綴られた考察&観察の記録は、主観と妄想が入り混じり意味不明。
事例に沿った記述が散文されど、史実の記録としての信憑性は低いと思われる。
「毎度どうもお客さん! え? これをご所望ですか? はい、どうぞ♪ ……って、あれ? こんな本、在庫にあったかな……?」
鈴奈庵店主
幻想に生きる少女“アリス・マーガトロイド”の朝は早い。
ベットから起き上がり。寝間着から普段着に手早く着替えると、朝食の支度を始める。
卵、牛乳、砂糖、バニラエッセンス。それらをボールに纏めてかき混ぜる。
出来た乳液を、作りおきの食パンをスライスしたものに絡めて、フライパンで焼く。
茶葉を適度に刻み。お湯に浸して紅茶を抽出、錬成。それをお気に入りのティカップに注ぐ。
カップの横に置かれた皿に、出来立てのフレンチトーストを添えれば、シンプルな朝食の出来上がり。
そして、庭先に設置したポストから取り出した新聞を片手で受け取り広げれば……朝のティータイムの完成である。
もっとも、その間、マガトロさん自身は何もしていない。
ベットから起き上がり。フラフラと寝ぼけ眼を浮かべた立ち上がると、ベットの横で手を広げ。人形たちに着替えさせてもらい。
「おはよう、上海、蓬莱…‥元気そうね」
口に手を当てあくびを噛み殺しながら、ゆっくりと歩いて、朝の準備で忙しなく動きまわる人形たちに軽く声をかけ、すべての準備が整ったテーブルに付き。
「ありがと……」
椅子を引いてくれた人形に礼を言いながら、新聞を受け取っただけである。
これはマガトロさんが、自分では身支度すら出来ないズボラ系女子だからではない。
本来、生理現象とは無縁の存在である魔法使いにとって食事は不要だ。
それどころか、睡眠すら必須ではない。
だが、マガトロさんは人間基準で言っても規則正しい生活を送っている。
また、人形の持つ技術は、奏者であるマガトロさん自身の技術とイコールであり。それはつまり、マガトロさん自身の女子力の高さを示唆している。
現に朝食を終えたマガトロさんは、流し読みした新聞をたたむと台所に向かったではないか。
どうやら、ちょっとした手土産にと、クッキーを手作りするつもりのようだ。
マガトロさんが自身も得意とする家事や炊事を、わざわざ人形にやらせるのには、二つ理由がある。
一つ目は、人形操作に慣れるため。
一度覚えた技術を忘れることはない。
だが、普段から使っていないと腕が鈍るのは、人も人外もマガトロさんも変わらない。
逆に使い続けていれば、際限なく研ぎ澄まされていくのが技術と言うものだと、マガトロさんは知っているのだろう。
二つ目は、作業の効率化。
さらに言うならば、一体を両手で操っても、家事などの精密作業は難しい。
しかし実際に、マガトロさんが操っている家事や炊事と動きまわる
マガトロさんと人形を繋ぐ糸は、魔力によって綴られ指輪から伸びた霊糸であり。それは
各部屋の掃除。朝食の片付け。庭の手入れ。それらを全てこなすには人形の手は小さすぎる。だからこその人海戦術。
今現在、マガトロさん家の内外では―――
魔彩光の上海人形
首吊り蓬莱人形
博愛の仏蘭西人形
紅毛の和蘭人形
輪廻の西蔵人形
春の京人形
霧の倫敦人形
白亜の露西亜人形
試作ゴリアテ人形
大江戸爆薬からくり人形
―――10種類の人形が“無数”に動き回っている。
それを可能にしているからこそ、彼女は“魔法使い”ではなく……“人形遣い”と呼ばれているのだろう。
「ん……良し。後は焼きあがるのを待つだけね」
水道を捻り、手を洗ったマガトロさんは、台所から離れ。出かける準備をするために地下室へと向かう。
クッキーも含めたお菓子作りは精密作業である。
菓子はグラム単位で量を測って作らないと失敗する。適量などと嘯き適当に作れば、暗黒物質の出来上がりだ。
故にお菓子作りは“料理”ではなく“調理”呼ぶべき作業と成る。
そして精密作業は、半自律式人形の得意分野だ。
予め設定しておいた“
そして、それは調理に限らない。
凡そありとあらゆる作業は、行う者の体調や感情によって揺らぎがある。
揺らぐことで出来不出来が生まれるならば、揺るぎない人形に任せた方が安定するのが通りであり、効率を考えれば、すべてを人形に任せるのが正しい。
しかし、マガトロさんは、全てを人形に任せる気はない。
合理主義者でもあるマガトロさんにとって、効率も大事だが…‥それ以上に大事なものが有るからだ。
安定は停滞に等しい。
新しいものを作り出し、改良改善を行なうのは“不完全な自立人形”では不可能。
だからこそマガトロさんは“自ら動く”
夢である完全自立型の人形を創るために必要なことだと知っているから……。
まあもっとも、真相としては―――
疲れを癒やすための休息には、睡眠が、記憶の整理に、夢が有効だからと誰と無く言い訳しながら惰眠を楽しんだり。
ミスしないと言いつつも、半自立型では判断力が足りず。想定外に事故る事を恐れてるからだったり。
魔術の研究に詰まるなどの嫌なことがあった時に、気分転換と言う名の現実逃避に邁進するためだったり。
食っちゃ寝しても太らない身に甘えるのは堕落だと、自身の女子力低下を懸念してるからだったり。
お菓子作りを、人形に任せたら“手作り”じゃないと白黒辺りに文句を言われるのではないかと、杞憂を浮かべてたり。
―――なかなか残念な思考によるものだったりするのは愛嬌だろう。
そんなマガトロさんだが、どうやら出かける準備が出来たようだ。
今日の予定は、午前中は人里での人形劇。午後からは紅魔館に寄った後で、博麗神社の宴会に参加するつもりらしい。
「今回の演目は……真・デレラでいいわ……それと神社に行くならクッキーだけじゃ足りないかも……。
そうね、昨日のスープが残ってるからそれも……あ、でもキノコが……」
大きめのカバンを足元に置き、マガトロさんは、今日の予定を呟きながらクッキーの焼き上がりを待っているようだ。
これからの事や、過去の出来事を思い浮かべ。時に眉を寄せ。時に微笑み。時に口角を歪ませて思案する姿は、可愛らしくも美しい。
マガトロさんが身に付けた清潔感ある青いワンピースは、染みや汚れはおろか、ほつれの一つもなく。
髪飾りと揃いの色のリボンで纏められたその服は、肩から掛けられた白いケープと合わさることで完成している。
そうやって完成された青と赤と白のコントラストに、鮮やかな金が加われば最高となり。金髪に彩られた赤いカチューシャを付けたマガトロさんは、実に可愛らしい。
窓から差し込む陽の光を受けて輝くその姿は、非現実的な程美しく。一枚の絵画から少女が抜け出したと言っても疑われることは無いだろう。
そんな“
出かけた先の人里で、人形劇の評判を聞き。興味なさげに悪態をつきながらも、浮かれた雰囲気を隠しきれない様子が愛おしい。
服の素材を求め訪れた木綿問屋で、あれでもないコレでもないと真剣に悩む姿も愛おしい。
訪問先の読書好きな知人にお土産……と、ちょっと寄った書店で、うっかり18禁コーナーに足を踏み入れ、慌てて逃げ出す背中も愛おしい。
偶然出会った旧友の花妖怪に声をかけるも、素っ気なく無視されて、少し落ち込み肩を竦めた仕草も愛おしい。
周りの視線や思惑に気が付かないまま、すました顔で歩く姿が……堪らなく愛おしい。
私はそう……ワラッているはずだ。
人形が人形を操るような滑稽さが堪らなく愉快であったから仕方がない。
だからきっと、私は性格が悪いのだろう……。
奏者は彼女。演者も彼女。
私もまた“
そもそもいるのかどうかも、あるかどうかも分からないが……“
私は知っている。
そのことに、
何時気がつくか、その時が、楽しみであり恐ろしくもある。
唖然
疑惑
歓喜
許容
激怒
悲嘆
自棄
破滅
号泣
放心
自嘲
悲哀
驚愕
恐怖
嫌悪
拒絶
喜怒哀楽、何れに転ぶか分からない。
私はまだ、
―――だがら私は
いつか
ああ、やはり“私”は性格が悪い。
演目の“真・デレラ”は、灰を被って頭に桜の花が咲いた幼女“デレラ”が、青い鳥に誘われてお菓子の家に迷い込むと、悪い魔女に騙されて毒りんごを食べて小さくなった所を3匹の子豚に助けられ、柿の種で雇った狼と鶴と猿顔の漁師をお供に、悪い魔女の眠る荊の城に向かい。寝ている魔女の腹を割いて石を詰めて、背中に背負った芝に火を付け、赤い靴を履かせて踊り狂わせ復讐を果たすと、何処からとも無く現れた七人の小人が魔女と一緒に踊りだしたので、釣られて踊ってると、そこに通りすがった
あ、余談ですが……ハンプティダンプティなロリコン玉子は割れ、通りすがりの兎と亀に食われました。さらに、泡と成ったはずの幼女は実は生きてて、家出してきた、たい焼きと一緒に竜宮城で遊んでます。