ハリボテ怪獣ハンドメイドン   作:破壊光線

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完結しました~


最終話:夢を掴んだ者たち

 仲間たちと喜んだのも束の間、凱旋した俺とアロンは病院に直行する羽目になったた。

 俺は疲労困憊に加えて、素手でドラゴンを殴るという暴挙に出た結果、貧弱な腕が耐えられず折れたらしい。

 アロンは単純に魔力の使い過ぎで限界を迎え、俺の隣で爆睡している。この分だと目を覚ますのはおそらく夜だろう。

 寝息を立てる美少女を見守りながら、惰眠をむさぼりながら過ごすという、非常に贅沢で無意義な一日が始まった。

 

 暇を持て余した頃レタンがお見舞いに来てくれた。

 

「具合はどうだ?」

 

 レタンは近くのイスに腰かけると俺の話し相手となった。

 

「おかげさまで素晴らしい休日が過ごせそうだ」

「はは、それは何よりだ。私も君と同じで息抜きさ。ここまで有名になるとは」

 

 まあ魔王を倒したパーティで騎士団長の妹とあれば人気も出るだろう。

 レタンから外の様子を聞きつつ、適当に時間を潰す。

 十五分ほど話したころ、ふとレタンから今後の相談を持ち掛けられた。

 

「この後はどうするんだ?兄上はもっと大きな町で冒険者をやってみないか。と勧められた。もちろん嬉しいが、私個人としてはしばらく君と一緒に行動したい」

「いいのかよ、またとないチャンスじゃん」

「構わないさ、せめて君が一人で立てるようになるまでは、な」

「お前こそ、剣士を夢見る小さな子供たちに胸を張れるのかよ」

 

 俺の皮肉に対し、レタンは胸に手を当て目を閉じる。

 

「そうだな。幼い頃の私が、今の私を見たらガッカリするだろう。だが今の私は過去の私に会ったとしたても堂々と胸を張れる」

 

 ありがとう、ソーサク。最後に人の顔見てお礼まで言ってのけた。胸を張り、病室を退出する後ろ姿を見て思う。

 最後まで真っ直ぐだったな。

 

 

 

 

 

 

 昼時、飯を持ってきてくれたのはピノだった。

 

「ソーサクさーん、仕事多すぎ、物資足りなすぎ、人いなさすぎ。お助け、助けて、助けろ」

 

 謎の三段活用とタウロスサンドをプレゼントしてくれた。忙しそうだな、サボっていいのかよ。

 

「ホントそれ。エイさんは物資の交渉行っちゃうからわたしが全部仕切んなきゃいけないの。発注書が増える増える。ベッドの上でいいから手伝ってくんない? 暇なんだろ。今後のお付き合いを円滑に進めるためと思ってさ」

 

 いつかのようにボフッとベッドに倒れこむ商人。あと今後ってなんだよ。

 

「ピノちゃん、商人の傍ら君たちのパーティ、入るから」

 

 レタンに続き衝撃の事実だ。

 

「冒険者辞めたんじゃないの?」

「商人でもダンジョンで薬草の採取くらいはするわ。それじゃこれよろしく」

 

 しかも領収書の束を俺の膝の上に置いているし。これは手伝えってか、どれどれ。

 

「あー、悪いんだけどさ、俺この辺の文字知らないんだよね。あと腕折れてるし」

「ぎゃぁああ。くそぅ、くそぅ。元気になったら読み書き計算、叩きこんでやるから覚えておけよ」

 

 怪獣の断末魔のような声を上げて、またベッドの上に項垂れてしまった。

 扉の向こうから声がする。

 

「ピノさーん、どこですか?修復用の木材を頼みたいんですが」

「ほら呼んでるぞ」

「あ、はーい。今行きまーす」

 

 帰り際、恨めしそうに俺を見つめていたが、一瞬だけ表情がほころぶ。

 

「お前のカイジュウ、かっこいいぞ☆」

 

 当然。

 

 

 

 

 ゴロゴロしているうちに眠ってしまい、起きたら日が傾いていた。んで、寝返りを打てば赤い仮面。

 

「……起きた」

 

 カミシモ参上。コミュ力の無さは相変わらず。

 

「4時間と37分。寝てた」

「もしかして待ってた?」

 

 コクリ、小さくうなずいた。何しに来たのだろうか。俺についていくと、レタン、ピノの二人が立て続けに言ってくれた。もしかして、カミシモも同じか。

 

「……しばらく、貴方には、主になってもらう。その証にこれ」

「あ、はい。クナイね」

 

 貴方もですか。

 ところでさっきから俺の顔を見つめているんだけど、まだ何かあるの?

 

「……その、仮面、取るから。見ないで」

 

 すごく気になるが、茶化したらいけないような気がして寝返りを打つ。

 音だけだから半分想像が入るが、カミシモはゴソゴソとアロンのベッドに乗っかり、仮面を取った後、一言。

 

「ありがとう。あの日、貴方が助けてくれたから……私は、ここにいる」

 

 カミシモの仮面って、たしか前に助けてくれた人を参考にしてるんだっけ。

 

「また、屋台を巡ろう。さらば」

 

 コイツもコイツで言いたいこと言って音もなく消えていった。仮面で表情が分からないけど、カミシモなりに勇気出したんだろうな。

 貰ったクナイは青色のリボンに包まれていた。

 

 

 

 んで、最後は貴方ですか。夜遅くにいらっしゃるとは。

 

「やあ、ソーサク君」

「エイジン様」

「ありがとう。求めていたこと以上の事を君はやってくれた。そんな君に朗報だ。元の世界に戻せるようになったよ」

 

 あっちだと熱中症で倒れて意識不明になっていたんだっけ。

 色々と戦ってみて分かったけど、死にそうな目には何度もあった。地球の方が安全に暮らせるだろう。やりたいゲーム、読みたいマンガ、もうすぐ学園祭もある。この世界で得た経験を地球の怪獣映画に注ぎ込んでみるのも悪くはないか。

 

「時間はあるし、前にも言ったように地球の君は年を取らない。あとは君の……おや」

 

 悩んでいたところに服を引っ張っられた。裾をアロンが掴んでいた。

 目は閉じたまま、ゆっくりと胸が上下に動いている。

 

「こっちに残ります。三人とも……多分四人でしょうね、みんなについていくって言われちゃいましたし」

「ははは、それはいい。私は君の怪獣軍団をまだまだ見てみたいからね」

 

 軽快に笑うエイジン様を見て、一つ聞いてみる。

 

「これも狙っていたんですか?」

「さあ? 映画は、いや特撮は想定以上のことが起こるのがお約束だろう?」

 

 エイジン様はいつものように朗らかに笑った。

 

 

 

 

 次起きた時は皆が寝静まった真夜中。寝ようと何度も寝返りを打つが、寝すぎて寝れない。どうやって眠るか、どうやって時間をつぶすかを考え始めたころ。

 

「ソーサク、起きてる?」

「アロン?」

 

 囁き声の主は俺たちの魔法使いで、エフェクト担当だった。

 

「君が倒れた後、アタシも魔力の使い過ぎで倒れちゃったみたい」

 

 あれだけ魔法を撃ちまくった上に、ドラゴンをぶち抜く一撃を放ったから無理もないか。

 

「うん、ぐっすり寝たから、もう大丈夫かな」

 

 アロンは人差し指に小さな炎を灯して、近くにあったロウソクに火をつける。

 小さなオレンジ色の光が二人の顔を照らす。

 

「ソーサク右腕見せて」

 

 淡い、緑色をした光が腕に降り注ぐ。いつぞやの回復魔法か。

 

「……ねえ、ソーサク。本当に残ってくれるの?」

「夕方の話か」

「うん」

 

 アロンは腕から目を離さない。でも、腕を握る力は少しだけ強くなった気がする。

 ツンツンと赤毛を突く、アロンが恐る恐る俺と視線を合わせる。吸い込まれそうなほど赤くて綺麗な目はどこか不安そうだ。

 こういうときってどうするんだっけ。アロンが不安だったり落ち込んでいたときってたしか。

 

「わっ!そ、ソーサクどうしたのいきなり抱きしめて」

 

 比較的無事な左腕でアロンを抱き寄せ、そのまま頭をなでる。

 

「……頭、撫でてくれるの」

 

 そりゃあアロンが不安そうな顔してるしね。

 

「何も言わないんだ……」

 

 アロンはそっと俺の胸に手を当てて、心地よく頭を撫でられている。

 声色もどこか安心しているようだった。

 

「……お兄ちゃんにならないって、まだ思ってる?」

 

 別に君の兄に憧れて無いし。

 そんなことを思いつつも言葉にはしない。今の俺には何も言わないで彼女の頭を撫でることが正解だと思う。

 

「やっぱり何も言わない……うん、そうだよね」

 

 しばらくして緑色の光が消え、スルスルっと腕からアロンが抜ける。

 

「腕、一通りの処置は終わったよ。だいぶ楽になったでしょ」

「これはすごい、ありがとうアロン」

 

 さっきまでじんわりと痛かった右腕の痛みが取れている。

 レタン、ピノ、カミシモ、そしてアロン。ハリボテの怪獣と同じように、全員光るものを持っていながら肝心な部分が致命的な連中。でもこいつらがいれば何だってできるだろう。それくらい魅力的な仲間たちだ。

 

「昼間寝すぎちゃったし、アタシ全然眠くない。ちょっとだけ話さない?」

「いいね、そうだな……」

 

 俺もアロンもおそらくまだまだ眠れないし、夜は長い。怪獣のネタはまだ山のようにある。退屈しのぎに話してみるか。

 次回作、どんな怪獣を出してやろうかってね。




これからも怪獣特撮が創られますように
一人のファンとして応援しております
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