入り口の衛兵を沈めいざ城の中に入ればそこは地獄を彷彿とさせる光景であった、死体が積み重ねられ火の手が上がる、その上に異形が雄叫びを上げるこの光景を地獄と言わずなんというのか、幸いなのがイレーナは目が弱くこの光景が目に入らぬ事だ、しかし視界が弱いという事は反面聴覚が強まるという事、この怨嗟の叫びもこの娘にとっては辛かろう、ならば我が身がやる事は唯一つ、一刻も早くこの場を制圧し場を鎮める事だ。
ケネス公は亜人にも話がわかる奴はいると言っていたがそもそもこの世界でまともに話が通じるものの方が珍しかろう、見た所此奴等は嬉々として襲ったのだろう、ならば何の躊躇もいるまい、娘二人を安全な場所に安置しいざ殲滅の時。
拳を振るう、脚で払う、そうすれば敵が面白いように吹き飛びその命を散らしていく、偶に敵を掴み空の敵目掛けて投げつけてやれば糸が切れた様に地に堕ちる、なんとも脆い物だ。
斧で叩き切ろうとしてくる輩が居たので斧の刃を掴み取りそのまま握りつぶしてやった。
空から矢で射抜こうとする輩が居たので近くにいた敵で矢を防ぎその敵の身を相手にくれてやった、そんな事の繰り返し、最早戦いではない、蹂躙だ。
己が望んだ戦いではないが己から首を突っ込んだ戦いだ、数の利は向こうにある、しかし統率が取れて居ないのであれば1がその数の分あるだけに過ぎない。
イレーナに城主は何処か尋ねたらこの城の高い場所、櫓のような形をしている場所ではないかと返ってくる、目的地がはっきりしているのは好ましい、このまま蹂躙して其処へ向かうとしよう。
◆
「貴公…いや、貴方様は…‼︎いやしかし彼の御方は既に…あぁ、取り乱してすまない、私はエドガー、ゴドリック様から、この城を預かっていたが…今やご覧の有様よ…従僕どもが蜂起したのだ」
「その事なら知っている、道中の娘から聞いたからな、俺が問い正したいのは何故アンタが残り娘と離れたのか、それが聞きたい…尤も連れてきてしまったがな」
「何だと…‼︎貴公、私がどの様な思いで娘をこの城から逃したと…‼︎」
「知らん、父でありこの城の主であるアンタにはやるべき事も、背負う物も多々あろうが、それでもあの娘にはアンタしかおらんのだ、それにあの位置に放置していたらそれこそあの娘は死んでいたぞ?」
「ぬ…ぐぅ…それは、そうかもしれんな…いまやこの地に安全な場所等存在しないのかもしれん、しかしそれでも私はこの城の主将として果たさねばならん事がある、モーンの至宝たるあの剣を断じて穢れ者達に委ねてはならんのだ…」
「…俺は外様の人間だからとやかく言える立場じゃないのは理解してる、その上で言うが…アンタは勤め人としては完璧かもしれんが人の親としては下の下だな」
「…そう、かもしれんな…危険だからと娘を我が手の届かぬ場所に遠ざけた私は、親としては失格やもしれん」
「だからもう二度と手放すんじゃねえぞ、ここは直に安全な場所になるんだからな」
「何…?貴公、まさか…」
「俺が全て片付ける、奴らの首魁は何処だ」
◆
エドガーから事のあらましを聞いた己は娘を預けて奴が述べた首魁の場所へと向かう、どうやら奴らの頭はこの城の外壁を下りた海に面した墓地に居るらしい。
それにしても、ゴドリック“様”…か、ケネス公や他の者がゴドリックの事を散々に言っていたが奴だけは敬称を付け呼んでいた、それは裏を返せばその様な君主であろうと忠義を尽くす者が居るという事他ならない、無論これでまだ見ぬゴドリックの評価を定められる筈もないのだが、やはりというかなんというか人の言伝だけでは人の事は判断出来ぬな、直接この目で確かめねばなるまいよ、だが今はそれより先に、目の前の剣闘士を気取った獣を狩るとしようか。
獅子と人間の混種と言える此奴は身の丈にも迫る大剣を担いでいた、何度も言う様だが獣の膂力であの大剣を振るうのは単純ながら強力な物がある、しかし獣故なのか技量がないに等しい、だから剣筋は単調で見切るのは訳ない、理想とするならば獣の身体能力に人間が如き知能と技量が伴えばそれは末恐ろしい敵となろう。
各地には強き者が居ると聞いたがこの程度か、正直期待外れも良いところだ、もっとこう血湧き肉躍る戦いを繰り広げれる強者は居ないものか…やはり我が渇望を満たせる者はやはりデミゴッドしかおらぬのか…。
獅子の混種を屠った後エドガーにこの城の至宝とされるこの数多の剣をくっつけたなんとも言えぬ形をした剣、これを奴らに奪われるのを避けたかったらしい、この城に所蔵された物で無数の嘆きと怒りを背負った復讐の大剣なんだとか、経緯はともかくとして剣と剣を接ぎ合わせて一つの剣にしている理屈がわからん、これでは接合部分の強度が脆くとてもじゃないが振り回せる代物ではないだろう、やはり武器は一本筋の通った物でなくては。
ここでのやる事は終えた、そろそろ嵐の城に舞い戻っても良い頃合いだが…ふむ、実は先程から気になっていたあの小さな黄金樹、あれを調べてからでも遅くはないか。
善は急げと行動をするがその際にエドガーから娘を守った事、この城を取り戻した事、そして武器を取り戻してくれた事の礼をしたいと述べられたのだが己は別に何も欲してはいないし地位や権力なぞあっても枷にしかならん、しかしどうしてもエドガーの気が収まらん様なので一つ頼まれ事をする、やれやれ此奴も存外に律儀な奴だ。
◆
「ゴドリック様に言伝を?」
「然り、直に俺が向かうとゴドリックとやらに伝えてくれ、俺はここに向かう前に見えた小さな黄金樹を調べ終わったらすぐに向かう」
「…貴公、いや、貴方はゴドリック様を誅伐なさるおつもりか」
「さぁな、そりゃ相手の出方次第だ」
「…ゴドリック様に仕える者としては今ここで貴方を討つべきなのだろう、しかし貴方には大恩がある、必ずやお伝えしよう」
◆
ゴドリックへの言伝にエドガーを走らせ己は例の小さな黄金樹へと向かう、個人的に気になると言えばそれまでなのだがもう一つ気がかりな事があるなら、それはメリナの事だ。
此奴は記憶全てが無いらしくこの地で最も大きく聳え立つあの樹木、つまりは黄金樹に向かえば何かわかるかもしれないという事でそこに向かう為に己と取り引きしていたのだ、しかしふと周りを見てみれば小さな黄金樹、言うなれば小黄金樹とでもいうべき物がチラホラ見受けられた、それが生えている元へ向かえば記憶が戻ると言わずに何かしらのきっかけが得られるかも知れないという打算が僅かにあったりする、尤も期待などそんなにしてはいないのだが。
小黄金樹に向かう最中、気づけばこの啜り泣きの半島の端の方に来た事に気づく、右方向に視界をやれば教会の姿が、左方向に視界をやれば目的の小黄金樹だ、そして向かい正面には何やら巨大な社を背負った岩を積み重ねられ大きな鐘をぶら下げた巨大なナニカ、しかも我が目が狂っているのでなければアレは動き歩いている、遠目から見たそれは宛ら歩く石の怪物と言った所か。
メリナが言うにはあれでも霊廟らしくこの地において魂無きデミゴッド、その再誕に備えた遺体の霊安室のような役割を担うらしい、しかし生と死の循環が狂った今現在その機能が正しく作用しているかは怪しいと言う、うぅむ…死んだならそのまま眠らせてやった方がその者の為だとは思うが、この辺は価値観の違いだろう。
とにかく、あれが遺体の安置室の様な物なのであれば破壊するのは無作法という物、あれの相手はまた今度にして今は目的地へと直進しよう。
坂を登り終え全容が見えてきた小黄金樹はこの地の中央に雄大に聳え立つあの巨樹に比べると小さくはあるものの此方も大きく立派な物である、近場の霊廟が鳴らす鐘の音も合わさりなんとも神秘的な場所と化している。
その小さな黄金樹の麓に佇む、側から見たら石像の様にも見れるその姿はよく見れば石の様な無機質ではなくて木々の類の力強い生命力を感じさせる。
メリナが言うには此奴は黄金樹の化身と呼ばれているらしく各地にある小黄金樹の守護者であり免疫機構でもあるらしい、なるほど確かに力は強そうだ、目を引くのはあの巨体に似合う大きな石鎚、あれで数多の敵対者を叩き潰し擦り潰してきたのだろう事が伺える、加えて顔と呼べる部位が無い故に何処を見てるかも分からん、おそらくは脳に位置する物も無いだろうから脳を揺らす攻撃も意味がないだろう、見た目からして血液も流れてはなさそうだ。
ある程度奴に接近すると奴も起動したのか動き出す、見た目通りというかやはりというかそいつの動き出しは遅くバキバキと木々をへし折った様な音を立てて動き出した、しかしその図体の大きさ故に一歩が広く次の足が出るのも存外に早い、並ならば鈍重そうな見た目に反して動きの速さに面を喰らうやもしれんな。
◆
鈍い地鳴りの音を響かせながら木々の異形が黄金の褪せ人に迫る、大きく振り上げられた石鎚を頭蓋に向けて振り下ろされるそれは並の相手ならばこの場を赤く染め上げる肉塊と変貌させるだろう、しかし黄金──その場から動かずその石鎚を片腕のみで受け止める。
空を駆ける巨竜にこそ劣るにせよ、そこらのトロルよりは遥かに優れた膂力を持つ黄金樹の化身による渾身の一撃、その威力は黄金の褪せ人の足元に出来たクレーターの大きさが物語っている、後に測ってみた所半径約76cm深さは足の形にスタンプされていた為にわかりやすかったがなんと約16cmもの深さを記録していた、頑強な土台である狭間の地を、いくら打ち込んだ相手がきわめて頑丈とはいえ16cmも地面にめり込ませるという異常事態、それはそのまま作り出した黄金樹の化身の力強さを証明する他ならない。
──これ以上…打ち込めない…‼︎
黄金樹の化身の心境を表すならこんな所だろうか、それもその筈彼は今までこの一撃で数多の狼藉者を葬ってきた、その一撃を片腕で止められてしまったのだ。
人間達の技の中に力の勢いを殺す類の物が存在するというのは微かに知っている、自身から力みを消す事で身を軽くし攻撃を受け流す技の類があるのも知っている。
だが今のこれは違う、純然たる力のみで自身の攻撃を受け止めたのだ、それもただの人間が‼︎
瞬間、黄金樹の化身は己の中で目の前にいる人間の警戒度最大値まで引き上げた、いつものような狼藉者ではない、己が身を滅ぼしうる敵であると。
認識を改め即座に背後に飛び退いた化身が次に行ったのは得物の石鎚を地面に突き立てた事、直後発生したのは黄金の爆発、そして浮かび上がる多数の黄金の粒、それは例えるなら弓矢を違えた弓兵が射撃体勢に入り王の号令を待つ所謂待機状態だろうか。
瞬間、黄金樹の化身が大きく跳躍し同時に光の粒達が一斉に放たれる、褪せ人は一瞬だけ黄金樹の化身に目をやり向かってくる光弾を全て避ける。
──成程、標的の居た位置に向けて放たれる物…追尾はなし、しかし順に放たれるから継続して光弾が飛んでくる、そして…‼︎
褪せ人が大きく後退しその場に降り落ちたのは黄金樹の化身、自身の全質量を利用した攻撃によりまたしても大きな窪みが形成される。
──あの弾幕と本体は別々に行動可能、絶え間なく弾幕が飛んできてるのがその証拠、1回に展開される弾の数は15発前後か。
「悪くない技だ」
激しい攻撃を仕掛け大地に夥しい程の痕跡を残した黄金樹の化身、対してまだ一度も攻撃を仕掛けず回避や防御に回る褪せ人、一見すると黄金樹の化身の優勢に見える、しかしその実黄金樹の化身の攻撃は何一つ褪せ人に対して有効打を与えていない。
「んー…見たいものはもう見れたし、もう良いか」
褪せ人が黄金の斧槍を持つ、しかしその手には力らしい力が篭められている様には見えない、両腕はダラリとぶら下がり表情は戦闘の最中だと言うのに穏やかさすら感じる程、次第にその立ち姿からは力みが消え…自重にて地面に激突を待つ…その一瞬、褪せ人は動いていた。
一瞬、ほんの極僅かな瞬間、その時間の内に褪せ人は黄金樹の化身との距離を潰し懐に潜り込んでいた、大きく腕を引いたその構えは刺突の構え、彼の膂力を考えるなら刺し貫くのも容易いだろう、黄金樹の化身の反撃の動作は無かった。
黄金樹の化身とは小黄金樹が生み出した防衛機構である、そしてその小黄金樹は根幹に位置する黄金樹の分け身の様な物でもある、従って機構としては末端の存在でもある黄金樹の化身であっても狭間の地の状況はある程度把握できる。
この者を此処で仕留める事による今までと変わらぬ一時的な平穏か、或いは放置する事によって生じるこの地に齎される新たな混沌か、僅かばかり思考の末黄金樹の化身は後者を取った、それは己が敗北を認める行為に他ならなかった。
黄金の斧槍が黄金樹の化身の胴体を貫きそのまま刃を斬り上げる、袈裟懸けの様な形に斬られた黄金樹の化身はそのまま力無く沈んで行く。
どこまで行っても機構上の行動しか持たないが故に彼に後悔や未練の類は無い、いや…強いて言うなら、この黄金の褪せ人が王となった後の世界がどうなるのか、それが見れないのだけが唯一の心残りだろう、最期の一瞬に僅かばかりに芽生えた自我でそう思考しながら、黄金樹の化身はその機能を停止させた。
◆
倒した黄金樹の化身の肉体の傍らに光り輝く物体が落ちていた、例の如くメリナに聞けばこれは結晶雫と呼ばれる物で霊薬と呼ばれる物品に二つの結晶雫を混ぜ合わせる事で様々な効能を得られるらしい、尤も己はそんな物拾ってないから無用の長物な訳だが…メリナに託しておこう、きっと何かの役に立つ筈だ。
物置みたいに扱われて大層ご不満な様子だが己には扱えんのだし持っていても仕方がないだろう、という事でメリナに託したのだが…なんと此奴結晶雫を取り込みおった、というよりは結晶雫の方から体内に入って行ったというか…何とも摩訶不思議な事がある物だと納得する事にした、メリナの体調に不備はないようだし。
では用も済んだので城を目指すとしよう、飛んで行けたら良かったのだが生憎近場に祝福がない、祝福から祝福へとしか飛べんとは何とも不便な物だな。
「…あなたは、何の為に旅をしているの?」
突如メリナがこの様な事を申した、何の為に…旅に理由が要るのか?
「私は以前までの記憶は無い、だけどあの黄金樹の麓に行けば何かが分かると思う…でもあなたは違う、ここに来る前の人生があって今がある筈」
ふむ、この地に来る前の己か…さて、何をしていたか…思い当たる節は無いな、だがこんな性分だ、きっと今と然程変わらんだろうさ、強者を求めて駆け回っていたのだろう。
◆
私は何となく、目の前の褪せ人の過去の事について聞いてみることにした、さっき倒した黄金樹の化身が落とした結晶雫、あれを半ば事故で取り込んでしまい一悶着あったが身体に不調はない、尤も霊体の私に肉体の不調があるかどうかだなんてわからないのだけど。
ただあの一件でほんの少しだけ私について分かった事がある、私には父と母の他に、兄が居た…気がする。
特筆していう事でも無かったので何も言わなかったがそこまで思い耽ると目の前の彼の過去が気になる、ただでさえ姿形が彼のデミゴッドと同じなのだ、気にならない訳がない、そこまで思考を巡らせるのと口に出していたのは同時だった、それともう一つ気になる事が今出来た、何故私は自身の記憶がないと自覚しているのにあの黄金のデミゴッドと目の前の褪せ人が同じ姿をしていると知っているのだろう…?
「俺の過去ねぇ…生憎と誰かに語れる程の物を待ち合わせちゃいない、俺もお前と同じここに来る前の記憶がないんでな」
同じ…この人も私と同じここに来るまでの記憶がないと言った、それは確かなのだろう、彼は嘘を吐くような人間には見えない、というよりは自分に正直に見える、欲求だとか行動だとか、全てにおいて自分に正直な様に見える、だから彼は嘘をつく事はないと思う。
「まぁこんな性分だ、きっと今と大差ないだろうさ、強い奴求めて彷徨ってたと思うぞ」
そう、なんだろうか…この外見からして何かしらの秘密があると思うけど…今は考えないようにした。
彼と来た道を戻って結構な時間が経過した、夜更けに森を抜けブライヴとの交流を終え、モーンの城を抜ける頃には夜明けの日差しが指していたが今や太陽は上り切って沈み行こうとする時間に差し掛かる、有り体に言うなら夕方付近と言った所だ、まぁ私はトレントに乗って地を駆けているし彼はそもそもトレントより早く走る事が出来る、このペースなら夜になる前に城に戻れるだろう。
「なあ、あんた…あんたが例の黄金の褪せ人だろう?エドガーの奴から聞いている、黄金の長髪の褪せ人が来たなら門を開けろってな…ゴドリックがこの奥で待ってる…さっさと通りな」
異様な光景だった、本来なら城という物は侵入者を追い出す物、もしくは侵入させない為の措置を取るべきの筈、しかし今回は何故か正面の門は開き中央道をすんなりと歩いて行ける、これではまるで英雄の凱旋だ。
「貴公、よくおいでになられた…ゴドリック様は奥にてお待ちだ、案内しよう」
「そりゃあ構わねぇが…アンタそれで良いのか、仮にも敵対者なんだぜ俺は」
「敵対者だろうが私にとっては大恩ある人物に変わりはない、私が忠誠を誓うのはゴドリック様のみだ、その主人が貴公を目の前に連れて来いと仰るのでな」
明らかに罠だ、しかし私の言葉より先に彼は先へ足を進めてしまう、周囲には取り囲む様に兵士達が配備されている、仮に一斉に襲い掛かって来ようとも彼が負けるだなんて微塵も思ってはいないけど、それでも万が一という物もある、こんな時実体がなく戦えない自分の身が憎らしい、尤も戦えたとしても彼の足手纏いになるのは目に見えているのだけど。
「彼は…やはり生きていたのですか、見た所ゴドリックに挑む様ですが」
「あの風体…この地でも滅多に見られる物ではない、戦士として至高の主だろう、彼ならばこの穢れた風を吹き飛ばしてくれるだろうか」
中央の広間を抜けた先の道に差し掛かるとエドガーが停止する。
「この先にゴドリック様がいらっしゃる…敵対者たる者に掛ける言葉では無いが…武運を祈る」
「おう」
◆
風が吹き荒れるその場に一人の人物がいた、まず目が行くのはその身体、並々ならぬ雰囲気を醸し出すソレは明らかに普通では無い、まず至る所に腕が生えており肉体も全体的にアンバランスだ、まるで後から装着されたかの様なその肉達は本体の意思で動いている、そしてその人物が持つ得物の黄金の大斧もかなりの重量がありそうで強力そうだ。
その異形の肉体の主、ゴドリックは自身の命で招き寄せた褪せ人の姿を見て目を見開く。
この直近で城内にて噂になっていた、黄金の長髪を携えかなり腕の立つ褪せ人が現れたと、そして先刻のエドガーの報告に於けるその黄金の褪せ人が見せたという戦闘能力…そのどれを聞いてもゴドリックは何処かでそんな訳が無いと一蹴した。
しかし今現在その本人が目の前に現れた、己も実物を見た訳では無いがそれでもハッキリと分かる事がある。
──
あの初めに生まれたと言う黄金のデミゴッド、彼の人物と姿形が全くの同じという褪せ人、その上で実力も高いという、これでデミゴッドならどれだけ良かったか、デミゴッドだったならば彼は納得していただろう、しかし目の前の人物はこの地に於いて尤も下位層に当たる褪せ人という人種、そんな輩が己が欲してやまなかった力を持って生まれ落ちているという事実、ゴドリックはどうにかなりそうだった、狂えてしまったならどれだけ良かったのか、しかし彼は仮にも君主を自称するだけはあり状況を判断するだけの脳はまだある、ゴドリックはゲルミア火山の溶岩よりも煮え滾った怒りを抑え深く冷静に、言葉を紡いだ。
「…よく来たな、黄金の褪せ人よ…我こそが黄金の君主たるゴドリックである」
「ご紹介に当たり感謝するぜ君主様、生憎俺には名乗れるだけの名を持ち合わせちゃいない、適当に褪せ人とでも呼んでくれ」
「一つ…聞かせろ、彼のデミゴッドと同じ姿を持つ黄金の褪せ人よ…
「…?言ってる意味が分からんな、そりゃどういう意味だ」
「この地に来て僅かばかりの時しか無いお前がどの様な旅をしたかは知らぬ、だがお前のその姿がこの地に於いてどの様な意味を持つかは大凡理解した筈だ、貴様…
それはもはや慟哭に等しかった、ゴドリックはマリカの子たるデミゴッドの中で最も血が薄く弱い、故にこそ彼は弱さ故の立場というものを理解している、もし仮にこの褪せ人がもっと早くこの地に訪れていれば防げた筈の争いや悲劇は激減していたかもしれない。
ゴドリック自身は他人がどうなろうと知った事ではないがそれはそれとしてこの地があそこまでの戦乱に巻き込まれる事自体は良しとしていない。
──お前がいたならあの戦争を防げたのではないか?
──お前がいたならこの地は幾許かの平穏に包まれたのではないか?
ゴドリックの胸中は大凡この様な所か、そんな思いを秘めたゴドリックの言葉に対し褪せ人は──。
「
「…は?」
ただ一言、そんな事自分が知るかと、そう返した、これにはゴドリックも呆然とするしかない、何故なら多少なりの答えが返って来ると思っていたのだ、それがただ一言のみの返答、褪せ人から返ってきた言葉はそれだけだった。
「お前らの都合を俺に押し付けんなよ、煩わしいだけだし、悲劇だの争いだの言われても俺は知らんとしか返し様がねえよ」
その言葉が皮切りだった、最早抑えることすらままならぬ怒りを搭載してゴドリックは突貫した、力の限り斧を握り締め目の前の敵にありったけを叩き込む算段だ。
「そうだとも、建前だとか、そんな物はどうでも良い、敵と敵がはちあわせちまったんだから、やる事は言葉を紡ぐのではなく力をぶつけるのみ…だろ?」
「…そうか、それが貴様の答えか…それならば手っ取り早い、我が偉大な父祖に倣い力で語るとしよう」
片や黄金の大斧を構え怒り心頭に、片や不敵に笑い黄金の斧槍を構えずに立つ、黄金の系譜のデミゴッドと黄金の褪せ人、その二人の対決が今開始された。
※黄金野郎はゴッドウィンと全く同じ姿形、ラダゴンよりちょっと大きいか小さいかな〜位でやってます、なので身長は3m前後です、でけえよ。
容姿は…多分ラダゴンをそのまま金髪にした姿なんじゃないですかね、金髪のまま男体化したマリカとも言う。
・黄金野郎
ここに来る前の記憶が無いからゴドリックの質問に対しては真面目に知らんの一言しか返しようが無かった人。
・メリナ
記憶喪失の癖に色々知ってる女、計らずしも結晶雫を取り込んでしまった、父と母の他に兄がいた様な気がするらしい。
・モーンの親娘
親子共々生存ルート入った、娘はアレにはならない、それはそれとして親なのに子供より仕事優先するって親としてどうなのよ。
・黄金樹の化身
モーションがダークソウルの例の奴に似てるが故にプレイヤー達からは黄金樹のデーモン呼ばわりされてる奴。
最後の最後にほんの少し自我が芽生えた。
・接ぎ木のゴドリック
みんな大好き不遜おじ、他の人間がどうなろうと知らんが狭間の地そのものは嫌いでは無かった、だから褪せ人に質問したら例の返答で私怨込みでキレた。