ハリボテ怪獣ハンドメイドン   作:破壊光線

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第七話:過去を調べて

 目的のゴブリンは何とか討伐できた。

 スライムはチドンに恐れおののいたのか逃げてしまい、姿は見当たらない。さらにあれだけの爆発音を轟かせたのだから、この辺に魔物はおろか鳥一羽すら見当たらない。

 今森の中にいるのは俺たち四人だけだ。依頼達成、安全確保ができたところで、何をしているのかというと。

 

「なるほど魔物の仮装か。てっきり本物の、それも新種の魔物だと思ったぞ」

 

 レタンとピノに着ぐるみ怪獣について、分かっている部分だけ説明していた。俺も教えてほしいんだけどね。

 

「にしてもすごいクオリティだね☆材料費もかかんないみたいだし、売ったらいい感じに商売出来そう。何とか消えないようにならない?」

 

 レタンもピノもそれぞれの視点から褒めてくれた。

 ただまあ、残しておくのは無理だと思う。

 

「あの炎はどうやって発射したんだ?」

 

 レタンが言う炎は、ゴブリンを焼いたあれのことか。

 

「タネを明かすとアロンの魔法じゃないかな。本当なら杖の先端から放たれるんだけど、今回は杖が着ぐるみに突き刺さって、その先端がたまたま怪獣の口の部分から突き出してて、炎魔法が放たれた。と思う」

 

 自分で言っていてアレだが……これは使えるのでは?

 もし着ぐるみ怪獣が50メートルくらい巨大化できたら、口の中にアロンを待機させて、口が開いたときに炎魔法を発射する。そうすれば立派な火炎放射だ。

 俺は攻撃するために近づかなくていいし、相手からすれば火を吐く大怪獣に見える。

 これはすごいぞ! 怪獣に近づくだけじゃなくて、前みたく炎を吐くのに失敗して、無念のラリアット攻撃の醜態晒しコンボとはおさらばだ。

 

「ところで……レタンが”今回も”剣が折れたって言ってたけど、いつも剣を折っているの?」

「いつもとか言うなぁ」

 

 俺の質問にレタンは赤面していた。

 さっきまで凛々しかったのに、すごい変わりようだ。

 

「なんでさ」

「……小さいころから剣を振るうべく鍛えていたんだ。その結果」

 

 レタンは近くにあった木を思いっきり殴った。

 バキ、メキメキメキと音を立てて木が根元から折れる。え、なにこれギャグ漫画?

 

「私は怪力を得たが鍛えすぎて耐えられる剣が無い。材質、値段、加工法。すべて関係なし。剣を振るうとさっきみたいに簡単に折れてしまう。どうにかしてくれ!」

 

 懇願するように泣き始めたんだけど。

 

「通常攻撃が一撃必殺技?!」

「もう拳で殴った方が強いんじゃないかなって、ピノは思うな」

「バカなことを言うな。私の家は代々剣で人を助けてきた。私もご先祖様や父、母、兄上たちのように剣で人を助けたいんだ」

 

 コンプレックスのようだ。これ以上詮索するのは辞めよう。可哀そうになってきた。それに妙な拘りがあるというか、着ぐるみ怪獣に命を懸けた俺とシンパシーを感じるな。

 話題は残った一人へ。

 ところで商人の足元にゴブリンの死体が二つほど転がっているんですが。さっきの感覚共有魔法といい、なんなのこの子。

 

「これ?……えっと、よくぞ聞いてくれました。商人でも戦えないとこの先やっていけないなって思って、短剣と魔法を扱えるようにしたのさ☆ それがこの成果ってわーけ。納得してくれた?」

 

 キャハッ☆って可愛いアピールしてるけど、返り血に染まっている時点で可愛くないからね。怖いから、普通に。

 戦闘に特化しているはずの剣士と魔法使いがゴブリン一匹ずつで、戦闘と縁が無いはずの商人が二匹倒しているのもどうなんだろう。俺?聞くなよ。悲しくなるから。

 

「アロンみたいに攻撃魔法を会得しなかった理由は?」

「オイオイ、それが出来ればさっき撃ってるつーの。得意だったのが感覚共有魔法だけだったって話」

 

 アロンは火を起こすくらいは誰でも出来るって言ってたけどな。

 それにピノは魔法を使っても声がかすれないらしい。

 

「しかし、その年でよく商売だけでも大変なのに、短剣まで扱えるようになれたな」

「あれあれレタンさん、もしかして私より年上だと思ってる?」

「私は18だが……違うのか?」

「ピノちゃん、こう見えて23歳でーす☆って、なに女性の年齢聞いてるんだよ」

「なんだと年上か」

 

 日本なら四年生の大学を出て新社会人ってところの年齢か……。それでキャハッ、か。

 

「うわ、きっつ」

「止めろソーサク、傷つくから。人を見かけで判断したらダメだぞ☆お姉さんとのお約束だからな」

「お姉……さん。ねえ」

「なんだあガキンチョ。喧嘩売ってんのか、買ってやんよ。オラ、デュクシ!デュクシ 商人だけど。なんつって」

 

 ピノはぺシペシと俺のお腹を叩いてくる。痛くはないが鬱陶しいな。

 丁度いい位置に頭があるからデコピンでもしてみよう、ほれ。

 

「へう……いったあ。殴った、女の子を殴ったよこの人ぉって、おい、なんでみんな引いてるの?助けろ、助けて、助けてください」

 

 おでこをさすりながら一人うずくまって喚いている。なんかピノの扱い分かった気がする。コイツ、いじると面白いタイプの女だ。

 ひとしきり騒いで満足したのか、ピノは立ち上がると俺の疑問に答えてくれた。

 

「商人とはいってもエイさんの弟子だ。難しい商談とかはぜーんぶエイさんがやってくれる。待ってる時間を無駄にするわけにもいかないし、短剣を練習する時間もあったのサ☆まま、もっと扱えるようになりたかったけどね。こんなん、ナンボあっても嬉しいですし」

 

 短剣とはいえ剣士よりも剣技が上手い商人って一体何なんだろうか。オマケに魔法も使えるし。

 改めて振り返ってみるが、自分も含めて何故このメンバーでゴブリンを倒せると思ったのか、そして実際倒せたのか、全くもって理解不能である。

 

 街に戻ってさらに理解できないことがあった。

 それはゴブリンを倒して帰還し、報酬金をもらって、これから宿でゆっくりしようなどと考えていたときに、街の人たちに囲まれて告げられた。

 

「コカトリスがこっちに向かっているみたいなんだ!」

「冒険者たちはとっくに出払っちまって、戦えるのがアンタたちしかいないんだ」

「ルレーフの森、すぐそこまで迫ってきてやがる。助けてくれ」

 

 どうやら俺たちが倒したゴブリンたちは、このコカトリスに怯えてこの街の近くまで逃げてきたらしい。

 つまりコカトリスを倒さないと、今後もゴブリン達みたいに逃げてきた魔物が街に侵入してしまう可能性もあるし、最悪なのはコカトリスが街を襲うことだ。ゲームよろしく異世界でもコカトリスはゴブリンなんかよりも強いから。

 懇願するように集まってきた人々には悪いが、アロンの言葉を借りよう。

 

 え、無理ですけど。

 

 せっかくアロンから言葉を拝借した手前、それを無用にする輩がいた。そう。

 

「私たちに任せてくれ!コカトリスを倒し、街に平和をもたらしてみせよう」

 

 女騎士レタンである。

 俺たちはゴブリンで苦戦していたんだ。どう考えてもコカトリスに勝てるはずないじゃないか。

 

「おお、さすがはレタン様。名門ヴィニル家の剣士様だ」

「こ、これでもう安心だ」

 

 なに安請け合いしてんのさ。声震えるくらいなら断ってくれないかな。

 

「冒険者の皆さんは大変そうだね。じゃ、商人のピノちゃんは次の街へ出発するんで、この辺で」

「みんな、どうしたんだい?」

 

 騒ぎを聞きつけたのかエイジン様登場。薄情な弟子に何か言ってやってください。

 

「あ、ピノ君。もうしばらくこの街にいることになったから、ソーサク君たちのコカトリス討伐を手伝ってほしいな」

「またまた~、嘘は良くないですよ。え、嘘じゃない?嘘だ、嘘だと言ってよ上司!」

「旅は道連れ世は情けと言うじゃないか」

「嘘でしょ……」

 

 クビを宣告された会社員のように、ピノは膝から崩れ落ちた。

 さすがエイジン様。昼間のメンバーでまともに戦えそうなのは、アロンとピノくらいしかいないんだ。今ピノに抜けられたら非常に困る。

 

「四人いるが……これでどうやったら勝てるんだろうか」

 

 へっぽこメンバーでコカトリスと戦うことになってしまいそうだ。この後どうするか、一発レタンを殴っても許されるのではないか。

 そんなことを考えていると、アロンが俺の袖を強く引っ張った。

 

「だからさっさとこの街を出ようって言ったのに」

「ホント、ごめんなさい」

 

 一発殴られたらアロンは許してくれるだろうか。

 民衆に称えられレタンが帰って来た。凛々しく堂々とした姿から一変、申し訳なさそうに腰を折る。

 

「申し訳ない。その、もう一度だけ協力して頂けないでしょうか」

「まず、なんで見栄張ったのか教えてくれます?」

「……以前も話した通り、私の家、ヴィニル家は剣で人々を助けてきた。父上は単独でドラゴンを倒し、兄上は急襲騎士団の団長に上り詰めた。ヴァニル家は伝説の大魔術師、ファレーノ兄妹と並ぶほどに有名なった。しかし、私は剣を扱うことができない落ちこぼれ。このままでは家の面子が立たないし、困っている人を見て何もできない自分が嫌いなんだ……」

「だからコカトリスを倒して、家の人から認められようと」

「違う!」

 

 レタンはきっぱり否定する。

 

「ただ私は……困っている人を助けたい」

 

 本当に、それだけなんだ……。レタンは何かを堪えるようにうつむいた。

 何とも言えない空気が漂う。俺も協力できるなら手伝いたいところだが、いかんせん足手まといもいいところ。

 意外にもレタンに賛同したのは商人のピノだった。

 

「全く……仕方ない。いいよ、協力する。似たような理由で商人になったからな」

 

 逃げようと画策していたところ、エイジン様に退路を塞がれ、哀れにも道連れとなった彼女。

 さっきまで顔面蒼白でブツブツと呟いていたが、戦う決心をしたらしい。声色もいつものふざけた感じではなく、一オクターブほど低い凛々しいものだった。

 

「でもでも~ピノちゃん商人だしぃ、戦力にはならないよ。頑張ってケガの手当てかな」

 

 訂正、後方支援だった。声色も元に戻っているし、安全地帯から眺めるつもりだな、羨ましい限りである。

 ピノが戦闘に参加すると表明した結果、残るは俺とアロンのみ。レタンはすでに俺をロックオンしたらしく、すがるような視線が突き刺さっている。

 

「レタンさ、勝算あると思ってるの?」

「コカトリスの最大の武器は邪眼。目を合わせたものを石にしてしまう強力な能力だ。だが、コウモリみたいな元から目が見えない生物や魔物には効かない。ソーサクの……かいじゅうだったか。昼間、ゴブリンに目を攻撃されたにも関わらず、痛がるそぶりはおろか、瞬きや血さえも見せなかった」

 

 なるほど。チドンは着ぐるみの怪獣で、目は作り物だからコカトリスの邪眼が効かないと。

 

「ああ。着ぐるみの怪獣を囮にして、コカトリスが気を取られている隙をついて倒す。アロンの魔法があれば、怪物が炎ブレスを吐いたと騙せるはず、身体の大きさも含めて注意を引けるだろう。後は私が目をつぶせば他に警戒すべき武器はない。トドメはアロンの火属性魔法で一掃してやれ」

「その作戦、乗った」

 

 火炎放射を放てるんですか!?やるしかないじゃないですか。どうしてそれを先に言わないかな。

 普段苦しめられていた、あの視界の悪さがここで役に立つとは。

 

「ソーサクさん!どうして?」

「ごめん、けど俺の能力が誰かの役に立って、勝算もあるなら戦った方がいいかなって」

 

 嘘です。火を噴く大怪獣になりたいだけです。いや、アロンごめん。裏切られた、みたいな顔しないで。

 

「……これで最後ですからね」

 

 頬を膨らませつつも、アロンもコカトリス討伐に合意してくれた。俺の予感が当たり、へっぽこメンバー再集合。次にやることは対コカトリス専用の怪獣(着ぐるみ)を作ることだ。

 万が一、空気穴からコカトリスと視線が合わないように、頭の位置が高い怪獣にするか。いや、ピノの感覚共有魔法で何とかしてもらおう。

 後方支援のピノが石になった時点で俺の視界も死んで道連れ確定。囮の意味も無いから作戦は失敗か。まあ、後方支援が死んだら全滅しているようなものだろう。そうならないよう俺が頑張らないと。

 後は……アロンを隠す場所を考えよう。口はコカトリスに注目されそうだから、怪獣の胸辺りに特殊な模様を作って隠れてもらうとして。

 まとめると、魔法を放つ胸部に特徴的な模様が欲しい。囮の役目を果たすような派手な色がいいな、例えばオレンジ色とか。それから強く見せたいから棘が無数に生えていたほうがいいだろう。確かそんな怪獣がいたはずだ。

 

「あー、スーパーバイオ怪獣ネオザウラにしよう」

 

 次作る怪獣が決まった。コカトリスの攻撃を防ぎつつ、動きやすい素材はなんだろう。それにアロンを隠せる大きさはどれくらいなんですかね。

 ま、エイジン様に相談すればいいか。

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