──何故恨まぬ。
──恨む必要ないからだよ、私の死が必要なんだろう?
──怒りはないのか。
──それもないね、家族が私の死を必要としている。それに私の死は決して無駄にはならないだろう、モーゴットには悪い事をしたが……
──お前の友はどうするのだ。
──フォルも分かってくれるさ。
──しかし…
──
あぁ、奴はこの後なんと言ったのだったか、随分と懐かしい夢を見るものだ……人の身を捨ててなお夢から覚めぬとはな。
ゴドリックとの戦闘の後弔いはしっかりと行われた、またその際にネフェリという女戦士が見事な戦いだったと、我が身の様な戦士を目指していると言っていたので激励を投げておいた、全ての褪せ人があの者の様な真面目な奴だと此方としても気が楽なのだがな……
そうして扉を開けて玉座の間を通り抜け城の裏口は進む、その道中に丸い球体……よくよく見ればそれは人体の目玉だった訳なのだが、とにかくそれを拾っておいた、誰かの手に渡るくらいならという奴だ。
……メリナは捨てた方が良いとごねていたがな。
「…どなたか、そこにいらっしゃるのですか?はじめまして。私はハイータ、彼方の灯を探して旅をしています。それで、不躾なお願いなのですが…もし貴方が、シャブリリのブドウをお持ちでしたら、私に恵んでくださいませんか、私は生まれつき目が弱く、行くべき場所も見えませんが、そのブドウを食べると、目の奥に、彼方の灯を感じるのです。それを辿り、指の巫女となることが、私の使命なのです」
ふむ、葡萄か……生憎手持ちに葡萄はないな、とれんとの餌となるロア・レーズンならあるのだが生憎これは人間が食す物ではないしな……
それにしても狭間の地では葡萄が名産品なのか、しかもただの葡萄ではないシャブリリなる人物が育てた葡萄とやらが求められているあたりシャブリリとやらは名のある葡萄農家なのかも知れんな、葡萄を食すだけで灯を感じさせるとは……な。
兎に角ハイータ嬢には生憎持ち合わせて無いと伝え、シャブリリなる人物に会えたら幾つか分けてもらう様掛け合うとしよう。
……自身の収穫物を頂くのだから無料とは行かんだろうがな。
道に沿って歩いていけば教会の跡がそこにはあった、生憎自分は宗教といった代物とは無縁であるし信仰心とやらもさしてない、しかし中から人の気配がするので足を運んでみれば項垂れている男が一人いた。
「…お前さん、褪せ人かね、だったら、ルーンを恵んでくれんかね。こう見えて、かつてはレアルカリアの学院で、輝石の魔術を学んだ身、お前さんが恵んでくれたら、替わりにそれを教えたっていいんだ」
どうやらこの男、魔術師であるらしい、これまた生憎な事に自分は魔術に興味がない、どうしても非力な者が扱う護身程度技……としか認識できぬが故自分には不要と考えてしまうのだ。
だがこの男ならあの城について何か知っているやも知れぬ、そう思いルーンを多少多めに分けてやった、無用の長物なのでな。*1
「ああ、ありがとう、ありがとう、お前さんは良い人だ…私はトープス、もし興味があれば約束通り魔術を教えよう、最も大した魔術はしらんのだが…」
……よくよく考えてみれば魔術のなんたるかを知る良い機会かも知れんな、自分が扱う事はなくともどういう存在かを知れるならそれに越した事はない、知らなかったから殺られた、なんて言い訳にもならんのだからな。
そうして自分はトープスと名乗った男から知る限りの魔術を学び、学習した、遠距離主体となっているがそこは詠唱してる隙に距離を詰めるとして……本題の事を聞こうか。
「ああ、お前さん、魔術学院レアルカリアに用があるのか、それならお前さん、輝石鍵を探しなされ。今やあの学院は閉ざされて久しい、輝石鍵がなければ中に入る事は叶わんのだ…そしてお前さんさえよければ、お前さんの分の他に輝石鍵がもう一つ見つけれたなら、どうかそれを譲ってくれんか?私に才能がない事等理解しているとも、それでも私はもう一度あの学院に戻りたいのだ」
ふむ、鍵がかかっているのか、それは面倒だ……しかもただの鍵ではなく魔術処置が施された所謂結界の様な代物、力技でこじ開けることもできなくはないだろうが……一筋縄では行かんだろうな。
あぁそうだ、ついでにもう一つ聞きたかったのだが──。
「シャブリリのブドウについて…?お前さん、それをどこで知ったかは知らないが、悪い事は言わん、それに関わるのはやめておけ」
「シャブリリとはこの狭間の地にて最も忌むべき存在だと伝えられている、シャブリリは讒言を繰り返しその果ての罰として両目を潰されたのだ、そしてその瞳に“狂い火”という病を宿したのだ」
「そしてシャブリリのブドウとはそういった病に侵された者達の瞳の事だ、だからお前さん、さらに関わるのだけはやめておけ」
むぅ……どうやらシャブリリとは葡萄農家ではなかったらしい、期待させおって、というか病に侵された者達の瞳と言ったが……もしかしたらこれか?
「なんと…お前さん既に拾っていたのか、確かにそれがシャブリリのブドウと呼ばれるものだ、その様な瞳が焼けて爛れた様が葡萄の様に見える事からシャブリリのブドウと呼ばれる様になった、尤も私も直接見るのは初めてだが…お前さん、それをどうするつもりだい?」
ふむ、先程これを求めてる者が居たが……その話を聞くにどうやらこれを与えるのは不味そうだな、こちらで丁重に保管し然るべきに処理しよう。
「うむ、それが良いお前さん、覚えておきたまえよ、この地に火を扱う者は多岐に渡れど狂い火こそが最も忌み嫌われているのだから」
ううむ、最も忌み嫌われている……か、ならばあまり関わるべきではないな、強者ならば力比べをしたい者だが病に侵されるのはごめんだ、尤も自分自身病とは無縁だった気がするのだが、今は一人でもないしな。
ありがたい情報を幾つも頂いたトープス氏に礼を言いレアルカリアの学院に向かう、これだけの情報を貰ったのだ、彼奴の願いを叶えてやるのもやぶさかではない。
坂を下り湖に突入し真っ直ぐ進む事数分、物見台の様な場所に一人の女が助けを求めているのが聞こえる、出向いてみれば黄緑の装束を纏いやけに腰が曲がった娘が一人、話を聞いてみればどうやらこの先にいるならず者に大事な首飾りを盗まれたのだとか。
聞けばまあなんとも間抜けな事だが、どうやらそいつも自分と同じ褪せ人であるらしい、褪せ人はそんなのしかおらんのか。
自分は特に高貴な正義感など持ち合わせてはいないが、まぁこれも何かの縁だ、そいつの元に向かうのも悪くはないだろう。
示された通りの小屋に出向いてみればそこに居たのは鉄仮面を被り鍋を煮込んでいる男であった、中身はエビだろうか。
話しかけるなりやけに威圧染みて攻撃的な発言を繰り返すあたり此奴は小悪党の類やも知れんな、少しでも自分を大きく見せようと必死なのだろう、まぁ自分には通じないが。
とにかく首飾りを渡してくれと頼むとどうやら誠意が欲しいとの事、どうやら此奴もルーンが欲しいらしい、自分には無用の代物故に分け与えてやったが……この地ではルーンに飢えた者が多いのか?
それから先程から香ばしい匂いを放っている鍋の中身について尋ねるとどうやらエビを茹でていたらしく良い茹で加減だと見てわかる。
……思えばこの地に降り立ってから碌な食べ物を食っていなかった気がする、精々が熊肉か竜の心臓辺りだろう、この様に人の手で調理が施された食物とは縁がなかったな……
「なんだお前…エビに興味があるのか?確かにそいつは茹でたてだからなあ…良いぜ、出す物出してくれたら譲ってやろう、エビ好きが増えるのは良い事だからな」
ふむ、では少しばかり拝借。
エビを食しながらわかったのだが此奴は小悪党の自分がこの地に導かれたのは黄金樹が壊れてるのではと言った、まぁ確かに黄金樹だの信仰だのと胡散臭い話ばかりだ、近頃は褪せ人を狩る集団もいる様だしな。
「褪せ人を狩る集団…ね、そんな碌でもない奴等とは関わらないに限る、小悪党の俺はエビでも茹でて大人しくしておくさ」
ふむ……しかしこのエビは美味いな、力が漲る様だ、自分が茹でてもこの様にはなるまい、この者はこの手の事に慣れているのだろう、ならば──。
「あぁ?カニはどうかだと?ふぅむ…確かにカニはまだ試した事が無かったな…機会があれば試してみるとするか、ありがとうな、やっぱりエビ好きに悪い奴はいねえ」
というわけで話を纏めた後件の首飾りを例の娘に渡す事にした、その際道中でメリナにエビを分けてやった、彼女は食事を必要としない様だがそれはそれとして味覚は残っているらしくエビを食したら顔を輝かせていた、分かるぞ、エビ美味いもんな。
娘に首飾りを返すと彼奴はラーヤと名乗り火山館とやらにいるタニスという人物に仕えているらしい、そしてその火山館からの招待状を貰うとアルター高原を目指せと言ってきた、己の旅路に口を出される筋合いは無いのだがな。
それから、アルター高原に向かう為にはデスタスの大昇降機なるものを使うらしいのだがそれは動かなくなって久しいとの事。
しかし古遺跡の断崖にあるという坑道を伝えばアルター高原に出られるんだそうだ、別に崖を登る事くらい容易い事なのだが。
しかし火山館か……あの血の一派の他にも褪せ人を狩る集団がいたとはな、恐らく自分の事も知られているのだろう、まあ襲いかかって来た所で捻り潰せば良いだけなのだが。
さて、そろそろ本格的にあの城を目指すとしよう、魔術師の総本山……まぁ期待はあまりしていないがそれなりに楽しませてもらうとするか。
【悲報】シャブリリ葡萄農家じゃなかった【当然】
我々は字幕があるのも直前に拾うからシャブリリのブドウを正しく認識出来るが言葉だけでしゃぶりりのぶどうと言われたら即座に変換されるのはシャブリリの葡萄の方なのだ、後黄金野郎が狭間の地の情勢を全く知らないのもある。
・黄金野郎
隠すまでもなくステがカンストしてる故にレベルアップが不要な奴。
しかし信仰は0、これは振られていないのではなく0が上限値なだけ、コイツは神を信仰していない、従って黄金のハルバードの戦技を扱えない、筋力だけでぶん回してる、やべえ。
まだ魔術を軽視しているが、まぁ存在は知ってて良いだろの精神。
・メリナ
シャブリリのブドウを拾った黄金野郎に対して捨てた方がいいと忠言した、その直後に狂い火関係の人間と出会ったので肝が冷えた。
しかし黄金的勘違いにより発生したシャブリリ葡萄農家概念により一難を乗り越えた。
・ハイータ
狭間的収束運命によりイレーナとは別の容れ物で登場。
・トープス
言うまでもなくMVP、この人がいなければ黄金馬鹿がずっと勘違いしてた。
この人の前にある懐かしいよはフロム恒例の青ニートを演じた声優さんと同じらしく作者は大層驚いた。