様々な分野に長けた英雄達が集う場所でもあると。

 

 後者に関してはやや信ずるに疑わしいが前者であるならばそれは良い、己と同じ褪せ人と言うならばこの地について詳しいはず、先達者としての知識や情報も豊富なはずだ、ならばこそ知っているだろう、この地にひしめく強者達の居場所を、そしてあわよくば望みたい物だ、円卓の中にいる強者との出会いを。

 促されるままにメリナの手に触れ円卓へと向かった。

 

【まずは探求】

 

 円卓にたどり着いた瞬間に数多の視線が己に突き刺さる、それは興味多数、疑念が複数、残り一つは…なんだこの感情は…困惑と歓喜が混合している、意味がわからん。

 

 余りにも誰も言葉を発さぬ物だから痺れを切らして己から声をかけてしまった、すると面構えの見えぬ兜をつけた男が声を発する、存外に皺がれた声故にそれなりに年齢を重ねているらしい。

 どうやらここが円卓であるのは間違いないと彼奴はそう言った、曰く新しい褪せ人が円卓に訪れるのは随分と久しぶりらしいがそこは己の知るところではない。

 それにしても英雄達が集う場所と聞いてはいたがやはりと言うか期待外れも甚だしい、腑抜け極まる者ばかり、正しく有象無象、そう表現するのが正しかろう。

 此奴等の強さは最早期待に値しないが持っている情報は有益だ、大ルーンを宿すデミゴットとやら、或いはそれに準ずる強者の居場所を吐く様に仮面の男に言うと、やや思案した後に書斎に招かれた後に持っている情報の全てを寄越してくれた。

 

 一人は己が飛んでくる前に居たストームヴィルにて構えるゴドリック。

 一人はリムグレイブより東の地に存在する赤き土地、ケイリッドにて居を構えるラダーン。

 一人は同じくリムグレイブより北上しそこに居城を構える魔術学院の長にしてカーリア王家の女王たるレナラ。

 一人はさらに北上したアルター高原から少し逸れた火山にて居を構えるライカード。

 そして最後の一人はアルター高原にて聳え立つ黄金樹、その麓の黄金の都にて待ち構えるモーゴット。

 

 モーゴットめ、只者ではないと思っては居たがよもやデミゴッドに連なる者であったか、そして仮面の男が言うにはラダーンが圧倒的な武人であり最強のデミゴットとして名を馳せていたらしい、最強と死合える、それはなんとも心躍るではないか、無念なのが腐敗という物に侵されまともな状態ではない事か。

 ライカードは蛇の如く嫌われた責問の長、冒涜の罪を犯したらしく褪せ人をから集団の率いているとかなんとか、それとゴドリックの所為でこの円卓を避難所と何かと勘違いしてるたわけが多いのだと嘆いている、気持ちはわかるとも。

 そのゴドリックとやらも接ぎの儀式という禁忌を犯したのだろう、禁忌を犯してまで得た力…興味がある。

 逆に食指が沸かんのはレナラとやらだ、魔術とは所詮武器を持つ事も出来ぬ弱者が扱う児戯の類ではないのか、そう断言すれば仮面の男はこう言った。

 

 君から見て、通常の魔術師であればそうなるだろう、だがレナラだけは別格だ、彼の女王は戦闘も出来る魔術師なのだ、故に油断はしない事だ。

 

 そう抜かしおった、まぁ気持ち半分程度に期待しておこう、これで大ルーンの場所は粗方割れた、未だ円卓が把握していないデミゴッドもいるらしいがそいつらも含めて己が平らげてくれる、そう伝えれば彼奴は期待していると、そう一言だけ述べ机の上の書物を読み耽っていた。

 …そういえば書斎に入る際にいた骸の鎧を身につけていた男…あの者を見て何故か脳裏に理解が及ばぬ単語が過った、意味がわからん。

 

【草】

 

 続いて向かったのは向かいの通路、鍛治を打つ音が聞こえていたので出向いて見れば亜人の翁が鍛治業を行っていた、どうやら武器を打っているらしいのだが付近にあるのは到底武器とは言えぬ児具ばかり、身体に傷を作ることはできよう、しかし命までは届かない、良くて包丁の代わりだと、そう伝えてやれば翁はならば己に武器を振って見せろと言ってきた。

 期待通りに武器を振るっても良いのだがここではなぜか攻撃しようとする意思が剥奪される、故に武器が振れぬと伝えたならば下の広間であれば武器が振れると言うので付近の棒切れを幾つか拝借し下に降りてみた、すると普段と同じ様に動ける様になり武器を構えれる。

 

 さて、構えたはいいが…持つだろうか…?

 見かけこそ綺麗に造られているが、これは武器ではない。

 

 素振り一回、持ち堪えたのはその一度のみ、剣の形をしていた物は根本から折れていた。

 やはり、こうなるか。

 

 何やら上階が騒がしいが表玄関からこうも敵意を向けられてはな、屠りたくもなるわ…

 

【雑魚とはな…】

 

 亜人の翁に先ほど述べた事の証明を済ませると何やらこの翁、どうやら恥を忍んで頼みをしたいと、己の為に武器を打たせてくれと、そう宣った、まぁ不足する物でもない故に了承したがあれで良かったのか…?

 

 さて…そろそろ向かわねばなるまい、ここにきてからずっと熱烈な視線をよこしてくる人物の元へ。

 

 視線の主は黒いドレスを来た女であった、名をフィアと言うらしい、話を聞くに己と同じ褪せ人ではあるのだが戦闘に秀でてはいないらしいがどうやら英雄たる人物を抱きその温もりを蓄えたのちに然るべき人物に還元に生を与える、それがこの女の役割であるのだとか。

 …理解が及ばぬ、及ばぬが故に理解った事もある、この女は…その、アレだ、言葉を濁す様だが、あまり関わりたくない。

 そもこのフィアと言う女、己の話を聞きやせぬ、己の姿を見るや否ややれ蘇っただの帰ってきただのほざきよって、終いには己の事を()()()()()()だとぬかしよる。

 生憎己はその様な名ではない、完全なる人違いという物だ、そう何度も伝えたのだがな…それでも己はゴッドウィンの生まれ変わった存在であると言って止まない、人の話を聞かんか。

 これ以上はイタチごっこ故に話を一つ進展させてみよう、己は問いてみた、もし仮に己がそのゴッドウィンなる存在の蘇りや生まれ変わりとして、手前は己に何をさせたいのかと。

 そうしたら此奴、とんでもない事をぬかしおった。

──我等の王におなりください、だとさ。

 

 生憎と王だの指導者だのというのは柄じゃない、謹んで断ったのだが、どの様な道を歩もうと己は王になる、望むにせよ望まぬにせよ己は王になる宿命にあるのだと、フィアはそう言った。

 フィアは己がゴッドウィンに連なる存在にせよそうでないにせよ、その姿でこの地に訪れたのはこの地にとって一つの転換期の様な物、これから己は様々な陰謀やら策謀やらに巻き込まれると、故に覚悟だけは決めておいてくれと、そう言い残しフィアは優しく微笑んだ、ここまで身の毛のよだつ微笑みもそうあるまい。

 

 どうやら己はとんでもない人間に目をつけられたのかも知れない、それが己の愉悦に直結するのであれば幾らでも許容するのだが今回のコレは…なんて言うか、その、ダメだ、愉悦より困惑が勝る。

 しかし同時に分かったこともある、この円卓の場は腑抜けの有象無象だけではなくそれなりの芯を持った輩もいる、それがわかっただけでも収穫であろう。

 

 見るものも見た故にそろそろ戻ろうかと思えば仮面の男が言っていた事を思い出す。

 曰く、強者と戦うならばデミゴッドと戦うのが最短の道ではあるがデミゴッド以外にも強者は居るとのこと、例えば封牢なる場所にて封印されている者、正しき死を迎えれなかったが故の生きる死者やそれを狩る者、この狭間の地の旧支配者たる巨人や竜等も己が求めるにたる強者ではないかと、故に大ルーンを求めるのは大前提として各地を見て周ってはどうかと告げられた、それもまた道理か、確かに急ぐ旅でもなしモーゴットとの再戦に備えてこの地を見て回るのも悪くない。

 

【エルデの王におなりください、たとえ導きが壊れていても】

 


 

 円卓の住民にとってその人物を初めて見た際の衝撃は忘れるべくもない、この円卓の場は褪せ人の為の場であるが故に新たな褪せ人が流れ着いてくるのは珍しくない、今回もまた新しい褪せ人がやってきた…ただそれだけのことと思っていた、その人物の全容を見るまでは。

 その人物…彼は正しく黄金であった、肉体が黄金でできていると言う意味ではなく、黄金の長髪、黄金律もかくやと言わんばかりの肉体、なのに彼の肉体のそれは戦闘用に扱うのに十全過ぎる程の機能を兼ね備えており、彼に秘められた戦闘力は今この場にいる人間が総出で掛かっても一分もあれば全滅し制圧されるであろう事は想像に難くない。

 誰も声を上げない、沈黙だけが続く、それもそうだろう誰も下手に刺激して反感を買いたくないのだから、しかし其れこそが彼にとっての低評価点であるという事は遂には誰も知る事はなかったのだが、となれば沈黙を破るのは彼方の黄金の褪せ人の方だ。

 

「ここが円卓って所であってるよな?」

 

 室内に響いたのは余りにも若い男の声、それと同時に住民は目の前の男がしっかりと生きているという事を否が応もなく実感させられた。

 

 円卓の長、百智卿ギデオン・オーフニールは目の前の人物について思考を加速させる、彼の質疑に応答したはいいがどうしたものかと思案する、この円卓には不戦の契りがあるとは言えどの様な事が発生するか想定できない、普段なら百智卿たる己のなんたる体たらくかを嘆くところではあるのだが今回だけは別だ、何せ目の前の男は死した筈の彼の黄金のデミゴッドと同じ姿をしていたのだから。

 

「目的は一つ、大ルーンを宿すデミゴッド、或いはそれに準ずる強い奴の居場所か情報を全て俺に寄越せ」

 

 なんとも傲慢な願いだ、しかしそれでわかることもある、どうやらこの人物は戦いに狂う戦士の類であると、しかもネフェリ等よりも遥かに強く強靭だ、自身が知る情報を全て伝えればこの男は行くだろう、少なくとも己達にとっての強者はそこにいるのだから。

 ここで話す内容でもない為自身の書斎に連れて行くことにした、そんな行動をとる自分に自分自身が驚いている、初対面の人間にここまでしたことが過去にあっただろうか、自身の記憶にはない。

 通り際にエンシャと視線を合わせていたが何やら首を傾げていた、何か思うところでもあったのだろうか。

 

「さて…まずはどの情報から知りたいのかね?」

 

「全てだ、ここには情報があるんだろう、お前達が集めた情報…特に大ルーンとそれを宿す人物の情報は全て寄越して貰う」

 

「…一応、理由を聞いても?」

 

「俺が全て殺す、強いのだろう?其奴等は」

 

 成程、強者との戦いこそが本望であり大ルーンを宿す人物はどれもこれも癖が強く、難敵となる人物ばかり、ならば求めるのも道理か、ギデオンはそう納得させ自身が知る全てのデミゴッドの場所を黄金の褪せ人に提供した、途中レナラについて問答があったがそれ以外は全て筒がなく質疑応答は終了し黄金の褪せ人は席を立った。

 

「あぁ…それと最後にもう一つ、この地にはデミゴッドではなくとも、一癖も二癖もある存在が居る、例えば封牢にて封印されている者や死の中で生きる亡者、かつてこの地を支配していた旧支配者達の末裔たる巨人や竜達、この地を見てまわれば出会えるかもしれない、強者との戦いをしたければ世界を回る事だ、我々が知り得ないデミゴッドも…或いはそこにいるかもしれんな」

 

「いいだろう、先ずはお前の口車に乗ってやる、この地にいるあまねく強者、その悉くを屠り喰らい、平らげて見せよう」

 

「…心の底から、期待しているよ、君には」

 

──彼は必ずこの地に居る全ての強者を屠り、王の道を征くのだろう、老いた我が身にはあの黄金は少々眩し過ぎる、だが彼なら或いは…私すらも知り得ない何かを得るかも知れない。

 

 

 亜人の鍛治師、ヒューグにとって円卓の人間に思う事はない、自身は繋がれているが故にここを離れることができない、そして流れ着いてくる褪せ人達の軟弱さや腑抜けっぷりには心底反吐がでる、そんな奴等であっても己は一鍛治師でしかない、鍛治師は打つ武器は選べど打つ相手は選べんのだ、頼まれたなら打つしかない、たとえそれが未熟な己の身の丈を超える不釣り合いの武器めあったとしても、だ。

 

「ほう、鍛治の音がするので足を運んでみれば、なんとなんと亜人のジジイが武器を打つとはな」

 

 コイツはついさっき訪れた最も新しい褪せ人だ、何人も褪せ人を見てきたから理解る、コイツは強い、誰よりも。

 しかし態度が良くない、いやまぁ確かに自分はジジイではあるし亜人でもあるのだからそれは許容できた、次の言葉が良くなかった。

 

「それで…なんでアンタは獣も殺せない玩具を大量に作ってんだ?」

 

「何だと?貴様…!」

 

「事実だろう、確かにここにある物でも肉を穿ち、切り、抉り、傷をつける事は可能、しかし命までは届かない、精々が──包丁代わりだ」

 

 この円卓の不戦の契りがなければ即座に自分が持つ金槌でこの男の脳天を叩き割っていただろう、無理もない、自身が打った武器達が揃いも揃って玩具だの包丁代わりだの言われたのだ、これに怒らず何に怒る。

 

「ならば見せてみろ、お前にとっての武器とは何かを、な」

 

「見せろとは言うが…ここでは戦闘の意思が弾かれてしまう、攻撃しようにも動きが阻害されてしまう、どうしろと?」

 

「広間から下に降りれる、そこならば武器を振るうことも出来る、普段と遜色ない動きができよう」

 

「成程…ならばここの棒切れを幾つか借りるぞ、これが武器ではないというところ…証明して見せよう」

 

 そう言って奴が持って行ったのは最近の中では随分質がよく出来た武器達だ、そりゃ宝剣名剣とまでは言わない、だが普通の人間が使うには十分過ぎるほどの性能を持っていると自覚していた。

 広間から下層に降り立った奴を住民達はこぞって見学していた、普段はこう言うのに一切興味を持たん癖にこういう時は団結するんだから本当に人間というのは性質が悪い。

 

 奴が持っている黄金の斧槍…あれは確かツリーガードが使う得物だった筈、それを壁に掛けて、持ち出した2本の直剣を構える。

 どんな技を見せるんだ?

 どんな風に武器を使うんだ?

 住民達の心境を表すならこんなところか。

 

 そんなこんな考えてるうちに褪せ人は両の剣を大きく振り上げた、所謂上段の構えだ、あの位置から筋力と勢いを乗せた切り下ろしは強烈無比、素振りの型としても使われるソレを誰が言うまでもなく構えを取り──振り下ろした。

 住民達はその時見た光景を生涯忘れる事はないだろう、神に誓ってもいい、そのとき自分達は瞬きなんてしていなかったと!

 

 振り終わった後に空間に響く、金属が落ちる儚い音、それが意味する事はただ一つ、それを裏付ける様に褪せ人が投げつけてきた『剣』だった物…具体的には剣の柄、所謂持ち手の部分だけが残ったソレをこちらに寄越してきた、それが意味する事はただ一つ──折れたのだ、根本から、頑丈に作られた剣が‼︎

 

 ──幾度も剣を振るった、強くなる為に、英雄になる為に、使命を、宿願を果たさんが為に!

 そんな家族を持ったディアロスもそりゃあね、何度もみてきたさ、手にマメが出来てそれが潰れて出血してもなお鍛錬をやめない兄をみて何故止めないのか疑念を抱いた事は一度や二度ではない、だが兄が振るう武器が壊れる疑念…ある筈がない‼︎

 一体どれ程の筋力、握力があればこんな芸当ができるというのか、戦士としての才が乏しい身でありながらもその規格外っぷりはある程度予想はつく。

 一番ショックを受けたのは誰であろう、鍛治師のヒューグである、何せ自分が丹精込めて作った武器がたった今無造作に振られただけで折れたのだ、しかも持ち主の身体能力が高過ぎて武器が耐えられないという、武器鍛治に携わる者としてあってはならない出来事、心中察するに余りある。

 自分が作る作品が武器ではなく玩具、つい先程奴はそう言った、成程確かに丁重に繊細に扱うならば包丁の代わりにはなるだろう、だが事戦闘に於いてそんな繊細さが要るか…?

 確かに刀や鞭といった力だけで振らない武器ならばそれもいいだろう、だが奴が持って行ったのは力で振るい叩き斬るのを旨とした物だ、その剣が担い手の力に負けて折れる?たった一度の素振りにも耐えられずに壊れる?そんな事があっていい筈がない!

 ヒューグは己の未熟と傲慢を恥じた、剣が壊れたのは担い手の不備?断じて否、長年この様な仕事に就いていると担い手が武器を選ぶのではなく武器が担い手を選ぶ、というのはよく耳にする。

 しかし、担い手に気遣わせる武器という、武器としては落第点甚だしい出来事、それはその武器を作った製作者の不手際に他ならない、腑抜けになっていたのは褪せ人達だけではない、己もそうだったのだと、今更ながらに気付かされたのだ。

 

「先ほどの一振り、しかと見届けた、申し訳ない事をした、そこで恥を忍んで頼みたい、どうかアンタの為の武器を作らせてくれ!」

 

「…それはいいけども、俺はアンタが作った物ぶっ壊したんだぜ?いいのか?それに今は手持ちも少ない」

 

「構わん、寧ろ己の未熟さと傲慢さをしれたいい機会だった、それに代はいらん、アンタの様な戦士に使われる武器を打てるってんなら本望って物だ、時折アンタに武器を渡す、無論それはぶっ壊してくれてもかまわん、どうかこの通りだ!」

 

「…まぁ、不足するものでもないからな、その厚意は有り難く頂いとくよ」

 

──何時振りだろうな、儂が一個人の為に武器を打とうと決めたのは、彼奴の王としての器がそうさせるのか…先ずは鈍った腕を磨き上げねばな。

 

 

 円卓の褪せ人の一人、死衾のフィアは新たに訪れた褪せ人を見て己の宿願が叶ったと歓喜した、何故ならばその褪せ人の姿こそ自分がこの円卓に立ち寄った最大の目的なのだから、しかもその黄金の褪せ人は声を発した、それはつまり自己意思を持って動いている生の証他ならない。

 その事実は死衾の乙女として生きてきた自分にとって自分の役目が果たされる前に終わるというなんとも言えない出来事ではあるのだが、しかし目の前で起きている出来事以上に比べたら些事も些事だ。

 

「あぁ…!帰ってきて頂けたのですね…!黄金の貴方」

 

「…アンタは何者だ」

 

「それとも、蘇ったのでしょうか?どちらにせよこれ以上に勝る歓喜はないでしょう」

 

「俺の声聞こえてる?」

 

「あぁ…申し訳ありません、無礼をお赦しください、偉大なるゴッドウィン」

 

「違うけど」

 

「いえ、その様な筈がありません、貴方はゴッドウィンなのです、そうでなかろうとも生まれ変わりの類に他なりません」

 

「人の話聞けよ」

 

 そんなやり取りを繰り返した後に軽く質疑応答を行った、自身の名と、役目…尤も自身の役目と目的はすでに目の前の褪せ人のお陰で達成されているので新たな目的が出来てはいるのだが。

 

「…まぁアンタの話は良くわかった、認めねえけどな、もし仮に…だ、百歩譲って俺がアンタの言う通りゴッドウィンの生まれ変わりやそれに類する物だとして、俺に何をさせたいんだ」

 

「簡単な事です──()()()()におなりください」

 

「断る、王だの指導者だってのは柄じゃない、面倒だ」

 

「いいえ、貴方は王になりますよ、どの様な道を選ぼうとも、貴方が望むにせよ望まないにせよ貴方の周囲が貴方を王へと押し上げる、そういう宿命に貴方はあるのです」

 

「そりゃあ傍迷惑な話だ、返品とか効かねえのか」

 

「フフ…私は貴方の事をゴッドウィンの生まれ変わりやそれに類する物であると信じて止まない様に貴方はそれを否定して止まない、ですがどの様な存在であれ、貴方がその姿でこの地を訪れた以上、此方に渦巻く様々な陰謀や策謀に貴方は巻き込まれる運命にあります、いえ…もしやすると既にもう…」

 

「怖え事言うなよ、望む所ではあるがな」

 

「勇ましいのですね…何れにせよ貴方の存在はこの地にとっての転換期の様な物です、それ故にお覚悟の方は、決めておいてくださいね?黄金の貴方」

 

──そしてどうか願わくば、私達の王へと、この地の征する王たるエルデの王に、おなりください、たとえ導きが壊れていても




馬鹿長くなった、敗因は円卓の住民の心理描写まで書いた事。

・黄金野郎
 姿形だけが同じなだけの他人のゴッドウィンとか言う奴のせいで本人的にはプラスな出来事だったりマイナスな出来事(主にフィア)が発生した人、尚本人はこれがまだ序の口である事を知らない。

・マルギット改めモーゴット
 黄金野郎との完全なる決着を求めた、偉大過ぎる父親の血には逆らえなかった、黄金野郎の事は既に本人ではないし生まれ変わりの類でもないとわかってはいるがそれはそれとしてその姿で褪せ人というのが癪だった、今現在必死に鍛錬中。
 メリナが霊体で戦闘を見ていることには当然気づいていたが手出ししてこないし言及するのも無粋なので不問にした。

・メリナ
 実は不可視の霊体としてあの戦闘から黄金野郎と円卓の住民とのやりとりを全て見ていた人、行く先々での人違いに分かるよ…と頷いて後方腕組み理解者面霊体女と化していた。
 素振りで武器をへし折った際には二度目とは言え流石にドン引きした(一度目は関門前にて運ばれていた君主軍の大剣)

・ギデオン
 久方ぶりにきちんと役目を果たそうとする褪せ人を見れて個人的に満足してる人、一目見て滅茶苦茶強いしコイツならやるんじゃねって事で自分が知り得る情報を全て提供した。
 最後に黄金野郎に掛けた言葉は間違いなく本心。

・ヒューグ
 言わずと知れた我等の鍛治職人、付近にあった剣を包丁代わりにしかならんと言われ素振りでへし折られた可哀想な人…かと思いきや鍛治職人としての矜持が再燃した。
 因みに黄金野郎が剣を玩具だの包丁だの素振りで直剣をへし折るのは刃牙道の宮本武蔵が元ネタ、作者はあの宮本武蔵が好き。

・フィア
 自身の目的…つまり死王子の為に円卓に潜り込んでたらその死王子の生前の姿と全く同じ姿の人間を見て運命を感じた人、生まれ変わりだの蘇りだの言ったがソイツは完全に赤の他人である、それでもいいんです、その姿で現れてきてくれた事こそが大事なのですから。
 黄金野郎が円卓の住民の評価を上昇させる事になった全ての要因。

・エンシャ
 王骸シリーズを着込んだギデオンの従者…なのだが本人からの扱いは悪い、そして我々プレイヤーからの心境も悪い(勝手に襲ってくるから)
 その癖ネタには欠かさない男

・草
 所謂フロムゲーのいつもの要素、メッセージ機能から付けれる一言なのだが何故か上記のエンシャの足元にはこの文字が書かれておりとんでもない評価数があったりする。

・その資格はない
 上と同じく本編にて書けるメッセージ、円卓には訪れた時には開かない扉が多々ありその手前には決まってその資格はないの文字が書き記されている。

・アルベリッヒ
 素振り事件の後に黄金野郎に敵意を察知させられたのが運の尽き、一撃も攻撃できないまま逆に一撃で殺された。
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