円卓から戻った際に飛び出た先はツリーガードが闊歩していた先に存在していた教会…つまるところはカーレが居たところである、何故この様な場所に出たのだろうか、関門から闊歩しようとしていたのだが…それに些か冷え込み過ぎている、幾ら夜とはいえここまで冷え込むものか?これではまるですぐ側に氷がある様ではないか。
「…おい、そこのお前、こっちだ、少し話をさせろ」
なんとも上からな物言いの声のする方に視線をやればそこに居たのはあからさまに不機嫌なオーラを出している女の姿、この冷えつく冷気もこの女が出しているらしくそれも相まってなんとも近寄り難い雰囲気だ。
ふむ…この女、かなり強いな。
これほどの強者との果たし合いならば無論望むところではあるのだが生憎とそうではない様子、何やら話があるらしいので大人しく耳を傾けてやるのもやぶさかではない。
曰く、この女の名はレナと言い霊馬を駆ける褪せ人が居るらしいのでそれを探しているとのこと、それで己に白羽の矢が立った訳だが生憎と己はその馬を呼んで地を駆けておらずもっぱらメリナを乗せるか荷持ちになっている。
その証拠にメリナを呼んでみせたのだが、それを見たレナが神妙な顔をし、指を口元に当て少々思案していた、その後考えが纏まったのか一つの灰と鈴を寄越してきた。
これは霊呼びの鈴と呼ばれる品物らしく黄金樹に還る事なく果てた遺灰から霊体を呼び出しその霊体はかつての戦闘を思い出すかのように呼び出した主人と共に戦うという、まぁそれなりに貴重な品物であるらしい、生憎己には不要な物だが、メリナの防衛手段として持たせておくのも良いだろう、何やら霊からも好かれている様だし。
レナは渡す物は渡してもう用は済んだとばかりに話を切り上げた後最後に意味深な言葉を吐いていった、己とメリナがどうのこうのだの世界の運命がどうのこうのだの…後何やら己に対して明確な嫌悪感というか、不機嫌というか、当たりが強かったのも気になるが…あの女とは初対面の筈なのだが。
さて、あの女にも言われた事だ、この地をゆるりと見て回るとしよう、手始めにあの眼前の湖を横断し対岸へと走り抜けてみる事にする。
湖に差し掛かればやけに人が集まっているのに気がつく、ここに居るものは全員心ここに在らずと言った風体で何かを待っている、或いは祈っている様子、何か来るのかと思えば遥か空より大きな塊が舞い降りてきた。
ソレは着地すると同時に口を開き火炎を撒き散らしそこに居る生物を全て焼き払ってしまった、湖だと言うのに焼けて焦げた臭いが漂うという明らかな矛盾、湖そのものが浅かったのもあるのかあの火炎で水が殆ど蒸発し底面の土が露わになってしまった、なんという火力だろうか。
余りにも巨躯、余りにも巨大、他の生物を見上げる経験は多々あれどよもや巨大な岩塊が如き大きさの生物を見たのは初も初、生物感としては鳥が近いが…雰囲気は蜥蜴が近いか?
如何にせよここ迄の
手始めに軽く小突いてみる、ここまでデカいと懐に入るのは造作もなく、流れるように腹元に打ち込めた。
するとどうだ、打ち込んだ手元に伝わる感覚は肉のソレ、されど事実触れた感覚としては岩のソレ。
なんという堅牢な生き物か、なんという強き種族か、然もこの蜥蜴…見かけの割には素早い、あの巨体で大きく飛び退きおった、筋力の程も申し分無い。
強い、間違いなく強い、しかしその強さ故か、驕りが見え透いている、察するに…生まれながらの強者故に生まれてこの方苦戦などした事がないのだろう。
否、苦戦ならまだしも戦闘すらまともに行った事がないのだろう、此奴が行ってきたのは全て格下に対しての一方的な蹂躙のみ、或いは狩りか。
故にこそ此奴は自身の勝利を疑わず、逃亡等微塵も考えない、それは王者としての誇りか…或いは単なる無知故か…どちらにせよ都合が良い。
距離こそ離されたがこれぐらいを詰める程度は造作もない、しかし此処は敢えて待つ、今一度あの業火を見たいのだ、あの力強くも何処か美しさすら感じるあの炎、一度で見納めとするには余りにも勿体無い。
しかしこちらの期待とは裏腹に奴が仕掛けて来たのは力と体躯に任せた突進…あぁこの場合は長い首と頑強な頭を利用したかちあげか、なんともまぁ
やはりというべきか想像通りの想像以上の威力、並大抵の生物では今の一撃で臓腑が飛び出している、幸か不幸か己は並大抵の生物ではないが…うむ、受けておいて良かった…これだけの力強さ、滅多に味わえる物ではない。
充分だ、コイツはもういい、疾く終わらせようか、あの炎が見れぬのは気持ち惜しくはあるがな。
再び懐に潜り込み今度は強く打ち込む、さすれば此奴の肉体はその衝撃で宙に浮く。
やはりな、飛翔するということはそれ即ち肉体の軽量化が施されていると言う事、一対の翼では自身の肉体を浮かせられる許容量に限度がある、ならばこの結果は必然。
そして宙に浮いたならば、その物体の重量は0になる、無抵抗なら尚更だ、すかさず蛇を思わせるような長さの尾を掴み思いっきり此奴の身体を地に叩き付けてやる、他の生物に宙に打ち上げられるのも、地に叩きつけられるのも、初の経験だろう。
だが流石そこは空を翔ける王者たる種族の大蜥蜴、これしきでくたばるほどやわではなかった、見事なり。
その面には憤怒の形相が見て取れる、さすれば口元に火炎の兆候が…ふふ、此奴め、やればできるではないか。
奴の業火を避けるという無粋な真似はせん、真正面から突っ切る、多少肉が焼けたが以前問題ない、寧ろこれ程までの火力を出せるとは驚愕する他ない、だが…最早奴の顔は目前、先程のかちあげの意趣返しというわけではないが、その面を大きく蹴り上げさせて貰った、隙だらけだったのでな。
どの様な生物であれ自身の認識外からの攻撃には弱い物、その道理にはこの大蜥蜴とて抗えん、たとえ己であったとしても。
そして都合三発の殴打を浴びせてみせたが此奴は未だ健在なり、しかし…これまでだな、先程までの攻撃が余程堪えたのだろう、頭が地に伏しており体が死んでいる、これではもう戦闘の続行は不可能、頭蓋を潰して終いとするか、名も知らぬ大蜥蜴よ──良き経験をありがとう。
大蜥蜴を狩り終えたら途方から声を掛けられた、この御仁の名はユラというらしく先程の戦いを見ていたらしい。
して何用かと尋ねれば己は竜の力を欲するのかと尋ねられた、して竜とはと問いを返せば今しがた己が屠った大蜥蜴は飛竜と呼ばれる種族らしく中でも先程のはこの湖の名の由来にもなったアギールと呼ばれる個体らしい。
しかし竜か…通りで強い筈だな、竜の力そのものに興味はないが…他に竜は居ないのかと問えば、飛竜やその心臓を喰らい力を得た竜餐に溺れた者、そして更なる高みに位置する竜も、この地の何処かに居るとのこと、成程成程、それは益々興が躍るではないか。
話をそこそこにどうやらこの御仁、血の指と呼ばれる者達を狩る者らしくこの付近に標的となるネリウスなる人物が居るらしい、血の指か…名は体を表すと言うならばその者達は血に狂うのだろう、戦ではなく殺しに特化した人物達と言う事だ、しからば当然血の匂いも強いのも必然。
あの大蜥蜴…基飛竜との戦いの最中にも焦げた匂いに混じって凄まじい程の血の匂いが漂ってきた、しかもそれは川の方面から、獣や家畜等の血の匂いではない、明らかな人間の血の匂い、それを漂わせているのが件のネリウスというのなら、其奴は人を殺す事に長けている他ならない、これは思わぬ出会いもあったものだ。
凡その位置を把握しいざ行かん、途中ユラの静止の声が聞こえたが聞き流そう、大きな獣との戦闘も良いが対人に特化した人間との争いもなんとも筆舌に尽くし難い。
一歩、また一歩と踏み込む度に強くなる血の匂い、するととうとう現れたわ、赤き返り血を浴びたが如く真っ赤な肉体の人間が、成程確かに血の指と言うだけあって確かに赤い、最早血の体と言わんばかりの赤さ加減、一体どれだけの人間を屠ってきたのか!*1
得物は短剣、軽装の所を見るに身のこなしも軽そうだ、さて…実力の程も確かだ、躊躇なく動脈部分を切り付けてくるその容赦無さ、しかも見たところ刃にギザ刃を選択するというえげつなさ、恐らくは大量の出血を目的とした武器なのだろう、ならばこの手の相手の目的は相手の失血死!
だが…まだまだ甘いな、狙いがわかりやす過ぎる、そちらがそうくるならば、こちらは敢えて太い血管が詰まっている所の隙を晒すのみ、そうすればこういう輩は…吸い込まれる様に刃を差し向けてくる!
向けられる位置が分かるなら防げて当然、指で摘むようにして止めるのも容易な事だ、向こうが引き抜こうと必死だが、うつけ極まれりだな、この手の反撃には不慣れだったか、まぁ良い、胸部に一撃打ち込んでそれで終わりだ。
ふむ、手応えの無さはさておき、確かにアレに複数切られれば己とて出血多量にて万全の動きが出来たか怪しい…あの者の様に人を殺める事に特化した集団も居る、それが知れただけ僥倖としておこう、この武器は教材代わりに貰っておいておく…尤も、この手の武器は不慣れなのだがな。
さて…次はどんな奴と戦えるのやら。
Q.これを書いてた時に新作が発表された時の作者の心境を答えよ。
A.急遽サブタイを変更しました。
旧サブタイ【恋人とはな…そして貴重なアイテム!】
・黄金野郎
関門辺りに出るつもりが何故かエレの教会に出された奴、なんか物凄く上からな物言いの女に身に覚えはないが心当たりは滅茶苦茶ある嫌味を言われた、原因は自分のそっくり野郎だろうなと思ってる。
・メリナ
同じく黄金野郎が浴びせられてた嫌味の数々に原因はとっくの昔に死んだあっちの方だろうな…とか思ってたら急に呼び出されたので内心びっくりしてた娘、この度霊呼びの鈴を授かり晴れて霊体使いになった、それ本来褪せ人がやるポジションなんすよ。
飛竜とネリウスの瞬殺に関しては最早何も思わなくなった。
・雪魔女
霊馬を授けられた褪せ人を求めて遂に目的の人物を見つけたと思い祝福の移動に干渉しこちらに呼んだらそいつがよりにもよってな相手だったある意味一番の被害者、冷静を装ってる風に見えて内心馬鹿焦ってた。
ただ一問一答で即座に別人と看破したので渋々ではあるが、本当に断腸の思いではあるが、霊呼びの鈴を黄金野郎に渡す…のは非常に癪だったので霊馬を使っているという霊体の女の方に渡す事にした、その相手がまたもやよりにもよってな人物だったので彼女は無いはずの胃がキリキリと痛む幻痛に襲われた、メリナの正体に関してはもれなく知ってる。(この世界ではそうなった)
・飛竜アギール
本日の黄金通り魔の被害者1号。
同種の飛竜の中では間違いなく強くなる才に溢れてた、同時期に生まれた他の竜より早く成長し、空を飛べ、火炎を吐けるようにと、まず飛竜というカテゴリーでは間違いなく上位…なのだが特に労せず強くなった結果幼き日に学ぶ筈の逃亡等の危機察知能力を欠いた、死した瞬間彼は強いだけではこの地では生き残れないのだと漸く学んだのだ、そしてそれは、余りにも遅すぎる学びでもあった。
何気にツリーガード(三発)より一発分耐えた、竜塚の雑魚飛竜だったならば最初の小突きで終わってた。
・ユラ
黄金野郎とアギールの戦闘を見てた御仁、一応竜餐について語るも帰ってきたのは他の竜の存在のみ、それを聞いて竜餐に微塵も興味無いのを否が応も無く理解させられた人、その後流れ作業のようにネリウスを沈めたのを見て心底コイツが血の指にならないよう祈った。
・血の指ネリウス
本日の黄金通り魔の被害者2号
本日も君主の為(半分は自己欲求も含む)に褪せ人狩りを行っていたら目を奪われるような美しい黄金の長髪と斬り刻み甲斐がありそうな肉体を有した黄金野郎がこちらに向かって走ってきてるので嬉々としてソイツを標的にした、動脈部分を切ればよく血が出るというのは沢山切って知ったのであってコイツにそんな医学的な知識はない、それは同僚の白面の領分だ。
何気にコイツのせいで血の指の一派の存在が黄金野郎にバレてしまった、ヴァレーは隠し通せたというのに…